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ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #3 財務分析の基本

ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #3 財務分析の基本

次のオンラインイベントの投影資料です。

ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #3 財務分析の基本
https://studyco.connpass.com/event/348728/

Takahiro Esaki

April 10, 2025
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Transcript

  1. ‐ 2 ‐ ‐ 2 ‐ 講師紹介 【経歴】 ◼業務/ITコンサルティング •

    基幹システム運用保守業務改革 • 基幹システム刷新PMO • サプライチェーン最適化/需要予測最適化 • データ分析システム刷新PM/アーキテクチャ設計 など ◼新規事業開発・アジャイル開発・ローコード開発 • クラウドソーシングプラットフォームサービス • アパレルプラットフォームサービス • 海外クリエーター向けe-Learningサービス など ◼CSM (カスタマーサクセスマネージャー) • AI & Cloudソリューションの活用促進 • コミュニティ活動・アドボケート活動 など ※本講演・本資料は所属組織を代表するものではございません ※発表者は財務/金融の専門家ではなく、個人的な勉強目的で調査した内容を共有します 江﨑 崇浩 (Takahiro Esaki) X @t_esaking LinkedIn ファイナンスの研修やクライアント調 査などで有価証券など分析 ※FASなどでガチのDDやバリュエー ションをしていたわけではない 会社設立や資金調達に向けた計画策定 をしようとしていた 社内向けにコーポレートファイナンス の勉強会を実施
  2. ‐ 3 ‐ ‐ 3 ‐ 勉強会の目的 ◼ 目的 •

    コーポレートファイナンスを基軸に、「投資家」「経営層」の視点から企業活動を学んでいく ◼ なぜ? • ITの世界で仕事をする上で、やはりファイナンスリテラシーは大事 ✓ 数多のITプロジェクトは企業や政府にとってはIT投資 ✓ 数字的な裏付けがないとプロジェクトの実施判断/評価ができない • ITエンジニア個人にとってもファイナンスリテラシーを持った方が有利 ✓ 経営戦略・ビジネス環境の変化に対して自分の考えを持てる、大事な情報にキャッチアップできる ✓ クライアント、Manager-Upとのコミュニケーションが円滑になる、共通の話題で話せる ✓ (一般的に)自身もManager-Upになれやすいorなってからもお金の話で苦労しにくくなる ✓ キャリアアップの可能性が広がる。他社だけでなく自分の組織の財務状況も理解できるようになる ◼ 目指すところ • コーポレートファイナンスを「完全に理解した(気になる)」 ✓ 一度や二度話を聞いただけで習熟するのは無理。「ワタシハファナンスチョットデキル」は至難な道 ✓ 情報量が多くて簡単ではないので、すぐ忘れたり分からなくなったりするのは普通 ✓ ベースとなる概念やキーワードに触れながら、興味を持ってアンテナを張れるようになるのを目指す
  3. ‐ 4 ‐ ‐ 4 ‐ レベル コンテンツ Entry Foundat

    ion Practice 学習のロードマップ ファイナンスの 全体像 ファイナンスに 必要な会計 ファイナンス分析 手法 現在価値 (PV) 資本コスト (WACC) 事業価値の算出 (DCF法) 株主市場での評価 M&A 株主還元政策 /IR政策 ◼ EntryレベルからFoundationレベルを勉強会で取り扱う予定 ◼ スコープや内容は適宜様子を見ながら調整します 本日のスコープ
  4. ‐ 6 ‐ ‐ 6 ‐ ファイナンスの全体像 ◼ 財務三表は次のようなスコープの活動結果を示すための資料 事業

    (資産) 有利子負債 (Debt) 株主資本 (Equity) 資金の運用 資金の調達 企業 投資先/取引先 投資 リターン <投資活動> 債権者 株主 投資 リターン 投資 リターン <調達活動> B/S P/L (& C/F) P/L (& C/F) このチャートはしっかり覚えましょう!
  5. ‐ 7 ‐ ‐ 7 ‐ B/Sとは ◼ B/S:特定時点の「資産」「負債」その差額である「純資産」の財政状況の表 •

    「資産」「負債」はそれぞれ「流動」「固定」で分類 参考:https://cpa-program.com/kaikeikansa/kaikei/bspl/
  6. ‐ 8 ‐ ‐ 8 ‐ P/Lとは ◼ P/L:年間を通した「収益」「費用」から成る企業の経営成績の表 •

    「収益」「費用」はそれぞれ、「本業か、本業でないか」で分類(営業/非営業) 参考:https://cpa-program.com/kaikeikansa/kaikei/bspl/
  7. ‐ 9 ‐ ‐ 9 ‐ C/Fとは 区分 説明 営業活動によるC/F

