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『術中にはめられた!』と嬉しそうにふりかえるチーム 「みんなで協力できるようになることでフロー...
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June 21, 2024
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『術中にはめられた!』と嬉しそうにふりかえるチーム 「みんなで協力できるようになることでフロー効率を高める」術のかけ方
2024.06.22 Scrum Fest Osaka 2024 金沢トラック
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June 21, 2024
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『術中にはめられた!』と嬉しそうにふりかえるチーム 「みんなで協力できるようになることで フロー効率を高める」術のかけ方 2024.06.22 Scrum Fest Osaka 2024 金沢トラック
このセッションについて 2
これは一つのチームの一例です。書籍から学んだことも多くありますが、 すべてに当てはまるものではないかもしれません。この事例からみなさん のお役に立てることが何かしらあれば幸いです。 3
河野圭一郎(かわのけいいちろう)@kawanotron Scrum Alliance®認定スクラムマスター 2011年頃よりアジャイルを学び始める ベンチャー企業での自社サービス開発 中小企業での受託開発 大企業での自社サービス開発を経て 2021年秋から星野リゾートでスクラムマスター 話す人 4
前提:今回取り上げるチームはバラバラ • 拠点は軽井沢、銀座、東京近郊、大阪、広島とバラバラ • フルタイム社員3名、時短社員2名、外部パートナー2名と 立場もバラバラ • 年齢も20代から40代が満遍なくバラバラ • コード書けない、ちょっとコード書ける、それなりにコードが書
ける、バリバリコード書ける、昔はコード書いてた、コード書き 始めて1年ちょっと、と技術力もバラバラ ※良く言えば、バラバラ=多様性がある 5
最初の頃は、目の前のタスクに追われ、自分のタスクに夢中になりが ちで、先の見通しが立たず、時短メンバーのタスクが終わらないので スタックしてしまう。助け合いたいと思っていてもそれが叶わなかっ た(チームの言葉を借りると「交通整理されてなかった」)。 そこにスクラムマスターが。スクラムを取り入れることで、いつの間 にか助け合うことが当たり前に。そんなチームとスクラムマスターの 成長物語である(このチームのおかげでスクラムの良さを再認識できた) 。 最初は足並みが揃っていなかった 6
7 スクラムマスターの貢献は気づかれにくい アジャイルコーチングがうまくいっても、チームの外からは見えない ばかりか、チームメンバーにすら見えていないこともあります。 サッカーの真ん中にいるボランチは目立った活躍をすることはありま せん。しかしながらボランチの出すパスで試合の流れが変わります。 スクラムマスターも同様で、アジャイルコーチング(術)は 日々の業務の中でさりげなく行われるためその効果に気づき にくいものなのです。 from
『コーチングアジャイルチームス』 うまいボランチは、仕事をそんなにしているように見えないのに実は 誰よりも仕事をこなしている。 from 『なぜボランチはムダなパスを出すのか?』
8 だが、チームでのふりかえりで気づかれた! 〇〇さんがス プリントゴー ルを達成する ための提案を してくれた 誰がなんで もできる状
態になって きた 術中にはまってるだけw(〇〇さん) スプリントの折り 返しで、進捗と残 チケットをチーム で認識して作戦立 てようとなったの はとても心強い チームで ゴールを 目指す感じ いいなぁ これも河野さんの術中に ハマってるんだとしたら ありがたい 育休から戻っ てきてプロダ クトがすごく 進んでいるか らおどろいた それと同時に 「自分いらない んじゃね?」っ てなってる 育休前にみんなで 「いなくても回るようになりたい」 って言ってた それが実現できている 河野さんの狙い通りでは?
