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COFFEE-Japan PROJECT Impact Report(海ノ向こうコーヒー)
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坂ノ途中
February 15, 2026
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COFFEE-Japan PROJECT Impact Report(海ノ向こうコーヒー)
坂ノ途中
February 15, 2026
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Transcript
Impact Report COFFEE-Japan PROJECT in LAOS
海ノ向こうコーヒーでは、2024年から2025年にかけて ラオスのルアンパバーンにて、国連WFP、 SAFFRON COFFEE(サフロンコーヒー)とともに 「COFFEE-Japan PROJECT」を実施しました。 プロジェクトによって現時点で見えてきた価値や意味を確認するこ と、改善点を見つめ直し未来の取り組みに活かすことを目的とし て、このインパクトレポートを作成しました。 活動の背景にある現地の課題や、スタッフ4名が村をまわり実施し
たヒアリング調査から得たリアルな声を交えつつまとめています。 このレポートがラオスだけでなく、コーヒーの向こう側にある産地の ことを想像するきっかけになれば幸いです。 About 本レポートについて ラオス ルアンパ バーン 2
1. Basic Information 2. Overview 3. Target &
Background 4. Issue 5. Activity 6. Outcome & Impact 7. Closing Table of Contents 目次 3 基礎情報 プロジェクトの概要 村人の暮らしから見えてきたこと 課題 プロジェクトの実施内容 成果とインパクト 最後に
Basic Information 基礎情報
ラオスについて 多民族が織りなす「森と山」の国 ラオスは東南アジア唯一の内陸国であり、国土の多くを山岳 地帯や高原が占める「森と山の国」です。人口は約765万 人。ラオ族を中心に多様な民族が暮らす多民族国家であり、 公用語にはラオス語が使われています。 経済の中心は依 然として農業(特に稲作)ですが、フランス植民地時代に始 まったコーヒー栽培も盛んです。コーヒーの主要産地は南部
のボラべン高原ですが、近年では本プロジェクトの対象地、 北部の山岳地帯でも、新たな換金作物として導入が進んで きています。 北部の農村を取り巻く状況 30〜40年ほど前から政府による集落を高地から低地の幹線 道路沿いに移住させる事業が行われてきました*1。対象村 の中には集落が移動しアクセスが向上した地域がある一方 で、ポンサイ郡のように、未舗装の悪路でしかアクセスでき ない村も依然として多く残されています。対象地全体として 見ればインフラはまだ十分とは言えず、生活環境の向上に は多くの課題が残されています。 基礎情報 暮らしの中心にある農業 かつては焼畑による陸稲栽培や森での狩猟採集を中心とし た、自給自足の暮らしが営まれていました。現在も、主食で あるお米は焼畑(陸稲)によって自給していますが、森林保 全を目的とした政府による焼畑の制限や人口増加により、十 分な休耕期間がとれず、昔とは違う土地収奪的な焼畑*2に ならざるを得ない場合もあります。 こうした変化の中で、 人々はハトムギなどの換金作物の導入や家畜を組み合わ せ、現金収入を得ることで暮らしを支えてきました。 なぜコーヒーを導入するのか 既存の換金作物とは異なり、コーヒーが焼畑ではなく森を守 りながら栽培できるからです。森林保全と現金収入の両立を 可能にする、これからの暮らしの新たな選択肢として期待さ れています。 1. インタビューより 2. 焼畑は適切な耕作・休耕サイクルを守っていれば、環境的には持続可能な農 法と言われている。 5
