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抑制ではなく配分へ - タイミーのトークンコストとの向き合い方

抑制ではなく配分へ - タイミーのトークンコストとの向き合い方

抑制ではなく配分へ ― タイミーのトークンコストとの向き合い方

Forkwell主催「トークンコストへの向き合い方 ― 新時代の開発コストへの対応を学ぶ会」(2026/07/28) の講演資料です。

Claude Team から Enterprise への移行で Coding Agent がすべて従量制になったタイミーが、「使えば使うほど積み上がる」トークンコストとどう向き合ってきたかを、現場の実践からお話しします。

主なトピック

目先の現実解:一人あたりAI予算による予算統制と、その限界
生産性 = Output ÷ Input ― 予算統制は「分母」しか見ていない
Goodhart's Law:「枠内に収める」の目標化が生む「使わないことが正義」
実効トークンコスト = 名目トークンコスト + 検証税 ― 請求書に出ないコスト
削るコストより、失う価値 ― 1週間の前倒しとトークン代の比較
普段使い / 実験 / アウトカム投資の区別と可視化
コスト削減ではなく生産性へ ― 抑制の設計ではなく、配分の設計

対象:AI/LLM活用プロダクトのトークンコスト管理に課題を感じるエンジニア・テックリード・EM・SRE・プロダクト責任者

登壇者:橋本 和宏(@kaz_utb)/ 株式会社タイミー Agent Harness G Manager

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Kazuhiro Hashimoto

July 27, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 Timee 橋本 和宏(@kaz_utb) 株式会社タイミー Agent Harness G Manager ▪

    インフラ出身 … ネットワーク → クラウド → SRE → プラットフォーム → セキュリティ ▪ 2024/7 タイミー入社 … Platform Engineering チームマネージャー ▪ 2026/5〜 … Agent Harness G マネージャー • 主にCodingAgentを中心としたAIワークフローで開発組織へ寄与する組織として設立 本日は、開発組織のトークンコストとの向き合い方を現場の実践 からお話しします。 2
  2. 新規参⼊企業の増加の中でも圧倒的な業界プレゼンスを確⽴ 新規参⼊増加により競争環境に変化が⽣じるものの、先⾏者優位性や⾼い業界知名度により、サービスの地位は不変。 ⽇本におけるパイオニアとしてのNo.1のポジション ※5 競合優位性① ⼈が集まる 稼働率:87% 競合優位性② ※1 競合優位性③

    ワーカーの 働きぶりが良い 営業による ⼿厚いサポート リピートワーカー率:65%※2 無断⽋勤率:約0.2%※3 営業⼈数:791⼈ サービス利⽤率 ※6 求⼈掲載数 ※7 ※4 タイミー A社 B社 マーケットシェア推計 ※8 ※1:FY26/4 1Qの稼働⼈数を募集⼈数で除して算出 ※2:2026年4⽉末時点における、サービス開始以降、レビュー済ワーカーのうち同⼀の職場で2回以上勤務経験のあるワーカーの割合 ※3:無断⽋勤は申告なしの⽋勤を指す。分⼦は2026年2⽉から2026年4⽉の無断⽋勤数。分⺟は同期間に充⾜された求⼈数。 ※4:株式会社タイミー(単体)の2026年4⽉時点の営業⼈数 ※5:ワーカーの観点ではサービス利⽤率※6、クライアントの観点では求⼈掲載数※7に基づく ※6:調査委託先 マクロミル 調査⽅法 インターネット調査 調査時期 2025年1⽉31⽇から2025年2⽉4⽇ 調査対象 直近1年以内にスキマバイトを経験したことのある18から69歳の男⼥1,033⼈ ※7:調査機関 ⽇本マーケティングリサーチ機構 調査期間 2025年5⽉13⽇から2025年6⽉12⽇ 調査概要 2025年6⽉期_スキマバイトにおける市場調査 ※8:スポットワーク市場規模の推計レポート(スポットワーク研究所)( https://spotwork.timee.co.jp/entry/report/marketsize-2024 ) 4
  3. ワーカーの属性※1 ー 若年層を中⼼に多様なワーカーが登録 代表的なワーカーの一 例 ※ 2 [職業]パート [年齢]30-40代 夫と⼩学6年⽣、3年⽣の⼦どもと暮ら