• 助け合うチームになるコツ(術) • 人の成長を促すコツ(術) • チームや人の成長を促すスクラムの魅力 • チームをコーチした事例 • チームをファシリテートした事例
• チームをティーチングした事例 学べること 9
• 術の狙い • 其の一、協力が大事と意識づけする • 其の二、あらゆるものを共同所有する • 其の三、多能工化を促す • 其の四、助け合いを促す
• 術をうまくかけるコツ 話すこと 10
術の狙い 11
スクラムという術 12 個人でなく複数名で価値を生み出すためにある。足し算じゃなくて掛 け算。スクラムとはチームで協働するためのフレームワークである。 つまり、チームで助け合うことを促す術。 スクラムの定義 スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じ て、⼈々、チーム、組織が価値を⽣み出すための軽量級フレームワー クである。 from
『スクラムガイド2020年版』 全体は部分の総和に勝る by アリストテレス
このチームにおける術の目的(ゴール) 13 • 複雑な問題をみんなで助け合い協力しながら解決できる • 誰かが欠けても(休んでも)補い合い進むことができる ※このチームは時短メンバーがいるから特に • 時短メンバーもフルタイムメンバーと同じように活躍でき 外部パートナーもプロパーと同じように活躍できる
• その結果、ストレスなく安定してタスクをこなせるようになる、 つまり、フロー効率が高い状態を維持できる • そして、このチームならありのままの自分でいられて、 仕事をするのが楽しいと思える(ティール組織での全体性) ※「幸せだから成功するのだ」(ポジティブ心理学)
14 その成果 「このチームだから100%コミットしたい!」 「このチームだから権限委譲できる!」 「なら私やりますよ!」「私がいなくても大丈夫!」 いつの間にか助け合うように。安心して背中(見えないところ)を任せら れるようになった。チーム内では誰かを待ってスタックすることがな くなり、時短メンバーが増えたときも困らなかった。一人ひとりがで きることが増えてチームのフロー効率が高まった。 各々で考えて動き(カオス)ながらも
まとまり(秩序)のある自律分散型チームになった。
知識からではなく経験から、少しずつ成長する 15 人は経験したことがないことはなかなか理解できない。自転車と一緒 で頭でわかっていてもいざやろうとするとうまくいかない。スクラム は経験主義に基づく。なによりもまず経験から。 チームが経験するいろいろなことをスクラムマスターが寄り添い支援 する。チームの動きに合わせてチームをより良い方向へ導く。 また、スクラムはリーン思考にも基づく。ムダを省き、本質に集中す るということだが、今必要な分だけに集中するということ。過剰な変 化や成長を求めない。少しずつ確実に成長する。
やる気を阻害する障害を取り除く 16 アジャイルは「人は仕事が好きで、やる気があり、常に責任感を持っ ている」というY理論に則っている。もともとやる気があるのにやる 気を削がれてしまう。思い込みや暗黙のルールなどで人の行動は制限 されがち。その障害を取り除くことで自律や越境が促され、自ずと協 力し合うようになる。 ※X理論は「人は怠け者で、働くことを嫌い、責任を避ける」という考え方。 人間は皆、基本的にすばらしい行いをしたい。世界を少しでもよくす ることをしたい。大事なのは、そうしたいと望む人たちを邪魔する要
素を取り除くことだ。 from 『スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術』
情報とスキルを平準化してフロー効率を高める 17 フロー効率とは、効率の良い悪いを作業の流れに着目して考えるこ と。リーン思考における重要な概念。作業が滞らずに常に流れた状態 はフロー効率が高く、作業が滞ってしまうと低いということになる。 作業が滞る原因として「情報の偏り」と「スキルの偏り」がある。 知的創造において情報こそがリソースである。この情報に偏りがある と情報の受け渡しが必要となり作業が滞ってしまう。情報をなるべく 平準化することで流れをスムーズにしフロー効率を高める。 スキルが偏ることで特定のスキルのところで停滞(スタック)してし
まう。これもスキルを平準化することでフロー効率を高めることがで きる。
其の一、 協力が大事と意識づけする 18
何かあれば「ワンチーム」と言う 19 関わる人たちは誰でも開発者。ワンチームという言葉を使ってどんど ん巻き込む。「ワンチームになりたいですね」「外部パートナーもワ ンチーム」「ステークホルダーもワンチーム」「今のワンチーム感あ りましたね!」言葉にすると実現する。 スクラムでは「開発者」という⾔葉を使っているが、開発者以外を排 除しているのではなく、単純化のために使⽤しているだけである。ス クラムから価値を得ているのであれば、そこにあなたも含まれている と考えてもらいたい。
from 『スクラムガイド2020年版』
