Scrum Fest Mikawa 2026(2026年9月12日、豊橋・emCAMPUS STUDIO)での講演資料です。
ロバート・サットン&ハギー・ラオの『Scaling up Excellence』(2014、邦訳未刊)を、スクラムフェス札幌2021でお話ししてから5年。前作が「スケールとは足し算と同じくらい引き算をすることだ」と言い残した続きを、続巻『FRICTION(フリクション) 職場の問題を解決する摩擦の力』(高橋佳奈子訳、日本能率協会マネジメントセンター、2025)が一冊かけて掘り下げました。副題は "How Smart Leaders Make the Right Things Easier and the Wrong Things Harder"——正しいことをやりやすく、まちがったことをやりにくくする。
このセッションでは、前作の7原則をダイジェストでおさらいしたうえで、続巻の核である「良い摩擦/悪い摩擦」「フリクション・フィクサー(摩擦最適化請負人)」「他者の時間の受託者」「足し算病と引き算のマインドセット」を紹介し、よくある5つの摩擦の罠(無自覚なリーダー/足し算病/連携の破綻/無意味な専門用語の乱用/過剰なスピード主義)を、本書のエピソードとともに読み解きます。
中心性の誤謬、カバからゾウへ、Googleが一度マネジャーを追い出して戻した話、「大いなる力には大いなる責任が伴う」
引き算のターゲットを見つける7つの確認事項と、ユーザーストーリーマッピングとの接続
専門家が陥りやすい罠、サティア・ナデラの One Microsoft
ホラクラシーの顛末に見る「ルールブックだけでは組織は運営できない」
テレサ・アマビールの「創造性の死」、Uberの組織的負債、バースト的なコミュニケーション
あわせて、サットンがアジャイルを高く評価しながらも本書で「アジャイル」という言葉をあえて使わなかった理由と、「フリクション・フィクサーとはスクラムマスターのことではないか」という読み方を提案します。スクラムガイドはルールブックとして「何を」を書き、Frictionは「どう動くか」を書く。二冊は補完的です。
後半は、スクラムフェスというボランティアコミュニティの運営を、5つの罠への対策として読み直します。全員が作業者であること、やる人がいないことはやらないこと、毎週Discordでモブで準備すること、「それってどういうことですか?」と聞ける空気、意図的に遅くすること——「燃え尽きない、抱え込まない」ための仕組みを、本書の言葉で言語化してみました。
参考文献
Robert I. Sutton & Huggy Rao, Scaling Up Excellence, 2014
ロバート・I・サットン、ハギー・ラオ『FRICTION(フリクション) 職場の問題を解決する摩擦の力』高橋佳奈子訳、日本能率協会マネジメントセンター、2025
Bjarte Bogsnes, This is Beyond Budgeting
ジェフ・パットン『ユーザーストーリーマッピング』オライリー・ジャパン
前作スライド:Scaling up Excellence(Scrum Fest Sapporo 2021) https://speakerdeck.com/kawaguti/scaling-up-excellence