2025年9月8日〜14日にかけて、プロジェクト対象となる全8村を 訪問し、聞き取り調査を実施しました。 プロジェクト参加世帯の方々に集まってもらい、男性、女性グ ループに分かれて、半構造化インタビューの形式で行われまし た。 表1 調査項目 1. 村情報 ・村の成り立ち、村の開始年
・水源の位置、取水方法、不足状況 ・換金作物の導入時期と経緯 ・森林、周囲の自然環境の変化 2. 世帯情報 ・個人の属性:名前、年齢、性別、家族構成、民族 ・収入源、就労状況:家畜、換金作物等、家族の出稼ぎの有無 ・現金の使途:直近 1年での高額出費と現金の出所 ・土地利用状況:用途ごとの畑の面積、枚数、焼畑サイクル ・食材の調達源、自給か購入か:昨日食べたもの、市場からの購入物 ・現在の暮らしに対する意識 3. コーヒー栽培の導入状況 ・苗木導入:受け取った本数、生育状況(苗木の生存率) ・栽培状況と技術、知識の習得状況:苗木の症状、トレーニングで学びたいこと ・品質管理と出荷状況:プロセスセンターの導入状況、加工をしているか ・インプット:化学肥料と農薬、堆肥の使用状況 ・アグロフォレストリーの状況:混作、コンパニオンプランツ ・コーヒー栽培から得られた収入 4. CJPに対する意識 ・参加理由 ・市場アクセスや販売先に対する認識 ・運営の持続性に対する期待・懸念 ・地域社会や家族への影響 基礎情報 調査について 6
現地に行ったからこそ 体感できたこと 今回、研究員として調査に同行しました。私たちが調査に向 かったのは雨季の終わり。赤土の悪路に阻まれ、泥まみれにな りながらスタックした車を押し、やっとの思いで辿り着いた村もあ りました。 インタビューを通じて、道中に見た美しいパッチワークのような 焼畑の風景は、片道 2時間の山道を歩く過酷な労働の上に成り 立っていることを知りました。でも、「食べていくためには焼畑を
やめられない」。そんな切実な現実を目の当たりにしました。 一方で、村にはインスタントコーヒーや旨味調味料、そしてス マートフォンが普及し始めており、自給自足の生活と貨幣経済 が混ざり合う村のリアルをまざまざと感じました。 坂ノ途中の研究室 研究員 渡邊春菜 基礎情報 7
Overview プロジェクトの概要
プロジェクト概要 2023年11月、国連WFPラオス事務所と契約を締結。 貧困率の高い地域に暮らす小規模農家とその家族の所得 向上を通じて、食料および栄養の安全保障を強化すること を目的に、国連WFPラオス事務所、ラオスでコーヒー生産に 取り組むSAFFRON COFFEE(サフロンコーヒー)、海ノ向こ うコーヒーの3者で進めてきたプロジェクトです。ラオス北部 のルアンパバーン県に位置する8村に暮らす、5歳以下の 子どもたちや妊産婦さんのいる家庭など、特にサポートの
必要な約300世帯が対象とし、所得向上の手段として、コー ヒーの生産を支援してきました。 プロジェクトについて プロジェクトの特徴、強み コーヒー栽培や生産方法の導入だけでなく、その後の市場ア クセスも確保できているということが海ノ向こうコーヒーがプロ ジェクトに関わることの強みです。 日本国内では、ラオスコーヒーの認知拡大を目指し、プロジェ クト地域で生産されたものを輸入し、販売していくことで、プロ ジェクト期間終了後もつづく関係性の構築を目指しています。 9
<私たちとサフロンコーヒーの 担当領域> ・コーヒーの苗木の配布 ・コーヒー栽培や加工に関するト レーニング ・輸出入と流通販売 ・ラオスコーヒーの認知度引き 上げ <地域の課題> ・洪水など災害リスクの高さ
・貧困率は都市部の約 3倍 ・現金収入の選択肢の少なさ <地域住民の課題> ・子どもたちの発育阻害 ・妊産婦さんの栄養不足 Target 対象 <WFPの担当領域> ・対象家庭に対する現金給付 ・栄養価の高い農作物の栽培 ・家畜などの飼育方法、 乳幼児の食事、 衛生に関するレクチャー Activity 活動 環境保全と両立さ せるコーヒー栽培 技術の定着と向上 Outcome 生み出したい変化 Issue 課題 ラオス北部 ルアンパバー ン県に位置す る山岳地帯の 8村 食の多様性を増 やすことによる食 生活基盤の強化 社会変化に対する レジリエンス(回復 力、適応能力)の獲 得 GOAL 最終目標 <プロジェクトにおけるコーヒー 栽培導入の課題> ・コーヒー栽培の知識・技術 の不足 ・ラオスのコーヒーの認知度の 低さ ・流通、マーケティング側面の課 題 連携 栄養状態の改善 ラオスコーヒーの販 売量の増加 コーヒーの収量向 上と農家さんの収 入安定 プロジェクト期間を 超えた長期的な事 業の持続可能化 プロジェクトのTheory of Change 10