「誰かがいなくても回るようになろう」と言う 20 時短メンバーがいるので、不在の間にスタックすることがありチーム の課題であった。また、休みたいときに気を使わずに休めるようにな りたいよねという話もしていた。 そこで「誰かがいなくても回るようになろう」と言う。チームが必要 とする暗黙のゴールを言語化(透明性)して、それを使って改善する きっかけを作る。「誰かがいなくても回るようになるにはどうしたら いいですかね?」という問いでみんなに考えてもらう。
「足並みを揃えよう」と言う 21 情報が共有されていないと協力することが難しくなる。各々がバラバ ラに動いていると得られる情報がどうしても異なり情報の偏りができ る。なので情報をいかに共有するかが重要となる。 定期的に立ち止まることが有効。各々がバラバラに動いているだけで なくみんなで立ち止まり足並みを揃える。このタイミングでそれぞれ が得た情報を共有し同期させる。つまり、情報を揃えるというメタ ファーとして「足並みを揃えよう」と言う。
自分がみんなを頼る 22 「協力が大事」と言っている自分がみんなを頼らずして、誰が頼って くれるのか?自分が協力を求め協力してもらうことで、協力する経験 をチームが得て、協力することが当たり前になる。 例えば、「◦◦についてわからないので教えてください。」「◦◦の バックログアイテム、概要だけ書いておいたので後お願いできます か?」 ※頼られるとうれしいもの。こちらから頼ると信頼関係を築くことにも繋がる。
其の二、 あらゆるものを共同所有する 23
「共同所有」とは 24 エクストリームプログラミング(XP)で使われる言葉。共同所有の考 え方はコード以外でも有効。あらゆるものをチームで共同所有するこ とで、誰でも追加、変更を可能とする。チームの持ち物にすることで 柔軟にやりくりできるようになる。 コードの共同所有は、ある特定のモジュールの修正や改善を特定の人 だけにするのではなく、チームの誰でもシステムのあらゆるモジュー ルを変更可能にし、機能追加、バグ修正、設計改善、リファクタリン グできるようにする。
from www.agile-studio.jp
なんでもバックログへ 25 バックログはプロダクト開発に必要ないわゆる「要件」でなければな らないと思い込みがち。柔軟に考えていいのでは?大切なのはチーム が抱えているやるべきことに透明性が保たれていること。 チームメンバーが個々で抱えているタスクもチームのバックログに入 れる。他のプロダクトやプロジェクトのタスクがあってもいい。個々 に抱えているタスクが見える化されてチームの持ち物になれば、それ を他のメンバーが巻き取ることもできる。タスクの共同所有によって 助け合うことができるようになりフロー効率は高まる。
プランニングポーカーで暗黙知を共有する 26 プランニングポーカーとは、見積りをみんなでやる方法の1つでせー のでポイントを出し合う。フィボナッチ数列(1,2,3,5,8,13...)を使 うことが多い。このチームでは意図的に平均を取らない。基本的に全 員の合意を目指す。 「この差はなんですか?」「5ではなく8なのはなぜ?」などの問いか ら会話がうまれる。それによってそれぞれが持っている暗黙知を引き 出す。見積もりに時間はかかるが、みんなで情報を共有することで情 報の偏りをなくしフロー効率を高める。
協働作業により暗黙知を暗黙知のまま共有する 27 暗黙知とは、言葉や文章で表現することが難しい身体的な経験に根ざ す主観的な知のことである。 共同化 Socialization 表出化 Externalization 内面化 Internalization
連結化 Combination 形式 知 形式 知 暗黙 知 暗黙 知 協働作業により 暗黙知を暗黙知のまま 共有する SECIモデルは知的創造活動のプロセ スをモデル化したもの。 暗黙知を形式知にするのは難易度が 高い。言語化難しい。 なのでまずは協働作業で暗黙知の共 有からする。共同化だけでも情報の 偏りが減りフロー効率は高まる。 SECIモデル from 『スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術』
協働作業の機会を意図的に増やして共同化を促す 28 バックログの管理(リファインメント)、スプリントゴールをみんな で決める、スプリントレビュー、プランニングポーカー、コードレ ビュー、ペアプロやモブプロ、デイリースクラムもすべて協働作業の 機会になる。これらを暗黙知の共有を意識して行う。 デイリースクラムは15分で終わらなくてもいい。それよりも暗黙知の 共有を優先する。話し切れずに強制的に終わるのはもったいない。と はいえ、時間をかけ過ぎることは良くないので効率良くすることは ちゃんと考える。
あと、このチームではデイリーレビューという協働作業の機会を追加 している。作業途中のものをドラフトレビューする場。
DTA(どんなチームでありたいか)を一緒に作る 29 最初の協働作業におすすめなのが DTA(Designed Team Alliance) 。どんなチームでありたいかをみんなで一緒に考える。「これまで良 かったなって思うチームの特徴はどんなの?」「理想のチームってど んなの?」についてみんなで語り合って作る。 ちなみに今回のチームの
DTA はこれ • 足並みが揃っている!誰も置いていかない! • 隣りにいる感じでハドルを使おう! • 悩んだら壁打ちしよう! • 思ったことを口にしたりリアクションしたりしよう!
