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LayerXにおける業務の完全自動運転化に向けたAI技術活用事例 / layerx-ai-js...

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June 02, 2025

LayerXにおける業務の完全自動運転化に向けたAI技術活用事例 / layerx-ai-jsai2025

LayerXが目指す「業務の完全自動運転」の実現に向けた、「バクラク」やAI・LLM事業部の「Ai Workforce」での実際の取り組み、今後の課題と展望を紹介しました。

タイトル:『LayerXにおける業務の完全自動運転化に向けたAI技術活用事例』
セッション:[1G3-IND-1] インダストリアルセッション1
日時: 2025年5月27日(火) 14:20 〜 14:40 E会場 (G会場 会議室1002)

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June 02, 2025
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  1. © LayerX Inc. 2 バクラク事業部 AI-OCRグループ Tech Lead/ 機械学習エンジニア 経歴

    • 2019/04 京都⼤学⼤学院 ⼯学研究科 修⼠課程修了 • 新卒では、事業会社でタクシー配⾞アプリに関する機械学 習システムの構築や、ライブストリーミングサービスにお ける推薦システム構築に携わる • 現在 ◦ 株式会社LayerX AI-OCRグループ Tech Lead ◦ バクラク事業部において、AI-OCRの改善や 新規機械学習システムの構築を担当 ◦ Kaggle Competitions Grandmaster ⾃⼰紹介 島越 直⼈(Naoto Shimakoshi) @nt_4o54
  2. 5 © LayerX Inc. 「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに、AI SaaSとAI DXの事業を展開 事業紹介 バクラク事業 企業活動のインフラとなる業務を

    効率化するクラウドサービス Fintech事業 ソフトウェアを駆使したアセットマネジ メント‧証券事業を合弁会社にて展開 AI‧LLM事業 社内のナレッジやノウハウをデータ ベース化するAIプラットフォーム AI SaaSドメイン AI DXドメイン
  3. © LayerX Inc. 6 LayerXについて ⽇本の労働需給ギャップは深刻 2040年に労働需給ギャップ 1100万⼈ 出所: リクルートワークス研究所

    Works Report: 未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる ⽇本全体で必要な⽣産性 +20%
  4. © LayerX Inc. 8 仕訳データ 振込データ ⼊⾦データ 発注 請求 発注

    請求 バクラクシリーズの全体像 バクラクは、企業取引の前段となる 稟議の統⼀ と 債権‧債務の⼀元管理が可能。 従業員‧経理のそれぞれが係る業務領域において、なめらかな業務連携により企業経営を加速させます。 取引先  債権管理 債務管理(⽀出管理) 銀⾏ 会計ソフト 請求書 処理 経費 精算 振込 稟議 法⼈ カード 請求書 発⾏ 仕訳 ⼊⾦消込 仕訳 従業員 経理
  5. © LayerX Inc. 9 バクラクのAI機能群 業務に⾼頻度で潜むアナログな⼿間 • 請求書を1枚1枚スキャンする⼿間 • 領収書をシステムに⼿⼊⼒する⼿間

    • 仕訳を作成する⼿間 • カード明細と領収書との突合の⼿間 • 書類の情報を⼊⼒する⼿間 • 請求書をAIが⾃動分割して取り込み • 領収書のデータをAIが⼊⼒ • AIが過去に学習した仕訳を⼊⼒ • 領収書とカード明細をAIが紐付け • AIが書類種別を判定してラベル付け AIにより、アナログな⼿間を無くしていく
  6. 10 Confidential © 2025 LayerX Inc. 出典: 3M. (2024). 3M

    2023 Annual Report. U.S. Securities and Exchange Commission. https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/66740/000130817924000309/mmm4298631-ars.pdf
  7. © LayerX Inc. 11 多くのお客様に共通する「⽂章処理の課題」 契約書やレポート作成時に、複数の資料を参考しているけど、フォーマットや 構成がバラバラで欲しい情報を探すのが大変… 手作業での コピー&ペーストも面倒くさい… 契約書が社内規定にあっているかのチェック業務に時間がかかっている。

    早く案件を進めたいのに… 過去資料検索が大変。結局ファイルを開いて中を見てみないとわからない。 タグを付けるルールにしたけど誰も付けてくれない… “知的だが単純な作業”に多くの時間を取られている(疲弊している) Ai Workforceのターゲット
  8. © LayerX Inc. 16 ⽇常業務の中で”⾃然に”AIを活⽤いただけるような体験を提供 Bakuraku AIの事例 写真を撮影し、まとめて アップロードするとAIがデータ⼊⼒ 請求書をアップロードした瞬間に、

