センサデータを活用した 肌質改善への支援システムに関する研究

発表年月日：2023/11/16
発表テーマ：センサデータを活用した肌質改善への支援システムに関する研究
会議名：第109回モバイルコンピューティングと新社会システム（MBL）・第95回高度交通システムとスマートコミュニティ（ITS）合同研究発表会
主催者：情報処理学会
学会区分：全国学会
発表形式：口頭（一般）
開催期間：2023/11/15 ～ 2023/11/17
発表者・共同発表者：金子 響，松井 加奈絵

Transcript

1. センサデータを活用した 肌質改善への支援システムに関する研究 東京電機大学システムデザイン工学研究科情報システム工学専攻 〇金子 響，松井加奈絵 23amj06@ms.dendai.ac.jp 2023年11月16日 第109回モバイルコンピューティングと新社会システム（MBL）
2. はじめに 背景 • 良好な肌質の維持，肌質の改善には，肌の水分量と油分量が重要なパラメータ • 肌の水分量と油分量のバランスが崩れると，肌の乾燥，油分過多，肌荒れやニ キビの原因となる • 肌の水分と油分のバランスを目視や肌触りから正確に判断し，適切な改善策を 講じることは困難 • 自分の肌質にあった的確なアクションを起こすことは困難 目的 ユーザーの肌質を判定し，肌質に適したアドバイスと情報提供を行うことで， 肌の良い状態への改善と維持を促進する 2023/12/12 P 2
3. 関連サービスおよび研究 2023/12/12 P 3 [1]花王，“Curel肌手帳”，URL: https://www.kao.co.jp/curel/special/curelapp/（2023/10/23閲覧）． [2] Hung-Tse Chanほか5名，“A Skin Type Classification Method Using Mobile Device-Based Deep Learning Model”，International Conference on Applied System Innovation，2023． Cruel肌手帳 株式会社花王[1]は，肌質改善を目的 とした，肌の記録アプリケーション を提供 サービス内容 本アプリは，肌の調子，睡眠，スト レス，生理，その日のスキンケアな どを記録することで肌の調子の傾向 をグラフで確認することが可能 肌型検出システム Hung-Tse Chanら[2]は，スマート フォンのカメラを用いて肌を撮影し， その画像から肌タイプを判定する携 帯アプリを開発 研究結果 96%の精度で肌のタイプを判定する ことに成功 精度:皮膚科医が判断した肌質と比較
4. 提案の支援システム 2023/12/12 P 4 支援システム センサデータを活用し，ユー ザーの肌状態の変化を観測し， 改善するための情報提供とア ドバイスをする支援システム の開発 システムの構成 支援システムは肌質データを 収集するセンサ部，データを 蓄積し情報を生成する情報生 成部，生成された情報を提示 する情報提示部に分かれる
5. 提案の支援システム…センサ部① 使用センサ 良肌研究室が提供しているスキンチェッカー • 肌の水分量、油分量の計測が可能 • 水分量、油分量の測定結果は0～100％で表示 • 電源を入れ、測定したい部位に当てることで測定 2023/12/12 P 5 本研究ではユーザーが起床後，朝食前，昼食前，夕 食前，入浴前，入浴後，就寝前のタイミングで，顔 の目元部分に当てて計測したデータを使用
6. 提案の支援システム…センサ部② スキンチェッカーはネットワークに接続しているデバイスではない ため、ユーザーにWebアンケートフォームであるGoogle Formsに 必要データの記録を行う 2023/12/12 P 6 No 記録内容 記入例 1 測定したタイミングを教えてください。 起床後 2 測定した時間を教えてください。 6:24 3 肌の水分量を教えてください。 31 4 肌の油分量を教えてください。 53
7. 提案の支援システム…情報生成部① 肌質分類 • センサ部から得られたユーザーの肌の水分量・油分量をもとに，ユーザーの肌 質を判定 • 肌質は普通肌，乾燥肌，脂性肌，内部乾燥肌の4分類 2023/12/12 P 7 肌質 特徴 普通肌 水分と油分のバランスが良好で、特に大きな問題や過剰なトラブルを抱えていない、健康 的な肌質 乾燥肌 肌の水分が不足し、かさつきやかゆみが起こりやすい肌質 脂性肌 皮脂分泌が過剰で、光沢があり、毛穴が拡張しやすく、にきびが出やすい肌質 内部乾燥肌 肌の水分が不足し、かさつきやかゆみが起こりやすく、皮脂分泌が過剰であり、にきびが 出やすい肌質
