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OpenStackコミュニティ最新動向

 OpenStackコミュニティ最新動向

日本OpenStackユーザ会 第52回勉強会 発表資料です。

https://openstack-jp.connpass.com/event/356594/

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Takashi Kajinami

June 19, 2025
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  1. 自己紹介 梶波 崇 (Takashi KAJINAMI) kajinamit kajinamit irc: tkajinam@OFTC Distinguished

    Cloud Engineer @ NTTデータ • クラウド基盤に関連した技術の研究開発を担当 • 現在のテーマは仮想化基盤 OpenStackを中心にOSSコミュニティにて活動 • Heat(Orchestrationサービス) PTL • Oslo(共通ライブラリ) Release Liaison • Puppet OpenStack(OpenStack構築用のPuppetマニフェスト) PTL • Storlets(オブジェクトストレージ内でのアプリ実行エンジン) PTL • Telemetry Core Reviewer • Zaqar(Messagingサービス) Core Reviewer PTL = Project Team Lead 2
  2. Linux Foundationへの加入 • Open Infrastructure FoundationがLinux Foundationに加入 • 今年2月にコミュニティに対する問いかけあり https://lists.openstack.org/archives/list/openstack-

    [email protected]/thread/AMUYTE5C7JF7BIYWDPRTJZ5D6ZI22EX5/ • 6/3に加入手続き完了のアナウンス https://openinfra.org/blog/openinfra-joins-linux-foundation • OSS・LFを取り巻く状況の変化に起因するもの • Linux FoundationがサブプロジェクトをHostする体制が整った(CNCFが良い例) • 特に欧州ではOSSに対する規制強化の動きが高まっており、法的・政治的な取り組みに対応できるリソースが必要になって いる。LFは先行してこれを整備していた • 今後のイベントや開発プロセスなどへの大きな影響は現時点でなし • 現時点で明らかなものはCLA/CCLAからDCO(Developer Certificate of Origin)への移行 • 2025/07/01以降に投稿、更新されたパッチから必須に • https://governance.openstack.org/tc/resolutions/20250520-replace-the-cla-with-dco-for-all- contributions.html 5
  3. Rackspaceの帰還 • Rackspace社がOpenInfra Foundationのプラチナメンバーに • https://openinfra.org/blog/rackspace-openinfra-platinum-member • 2016年の非上場化移行、どちらかといえばハイパースケーラとの提携事業に注力していたように見えた • オンプレ回帰のニーズを受けて昨年8月ごろからOpenStackに再コミット

    • https://www.rackspace.com/newsroom/rackspace-technology-launches-openstack-enterprise • オンプレ向けのRackspace OpenStack FlexをLaunch • https://www.rackspace.com/cloud/openstack-flex • 日本国内での販売は(知っている限り)(まだ)ない • 開発への再貢献も言及されているが現時点で(個人的観測範囲内では)大きな進捗はなさそう • 今後に期待 6
  4. VMwareからの移行ニーズの高まり • Broadcom社によるVMwareの買収に伴うライセンス形態・価格の変更を受けて多くのユーザが乗り換え先を検 討 • ベンダロックインされない「オープンな仮想化・クラウド基盤」としてOpenStackに注目が集まる • VMware Migration Working

    Groupが結成され移行ニーズへの対応を議論 • https://www.openstack.org/vmware-migration-to-openstack/ • 先日のPTGのセッションでは主にメンバーらによってマイグレーションガイドの更新が議論された https://openinfra.org/blog/vmware-ai-working-groups-ptg • マイグレーションガイドは6/19早朝(日本時間)に公開 • https://www.openstack.org/vmware-migration-to-openstack/vmware-to-openstack-migration-guide • VMware製品とOpenStackの比較、移行のメリット、移行方法や商用サポートベンダー等の情報がまとまっている 7
  5. AIにより生成されたコンテンツへの対応 • Generative AIの発展に伴い、AIによって生成されたコンテンツに対するポリシーが必要に • LFが先駆けて大まかな方針を公開 https://www.linuxfoundation.org/legal/generative-ai • ただし詳細はProject独自に定義する •

    Board of Directorsにて対応方針が承認され公開 • https://openinfra.org/blog/ai-generated-content-policy • https://openinfra.org/legal/ai-policy • ポリシーおよびContributor/Reviewer向けのチェックリスト • 特に重要と考えられるポイントは下記の通り • Generated-Byタグの付与 • Apache-2.0ライセンスとの互換性の維持 • コア開発者の一部で利用開始(まだ試用といった段階) • https://review.opendev.org/c/openstack/ironic/+/949172 • https://review.opendev.org/c/openstack/nova/+/952306 8
  6. リリース • 最新リリースは 2025.1 Epoxy • 2023.1 Antelope, 2024.1 Caracalに次ぐ3つ目のSLURP(Skip