    AIが過去に学習した仕訳を⼊⼒ 領収書をアップロードした瞬間にAIが カード明細情報と照合適切な明細と紐付け 複数枚まとめてスキャンすると、 PDFファイルをAIが⾃動分割 あらゆる種別の書類をまとめてアップロード すると、AIが書類種別を判定し、ラベル付与
  9. © LayerX Inc. 18 最終的にお客様が欲しいのは、「誰に対して」「いつ」「いくら⽀払うのか」といった情報。 同じ書類であっても、お客様の運⽤によって変わることがあるため、過去の⼊⼒履歴を活⽤。 パーソナライズドAI-OCR (推薦モデル) Bakuraku AI事例

    (Level 1からLevel 2へ) 会社名が欲しい or 担当者名が欲しい 税込⾦額が欲しい or 税抜⾦額が欲しい 税抜⾦額 税抜⾦額 税込⾦額 会社名 会社名 担当者名 過去の⼊⼒履歴 お客様が欲しい値を推薦 税抜⾦額 会社名
  10. © LayerX Inc. 24 製造・自動車 ・法令、論文、規制情報の調査 ・機微情報の自動マスキングによる情報共有 ・製品が法令や規格に適合するかどうかのレビュー 金融 ・融資稟議書のドラフト作成、情報転記、内容レビュー

    ・取引先のリスクアセスメント、監査 ・広告ガイドライン審査 ヘルスケア ・法令 (薬機法) 、論文、規制情報の調査 ・社内プロジェクト (基礎研究、非臨床試験、治験等) の整理と共有 不動産 ・契約書からの情報抽出、情報転記、システム連携 ・法令、規制情報の調査 ・申し込み情報、アンケート情報の内容レビュー、情報転記 ⾦融や製造、ヘルスケア等の業界における様々な⽂書処理業務が中⼼。 Ai Workforceの主なユースケース ※トライアル中のケースも含みます。 Ai Workforceのユースケース
  11. © LayerX Inc. 25 Ai Workforceは情報のハブ 専⾨性の⾼いドキュメントワークで扱うファイルを集約‧分析。⾼品質なデータを蓄積することで、業務 の⾃動化や可視化、検索の効率化を実現 社内情報の連携 AIワークフローで

    解析・整理 構造化して 情報集積 情報共有の加速 業務効率化 ドラッグ&ドロップ 外部ストレージ連携 高品質なレビュー済みデータ を蓄積 (Human in the loop) 未整理な フォルダ・ファイル群 既存の業務を分解し、 LLM-nativeに再構成 (出典)Jin, Bowen, et al. "Long-Context LLMs Meet RAG: Overcoming Challenges for Long Inputs in RAG." arXiv preprint arXiv:2410.05983 (2024). Ai Workforceの価値
  12. © LayerX Inc. 26 • 数百ページあるアニュアルレポートから、アウト プットに必要な箇所を特定 • 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算 書などの専⾨性の⾼い「表」の情報から項⽬を抽

    出し、⾃社が定める勘定科⽬名称に分類 • 習熟までに時間を要した業務を、平準化 アニュアルレポートから財務諸表を抽出し計算 数百ページを、数分で 「表」からの読み取り • 処理結果を、⾃社で作成したExcelフォーマットに 出⼒ • 後続業務への連携を滑らかに Excelフォーマットに出⼒ ⼤量資料から、必要ページを特定し 欲しい情報のみを抽出 勘定科⽬を⾃社仕様に整 理し、計算して出⼒ 出典:2023 3M Annual Report Ai Workforceの事例①
  13. © LayerX Inc. 27 • ポリシーに準じたリスク観点などを事前に設定す ることにより、その観点を踏まえた要約‧重要箇 所の抽出 • 参照元も確認可能なため、レビューを効率化

    契約書レビュー ⾼度な契約書のリスク確認を、効率化 リスク観点の整理 • 契約書レビューにおいては「ポリシーにてらせば 容易に判断可能なよくあるもの」「法務部の⾼度 な判断が必要とされるもの」など、難易度も様々 • 前者について、事業部側でAi Workforceを使った 簡易な事前確認ができるようにすることで、法務 部の負荷軽減を図る 法務確認前の、事業部での事前確認 契約書 レビュー観点を 事前設定 レビュー画⾯で レビュー 観点や考慮事 項を 事前設定 契約書 観点が整理された内容 Ai Workforceの事例②
  14. © LayerX Inc. 29 AIのオンボーディングが課題 ⾃動運転化に向けた今後の課題 どのようにして各々の業務フローをAIに学ばせるか、それをワークフロー化するかが課題 マニュアル型 • 標準化された業務の⼿続

    きを習得 事例分析型 • インプット‧アウトプッ トの事例から⼀般的なプ ロセスを発掘 フィードバック型 • ⼈のレビュー‧修正に基 づき改善 内省型 • ⾃分で試⾏錯誤して改善 AI⾃⾝がやった事例から学ぶ ⼈がやった事例から学ぶ AI⾃⾝で学習する ⼈間から教わる
  15. © LayerX Inc. 30 マニュアル型 ワークフロー作成⽅法 マニュアル型 事例分析型 フィードバック型 内省型