    本業の事業活動によって稼ぎ出したC/F (+だと)事業の稼ぎ力を示す 投資活動によるC/F 企業の設備投資・売却によるC/F (+だと)設備、有価証券などの売却収益 (ーだと)設備投資/有価証券購入を実施している 財務活動によるC/F 資金調達および返済によるC/F (+だと)デット/エクイティによる資金調達をしている (ーだと)借入返済、自社株買い、配当 ◼ C/F(キャッシュフロー):企業活動によって生じるキャッシュの出入り • 「キャッシュインフロー」ー「キャッシュアウトフロー」 ◼ C/F には次の3つの区分で考える
  8. ‐ 10 ‐ ‐ 10 ‐ Q. なんでC/Fが大事なの? P/Lでよくない? ビジネスは「売掛金」「買掛金」が基本なの

    で、サービス授受と現金授受が非同期 • 黒字倒産することもある • 赤字経営でも全然問題ないケースもある • 例:A社のキャッシュフロー経営 ◼ A. Cash is King. • 大きな利益=お金持ちではない。また、利益が大きいことが良いとは限らない ◼ A. ファイナンスでは会計上の利益より、将来生み出すキャッシュが大事 • 利益は「意見」、キャッシュは「事実」 • 例:「減価償却」とは「事実」ではない • 例:T社のバリュエーション ※詳しくは、DCF法による事業価値の算出で確認 現在キャッシュフローが強い→事業存続性が高くなる 将来キャッシュフローが強い→事業価値が高くなる キャッシュの重要性について は、「現在価値」の話が出て きたらより理解が進むと思い ます
  9. ‐ 12 ‐ ‐ 12 ‐ 演習①:財務三表へのアクセス <ケース> ◼ あなたは「日本製鉄」を知るために、さくっと財務情報を分析しようとしています

    <演習> ◼ 日本製鉄の財務三表を取得して、分析できるよう準備してください • 手段・形式は何でも良いです ◼ 制限時間:1分
  10. ‐ 13 ‐ ‐ 13 ‐ 代表的な財務三表へのアクセス手段 ◼ 慣れていないと、財務三表へアクセスするだけでも迷ったり疲れたりする •

    代表的な手段として、次のようなものをご紹介 ◼ 古典的な手段 • 当該企業のIRサイト • EDINET (金融庁が提供するシステム) ✓ https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/weee0030.aspx • SPEEDA ※有料 • 日経テレコン※有料 ◼ 個人的なオススメの手段 • バフェットコード(一部、無料利用可能) ✓ https://www.buffett-code.com/ • すべての明細が記載されているとは限らないので注意(代表的な項目に絞っている模様) 業務でレポートを作成するわけでもないなら、一次ソースでなくとも、 3rdパーティの視認性の良いWebサービスを活用するのがおすすめ
  11. ‐ 14 ‐ ‐ 14 ‐ 演習②:財務三表の読解 <ケース> ◼ あなたは次の日本製鉄の財務情報にアクセスできました

    • https://www.nipponsteel.com/ir/pdf/nipponsteel_jp_br_2023_all.pdf • 有価証券報告書 P.167 - (【財務諸表等】で検索するとすぐヒットする) ◼ まずは、B/SとP/Lを読み解いて分析しようとしています <演習> ◼ B/SとP/Lを自分なりに読んでみてください ◼ その際、次の観点で読み解きをチャレンジしてください • B/Sとは何か、P/Lとは何なのか • 分析評価するにあたって、どのような情報に着目したいか • そもそも、どこに何が書いてあるのか ◼ 制限時間:3分
  12. ‐ 15 ‐ ‐ 15 ‐ 演習②:財務三表の読解 (コメント) ◼ いきなり単一企業の単年度/単四半期だけ読んでも評価が難しい

    • 時間軸:前年、前年の同一四半期 と比べてどうか? • 業界軸:同一業界の中で、どのような特徴があるか? ✓ 当該企業/業界のスタンダードを理解しておく必要 ◼ 目的を持って読まないと、ただの数字の羅列になる • 例:投資家「今後の事業成長性は? 事業の強み・弱みは? 実力に対して現在の株価は? 投資リスクは?」 ◼ 分析指標を確認しないと判断が難しい • 数字が大きくてスケールも違ったりするので、 ファイナンス分析手法の基礎を理解しておくのが大事(次のテーマ) ◼ 他の人の「評価」も分析する • 決算報告や中期経営計画のふりかえり (経営陣が数字をどう捉えて、どうメッセージしているか) • 証券アナリストのレポート • 株価市場
  13. ‐ 17 ‐ ‐ 17 ‐ 財務分析指標 売上高営業利益率 ROA 総資産事業利益率

    ROI 自己資本利益率 ROIC 投下資本利益率 自己資本比率 財務レバレッジ 固定比率 損益分岐点比率 PBR 株価純資産倍率 PSR 株価売上高倍率 PER 株価収益率 CCC キャッシュ コンバージョンサイクル WACC 加重平均資本コスト EBITDAマージン 配当性向 バフェット指標 ◼ 財務分析にはたくさんの指標がありますが、どんなイメージ持っていますか? 出典:『魔法少女まどか☆マギカ』 わけがわからないよ・・・ どうして人間はそんなに、 難しい言葉ばかり使おうとするんだい?
  14. ‐ 18 ‐ ‐ 18 ‐ 原因 結果 財務分析の基本 収益性