場を共有する 「これはどういうことですか?」など場に問いかける。指名して問い かけるとファシリテーターとその人だけの会話になってしまいがち。 「指名されてからしゃべる」という暗黙のルールができてしまう。 その場にいるみんなで問いを共有すると「誰がどのタイミングでしゃ べってもいいんだ」という雰囲気ができ、ファシリテーター抜きで しゃべり出す。 ネコさんはどう思いますか? みなさんはどう思いますか? わいわい
…指名待ち 30
スプリントレビューをみんなで作る 31 スプリントレビューをプロダクトオーナーに任せっきりにしない。プ ロダクトオーナーだけがしゃべらない。 成果物を実際に作った人に喋ってもらう。外部パートナーさんでも遠 慮なく。チームメンバーとステークホルダーとの会話も増やす。スプ リントレビューという場そのものをみんなで作ることでワンチーム感 を演出し強化する。 …聞いてるだけ わいわい
わいわい
其の三、 多能工化を促す 32
「多能工」とは 33 1人で複数の工程ができるようになることで、特定の工程での待ち時 間を減らすことができ、全体の流れがスムーズになる。少ないリソー スで多くの成果を出すことができるようになる。つまり、スキルの偏 りをなくすことで脱属人化できフロー効率が高まる。 ※平準化=みんな同じということではなく、得意を伸ばしながら不得意を減らすT型人材を目指す 1人の作業者が複数の工程の作業をこなせるようにトレーニングする ことである。これにより生産負荷が低い工程から高い工程へ人員を柔 軟に移動させ、負荷の平準化を常に行えるようにする。1人で複数の
加工機械を受け持ち、工程の少人化を実施する。 wikipedia 「トヨタ生産方式」
「属人化良くない」と言う 34 そもそも人は「他の人の役に立ちたい」と思っている。でも、知識や 経験がないとか、余計なことをしたら邪魔になるとか、そういう不安 がやる気を阻害する障害になっている。それを取り除くことで多能工 化を促す。 属人化は良くないという価値観が強くなれば相対的に知識や経験がな いことは重要でなくなる。ペアプロでお互いの不得意を得意で補え合 えば邪魔になるとも思わなくなる。 そうすると「やったことないからやってみたい」「そっちの方がチー
ムにとっていい」という声が出てくるようになる。
新人エンジニアの仕事の幅を徐々に広げていく 35 得意なことをやってもらいながら「やってみない?」と徐々にタスク の幅を広げてみる。経験できる機会を意図的に作る。 状況に応じて(シチュエーショナリング)こちらで段取りした方がいいときは 段取りするし、段取りなくてもいけそうなら丸投げして見守る。間で バランスを取ることもある。 先輩として気になることはあるのでちゃんと伝えるけど、押しつけな いように気をつける。自分自身が相手のやる気を阻害する障害になっ てはいけない(これが難しい)。
POが委任できるようになるのを支援する 36 「自分一人でやらなきゃ」と思い込みがち。スクラムガイドのこの部 分を知ってもらうことで「手伝ってもらってもいいんだ」ということ に気づいてもらう。 「これ僕がやりましょうか?」「それは◯◯さんにやってもらいま しょうか?」と支援して実際に委任を経験してもらう(五十六メソッド「さ せてみせ」)。そうすることで、POは委任の実感を得られて、PO以外の メンバーもPOと同じ振る舞いをできるようになる。 上記の作業は、プロダクトオーナーが⾏うこともできるが、他の⼈に
委任することもできる。 from 『スクラムガイド2020年版』
1対1のコーチングで支援する 37 「この2週間で何かありましたか?」 2週間に1回1on1をしている。目標が明確であれば、この問いかけだ けで自分で考えていろいろ気づいてくれる。立ち止まって自分自身の ことを考える時間があるだけで違うとのこと。 この2週間で何かあれば「どういうことですか?」と言語化を促すこ とで気づきが得られるし、何もなかったなら「どうしてですかね?」 と言語化を促すことで気づきが得られる。 内容によってはティーチングやアドバイスもする。「こういう選択肢
もありますよ」とか「僕ならこうやりますかね」とか。
其の四、 助け合いを促す 38