8. 提案の支援システム…情報生成部② 肌質改善情報を集めたデータベース • 文献から肌質を改善するための情報を収集 • 水分量増加 • 油分過多の抑制 • バリア機能の向上 • 収集した情報から乾燥肌，脂性肌，内部乾燥 肌を普通肌にするためのにアドバイスを生成 • 肌質毎に分類したアドバイスをデータベース に格納 2023/12/12 P 8
9. 提案の支援システム…情報生成部③ 2023/12/12 P 9 【脂性肌改善データベース】の一部 洗顔をしてください。洗顔をすることで余分な皮脂のコントロール、にきび予防、 肌清潔保持、毛穴引き締め、スキンケア製品の効果向上が期待できます。 化粧水をつけてください。化粧水は余分な皮脂を吸収し、脂性肌のテカリを軽減 すると言われています。 日焼け止めを使用することで皮脂の過剰分泌を抑制できると言われています。日 差しが強い日だけではなく、日常的に日焼け止めを塗りましょう。 あぶらとり紙を使用してください。あぶらとり紙は余分な皮脂を効果的に吸収し、 顔のテカリを軽減と言われています。 睡眠不足により肌のバリア機能が低下してしまいます。6時間以上8時間未満の睡 眠を心がけましょう。
10. 提案の支援システム…情報生成部④ アドバイス生成の流れ • センサ部から得られた肌の水分量・油分量から肌質を判定 • 肌質判定結果を踏まえ，肌質改善情報を集めたデータベースからアドバイスを 1日3回（7時，12時，19時）抽出 2023/12/12 P 10 水分量 油分量 アドバイス 抽出
11. 提案の支援システム…情報提示部① 情報提示部 情報生成部で生成された情報をユーザーに提示 • コミュニケーションチャットツールのSlackを利用 2023/12/12 P 11 情報生成部で生成された情報 提示
12. 提案の支援システム…情報提示部② • ユーザーが参加しているチャットスペースに，生成した情報を1日 に7時，12時，19時の3回提示 2023/12/12 P 12 7時 12時 19時 皮脂分泌が過剰で、光沢があり、毛穴が拡張しやす く、にきびが出やすい肌質です。 日焼け止めを使用することで皮脂の過剰分泌を抑制 できると言われています。日差しが強い日だけでな く、日常的に日焼け止めを塗りましょう。 肌質説明 肌質改善のための アドバイス
13. 提案の支援システム…情報提示部③ • 1週間分のデータから生成された肌質診断結果をグラフにしたもの を日曜日19時に提示 2023/12/12 P 13 肌質 割合（％） 普通肌 9.5％ 脂性肌 90.5％ 乾燥肌 0.0％ 内部乾燥肌 0.0％
14. 実証実験 提案した支援システムの確からしさを検証するためにAB実験を実施 • 実験協力者：20代男性2名 • A実験期間：センサを用いた肌質データの取得と記録 • B実験期間：センサを用いた肌質データの取得と記録に加え，支援システム を用いたアドバイス通知の送信 2023/12/12 P 14 実験名 期間 実験A 2023年6月1日～7月14日（44日間） 実験B 2023年10月13日～10月20日（7日間）
15. 評価事項 1. アンケートによるシステムの評価 2. 収集した肌質データの評価 • 支援システムを利用していないA実験の期間と，支援システムを利用したB 実験の期間の取得した肌の水分量と油分量のデータを比較 2023/12/12 P 15 No アンケート内容 1 肌質判断は適切でしたか。 2 アドバイスは役に立ちましたか。 3 意識変容、行動変容はありましたか。 4 その他何かありましたら記載をお願いします。
16. アンケート結果 No 実験協力者1 実験協力者2 1 はい はい 2 はい いいえ 3 はい はい 4 • 水分量・油分量がどの程度であれば普通肌 なのか、自分はそこからどの程度乖離して いるかを知りたかった • いつ計測したものが普通肌だったのかを知 りたかった • アドバイスに、文字だけでなく画像も欲しかった • 肌質ごとの割合を知ることができたので、次回の数 値を向上させたいと思った • 肌の分類マップに数値がプロットされていたので、 自分の現状を把握でき、改善につなげることができ ると考えた • アドバイスの情報が適切な内容になり、レパート リーが増加すればこのアプリを継続したいと思った 2023/12/12 P 16
17. アンケート結果についての考察① 質問1：肌質判断は適切でしたか • ユーザーの肌質を正しく判定することに成功 2023/12/12 P 17 質問2：アドバイスは役に立ちましたか • アドバイスの種類の不足，いつ計測していたかなど のセンシングデータの基本情報が欠如，アドバイス が適切であるかを確かめる必要有
18. アンケート結果についての考察② 2023/12/12 P 18 質問3：意識変容，行動変容はありましたか • ユーザーの意識変容，行動変容を生み出すための支 援を行うことに成功 質問4：その他何かありましたら記載をお願い します • アドバイス群を通知する際，センシングデータをグ ラフ，図などの可視化した情報で送信する必要有 • ユーザーの通知に対する興味を引く必要有
