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農業用ダム監視を目的とした衛星SAR 干渉解析の適用性について

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December 01, 2024

農業用ダム監視を目的とした衛星SAR 干渉解析の適用性について

吉中輝彦(FOSS4G TOKAI)様による、農業用ダム監視を目的とした衛星SAR 干渉解析の適用性についての発表資料です。

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December 01, 2024
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  1. 2 0.自己紹介 • 吉中輝彦と申します。 • FOSS4G関係では、FOSS4G TOKAIの実行委員をやってま す。 • 普段は土木建築コンサルタントの仕事をしております。

    • 仕事内容は、主に農業用ダムやため池の耐震性能照査、ハ ザードマップ作成などを行っております。 • 最近は衛星SAR解析に興味を持ち、データを触っているの で、本日はOSSを使用して解析した事例を紹介します。
  2. 4 1.はじめに 衛星干渉SARをやる時のソフトは? • 何百万もする解析ソフトもあるけど、敷居が高い。 • 最近は欧州宇宙機関(ESA)の無償で使用可能なソフ トウェアSANP(GPL-3)があるため、敷居が低く なっている。 •

    衛星画像も、ESAのSentinel-1の画像が無償利用可能 であるため、画像入手も容易である。 • 本発表では、主にSANPを用いて、Sentinel-1の画像 を用いた干渉SARを行った。
  3. 5 1.はじめに ダムの役割について • ダムの主な役割は、洪水調節、水資源の確保(水道用水、工業用水、農業用水 など)、発電、河川環境の保全(流水の正常な機能維持)があり、さらには観 光資源としても活用される。 • ダムはコンクリートダム、ロックフィルダム、アースダム等など、色々な種類 がある。

    ①と②:近畿農政局HPより抜粋 https://www.maff.go.jp/kinki/seibi/sekei/ko kuei/kakogawa/kakogawa05.html ③:東海農政局HPより抜粋 https://www.maff.go.jp/tokai/noson/hyo ka/jigo/attach/pdf/20190614-13.pdf ①コンクリートダム ②ロックフィルダム ③アースダム
  4. 6 1.はじめに ダムの安全管理体制について • 安全性管理のために定期的に変形計測や測量等を実施している。また、災害時 には、定期観測データを活用することで、変状箇所抽出や不具合箇所の抽出等 が可能である。ただし ➢ 管理を行う管理者の不足 ➢

    管理者の高齢化 ➢ ダムは中山間地にあるため、観測場所に赴くのが大変 といった課題点がある。 管理手法に人工衛星データを活用できないか? 本報告では、ダムの安全性管理の省力化・高度化を図ることを目的とし、中山間 地に建設された農業用ダムを対象とした「衛星SAR干渉解析」の適用性を確認し た事例を報告する。
  5. 7 2.干渉SAR解析手法の特徴について 衛星SARデータの利点と弱点 • 衛星SARの利点を以下に示す。 ➢ 衛星SARは雲を透過して撮影を行うことができるため、天候に左右されず定 期的に観測可能 ➢ 自ら電波を照射しているため、夜間でも撮影が可能

    ➢ 複数時期のデータを用いた干渉処理を行う事で変位計測が可能 • 衛星SARの弱点を以下に示す。 ➢ 使用する波長帯によっては植生繁茂地域の適用が難しい ➢ 急傾斜地やレーダーの陰になるところでは適用が難しい ➢ 撮影したデータは画像としては分かりにくい 監視を行う施設への適用性を事前に把握しておく必要がある。 衛星SARを効率よく使用するには
  6. 8 2.干渉SAR解析手法について 衛星SARデータの適用性の確認方法 • 衛星SARデータを最大限に活用するためには、SAR干渉解析結果を行った際の コヒーレンス(干渉性)を確認する必要がある。 • 一般的にコヒーレンスは0.3以上あればSAR干渉解析による適用性はあるとされ る。 •

    各ダムの適用性の判定は、「植生が繁茂した夏期」と「植生が冷落する冬期※」 を目安としコヒーレンスの確認を行う。 夏季及び冬期共にコヒーレンスが高い場合には、衛星SAR解析 による適用が可能な施設であるといえる。 ※積雪により地表面が見えない場合 には衛星SARによる監視は難しい
  7. 9 3.検証事例について 検証事例の概要 • 本報告では、型式の異なる農業用ダム3基を対象とした。型式は ➢ Aロックフィルダム ➢ Bアースフィルダム ➢

    Cコンクリートダム とした。各ダムの位置関係図を右図に示す。 • 右図のとおり、各ダムは中山間地にあり ダム間の距離も10km以上離れた場所に 存在する。 • ダム周辺には植生が豊富であり、夏期には 植生が繁茂、冬期には積雪の影響が想定され る地域である。
  8. 10 (再掲資料) ダムの役割について • ダムの主な役割は、洪水調節、水資源の確保(水道用水、工業用水、農業用水 など)、発電、河川環境の保全(流水の正常な機能維持)があり、さらには観 光資源としても活用される。 • ダムはコンクリートダム、ロックフィルダム、アースダム等など、色々な種類 がある。