助け合いを阻害するバイアスから解き放つ 39 「自分一人でやらなきゃ」「ここから先は越えてはいけない」「余計 なことをしたら邪魔になる」人は無意識に選択肢を狭めてしまう。た ぶんこれまでの人生の中であれやるなこれやるなと言われることが多 かったから。 そういうバイアスに気づいて「一人でやらないといけないんです か?」「越える方法はないんですか?」「邪魔かどうか聞いてみませ んか?」といってバイアスから解き放つ(コーチング)。ほとんどのこと はその人の思い込みに過ぎない。
迷ってたら「やってみます?」で背中を押す。
あとはスクラムが術中にハメてくれる 40 スクラムの三本柱「透明性」「検査」「適応」をきちんと意識してス クラムイベントをやっていれば自然とチームで協働するようになる。 チームでやっていることをみんなで見て、障害となるものを発見し、 みんなでどうするといいか考える。それがもう協働になっている。効 率良くやるには、自然と情報やスキルの平準化が必要になる。
バーンダウンチャートで下げたい欲を刺激する 41 タスクの残量を見える化(透明性)したバーンダウンチャートは人の 「下げたい欲」を刺激する。デイリースクラムなどでチームで一緒に 見ること(検査)で、このままでは間に合わないなどを共通認識でき、 チームでどう解決するか一緒に考え行動する(適応)。 スクラムの三本柱「透明性」「検 査」「適応」のわかりやすい例。 偉い人が見て指示するのではなく、 みんなで見てみんなで考えることが
重要。
デイリースクラムでスプリントゴールを読み上げる 42 ゴールを意識すると、自然とゴールに向けての検査と適応が起こる。 他の人のタスクを手伝ったり、スコープを絞ろうと提案したり。前提 でのふりかえりのエピソードがまさにこれ。 確約(コミットメント):スプリントゴール ~前略~スプリントゴールはまた、一貫性と集中を生み出し、スクラ ムチームに一致団結した作業を促すものでもある。~中略~スプリン トゴールに影響を与えることがないように、プロダクトオーナーと交 渉してスプリントバックログのスコープを調整する。
from 『スクラムガイド2020年版』 ※スプリントゴールを見えるところに置くなどいろ いろ試してみたけど、読み上げるが一番効果があり そう。
術をうまくかけるコツ 43
44 合意形成を丁寧にやる 足並みを揃えて進むために一歩一歩合意しながら進めていく。誰も置 いていかない。デイリースクラムで次の話題に移るときは「次にいっ ていいですか?」。チームで新しい取り組みをするときも「新しい取 り組みで気になることないですか?」。合意形成を怠ると後々厄介な ことになりがち。 ※ちなみに、このチームに参加する際に「スクラムをどれくらいやりたいか?」を確認し「ちゃん とスクラムをやる」で合意している。新メンバーが入ってくるときも「このチームはスクラムやっ てますけど大丈夫ですか?」と聞く。
徐々に変えていく 45 いきなり大きく変えようとしない。人は他人に変えられることに抵抗 がある。チームのやり方もアジャイルに小さく小さく徐々に変えてい く。虎視眈々とベイビーステップで。 ところで、人は小さな変化にはなかなか気づけない。育休から戻って きたメンバーがチームの成長に気づいたときに、他のメンバーにその 自覚がなかったのがまさにこれ。 小さく始めなければならない。大がかりな万能薬的な取り組みはうま くいかない。
by ピーター・ドラッカー
チームが嫌がることはしない 46 チームの考えや決定を尊重して、あなたの考えや決定を快く取り下げ られたら、あなたは立派なアジャイルコーチです。 「やってみませんか?」とチームにぽ~んと投げかけて、手応えがな かったらすぐに取り下げる。 人は自分で選択できないとストレスになる(心理的リアクタンス)。選択す るのはチーム。自分自身がチームの自律の障害とならないように気を つける。 from
『コーチングアジャイルチームス』
理想は語る、何度でも 47 今チームが受け入れてくれなくても理想は語っておく。今選択しても らえなかったとしてもこういう選択肢もあることを知ってもらう。そ うすると「前言ってたのこれですね!」というときがくる。 ※しつこいと聞き耳持たれなくなっちゃうので頻度については要注意!
