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B2C&B2B&社内向けサービスを抱える開発組織におけるサービス価値を最大化するイニシアチ...

 B2C&B2B&社内向けサービスを抱える開発組織におけるサービス価値を最大化するイニシアチブ管理

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July 03, 2025
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  1. 自己紹介 3 -PROFILE- Tatsuya Fukui (@ttyfky) CTO @ Belong Inc.

    (2020/06~) TSE @ Google (2018/07~) SWE @ Goldman Sachs (2013/04~) Belong 釣り部部長 (Chief Tsuri Officer) ©Belong Inc.
  2. 5 携帯関連の新規事業を目的に 伊藤忠商事の 100%子会社(間接保有 含む)として設立 セキュリティーなど独自の基準をクリアし た中古品をアジアや北米など世界中か ら低価格で仕入れが可能 会社名 株式会社Belong

    会社設立 2019年2月 所在地 東京都港区赤坂6-4-10 赤坂ZENビル 4F オペレーション センター 神奈川県座間市広野台2丁目10番10号 GLP座間 3階 社員数 社員数:259名(派遣社員含む)( 2025年3月末時点) 資本金 1億円 日本最大級規模のオペレーションセ ンターで、選抜されたスタッフが丁寧 に管理、検品を実施しています。 伊藤忠グループの安心ネットワーク 自社運営のオペレーションセンターで品質担保 会社概要
  3. リユースデバイスの商売に なぜエンジニアリングが必要なのか? 8 ©Belong Inc. 01. 年間 100 万台以上の取り扱い 02.

    個別管理の難しさ 03. 価格の流動性 04. 利益最大化のための動的差配 model storage battery_health grade iPhone 13 128GB 97 A iPhone 13 128GB 83 B iPhone 13 128GB 90 C 国内 vs. 海外 個人 vs. 法人
  4. 生成 AI の活発な利活用 10 ©Belong Inc. Belong は比較的早い段階から、 生成AI の利用やプロダクトとの連携を試みている

    詳しくは以下 : Workflow から Agent へ ~生成AIアプリの成長過程とアプローチ ~ 2025.06.18 AI Engineering Summit
  5. 1. アイデアの収集・発掘 • 企業戦略上やりたいこと • プロダクトマネージャーなどが追加したい機能を提案 • 顧客からのフィードバック • エンジニア視点で改善点や非機能要件を提案

    2. アイディアの評価・選定 • 戦略適合性 / 収益性 / 実現可能性 などを評価 3. 投資会議 4. 開発~リリース 一般的なイニシアチブの決定方法 13 ©Belong Inc.
  6. 基本的には「既存の機能の安定利用を優先する」という考え方 開発優先順位ガイドライン 14 ©Belong Inc. Priority Issue Type Description 1

    Security Issue Security is the most important matter. Security issue can may cause data violation and reputation problem. 2 Data-loss prevention Data loss is one of the worst issue that may cause business continuous concern, and reputation issue. 3 Availability, Incident Corrective Actions Service unavailability should require high attention. 4 Regression Issue, Functional Bug Things that worked before, or working unintended way. 5 Performance Improvement Performance of existing functionality directly impacts to UX. 6 Issue prioritized by special request Something requested by key customer or management. 7 System Monitoring/Alerting Monitoring or instrumentation related such as Logging, Tracing, Monitoring 8 New Features, Tech Debt, Usability Improvement UI/UX issue for existing functionality. Belong で実際に利用する開発優先順位ガイドライン 今回の話は #8 の新機能などの優先順位付けが主になる
  7. サービス特性の根本的な違い 18 ©Belong Inc. 特性 B2C (例: EC サイト )

    B2B (例: 企業向け SaaS) 社内向け (例:在庫管理システム ) ユーザー属性 不特定多数の個人、多様な嗜好・リテ ラシー 特定企業の担当者、業務遂行目的 自社従業員、業務効率化目的 開発サイクル 高頻度なリリースが可能 計画的かつ、月〜四半期ごとなどで一定粒度の変 更が期待される 可変(緊急度、業務影響による) 要求される品質 UI/UXの魅力、動作の軽快さ 高い信頼性、セキュリティ、業務適合性 操作の簡便性、安定性、業務効率 ビジネスモデル 購買、広告、有料会員 ライセンス料、サブスクリプション 事業サポート(直接収益なし) 成功指標(KPI) MAU、DAU、エンゲージメント率、 CVR MRR、顧客継続率、解約率、導入企業数 業務処理時間短縮、業務標準化、 オンボーディング時間短縮
  8. フィードバック取得方法の違い 19 ©Belong Inc. B2C B2B 社内向け 傾向 間接的なものが主 直接的かつ少数