    しており、家計を⽀えるべくほぼ毎⽇ タイミーを利⽤して複数の職に従事 [職業]フリーター [年齢]20-30代 趣味のイベントに参加するため、シフ トの柔軟性を重視。 メインのバイトでは希望する時間の 60-70%しかシフトに⼊れないため、バ イトに加えてタイミーを利⽤
  4. クライアントの属性 ー 物流、飲⾷、⼩売が中⼼ その他内訳 ホ テ ル 調理補助 ⽫洗い •

    クリーニング• ビルメンテナンス • ⾷品製造 等 介 護 調理補助 ⼊浴介助 梱包 ピッキング ⼩ 売 レジ 品出し‧陳列 物 流 バッシング オーダー 飲 ⾷ 検品 洗い場 配膳 7
  5. 業務プロセスを踏まえた提案( BPR) STEP 1 STEP 2 STEP 3 各企業の業務プロセスを踏まえて、 業務カテゴリごとに区分け

    ワーカーがスポットでできる 業務を特定し、切り出し タイミーを利用した求人掲載を 拡大し、コスト削減を実現 ※物流事業者様の例 8
  6. OTHER BUSINESS 新規事業について タイミーのワーカープールを活かし、正社員候補となる⼈材を事業者様へご紹介するサービスです。 タイミー上の勤務データやリスキリング機会を活かし、事業者様のニーズに合わせたご紹介が可能です。 タイミーキャリアプラス タイミー STEP1 STEP2 STEP3

    STEP4 STEP5 タイミーで働く スキルや勤務実績 が貯まる 正社員の求⼈ が紹介される 体験勤務 正社員として⻑期就業 タイミーを使⽤して スキマバイト タイミーで働いてバッジをゲット! スキルや勤務実績が貯まる スキルや勤務実績を 元に求⼈を紹介 タイミーを通じて 紹介された職場で働ける お互いがマッチしたら 正社員として雇⽤される リスキリング講座 キャリア相談 資格や免許取得、スキル習得のための 講座を受講できます。(⼀部選考あり) 仕事の悩みや今後の⽅向性など、 ご⾃⾝のキャリア周りについて相談できます。 9
  7. 今日話すことの前提 Timee どこで・誰が・何を使っているか。前提を揃えてから本題へ。 誰が使うか 何を対象とするか ▪ プロダクト開発組織 … PdM・デザイナー・エンジニア ▪

    Coding Agent … Claude / Cursor / Devin ▪ 95%は開発用途 … 一部Biz組織利用はあるが現時点では ▪ 対象外 … NotionAI・SlackAI・Gemini等は情シス管理の全 例外的 社ツール 今日の話題は Coding Agent のみ。 10
  8. 何が起きたか:すべてが従量制になった Timee 2025/5、コスト構造が変わった。 それまで:定額の安心感 ▪ Claude Team … 定額のサブスクリプション ▪

    予算 … 人数×単価で確定、増減しない そこから:すべて従量制 ▪ Claude Enterprise 移行 … Coding Agent がすべて従量 制に ▪ Cursor / Devin … もともと従量課金 定額の安心感が完全に消え、「使えば使うほど積み上がる」コスト構造 へ。 11
  9. 目先の対処:予算に対してコントローラブルにする Timee まずやったこと:予算に対してコントローラブルにする。 ▪ ▪ 一人あたりの AI 予算額を定めて予算見積もり • その枠内に収まる運用を構築

    • 予算計画は「一人あたり額 × 人数」で立つ いきなり「 AI予算オーバーするので増額稟議を上げます」とは言えない • だからこそ、予算対比でコントローラブルであることが前提になる 経営に対する説明責任は果たせている 。 (ここまでは現実解) 12
  10. なぜか:分母しか見ていない 生産性 = Timee Output(何を生み出したか) Input(トークン) 管理できていること(分母) ▪ トークン支出 …