Target & Background 村人の暮らしから見えてきたこと
対象村の基本情報 ラオス北部、ルアンパバーン県に位置する8村が対象です。 モン族やクム族、テン族など、山岳少数民族の人々が暮らしています。 対象地区と基本情報 地図 WFPの資料からもらってくる 群 村 人口 世帯数
民族 標高 ポンサイ チョムチアン 1,507 216 モン 約1,190~1,230m ロンラット 296 44 モン 約1,530m ホーアイロンソン 368 58 モン 約1,200m フアドイ 684 119 クム、モン 約1,280~1,315m ビエンカム フエカイ 394 74 クム 約1,050~1,130m プートン 436 71 クム 約1,080~1,120m サー 373 65 テン 約820~1,180m プーカム 204 37 クム 約960 ~1,010m 12
定住政策以降のインフラ整備により、村には町とつながる道がで きました。これにより市場へのアクセスができるようになり、町で 仕入れたものを村で販売する人も出てきました。村外の人との交 流も以前よりも活発になったといいます。 村人は暮らしが便利になったと話す一方で、それは、いつの間に か村の中にも貨幣経済が浸透してきているということなのです。 例えば、子どもたちを学校に行かせるための費用や制服代、病 気になったときの医療費や病院までの交通費などが必要です。 なぜ村で現金収入が必要なのか
村人の暮らし ビエンカム群のプーカム村。2004年に定住政策によってできた村です。山 のほうから下りてきた人々が住んでいます。政府が道をつくり、村人は自 分たちで家をつくりました。 人々は口をそろえて「ここに住む方がいい。少し下った先にあるパクセンの 町までは、村から道がつながっていて、そこには市場や病院、学校がある から」と言います。 Interview Note 山を下りて、道のある村にすむ 13
なぜコーヒーなのか① 村の暮らしと働き方から考える 本当は家族と一緒に過ごしたいのにも関わらず、出稼ぎのために 村を離れざるを得ない人がいます。しかし雨季になると大雨で道が 寸断されることもあり、村から出ることが困難な状況になることも多 くあります。 これまでの現金の主な収入源といえば、コメやハトムギ、家畜。コメ の畑が家から遠く、特に高齢者にはそこまで行くのが難しかった り、家畜が病気になって出荷できなかったりと、思うように現金収
入が得られないこともあります。 コーヒーであれば、庭先や裏庭など家の近くで栽培が可能です。 家族とともに暮らしながら、現金収入を得ることができるのです。 調査から見えてきたこと ビエンカム郡のフエカイ村のワンさん。牛やバッファローなどの家畜を飼 い、コメやハトムギを育てて生計を立てています。「コメやハトムギの畑まで は、片道2時間。夫と息子はそこへ毎日通っています。作業はすべて手作 業。収穫期や焼畑の時期などの繁忙期には畑に寝泊りしています。」 Interview Note 焼畑農業の苦労 14
なぜコーヒーなのか② 環境の側面から考える 焼畑は、村人たちの育てているコメやハトムギの栽培、さらに家畜 用の牧草地づくりのために行われています。しかし、生産量を増や すために適切な休閑サイクルを確保できず、同じ土地で毎年焼畑 を行う村もあります。森林が大事だと認識しながらも収入のため焼 畑をせざるを得ず、過度な焼畑が土壌の劣化・流出や森林減少を 招いています。 一方、コーヒーは環境負荷の小さい換金作物のひとつ。日陰を好
むため、既存の森林環境を維持しながら栽培する「アグロフォレス トリー」に適した作物です。コーヒーは収穫までに3〜4年かかるた め、すぐに現金収入には結びつきませんが、少なくとも現存する森 林を守ることができます。 村に住む人々は、もともと山や森に暮らして来た人々です。「昔は野生動 物が今よりもたくさんいて、狩りをしていました」「今も水や食料は森から調 達します」「森のおかげで恵みの雨が降って、湿度や涼しさを保つことがで きます」と、村の人々にとって森は昔も今も変わらず大事な存在です。 Interview Note 村の人々にとっての「森」という存在 調査から見えてきたこと 15