    Level Upgrade)リリース • 2024.2 Dalmatian, 2024.1 Caracalからのアップグレードをサポート • Python 3.12、Ubuntu 24.04を正式サポート • Python 3.8サポートは廃止 • 古いリリースは順次EOL/unmaintainedに • 2023.1 Antelopeは現在unmaintained(新規リリース無し)状態 • 2023.2 Bobcatはunmaintainedフェーズなく直接EOL • 次のリリースは 2025.2 Flamingo • Python 3.9のサポートが廃止予定 • これによりCentOS Streamの対応バージョンも9から10に変更(推測) • Python 3.13には未対応の予定(後述) 10
  7. プロジェクト動向 • プロジェクト数は直近数サイクル変化なし。開発頻度も大きな差分はない • 一部のプロジェクトの開発が活発化 • Watcher • 主にはRed Hatの開発者が参加

    • Canonicalからの機能提案も確認できる • Telemetry • これもRed Hatの開発者中心 • Gnocchiに代わるデータソースとしてのPrometheusのサポート • https://opendev.org/openstack/aetos • リソース使用料を可視化するUI(grian-ui)の開発 • https://opendev.org/openstack/grian-ui 11
  8. Pythonバージョンアップへの対応 • 近年のPythonではメソッド・モジュールの廃止が活発化 • Python 3.12では多数のクリーンナップが行われ互換性維持が課題に • 2024.2, 2025.1 の2サイクルをかけて対応。Ubuntu

    24.04への正式対応のBlockerになっていた • 多くのAPIが廃止予定とされWarningが多数出力されるようになった(引き続き対応中) • Python 3.13以降ではさらなる削除が予定されており互換性維持がより困難になる恐れ • https://www.python.org/downloads/release/python-3130/ • 特に影響が大きいのはcgi, cryptoなど • OpenStackだけではなく依存ライブラリの多数にも影響する 12
  9. パッケージング変化への対応 • Pythonのパッケージング機構が大きく変化 • 主に PEP-0517 - A build-system independent

    format for source trees 起因 • https://peps.python.org/pep-0517/ • 従来のdistutils/setuptoolsのいくつかの課題解決のための新しいパッケージ機構 • この機構変化に合わせて各リポジトリ側で新しい機構に合わせた更新が必要 • 例えばpyproject.tomlの追加など • OpenStackで広く利用されているpbrにも影響あり • pbrにて維持しているエイリアスの廃止 • https://review.opendev.org/q/topic:%22pip-23.1-support%22+project:openstack/pbr • mod_wsgi等に利用するスクリプトの生成機能が実質的に削除 • https://governance.openstack.org/tc/goals/proposed/migrate-from-wsgi-scripts-to-module-paths.html • uwsgiを利用する場合はモジュールの利用を推奨 • mod_wsgiを利用する場合は独自にスクリプトを生成する必要がありそう(ここはまだ議論がある) 13
  10. eventletからの脱却 • https://governance.openstack.org/tc/goals/selected/remove-eventlet.html • OpenStackが開発された当初はPythonに並列・非同期処理のための機能が不足しており、その対応として eventletを導入 • 最近のPythonでは並列処理のための機構(threading, asyncio等)が成熟しており代替手段が多く存在 •

    Python 3.13ではGILの無効化も試験的に導入されている • eventletはPythonのコアモジュールをパッチする構造であるため、Pythonバージョンアップ時に互換性問題が発 生。最近はメンテナも少なく長期利用においての懸念に • oslo.serviceに追加されたthreadingベースの実装への切り替えを各プロジェクトで検討中 • 性能影響やチューニングへの影響などが課題 • eventletベースの独立したAPIサービスが削除されるため構築ツールにも影響しそう 14
  11. モダンな開発標準への対応 • 最近のPythonの開発標準トレンドに従った開発ツールのアップデートが行われている • フォーマッタ : black, ruff • 型チェック

    : typing • Lint実行 : pre-commit (これは比較的多くのプロジェクトで導入済み) • ただし導入状況はプロジェクトによってバラバラ • SDK、Keystoneあたりが進んでいる • 次いでOslo • 特にblackについては修正時の 15
  12. OpenAPI定義の追加 • OpenStackの開発初期はREST APIを定義するスタンダードが無かった • 一部のプロジェクトでは特にRequest Bodyのバリデーションにjsonschemaを導入している • Response BodyのスキーマはAPIリファレンスと実装を並行管理していた

    • 近年ではHTTP APIを定義する標準となったOpenAPIを導入する提案 • https://review.opendev.org/c/openstack/keystone-specs/+/910584 • 主にレスポンスの定義やバリデーションが追加される • Keystoneでは先行して2025.1サイクルで実装完了。Nova, Cinder, Ironicなどで開発中 • 将来的にはクライアントコードやAPI定義の自動生成を行うように発展していく見込み • サーバサイドコードの自動生成は今のところ対象外 16