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SREの仕事は「壊さないこと」ではなくなった 〜自律化していくシステムに、責任と判断を与えると...

SREの仕事は「壊さないこと」ではなくなった 〜自律化していくシステムに、責任と判断を与えるという価値〜 / 20260515 Naoki Shimada

2026/5/15 クラウドネイティブ会議
https://kaigi.cloudnativedays.jp/

株式会社SHIFT
AIアジャイル開発部 SRE
島田 直樹

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SHIFT EVOLVE PRO

May 12, 2026

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Transcript

  1. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 2026 / Copyright SHIFT

    Inc, All Rights Reserved. 1 〜自律化していくシステムに、責任と判断を与えるという価値〜 株式会社SHIFT 開発本部 開発事業部 AIアジャイル開発部 NAOKI SHIMADA 15 5 12:00 ~ 12:30 島田 直樹 SREの仕事は「壊さないこと」ではなくなった (センリツSRE)
  2. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 2 大阪で誕生 事業側SREになる SHIFTに参加する

    結婚&2児の父になる 誰かのSREをアシストするSREになる エンジニア経歴すごろくを 自己紹介にかえて SREを愛し、 センリツSREという名前で 執筆・登壇活動しています。
  3. 4 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 第1部 SREの役割は、変わるのか。 SREの役割は、変わるのか。

    SLOが示しているのは、単なる数値か。それとも責任か。 “判断”という言葉の中身。 判断の責任は、どこに属するのか。
  4. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 5 SREの役割は、 変わるのか。 Agentic

    AIが広がる現代、 この前提を問い直します。 もし変わるとするなら、 その変化はどこから生まれるのでしょうか。
  5. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 6 ➢ 自律的な ×

    コード生成 ➢ 自律的な × デプロイ ➢ 自律的な × テスト ➢ 自律的な × 障害検知 ➢ 自律的な × 復旧処理 Agentic AI はここまで来た Gartner Identifies the Top 10 Strategic Technology Trends for 2025 より引用 https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-10-21-gartner-identifies-the-top-10-strategic-technology-trends-for-2025 ✓ Gartnerは「2025年の戦略的テクノロジートップトレンド」の筆頭に Agentic AIを挙げている。 ✓ Gartnerの予測によれば、2028年までに企業の業務意思決定の少な くとも15%がAgentic AI によって自律的に行われるようになるとし ている。 実行は、すでに自立化
  6. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 7 空気のような “意見” ✓

    設計 ✓ コーディング ✓ デプロイ ✓ テスト ✓ ログ解析 ✓ 異常検知 ✓ 修復 全部、AIが自律的にやってしまう。 もう、SREいらないのでは。。。
  7. Copyright SHIFT INC, All Rights Reserved. 8 Copyright SHIFT Inc,

    All Rights Reserved. 本日の “問いかけ” 実行が自律化する世界で、 判断はどこに属するのか。
  8. 9 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 第2部 “判断”という言葉の中身。 SREの役割は、変わるのか。

    SLOが示しているのは、単なる数値か。それとも責任か。 “判断”という言葉の中身。 判断の責任は、どこに属するのか。
  9. 10 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. Copyright SHIFT Inc,

    All Rights Reserved. “判断”という言葉の中身。 同じ「判断」という言葉でも、 その中には異なる層が含まれています。 今日は、その違いを3つのレイヤーで考えます。
  10. 11 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 判断の三層構造 1 2

    3 責任を伴う判断 その判断が、誰のものになるかが確定する 判断の評価 その判断が妥当かを検証する 最適化の判断 目的関数の中で最良を選ぶ
  11. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 12 第1層:最適化の判断 ➢ どの手段を選ぶか。

    ➢ どう最適化するか。 ➢ どのロジックを採用するか。 与えられた目的関数の中で、 最も合理的な解を選びつづける判断。 Agentic AIが、最も得意とする領域です。
  12. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 13 第2層:判断の評価(1/2) One year

    of agentic AI: Six lessons from the people doing the work より引用 https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/one-year-of-agentic-ai-six-lessons-from-the-people-doing-the-work ✓ PoCでは動くのに、実運用で使うと微妙な出力(AI Slop=AIが吐き出す 低品質なゴミ)を出しつづけ、ユーザーの信頼を失うケースが多発している。 ✓ これを防ぐには、従業員教育と同じくらい 「エージェントの教育(評価)」に 投資する必要がある。 ➢ 出力は妥当か。 ➢ 想定通りに振る舞っているか。 ➢ 基準に照らして問題はないか。 “AI Slop” を防ぐには、評価設計が不可欠。
  13. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 14 第2層:判断の評価(2/2) 評価は設計である AIの「信頼性」をどう担保するか?SHIFTのSREがNew

    Relicで挑む「AIオブザーバビリティ」の実践 AIの「信頼性」をどう担保するか?SHIFTのSREがNew Relicで挑む「AIオブザーバビリティ」の実践|SHIFT Group 技術ブログ ✓ AIの出力を測ることはできるが、最後の判断は、人が行うという構図を表している。 ✓ 「エージェントの教育(評価)」への投資 とは、こうしたObservabilityから始まる。 ✓ この話の詳細は以下のブログをご覧ください。 判断の評価アーキテクチャモデル (登壇者作成) ➢ Evals ➢ Observability ➢ Human-in-the-loop 評価は完全には自律化できない。
  14. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 15 第3層:責任を伴う判断 ➢ その選択を採用するか。

    ➢ その水準を自分たちのものにするか。 ➢ その結果を説明できるか。 その判断が、誰のものになるかが確定する層。
  15. 16 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 判断の三層構造(再掲) 1 2

