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2018年度 化学プロセスシステム工学 第3回

2018年度 化学プロセスシステム工学 第3回

前回の復習
制御とは?
化学工学・プロセスシステム・制御で大事なこと
制御するためには、何が必要か?
出力変数と入力変数との関係
流体加熱プロセス:問題設定
熱収支 式変形
熱収支 コンピュータシミュレーション
流体加熱プロセスのシミュレーション
P制御 P・・・Proportional (比例動作)
P制御の問題点は?
PI制御
今日の内容
良い制御?
制御性能の指標 制御面積 1/2
制御性能の指標 制御面積 2/2
制御性能の指標 整定時間
整定時間
制御性能の指標 オーバーシュート(行き過ぎ)
オーバーシュートの例
制御性能 その他
PI制御のパラメータ
PI制御の問題点は?
PI制御の問題点
PID制御 (比例・積分・微分)
PID制御 (比例・積分・微分)
PID制御をしてみましょう!
微分時間の影響
こんなパラメータの決め方もあります
シミュレーションできたことのメリットを確認
理論的に攻める方法の問題点
出力変数と入力変数との関係
実験データを使う経験的な方法
① 実験する 1/2
① 実験する 2/2
② モデルの概形を決める
② モデルの概形 積分
② モデルの概形 1次遅れ
② モデルの概形 1次遅れ
② [クイズ]
② [クイズ 回答]

Hiromasa Kaneko

February 10, 2019
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Transcript

  1. 制御とは︖ JIS (日本工業規格) の定義 [Z 8116] • 「ある目的に適合するように、制御対象に所要の操作を加えること」 2 望みのとおりになりそうなモノを、

    何かすることで、望みどおりにすること 望みのとおりにならなそうなモノを、 何かすることで、望みどおりにすること 望みのとおりになりそうなモノを、 何もしないで、望みどおりにすること ✕ ✕
  2. 出⼒変数と⼊⼒変数との関係 モデルを求める方法は、大きく分けて3つある • 理論的に攻める方法 ⁃ 物質収支 (マスバランス、マテリアルバランス) ⁃ 熱収支 (ヒートバランス)

    • メリット︓実験しなくても求まる • デメリット︓数式として表せないといけない • 実験データを使う経験的な方法 ⁃ モデルの概形を決めて、ステップ応答などの実験(運転)で 得られたデータから計算 • メリット︓数式で表せないものもモデル化できる • デメリット︓実験しないといけない • 理論的に攻めながら、データも使う方法 5
  3. 流体加熱プロセス︓問題設定 6 Q T, V, ρ, cP Fi , Ti

    Fo , T Fi [m3・s-1]︓⼊⼝流量 Fo [m3・s-1]︓出⼝流量 Ti [K]︓⼊⼝流体の温度 T [K]︓タンク内流体の温度 V [m3]︓タンク内流体の体積 ρ [kg・m-3]︓流体の密度 cP [J・ kg -1・ K-1]︓流体の⽐熱 Q [J・s-1 (=W)]︓加熱量 i ︓input o︓output
  4. 熱収支 式変形 7 ( ) i P dT F Q

    T T dt V V c ρ = − + 出⼒変数 (お湯の温度) と⼊⼒変数 (加熱量) との 間の関係を式で表せた︕モデリングできた︕
  5. 熱収支 コンピュータシミュレーション 8 ( ) ( ) ( ) (

    ) ( ) i P Q t t F T t T t t T T t t t V V c ρ   − ∆ = − ∆ + − − ∆ + ∆     ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) i P T t T t t Q t t F T T t t t V V c ρ − − ∆ − ∆ = − − ∆ + ∆ 繰り返し計算によって、T(t) の時間変化を求めていく T(tーΔt) Q(tーΔt) T(t) Q(t) T(t+Δt) Q(t+Δt) T(t+2Δt) ・・・ ・・・
  6. 流体加熱プロセスのシミュレーション F [m3・s-1]︓⼊⼝流量・出⼝流量 = 0.00005 Ti [K]︓⼊⼝流体の温度 = 20 [℃]

    V [m3]︓タンク内流体の体積 = 0.01 ρ [kg・m-3]︓流体の密度 = 1000 cP [J・ kg -1・ K-1]︓流体の⽐熱 = 4200 Q [J・s-1] (加熱量) の最大値 = 3000 Δt = 0.1 ヒーターを on にしてから加熱が始まるまで 60 s かかるとする ヒーターを最大にして、3000 s シミュレーションしてみよう︕ 9
  7. P制御 P・・・Proportional (⽐例動作) 出⼒変数 (温度) の目標値との差 e に⽐例するように ⼊⼒変数 (加熱量)

    を変化させる ⽐例動作︓P (Proportional) 制御 10 ( ) ( ) ( ) 0 P Q t K e t Q = + t [s]︓時刻 T(t) [K]︓時刻 t のときの水温 Ttarget [K]︓目標の温度 KP ︓⽐例ゲイン (定数) ( ) ( ) target e t T T t = −
  8. PI制御 出⼒変数の目標値との差 e をふまえて、⼊⼒変数の値をどうするか︖ ⽐例積分動作︓PI (Integral) 制御 • ただ実際は、コンピュータで⾏うので、 ⁃