    ①と②:近畿農政局HPより抜粋 https://www.maff.go.jp/kinki/seibi/sekei/ko kuei/kakogawa/kakogawa05.html ③:東海農政局HPより抜粋 https://www.maff.go.jp/tokai/noson/hyo ka/jigo/attach/pdf/20190614-13.pdf ①コンクリートダム ②ロックフィルダム ③アースダム
  9. 11 3.検証事例について 検証手法について • 本検証では、冬期及び夏期のそれぞれ2時期の コヒーレンス(干渉性)の確認を行う。 • 両者のコヒーレンスが0.3程度以上の場合には 衛星SARによる適用性が高いと判断する。それ 未満の場合には適用性が無いと判断する。

    検証方法について • 本検証では、ESA(欧州宇宙機関)のC-バンドの 衛星SAR「Sentinel-1」のデータ使用した。 • 干渉解析を行ったソフトウェアは、同じく、ESA が開発・公開している「ESA SNAP」を用いた。 • 上記は無償で公開されているため、トライアンド エラーを行いやすい。 • 以降に解析結果を示すが、特に断りが無い場合、 背景図はSentinel-1の解析画像を使用した。
  10. 12 3.検証事例について 検証に用いた衛星データ時期 • 検証に用いた衛星データペアを冬期および夏期に分けて示す。取得衛星の時刻 は協定世界時のため、本報告では断りが無い限り協定世界時で表現する。なお、 表中には参考として日本標準時を併記した(時差は9時間である)。 時期 プライマリ画像※ セカンダリ画像※

    冬期 2023年2月9日 21時0分 2023年2月21日21時0分 (日本時間) 2023年2月10日6時0分 2023年2月22日6時0分 時期 プライマリ画像※ セカンダリ画像※ 夏期 2023年8月8日 21時0分 2023年8月20日21時0分 (日本時間) 2023年8月9日6時0分 2023年8月21日6時0分 ※干渉解析を行う際に、従来は親画像をマスタ、子画像をスレイブと表記していたが、 近年では様々な配慮のため、親画像をプライマリ、子画像をセカンダリと呼称する例 が多い。本報告においてもプライマリ、セカンダリとして呼称する。
  11. 18 4.検証結果について 時系列解析による変位速度の推定 • 「Aロックフィルダム」では前述の結果、通年0.5以上とした高いたコヒーレンスを 示すことを確認した。 • 上記より、「Aロックフィルダム」を対象とした時系列解析による鉛直変位速度推定 を行った。 •

    鉛直変位速度推定にはSBAS解析を使用して、2015年12月24日~2021年8月24日ま での約5.5年間を対象とした。 • SBAS解析手法は、LiCSBAS※を使用し行った。 ※森下遊 Nationwide urban ground deformation monitoring in Japan using Sentinel-1 LiCSAR products and LiCSBAS, Progress in Earth and Planetary Science(8巻6号,2021) プログラム:GPL-3、配布先 https://github.com/yumorishita/LiCSBAS
  12. 19 4.検証結果について 時系列解析による変位速度の推定結果 • 「Aロックフィルダム」に対してLiCSBASを用いて解析した結果を以下に示す。 ©Sentinel-1@ESA 上流側 解析期間:2015/12/24~2021/8/24 • 解析の結果、堤体部の最大沈下速度

    は「1.44mm/年」とほぼ安定した 状態である。 • また、当該ダムは竣工から40年程 度経過していること、当該ダムから も損傷や異常などの報告が無いこと から、SBAS解析の解析結果は妥当 であると考えられる。
  13. 20 5.まとめ • 中山間地に建設されている農業用ダムを対象とした衛星SAR干渉解析の適用性を確認 した結果は以下のとおり。 ➢ 本検討で対象とした3ダム地点については、堤体部のコヒーレンスが通年的に高い 状況であったため、SAR干渉解析により、堤体の変状や災害時の被災状況が遠隔 でも確認できる可能性が示唆された。 ➢

    本事例中の「Aロックフィルダム」のように、特に高いコヒーレンスを通年示すよ うな場合には、時系列解析を行い変動量の分析ができる可能性が示唆された。 • 今後の課題 ➢ 干渉解析時にはコヒーレンス以外にも、位相差分結果(2時期の変位量)も確認可 能である。そのため、時系列解析も併せて、ダム堤体部に設置された実際の変位 量観測結果と比較した解析精度の検証が必要である。 • 最後に ➢ 日本の最新の衛星SARであるALOS4が本年7月1日に打ち上げに成功している。 ALOS4はLバンドSARであるため、植生の多い日本に最適な衛星であるため、今 後はALOS4のデータを含め、より精度を高めた解析を行っていきたい。