    3 責任を伴う判断 その判断が、誰のものになるかが確定する 判断の評価 その判断が妥当かを検証する 最適化の判断 目的関数の中で最良を選ぶ
  16. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 17 なぜ評価が必要か 最適化は、 正しさを保証しない。

    The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation より引用 https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai ✓ 回答企業の62%がAgentic AIを実験中。 しかし、スケーリング(全社展開)できているのは、全体の23%に留まる。 ✓ 多くの企業が “パイロットの壁” に直面している。 ➢ AI は、自身の出力を客観的に評価することが難しい ➢ 評価モデルは、ハルシネーションを吐き出すこともある ➢ バイアスは、再生産され、しかもそれが高速化している
  17. 18 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 第3部 SLOが示しているのは、単なる数値か。それとも責任か。 SREの役割は、変わるのか。

    SLOが示しているのは、単なる数値か。それとも責任か。 “判断”という言葉の中身。 判断の責任は、どこに属するのか。
  18. 19 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. Copyright SHIFT Inc,

    All Rights Reserved. SLOが示しているのは、 単なる数値か。 それとも責任か。
  19. 21 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 99.9% と 99.99%

    の違い SLOレベル 月間ダウンタイム許容時間 年間ダウンタイム許容時間 90% 3日 36.5日 99% 7時間12分 3.65日 99.9% 43分12秒 8.76時間 99.99% 4分19秒 52.56分 99.999% 26秒 5.26分 99.9%は1ヶ月に約43分の停止を許容する 99.99%は1ヶ月に約4分の停止を許容する 目標値が変わると、前提が変わる
  20. 23 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. エラーバジェットは何を問うのか。 ここに、組織の立場が現れる。 ➢

    まだリリースを続けるのか。 ➢ 改善に軸足を移すのか。 ➢ どの速度で失敗を消費するのか。
  21. 24 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. AIは合理的な水準を提示できる AIは、妥当な目標値を提示できる。 ➢

    AIは、妥当な目標値をデータから導くことができる ➢ でも、それはときに、平均収束的な目標値かもしれない ➢ それが、自分たちに適切なのか否かは、自分たちで責任をとらないといけない
  22. 27 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. その判断の責任 その判断の責任は誰が引き受けるのか。 その基準を採用するのは、人

    その水準でいく、と決めるのも、人 その結果に責任をもち、説明するのも、人
  23. 29 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 第4部 判断の責任は、どこに属するのか。 SREの役割は、変わるのか。

    SLOが示しているのは、単なる数値か。それとも責任か。 “判断”という言葉の中身。 判断の責任は、どこに属するのか。
  24. 30 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. Copyright SHIFT Inc,

    All Rights Reserved. 判断の責任は、どこに属するのか。 その境界に立つのは誰か。 自律化が進む世界で、 その位置を見つめ直します。
  25. 31 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 境界 実行と判断の間に、境界がある。 実行

    責任を伴う判断 Agentic AI時代の判断の層と境界 ➢ 目的関数の中で最良を選ぶ ➢ コード生成・デプロイ・障害検知など ➢ どの選択肢が合理的か ➢ どの順序が効率的か ➢ その水準を採用するか ➢ その結果を引き受けるか ➢ 出力が妥当か検証する ➢ Evals・Observability・Human-in-the-loop 最適化の判断 境界線 : 責任の確定で引かれる (変動する) 判断の評価 人 Agentic AI
  26. 32 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 境界線はどこに引かれるか 境界線は「責任の確定」で引かれる。 ➢

    境界は、ロジックではなく、 責任の確定で引かれる。 ➢ だから、責任の確定の仕方次第で 境界線がどこに引かれるかは変わる。
  27. 37 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. エピソード① ~ 誰に説明するか

    が変わった話 プロダクト直結型SRE から 機能単位型SRE に転身した。 同じ技術をやっていた。変わったのは「誰の前に立つか」だけだった。 プロダクト直結型SRE 機能単位型SRE SREs「障害が発生したぞ!」 プロダクトオーナーやうユーザーで直接説明 SREs「障害が発生したぞ!」 複数チームのリードに説明 責任の距離がとても近い 責任の届け先が変わった 技術は同じ。 説明する相手が変わると、判断の質が変わる。
  28. 38 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. エピソード② ~ 「SREの仕事じゃない」が核心だったという話

    「それはあなたの仕事じゃないよ?」 それでもやるんです 「誰も引き受けていない責任が、そこに落ちているから。」 内側にいると、境界の曖昧さには気づけない。 新機能追加のリスク提示
  29. 39 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 責任の帰属範囲 × SREの立ち位置

    さまざまな現場を横断してきたからこそ、この構造が見えた。 Platform エンジニアリング Embedded SRE Observability SREコンサル FinOps CCoE DORA
  30. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 40 立ち位置が変わると、責任の質も変わる 近いほど、直接的な責任 遠いほど、構造的な責任

    どちらが正しいかではない。 どの責任を引き受けているかの違い。 あなたは普段、どんな責任を引き受けていますか? ぜひ、SHIFTのブースに立ち寄って、 お話を聞かせて下さい。 この分類にあてはまらないぞ、という方も大歓迎です!
  31. 41 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 下垂体卒中 ~個人的なエピソード~ 壊れない体を取り戻そうとしました。

    でも、医師は 「元に戻すのではなく、今の体で どう生きるかを考えましょう」 と言いました。
  32. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 42 重心はどう移動したか。 “壊れないこと” から、

    “壊れ方” を設計するへ。 信頼性の基準を定義し、 その結果と向き合う。
  33. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 43 判断の責任は、 どこに属するのか。 AIは加速させる。

    舵を取る位置は、残る。 壊れないことを誇るのではなく、 壊れ方を設計する覚悟を、持てるか。