なぜコーヒーなのか③ 経済の側面から考える コーヒーは国際市場で取り引きをされる合法的な換金作物であり、 国家として大事な外貨獲得の手段です。しかしながら価格の乱高 下のある国際市場では、生産者は時として弱い立場に陥る可能性 も否めません。 グローバルな商流ではないがしろにされがちな、強固で密な関係 性を築いていくこと、それを元にバリューチェーンを構築することこ
そが、持続可能な生産と経済発展につながると考えています。 農家さんたちに、このプロジェクトへの参加の動機を尋ねると、「あなたた ち(坂ノ途中)がいるからサフロンが我々からコーヒーを買ってくれる。その 保証があるから、安心して栽培にも取り組める。」そんな言葉が返ってきま した。 Interview Note 売れる保証がある安心感 調査から見えてきたこと 16
Issue 課題
COFFEE - Japan PROJECTが向き合う課題 <地域の課題> プロジェクトの対象となっている北部は、インフラの整備が十 分ではありません。洪水が起こると、道は寸断され、陸の孤 島になることも。緊急事態が発生したときの対応も遅れてし まいます。
また都市部と比べると貧困率は約3倍、現金収入の選択肢も 少なく、都市部や海外に出稼ぎに行かざるを得ない人々もい ます。 <地域住民の課題> 北部地域は山岳部に住む少数民族が多く、貧困率は都市部 の約3倍と言われています。また、WFPによるとラオス北部地 域では5歳以下の子どもの33%が発育阻害と言われ、妊産 婦の半数以上が推奨される栄養量に達していません。ラオ ス語で「Noi(ノイ)」という言葉があります。「小さい」という意 味で、ラオスではノイさんや〇〇ノイさんという名前の人にに たくさん出会います。 課題 <プロジェクトにおけるコーヒー栽培導入の課題> 現在はラオスのコーヒー生産のほとんどが南部のボラベン 高原周辺地域で行われていますが、近年は北部でもコー ヒー栽培が導入されつつあります。標高や気候などコー ヒー栽培に適した条件が揃っている場所が多く、コーヒー の生産地としてのポテンシャルのある地域です。しかし、北 部の農家さんのほとんどは零細農家で、コーヒー栽培を始 めるために必要な苗木や設備への初期投資は大きな負担 になります。また、コーヒー栽培の歴史が浅く、栽培技術や 知識が十分に行き渡っていないのが現状です。 苗を配布しても、「植えたもののどんどん伸びていく木の管 理方法が分からない」「病気になった木はどう対処したらい いか」、農家さんからはそんな声も聞こえてきます。 また、北部産のコーヒーはラオス全体のコーヒー生産量の わずか5%ほどとも言われ、日本ではまだ認知度が低いの が現状です。 18
Activity プロジェクトの実施内容
実施内容 プロジェクトのあゆみ 苗木の植え方の トレーニング 2023年11月 2024年2月 2025年2月 プロジェクト ス タート 2024年10月
苗床づくり 7か所 パルパー(果肉除 去機)の輸入 貯水タンクの設置 8村 苗木の配布 合計80,500本 苗木の配布 合計80,200本 調印式 東京で SCAJでセ ミナー開催 ビエンチャンで ジャパンフェスティ バル出展 2025年10月 インタークロッピン グの配布 収穫のトレー ニング 各村で農家グ ループ結成 病害虫対策の ワークショップ 苗木の植え方の トレーニング 加工場の建設 4か所 農家グループの結成やリーダー選出、 苗床整備、加工機材設置など収穫準 備が本格化していきました。水不足の 課題はありましたが、サフロンは育苗 と組織化、海ノ向こうコーヒーは広報活 動を進めました。 苗木の配布と植え方のトレーニングを 中心に生産基盤を強化し、坂ノ途中は イベント出展やメディア露出など広報 活動を進めました。。 またこの期間、加工施設建設が始ま り、2024/2025クロップの収穫期を迎 えました。 加工場の建設が進められ、収穫・加工 技術に関するトレーニングを実施しま した。この期間に4か所目の加工場の 設置地を決定。対象の全村で苗床整 備と資材配布を完了しました。プロジェ クト2年目では新たに76世帯が参加 し、混植導入など持続性強化が進めら れました。 剪定や病害虫防除などに関するトレー ニングを行い、海ノ向こうコーヒーでは ニュークロップの販売を開始しました。 合計で約2万本の苗木を配布し、加工 施設や給水設備も建設が終わり、乾 燥設備も改良を加えました。最終のイ ンパクト調査も実施しました。 初期 中期 後期 最終期 20
