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デバッグの話 / Debugging for Beginners

デバッグの話 / Debugging for Beginners

主に数値計算屋向けのデバッグの話。

kaityo256

October 10, 2024
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Transcript

  1. 3 22 典型的な研究スパン 年に二編論文を書く → 半年で一つの研究が完結 プログラム開発+計算 執筆 調査 •

    調査:先行研究の調査や、計算手法についての調査 • 開発+計算:プログラム開発、計算の実行 • 執筆:結果の解析+論文執筆+投稿 しかし実態は・・・ 執筆 調査 デバッグ 開発 • 開発時間の大部分はデバッグに費やされている • 初心者であるほど、デバッグの占める割合が長くなる • コードの高速化は、研究時間の短縮にさほど寄与しない 計算
  2. 4 22 デバッグは進捗ではない 開発 デバッグ 開発 デバッグ 計算 解析 開発

    デバッグ 計算 解析 解析 計算 Aさん Bさん デバッグは時間がかかり、集中力が要求され、達成感もある しかし、結局は自分で入れたバグを自分で取る作業(マッチポンプ) 作業している時間が長いのはAさんだが、進捗が出ているのはBさん 「デバッグは進捗ではない」ということを肝に銘じること
  3. 13 22 例:モンテカルロ法 二次元ポッツ模型を書けと言われた →初手で二次元ポッツ模型を書きはじめない 1. スピンが2つしかないイジング模型を書く 状態が4つしかないので、厳密解と比較可能 エネルギー、磁化などの温度依存性が厳密解と一致することを確認する (スピンフリップの実装が正しいことを確認)

    2. 一次元イジング模型を書く エネルギー、磁化などの温度依存性が厳密解と一致することを確認する ここまで確認後、一次元ポッツ、二次元イジング、二次元ポッツ、へと進む バグが入ったら、厳密解と一致したところからの差分だけをチェック
  4. 16 22 バグを見つけたら? まず再現性の確認 • 本当にバグってる? • どの環境で、どのインプットファイルを使い、どんな実行方 法で、どんなバグが出たかを確定させる •

    ビルドミスはないか?正しいインプットファイルを渡してい るか?実行方法は正しいか? 現場保全 • デバッグ用ブランチを作成し、バグが発生するソースを保存 • 研究日記(←書いてるはず)に、ブランチ名と発生条件を記録 安全地帯の確保 • 「ここまではバグっていなかったはず」まで戻り、動作を確認 • 一番最新の「バグっていないコード」を安全地帯として確保する ここまで動作確認と単純作業しかしていない デバッグはなるべく頭を使わない
  5. 19 22 二分探索 コードを実行したらSegmentation Faultと言われて止まった やってはならないこと ソースを見ながら原因を探してはならない 特に頭の中でトレース実行するのはダメ デバッグはなるべく頭を使わない やるべきこと

    まず、どこで止まったかを調べる → print文による二分探索 void func() { printf("1¥n"); // 何か処理 printf("2¥n"); // 何か処理 printf("3¥n"); } 出力が「1」ならこの間で止まっている 出力が「12」ならこの間で止まっている 場所を限定してから原因を考える
  6. 20 22 二分探索 コードを実行したら実行直後に死ぬようになってしまった 実行直後に死ぬのでprint文デバッグが使えない →こういう時も二分探索 int main(){ hoge(); fuga();

    piyo(); hogehoge(); } こいつが死んだ int main(){ /* hoge(); fuga(); piyo(); hogehoge(); */ } すべてコメントアウト して動作確認※ int main(){ hoge(); fuga(); /* piyo(); hogehoge(); */ } 後半だけコメントアウ トして動作確認 ※「ここは絶対大丈夫」というところまで一度戻るのが大事 • ビルドに失敗しているのに気づかずに古い実行バイナリを見ていた • 間違ったライブラリをリンクしていた • そもそも実行方法を間違えていた 「ここは絶対大丈夫」がわり と大丈夫でなかったりする