    積分 → ⾯積の累積和 12 ( ) ( ) ( ) ( ) 0 I 0 t P P K Q t K e t e r dr Q T = + +  TI ︓積分時間 (定数) ( ) ( ) ( ) ( ) 1 I 1 0 t P r Q t K e t e r t Q T =   = + ∆ +     
  9. 制御性能の指標 制御⾯積 1/2 絶対値制御⾯積 (Integral of Absolute Error, IAE) 二乗制御⾯積

    (Integral of Square Error, ISE) • IAE も ISE も、値が小さいほど制御性能がよい 15 ( ) ( ) 0 0 T t IAE e t dt e t ∞ = = =   ( ) ( ) 2 2 0 0 T t ISE e t dt e t ∞ = = =   T︓ある程度 時間が経った あとの時刻
  10. 制御性能の指標 制御⾯積 2/2 荷重絶対値制御⾯積 (Integral of Time Absolute Error, ITAE)

    荷重二乗制御⾯積 (Integral of Time Square Error, ITSE) • 時間が経ったあとほど、 e(t) に重みをつける ⁃ 設定値変更や外乱発⽣の直後 ( t︓小) に e(t) が大きいのは 仕方ない • ITAE も ITSE も、値が小さいほど制御性能がよい 16 ( ) ( ) 0 0 T t ITAE t e t dt t e t ∞ = = =   ( ) ( ) 2 2 0 0 T t ISE te t dt te t ∞ = = =  
  11. 制御性能 その他 ⼊⼒変数 (操作変数) の変化が小さいことが好まれる • コスト • 安全性 •

    製品品質 出⼒変数だけでなく、⼊⼒変数の時間変化も必ずチェック︕ 21
  12. PID制御 (⽐例・積分・微分) 出⼒変数の目標値との差 e をふまえて、⼊⼒変数の値をどうするか︖ ⽐例積分微分動作︓PID (Derivative) 制御 25 (

    ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 I 0 I 0 1 0 t P P P D t P D de t K Q t K e t e r dr K T Q T dt de t K e t e r dr T Q T dt = + + +   = + + +       TD [s]︓微分時間 (定数)
  13. こんなパラメータの決め方もあります パラメータが、 • ⽐例ゲイン KP • 積分時間 TI • 微分時間

    TD の3つになって最適化が大変 パラメータの最適化を自動化させましょう︕ どうやって自動化︖ • KP と TI と TD の候補をそれぞれ (たくさん) 決めて、 すべての組み合わせでPID制御をして、各指標の値がよくなる 組み合わせを選びましょう︕ ⁃ グリッドサーチ 29
  14. 理論的に攻める方法の問題点 理論的に攻める方法でPID制御のパラメータを最適化するときの 問題点について考えてみよう • モデル化できない現象がある • ノイズ (測定誤差など) が考慮されていない 31

    PID制御のパラメータが強すぎてしまう → 実際のプロセスでは不安定に 理論的なモデル内のパラメータを少し変えたり、 あえてノイズ (乱数) を追加したりして改善する方法もある
  15. 出⼒変数と⼊⼒変数との関係 モデルを求める方法は、大きく分けて3つある • 理論的に攻める方法 ⁃ 物質収支 (マスバランス、マテリアルバランス) ⁃ 熱収支 (ヒートバランス)

    • メリット︓実験しなくても求まる • デメリット︓数式として表せないといけない • 実験データを使う経験的な方法 ⁃ モデルの概形を決めて、ステップ応答などの実験(運転)で 得られたデータから計算 • メリット︓数式で表せないものもモデル化できる • デメリット︓実験しないといけない • 理論的に攻めながら、データも使う方法 32
  16. ② モデルの概形 積分 積分モデル (積分系、積分プロセス、積分要素) 37 ( ) S y

    t K t = t︓時刻 y︓出⼒変数 KS ︓定常ゲイン (定数) ステップ応答のとき、
  17. ② モデルの概形 1次遅れ 1次遅れモデル (1次遅れ系、1次遅れプロセス、1次遅れ要素) y(∞) は︖ 38 ( )

    ( ) ( ) C S dy t T y t K u t dt + = t︓時刻 y︓出⼒変数 u︓⼊⼒変数 TC ︓時定数 (定数) KS ︓定常ゲイン (定数) ( ) C 1 exp S t y t K T     = − −           ⼊⼒変数を0 → 1 としたステップ応答 (単位ステップ応答)のとき、 となります [後で詳しくやります]
  18. ② [クイズ] 40 ( ) ( ) i 0 P

    1 exp exp t F F T t T t t Q t dt V c V V ρ     = + −          加熱流体プロセス について、Q(t) を 0 → 1 としたステップ応答のとき、T(t) - Ti が ( ) C 1 exp S t y t K T     = − −           と表されることを確認し、KS , TC を求めてみよう
  19. ② [クイズ 回答] 41 ( ) i 0 P P

    0 P P 1 exp exp 1 exp exp 1 exp exp 1 1 1 exp t t F F T t T t t dt V c V V F V F t t V c V F V F V F t t V c V F V F t F c V ρ ρ ρ ρ     − = −               = −                     = − −                     = − −          Q(t) = 1 より、 S P 1 K F c ρ = よって、 C V T F =