自分がやることの意図(なぜ)を伝える 48 人は「なぜ」に共感するから自ら選択し行動する。なぜを伝えず指示 命令しただけでは納得持って行動してもらえない。 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。 by サイモン・シネック 自律的なチームに対して自分が思っている ように動いてもらうには「なぜ」に共感し てもらえるように自分自身を変える。一度
伝えて伝わらなかったら別の表現に変える とかタイミングを変えるとかしてみる。 https://www.youtube.com/watch?v=K1jRI1RdkHE
やってみせる 49 「学ぶの語源は真似ぶ」。やったことがないことを口で説明しても体 は動かない。実際にやってみせるとそのうちチームが真似するように なる。バックログの書き方や分割の仕方、ファシリテーションなど。 させてみる前にまず自分でやってみせる。自分ができないことはさせ られないので自分ができるようにならないといけない。自分に厳しく 自らを律する(これが難しい)。 やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動 かじ。
by 山本五十六
ちょっとずつ渡していく 50 見える化ボードの更新など、最初はサーバントに率先してやるが、頃 合いを見て少しずつチームに渡していく。タスクの共同所有が定着し てくると「スクラムマスターがやらなくていい」「みんなでやろ う」ってなる。やりたいって言い出す。 チームの成熟度によってスクラムマスターの問いが変わる。 「これバックログ追加しておいた方がいいですよね?追加しておきま すね」 ➡「これバックログ追加しておいた方がいいですよね?」
➡「これバックログ追加しなくていいですか?」
タイミング大事、忍耐 51 理想は一足飛びでは叶わない。多様性のある世界であり相手の価値観 も異なる。しかし、時間をかけて情報や経験を共有していくとそのう ちイマココ!というタイミングが訪れる。 ムリなことはせず自然な流れを読む。合気道のように相手の動きを利 用する。チームから「変わりたい」とか「やってみたい」が出てく る。それらが出てくるまで忍耐強く待つ。 変化には時間がかかること、コーチには忍耐が必要なこと、アジャイ ルはベイビーステップで進めていかなくてはならないことを理解させ
てくれた。 form『コーチングアジャイルチームス』
言葉でチームを刺激する 52 「ワンチームになろう」「足並みを揃えよう」「属人化良くない」 「Whyが大事」「見える化大事」言葉にすると実現する(言葉にしないと 実現できない)。 人は目の前のことに夢中になって大事なことを忘れがち。大事なこと を思い出すきっかけを作る。大事なことを何度も口にする。そうする と強化される。 これらの言葉がチーム一人ひとりの口から出てくるようになれば浸透 /定着してきているということ。
※逆に、チームがよく使う言葉はチームが大事にしていること。それを拾って大事にすることも大 切。
選択肢は狭めず、選択肢を増やす 53 自律とは自ら選択できること。他者が選択を強制したり、選択肢が狭 められたら自律できなくなる。 ティーチングで選択肢を増やす。コーチングは選択するのを手助けす る。「しない方がいい」で選択肢を狭めるより「した方がいい」で選 択の幅を広げる。 情報を共有し、新たな選択肢を提示し、「なぜ」に共感してもらえれ ば、同じように考え同じように選択してくれるようになるはず。 ※指示命令や強制は効果が出るのは早いが、長くは続かない。
自律の人というのは、自分で自分の行動を選べる人のことである。 form『カウンセリング心理学入門』
Processes 計画・手順・ルール Interpersonal Relationships 相互の関係性 Roles 役割分担 Gaols 目標 GRPIモデルを意識する