19. 収集した肌質データ（実験協力者1） 2023/12/12 P 19 肌質 割合（％） 普通肌 7.0％ 脂性肌 66.7％ 乾燥肌 0％ 内部乾燥肌 26.3％ 実験期間A
20. 収集した肌質データ（実験協力者1） 2023/12/12 P 20 肌質 割合（％） 普通肌 9.5％ 脂性肌 90.5％ 乾燥肌 0％ 内部乾燥肌 0％ 実験期間B
21. 収集した肌質データ（実験協力者2） 2023/12/12 P 21 肌質 割合（％） 普通肌 29.5％ 脂性肌 70.5％ 乾燥肌 0％ 内部乾燥肌 0％ 実験期間A
22. 収集した肌質データ（実験協力者2） 2023/12/12 P 22 肌質 割合（％） 普通肌 26.2％ 脂性肌 73.8％ 乾燥肌 0％ 内部乾燥肌 0％ 実験期間B
23. 収集した肌質データについての考察 【実験協力者1】 • 普通肌の割合を7.0%から9.5%と2.5%増加させることに成功したので， 本支援システムがユーザーの肌質向上に寄与する有益なツールであると考 える 【実験協力者2】 • 普通肌の割合を29.5％から26.2％と3.3%減少してしまったので，アドバ イスの内容や送信するタイミングの見直しが必要であると考える • 皮膚細胞の生まれ変わりには，28日から40日間かかるので，本支援システムの長期 的利用が必要であると考える 2023/12/12 P 23
24. おわりに 検討事項 • チャットツールでの情報提供を修正 • アドバイスの種類の増加 • 送信タイミングの細分化 まとめ • 本研究では，肌質を改善するための支援システムを構築 • 実証実験の結果，理想的な肌質である普通肌の割合が，7.0%から9.0%と 2.5%増加したユーザーと，29.5%から26.2%と3.3%減少したユーザーが いた • 今後の課題はユーザーへの情報提供内容とアドバイス送信タイミングの修正 2023/12/12 P 24
25. 付録 ➢ スキンチェッカーの精度 ➢ 肌質閾値 ➢ 肌質改善データベース 2023/12/12 P 25
26. スキンチェッカーの精度 測定方法：BIA法 精度：95.7～98.7％ BIA法 体内に弱い電流を流し，その電 流の抵抗を測定することで水分 量や油分量を推定 2023/12/12 P 26 [3] 良肌研究室，“スキンチェッカー”，URL: https://fineskinlab.com/products/checker.html（2023/10/23閲覧）． [4] A. S. Jacksonほか3名，“Reliability and validity of bioelectrical impedance in determining body composition ”，FEB，1988．
27. 肌質分類 肌質データの閾値 2023/12/12 P 27 肌質 水分量（％） 油分量（％） 普通肌 35以上 46以下 脂性肌 35以上 46以上 乾燥肌 35以下 46以下 内部乾燥肌 35以下 46以上
28. 肌質改善データベース【乾燥肌】 2023/12/12 P 28 【乾燥肌改善データベース】の一部 洗顔をしてください。洗顔をすることで皮脂や汚れの除去、保湿、毛穴の引き締 め、肌の調子の安定化が期待できます。 化粧水をつけてください。化粧水をつけることで、肌に水分を供給し、乾燥を防 ぎ、柔軟性を向上させ、肌の明るさを取り戻すと言われています。 日焼け止めを使用することで肌水分量の低下を防ぐことができると言われていま す。日差しが強い日だけではなく、日常的に日焼け止めを塗りましょう。 ワセリンを塗ってください。ワセリンは皮膚の水分蒸発を防ぐ効果があり、乾燥 から肌を保護し、しっとりとした感触を提供すると言われています。 睡眠不足により肌のバリア機能が低下してしまいます。6時間以上8時間未満の睡 眠を心がけましょう。
29. 肌質改善データベース【内部乾燥肌】 2023/12/12 P 29 【内部乾燥肌改善データベース】の一部 洗顔をしてください。洗顔をすることで水分供給、皮膚清潔保持、保湿、刺激の 軽減、スキンケア製品の吸収促進などの効果が期待できます。 化粧水をつけてください。化粧水は保湿効果を提供し、乾燥を予防し、肌の柔軟 性を向上させ、肌を保護し、明るさを取り戻す役割を果たすと言われています。 日焼け止めを使用することで肌水分量の低下を防ぎ、皮脂の過剰分泌を抑制でき ると言われています。日差しが強い日だけではなく、日常的に日焼け止めを塗り ましょう。 ワセリンを塗ってください。ワセリンは皮膚のバリア機能を向上させ、外部から の刺激やダメージから肌を守ると言われています。 睡眠不足により肌のバリア機能が低下してしまいます。6時間以上8時間未満の睡 眠を心がけましょう。