    一人あたり予算の枠内にコントロールできて 扱えていないこと(分子) ▪ いる ▪ 経営への説明責任 … 予算対比の報告は成立している 何に変換されたか … トークンが何の Output になったか帰 属が取れない ▪ 適切だったか … その Output がアウトカムにつながるものか も不明 「◯円/人に収まった」だけで安心しない。支出統制の成功は、生産性については何も語っていない 。 (= 分母の管理のみ) 14
  11. しかも、分母すら全部は見えていない Timee 実効トークンコスト = 名目トークンコスト + 検証税 ▪ 名目トークンコスト …

    実際にかかったトークン代 • ▪ 請求書に出る。予算統制の対象はここだけ 検証税 … アーティファクトを作る時間と、人間がそれを検証するコスト • 請求書には出ない。人間の時間として支払われている 予算統制が見ているのは名目だけ。検証税は、人間の時間として静かに支払われている 。 15
  12. 使途の区別がついていない: 3つの使われ方 区分 性質 問い ① 普段使い 一般的な開発業務での利用 日々の生産の運転資金か? ②

    実験 仮説検証のための消費 学びを得られたか? ③ アウトカム投資 成果を狙った意図的な投下 成果につながったか? Timee 区別がつかない = Input が何の Output に変換されたか、帰属が取れない。 16
  13. このまま続けるとどうなるか: Goodhart's Law 「指標が目標になると、良い指標であることをやめる」 ▪ ― Goodhart's Law 「枠内に収める」自体が目標化する •

    ▪ Timee 「使わないことが正義」になり、実験が抑制される 使いすぎは請求書に出る。使わなさすぎは請求書に出ない • 機会損失は、見えないまま積み上がる トークンコストは、使いすぎより使わなさすぎ(機会損失)の方が見えにくい 。 17
  14. 抑制モデル vs 配分モデル Timee 観点 抑制モデル 配分モデル コストの見方 削るのが正解 配分が問題

    問うこと いくら使ったか 何を生んだか 管理の道具 請求書 ポートフォリオ 実態は生産手段への投資 → 利用者(私も含む)のメンタルモデルの転換(啓蒙)が必要。 19
  15. 削るコストより、失う価値 Timee 削るコストと、失う価値。 比べているだろうか。 投下するコスト ▪ 実効トークンコスト … 1週間早めるための名目トークン代 +

    得られる価値 ▪ 検証税 ▪ 名目は請求書に出る … 目に見えて、詰めやすい(検証税は 1週間の前倒し … 早く届く機能、早く回る検証、早い意思決 定 ▪ 請求書に出ない … 目に見えず、忘れられやすい 見えない) トークンを惜しんで意思決定や検証が遅れるコストは、多くの場合トークン代より高い 。 20
  16. どうすることが理想か Timee 理想は、使途を区別し、 Output への変換を可視化できる状態。 ① 区別する 普段使い / 実験

    / アウトカム投資 ② 可視化する 何の Output に変換されたか、それは適切だったか ③ 振り向ける 抑制ではなく、アウトカムへ積極的に配分する → 経営との会話が「金額」から「成果」に変わる 区別と可視化 が、次の課題。 21
  17. コスト削減ではなく、生産性へ “ Timee 投資効率を上げるには、コスト削減ではなく 生産性(成果への結びつき) に注目する。 利益は再投資の原資 である。 ― P.

    F. Drucker『マネジメント』 考えるべきは、抑制の設計ではなく、配分の設計 。 余剰バジェットを実験・アウトカム投資へ再投資する(登壇時点では構想段階) 22
  18. まとめ Timee トークンコストは「削るもの」か、「配るもの」か。 現在地 ▪ 予算枠内運用は現実解 … ただし分母の管理でしかない ▪ Goodhartの罠

    … 「枠内に収める」の目標化は「使わないこ とが正義」を生む 目指す先 ▪ メンタルモデルの転換 … トークンは削るコストではなく、生産 手段への投資 ▪ 見るものを変える … 削るコストより、失う価値を見る ▪ 名目ではなく実効で見る … 検証税込みのコストで判断する 目指すのは、抑制ではなく、付加価値創出のための配分 。 23