    直接的かつ具体的 特徴 - 大量かつ広範囲 - 匿名性が高く率直 - 定量データ(評価、 PV数など)と定性 データが混在 - 具体的で業務に即した意見が多い - 契約関係に基づき、建設的な意見交換 - 少数だが深いフィードバック - 組織としての意見として集約されることも - 直接的で具体的な意見が集まりやすい - 利用が半強制的となり、サイレントマジョリ ティの声が拾いにくいことも チャネル - アクセス解析、利用状況データ - ユーザーインタビュー・テスト - カスタマーサポート (電話, メール, チャット) - アンケートフォーム - 口コミ - SNS - 営業担当、アカウントマネージャー経由 - カスタマーサクセス担当経由 - サポート窓口 (電話, メール, ポータル) - 定期的なミーティング - 利用部門からの直接ヒアリング - 利用データ分析 - 社内アンケート、サーベイ
  9. 無視できない「共通の課題」 20 ©Belong Inc. • 優先順位付けの複雑性及び期待のコンフリクト ◦ B2Cはユーザー数が多く影響範囲が広い ◦ B2Bは一社あたりの売上が大きい

    ◦ 社内システムは直接的な売上には繋がらないが業務上重要 • リソースの分散と最適配分の困難さ ◦ 特に共通基盤は B2C or B2B or 社内 のどれに影響があるイニシアチブを進め るかを決める必要がある ◦ 「B2C向けの機能改善、B2B案件向けの大型機能開発、そして社内システムの 高速化対応…どれに優先的にエンジニアをアサインすべきか?」 限られた開発リソース(人員・予算)を、緊急度も重要度も異なる複数のサービ スにどう配分するかの判断が常に難しい
  10. EID (Engineering Initiatives DB) とはなにか? 23 EID: エンジニアリングチームが取り組むイニシアチブを記録するためのDB EIDR: EID

    の各レコード(イニシアチブごと)のことを指す • バックログの概念に近いが、「何を、なぜおこなうのか 」「期待するアウトカムはなに か」を強調するもの • 投資会議におけるリクープ(投資回収)計画や、イニシアチブ実施結果の効果レビュー に直接的につながる形で記載する エンジニアの仕事の価値(アウトカム)を明確化させる役割 ©Belong Inc.
  11. 成長期(~4年) 26 • B2B や買取などが本格的に動き出した • No Code などで簡易的に使えるような仕組みも導入 •

    複数のプロダクト、複数のステークホルダー 「どのステークホルダーのイニシアチブを優先するべきなのか?」 ©Belong Inc. 販売サービス 買取サービス
  12. EID の内容 28 • やりたいこと - 解決したい課題 • 背景 -

    モチベーションや課題・困っていることについて • 制限事項 - 取り組むにあたり避けたり考慮するべきことがあれば記載 • 期待する成果・アウトカム - イニシアチブを実施することで得たい結果や効果 ◦ 対象を測定・確認する方法 - 現状を知る方法。 ◦ 1ヶ月後の状態 - 結果 ◦ 四半期後の状態 - 結果 • 解決策の仮説 - プロダクトマネージャーとエンジニアの認識を合わせるためのヒント • スコープに含めないもの - スコープに含めない、含めるべきでないもの ©Belong Inc.
  13. EID を運用して見られた課題 30 • 意思決定の属人化 • 戦略的重要度の高い課題が優先される 一方で、ちょっとした改善が後回 しにされがち ◦

    「効果はともかく、すぐ終わるからやっておこう」が進めづらい 安宅和人 (著) 『イシューからはじめよ ――知的生産の「シンプルな本質」 ©Belong Inc.
  14. 成熟期 31 規模が大きくなり、より属人性を排除した仕組みが欲しくなる • 毎回 PdM + エンジニア + 経営陣が集まる必要があるとスケールしない

    定量で自動的に優先順位が程度決まる形が嬉しいのではないか? ⇒スコアリング ©Belong Inc. 販売サービス 買取サービス
  15. イニシアチブ選定手法の有力な候補 34 ICE スコアリング • 要素 ◦ Impact (インパクト): イニシアチブの影響度