苗木の栽培と配布 配布した苗木は8村合計で約160,000本。サフロンコーヒーでは、収 量が確保できるとともに病害虫に強いカティモール品種を採用し、 種から苗木の状態まで育てて村の農家さんへ配布しました。一度 に運べる本数は限られているため、苗床からそれぞれの村まで何 往復もかけて運びました。 実施内容と現地の声 “来年はもっと苗木をたくさ ん植えたい ”
ポンサイ郡 チョムチアン村 ヤーセンさん 45歳 男性ほか多数 “植えたばかりでまだ変化は わからない ” ポンサイ郡 ホーアイロンソン村 ク―ヤーさん 35歳 女性 21
トレーニング プロジェクト期間中、サフロンコーヒーの主導により、苗床の管理 方法や、苗木の植え方、収穫の方法など、栽培・加工に関するト レーニングなども行いました。 ミミズコンポストを設置し、その活用方法について伝えたり、村で手 に入る植物やたばこの葉、こぶみかんなどを使った防虫剤の作り 方などを広めました。そもそも農薬が手に入りづらい環境で栽培す る彼らにとって、これらが病害虫対策として役立つことが期待され ます。コーヒーはすべて農薬化学肥料不使用で栽培されていま す。
実施内容と現地の声 “加工方法をどうすればいい のかもっと知りたい ” ビエンカム郡 フエカイ村 スントンさん 36歳 男性 “堆肥(コンポスト)の作り方を 知りたい” ビエンカム郡 サー村 エオさん 22歳 女性 22
設備(加工場、貯水タンク) 合計4か所に簡易加工場を設置しました。農家さん自らが精製まで を行い、パーチメントコーヒーで売ることで、より高値で販売できる ようになる見込みです。また加工場には貯水タンクを設置。収穫期 外には、村の生活用水として活用することも可能です。 農家さんたちは、コーヒーのほかにもコメを作ったり、家畜の世話 をしたり、家族の面倒をみたり、これまでの暮らしが今も続いてい ます。今以上の仕事を求めている人は少なく、加工場があることの メリットが浸透するには時間がかかりそうです。 “使用してみたい。プロセスセ
ンターで加工したら高く売るこ とができるから。 ” ビエンカム郡 プートン村 ペンさん 52歳 女性 “他にもやらないといけないこ とがあるから、今まで通りチェ リーのまま売りたい ” ポンサイ郡 チョムチアン村 男性グループ多数の意見 実施内容と現地の声 23
Outcome & Impact 成果とインパクト
数字で見るインパクト インパクト 新しくコーヒー栽培に 取り組んだ人の数 473人 トレーニングの実施回数 27回 配った苗木の本数 162,300本 25
設置した加工場 4か所
コメントで見るインパクト インパクト “収穫期に、服や薬など、家族が必 要なものを買える ” ビエンカム郡 サー村 43歳 男性 “コーヒーを植えて、その後何年も 収入を得て、家族を養えるし、森
(自然)を守ることもできるという希 望を持てるようになった ” ポンサイ郡 チョムチアン村 46歳 男性 “焼き畑を減らして、コーヒーを植え ていきたい ” ポンサイ郡 ホーアイロンソン村 男性 “家族と一緒にいる時間が増えた。 みんな顔を合わせる時間が増え た。一緒にコーヒー畑をしているた め、村を出なくてよくなった ” ポンサイ郡 ロンラット村 40歳 女性 “コーヒーの収入を、食べ物や、子ど も、バイクに使った。将来家族は変わ るだろう” ビエンカム群 フアドイ村 26歳女性 “森林を増やしたい。もし森がなかっ たら土砂崩れが多くなったり、水がな くなる” ビエンカム郡 サー村 35歳 女性 ビエンカム郡 サー村 男性 “コメとハト麦を減らして、代わりにコー ヒーを増やしていきたい。コーヒーは4、 5年たてばそのあともずっと収穫ができ て収入が手に入るから ” 26
Closing 最後に