    ⼈間によって標準化された⼿続きを定義する 個別のユースケースや⼀般的なものには対応できるが、より広範に広げようとすると⼈がボトルネック • バクラクのお客様は社内のPDFドキュメントやエ クセルなどで、経費精算のルールなどを従業員に 周知しているケースがある。 • 頻繁に経費精算するわけではない従業員にとって は、わざわざドキュメントを⾒に⾏かない。 • ルールを⼈⼿でワークフロー化することで、 従業員がルールを理解する⼿間を減らすことがで きる。 ワークフロー化 社内ドキュメントで 規定されたルール
  16. © LayerX Inc. 31 マニュアル型 ワークフロー作成⽅法 マニュアル型 事例分析型 フィードバック型 内省型

    ⼈間によって標準化された⼿続きを定義する 個別のユースケースや⼀般的なものには対応できるが、より広範に広げようとすると⼈がボトルネック • Ai Workforceでは個別のお客様の業務フローに Deep DiveしてAIワークフローを⼈⼿で作成して いる。 • 最初のワークフローを構築するのに負担がかか り、開発速度のボトルネックになる。 • モジュールを複数作り、⼈が⾃然⾔語でワークフ ローを⾃動構築するという取り組みもしている が、⾃然⾔語で業務を表現する必要がある。
  17. © LayerX Inc. 32 フィードバック型 ワークフロー作成⽅法 ワークフローの⼀部にフィードバックメモリを持たせる 評価の設計や⻑期メモリの設計などが重要になるが、⼈間が評価を元に⼈⼿で直すのは負担 DBに格納 マニュアル型

    事例分析型 フィードバック型 内省型 FBループの結果を 次の予測に活かす 評価 • ⼀般的な構造化データのフィードバックだけでな く、⾃然⾔語のフィードバック、⾏動ログなども ⽤いてAIをオンボーディングしていく。 ◦ 経費精算の差し戻しでの経理の⽅のコメン ト、AIの出⼒をそのまま受け⼊れて経費精 算を完了させたかなど • 実験段階では、評価を適切に設計し、フィード バックを元にワークフローを修正していくことも 重要。
  18. © LayerX Inc. 33 事例分析型 ワークフロー作成⽅法 インプット‧アウトプットの事例からAIがワークフローを⾃動で⽣成 過去の経費精算ログ  ? 承認プロセスを復元

    マニュアル型 事例分析型 フィードバック型 内省型 • 過去の経費精算ログ、差し戻しデータなどから どういうルールでの承認プロセスが⾏われている のかなどを再現。 • 万単位のお客様に届けるためには⼈⼿で承認の ワークフローを会社ごとに作成するのはスケール しないため、実際のログから再現していくことが 重要。
  19. © LayerX Inc. 34 内省型 ワークフロー作成⽅法 いわゆるAI Agent。AIが⾃分で試⾏錯誤して動的に改善する 既存のLLMを使うだけでは、まだまだ実⽤レベルでは不確実性が⾼いケースもある マニュアル型

    事例分析型 フィードバック型 内省型 • 既存のLLM APIは経理業務を⾏うように最適化さ れていないため、まだまだ予期しない⾏動をする ことが多い。 ◦ 予算を超えたホテルをリストアップしてし まう ◦ メールからの領収書取得に失敗してしまう • Tool Useも含めた強化学習等を⾏い、ドメインか ら逸脱しない⾏動をするように制御する。
  20. © LayerX Inc. 35 内省型 ワークフロー作成⽅法 いわゆるAI Agent。AIが⾃分で試⾏錯誤して動的に改善する 既存のLLMを使うだけでは、まだまだ実⽤レベルでは不確実性が⾼いケースもある マニュアル型

    事例分析型 フィードバック型 内省型 • Ai Workforceを運⽤する中で事前に定義できない⾮定型業務などが存在することが分かった。 • 状況に応じて⾏動をするべきアクションを動的に変える必要がある。 • バクラクと違い達成したい⽬標‧ドメインがお客様によって異なるため強化学習的な難易度も上がる。
  21. © LayerX Inc. 37 バクラク‧Ai Workforce共に事例分析型、内省型の需要が⾼まっている 展望 • ⼤域的なユースケースを抑えるだけでは⾃動化レベルが上がらない •

    より個別的なユースケースに「素早く」、「⾃動で」対応していくためには、事例分析型で ワークフローを⾃動⽣成できる必要がある。 • Agentの不確実性を減らし⾃律的にするためには、内省型で強化学習する必要がある。 • 実際には、フィードバック型 x 事例分析型 の組み合わせなども必要になる。
  22. © LayerX Inc. 39 LayerX は “業務の完全⾃動運転” の実現を⽬指す まとめ •

    まだLLMでは解けない、もしくは扱いにくいユースケースに対しては 既存の機械学習技術を⽤いて開発。 • 今後は業務の完全⾃動運転を達成するために、 LLMのAPIなどを⽤いたワークフロー‧Agent開発の加速化と 事例分析型‧内省型ワークフローの研究開発にも注⼒していく。