    ◦ Confidence (信頼度): 推定に対する自信度 ◦ Ease (容易さ): 実装の容易さ • 計算式: Impact * Confidence * Ease RICE スコアリング • 要素 ◦ Reach (リーチ): 特定期間内にどれだけのユーザーに影響を与えるか ◦ Impact (インパクト): イニシアチブの影響度 ◦ Confidence (信頼度): 推定に対する自信度 ◦ Effort (労力): 必要なリソース(時間、人数など) • 計算式: (Reach * Impact * Confidence) / Effort ⇒ ICE スコアリングに決定 ©Belong Inc.
  16. ICE スコアリングの運用ルール 35 • Impact - 基準に従い 1~5 のスコアを付ける ◦

    売上/利益 n万円など ◦ ガバナンスの対応やインシデントフォローアップなど、業績に直接紐づかないもの も考慮する • Confidence - 基準に従い 1~5 のスコアを付ける ◦ PoC による効果検証、市場調査結果、思いつきレベルなどの確度 • Ease - 基準に従い 1~5 のスコアを付ける ◦ 想定開発期間が短いものから点数が高くなる 最終的に各スコアの乗算で優先度が算出されるが、定性的価値 や 会社の戦略 を鑑みて Impact を 100 にするなどの調整余地を残す ©Belong Inc.
  17. ICE スコアリングを導入した結果 36 • 投資会議の前におおよそのイニシアチブは決まる • 実施するイニシアチブの幅は広がった • 一方で、結局話し合いは必要 ◦

    ビジネス戦略上イニシアチブの定性価値は無視できない ▪ ビッグパートナーとの連携 ▪ 今後のビジネス展開の布石 ▪ 実験的施策の実施 ©Belong Inc. Quick Wins Fill Ins Major Project
  18. Impact スコアの目線合わせが難しい • ステークホルダーの認識合わせ ◦ スコア自体は定量だが、スコアの付け方は主観の余地を残す • 業績至上主義にならないような意識(条件付け)が必要 ◦ Impact

    で売上・利益だけではなく、ガバナンスであったり、定性的に価値があるも のにも高いスコアを与えられる設計が必要 ▪ AI 開発のための環境整備 ▪ 非機能要件や予防的施策などを織り込む • 確率は低いが影響が大きなインシデント防止など ICE スコアリングの難しさ 37 ©Belong Inc.
  19. 改革期 38 Belong にとってはこれから • ニューヨークの拠点ができた大きな変化 ← New! ◦ メインの開発拠点は日本予定

    ▪ 米国の開発メンバーも必要 • 日本と米国、それぞれ別に必要な機能の優先順位付け ◦ 日本でも要望は山積みだが、米国立ち上げのイニシアチブも重要 • 今回の話はおそらく適用可能 ©Belong Inc.
  20. まとめ 40 • Belong のイニシアチブ優先順位付けの難しさの紹介 ◦ B2C・B2B・社内向け、という異なるユーザー属性向けサービス提供を行っ ており、開発の優先順位付けが難しい • EID

    のルールを規定し、エンジニアリングチームが取り組むイニシアチブの目 的・背景や期待するアウトカムを可視化 ◦ エンジニアの仕事の価値がわかりやすくなる • ICE スコアリングの導入 ◦ より機械的に優先順位付けが出来るよう定量指標を利用 ©Belong Inc.
  21. 告知 41 Belong Study - 生成 AI パネルディスカッション 開催します 7/18

    (Fri.) 12:00~13:00 ©Belong Inc. 第一部: エンジニアメンバーによる生成 AI の開発における活用 • 開発における生成 AI の使い方、利用中のツールなどの深堀り 第二部: B2C&B2B&社内システムのプロダクトマネージャーが生成 AI についての思いを語る • プロダクトマネージャーとしての生成 AI との向き合い方 • エンジニアに期待したいこと
  22. 各職種採用中! 42 • イニシアチブをリードしたい Tech Lead • イニシアチブの優先順位を裁量を持って考え実行したい EM •

    データを分析し価格トレンド予測や在庫差配モデルを行うデータサイエン ティスト • ニューヨークで働きたいエンジニア • etc. ©Belong Inc. 各種エンジニア採用中です! - 求人情報