プロジェクトを振り返って 配った苗木の本数は合計で8万本。建設した簡易加工場は4箇所、全村に精製加工や村の生活用水の貯水用のタンク、パルパー(果肉除去機)の配布など、実施したことに関す る定量的な成果を挙げることはできますが、村の人々の収入が向上したり、生活力が向上したり、そういった変化を測ることは現時点ではむずかしいというのが正直なところで す。 ですが、「あなたたち(坂ノ途中)がいるからサフロンが我々からコーヒーを買ってくれる。その保証があるから、安心して栽培にも取り組める。」という農家さんの言葉にもあるよう に、私たちの存在が農家さんたちの生産におけるモチベーションにつながってることは確かです。 プロジェクトには期間が定められていますが、コーヒーを通じて築かれた信頼と関係性は、プロジェクトの終了とともに終わるものではありません。これからも生産地とともに歩み ながら、環境に配慮した農業と持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、(買い付けを通した)コミュニケーションは続いていきます。私たちが買い続けられることで、サフロン
コーヒーも農家さんたちから買い付けを行うことができるのです。終わりのない、こうした関係性を築いていけることが、期間の定められたプロジェクトに私たちが関わることの意 義でもあります。 坂ノ途中は、環境負荷の小さな農業に取り組む農家さんたちとともにあり、そこで採れたものを消費者のもとへ届けるまでのサプライチェーンのかたちを築き、新しい価値をつく ろうとしています。最初にラオスに関わりはじめたのも、焼畑による環境負荷の軽減に取り組めないか、という課題からでした。 「There is nothing bad about coffee(コーヒーには何も悪いところがない)」 プロジェクト期間、何度も村に同行してくださったサフロンコーヒーのショーンさんが使っていた言葉です。 コメやハトムギ、家畜の牧草地のように焼畑も必要がなく、わざわざ森を拓くことなく植えられます。時間はかかるけれど、植えて、収穫できるようになれば、収入源にもなります。 環境を害することなく生産できるのがまさにコーヒーなのです。 プロジェクトの終了間際に行ったインタビューでは、参加するほとんどの農家さんから、コーヒー生産への将来的な希望を抱くコメントが多く寄せられました。 数値として測れる成果だけでなく、農家さん一人ひとりの中に芽生えた「これからも続けていける」という実感や希望もまた、このプロジェクトの成果だと私たちは考えています。 世界の生活水準が高まる一方で生じる格差。その間にあるギャップを、持続的な生産と取引を通じて埋めていく可能性をもっているのです。 28
最後に ルアンパバーンの街中から村までは、一番近い村でも3時間程度。道路は未舗装で、もっと時間がかかることも 稀ではありません。そんな中、何度も何度も村を訪れ、プロジェクトの活動を遂行してくださったサフロンコーヒー のトッドさんをはじめ、プロジェクトチームの皆さんには感謝の思いでいっぱいです。 村を回りながら行う活動。村では村長さん方をはじめ、村の農家さんたちのお宅に泊めてもらいながら、また翌 日には次の村を目指して進みます。火をおこし、手分けして調理し、みんなで食卓を囲むのが常でした。活動に とどまらず、生活をともにすることも、お互いを深く知り、関係性を築いていくことにつながっていると思います。 「支援の在り方はいろいろ。お金を配るだけの方法もあるけれど、あなた方やサフロンコーヒーがちがうのは、こ
うやってわざわざ村まで来てくれて、顔を見て、関わってくれること。これからもまたここへ来続けてください。」プ ロジェクトの村を訪問したときに、かけていただいたことばです。 私たちがサフロンコーヒーさんや農家さんたちと一緒に取り組んできた活動は、進歩は見えづらく、とても小さな 積み重ねで、とても地道なものです。実を結ぶまで時間や手間のかかることで、それなのに実を結ぶかどうかも 分かりません。 それでも村を訪れ続けるのは、そんなふうに思い、ことばをかけてくださる人がいるからなのかもしれません。 農家さんたちにとって、「こうなるといいな」「こうしたいな」の希望を実現するための一助にコーヒー生産が役 立っているのであれば、うれしいことです。 29
海ノ向こうコーヒー 未来づくり推進室 HP:https://uminomukou.com/about/future/ MAIL:
[email protected]