    生産性 いかに儲かっているか? (売上の内、利益はどれ程残すか?) いかに効率的に稼ぐか? 安全性 成長性 いかに業績が伸びているか? いかに安定しているか? (余裕があるか?) 上記の中でも、「収益性」と「生産性」が大事 ◼ 基本:各種指標は、次の4つの性質にブレイクダウンされる
  15. ‐ 19 ‐ ‐ 19 ‐ ROA ROA = 利益

    総資産 = 営業利益 売上高 × 売上高 総資産 収益性 生産性 営業利益率 総資産回転率 • 利益のところは当期 純利益にしたりする こともあるみたい 日本の上場企業の平均:ROA=5%(営業利益率8%*総資産回転率6%) ◼ ROA(Return On Assets):総資産利益率 • 「収益性」「生産性」の指標の王様。総合力を表すと言われる • 利益率が高くても、回転率があまりに 低いと困る • 例:総資産1億円で、100万円仕入れ て200万円で売るビジネス。だけど、 年間で1回しか売れない場合 • 利益率 = 1 / 2 = 50% • 回転率 = 2 / 100 = 2% • ROA = 1% * 単位:million
  16. ‐ 20 ‐ ‐ 20 ‐ ROE ROE = 当期純利益

    自己資本 = 当期純利益 売上高 × 売上高 総資産 × 総資産 自己資本 収益性 生産性 売上高当期純利益率 総資産回転率 財務レバレッジ 2014年伊藤レポート「最低限 8%を上回る ROE を達成することに各企業はコミットすべき」 一方、シティ証券G取締役副会長コラム「日本ではROEが過大評価されている」 安全性の指標 (=自己資本比率) の逆数 ◼ ROE(Return On Equity):自己資本利益率 ◼ 「株主から集めた資本でどれくらい利益をあげているか?」 この3要素に分けるこ とをデュポン分析と呼 ぶらしい
  17. ‐ 21 ‐ ‐ 21 ‐ 補足:財務レバレッジのイメージ 財産は+1000万! 資産 (1000)

    株 (1000) 資産 (+1000) 株 (+1000) 一年後、 事業成功 資産 (1000) 資産 (+1000) 株 (+1000) 借入 (500) 株 (500) 一年後、 事業成功 資産 (1000) 借入 (500) 株 (500) 起業家兼株主として、 財産1000万の内、1000万すべ てを自己株式として事業に投資 資産 (1000) 株 (1000) 起業家兼株主として、 財産1000万の500万だけ自己株式 として投資。事業に必要な残り500 万は銀行から借り入れ 財務レバレッジ =1.0 財務レバレッジ =2.0 例:事業資産として1000万円必要なビジネスを始めて成功したケース ※単純化のために、税金や利子などについては考慮外としている じゃあ財務レバレッジをガンガン高くすれば・・・というのは無理 財産は+1000万! 残していた財産の500万は好きに 使えるので、別の事業に投資して もっと増やせる可能性! ◼ 「財務レバレッジ」が高いと、株主にとってどんなメリットがあるのかを確認 • 他人資本(借入)を増やすこ とで事業規模や収益性を拡大 • テコの原理のように、小さな 力で大きな成果を狙う
  18. ‐ 24 ‐ ‐ 24 ‐ ファイナンスの全体像 ◼ 財務三表は次のようなスコープの活動結果を示すための資料 事業

    (資産) 有利子負債 (Debt) 株主資本 (Equity) 資金の運用 資金の調達 企業 投資先/取引先 投資 リターン <投資活動> 債権者 株主 投資 リターン 投資 リターン <調達活動> B/S P/L (& C/F) P/L (& C/F) このチャートはしっかり覚えましょう!
  19. ‐ 25 ‐ ‐ 25 ‐ レベル コンテンツ Entry Foundat

    ion Practice 次回の予定 ファイナンスの 全体像 ファイナンスに 必要な会計 ファイナンス分析 手法 現在価値 (PV) 資本コスト (WACC) 事業価値の算出 (DCF法) 株主市場での評価 M&A 株主還元政策 /IR政策 ◼ 今回のふりかえりも軽くしつつ、次のテーマも柔軟にやっていこうと思います 次回のスコープ 次回のスコープ
  20. ‐ 26 ‐ ‐ 26 ‐ 参考書籍 https://amzn.asia/d/2u2fUsi https://amzn.asia/d/40U0ak4 コーポレートファイナンス実践講座

    (中央経済社) コーポレートファイナンス 戦略と実践 (ダイヤモンド社)