54 チームビルディングのフレームワークであるGRPIモデルの要素がスク ラムには含まれている。仲良しグループから目標を共同所有するチー ムになるためには順番が重要。 GRPIモデル 上から順番に 合意形成する プロダクトゴール スプリントゴール スクラムマスター プロダクトオーナー 開発者 スクラム イベント DTAや ふりかえり 日々の協働作業など 関係性よりもまずゴール設定から 始める。その後に役割の明確化。 そしてプロセス。 不確実性の高い複雑なものに立ち 向かおうというときにゴール/ ロール/プロセスが曖昧だと混乱 して関係性どころじゃなくなる。
役割を見える化して足並みを揃える 55 実際の役割はプロダクトオーナー/スクラム マスター/開発者だけで説明できるものでは ない。どういう役割があるのか?誰がどのく らいその役割にコミットするのか?そういう ものを見える化してチームで足並みを揃え る。 このチームではサッカーのメタファーで見え る化してみた。明確に線が引けるものではな
いので、距離感がわかるように。ボールが多 過ぎる場合は外に出せないか?チームで考え たりした。 ※こういう形で暗黙知を形式知にすることはSECIモデルの表出 化。 新規開発 保守 別PJT
まとめ 56
まとめ 57 進捗がなくてもスプリントレビューした方が いいんですか? 「進捗がない」というありのままを観ることで 自分たちにハッパを掛けることができるんですよ 河野さんがプレッシャーをかけてくる プレッシャーをかけてるのはスクラムという フレームワークですよ また術中にハメられた(笑)
まとめ 58 • スクラムマスターもスクラムの術中にハマっているだけ • スクラムに共感し良いと思ったことをしているだけ • 書籍からの引用が多いように教科書通りにやっている • 術師がすごいのではない
術師はフレームワークを適切に使うことで 一人ひとりの力を引き出しているだけ(エンパワーメント) スクラムのソフトスキル(術)をきちんと学ぼう! ※ソフトスキルに注目せず形だけ取り入れると失敗しがち もしくは、スクラムの効果を十分に得られない
おすすめ書籍など 59
60 書籍『コーチングアジャイルチームス』 ソフトスキルを学ぶならこれ。チームの力を 最大限に引き出すためのノウハウがまとめら れた一冊。チームとの関わり方や自分自身の マインドセットについて学びが得られる。今 回のスライドを作る直前に読み終わり、重な る部分が多いなと感じた。
61 書籍『スクラム 仕事が4倍速くなる世界標準のチーム戦術』 スクラムの創始者の一人ジェフ・サザーラン ドがIT業界以外に向けて書いたスクラム本。 スクラムの本質が解説されている。スクラム で定義されている数々のルールは「なぜ」存 在しているのか?それを使うことでどういう 効果が得られることを期待しているのか?が 学べる。
62 PDF『スクラムガイド』 やっぱりスクラムガイドは必読。シンプルが ゆえに奥が深い。ボリュームが少ないので一 度読んだだけで満足せず何度も読み返す。そ うすると前回にはなかった学びが得られる。 チームで読み合わせするのも良し。 https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
63 書籍『エンジニアリング組織論への招待』 情報の偏り(情報の非対称性)について意識 するようになったきっかけの本。他にも認知 の歪みなどの思い込みについてや、行動を阻 害する力など今回のスライドに通じる話題が たくさん。さらに、組織運営や目標管理な ど、組織マネジメントに必要なあれやこれや がまとまっている良書。
64 書籍『老子の教え あるがままに生きる』 今回のスライドでは全編通して「ちょっとず つムリなくできる範囲で進めていく」ことの 重要さに触れている。「足るを知る」「柔よ く剛を制す」など、あるがまま自然なまま生 きていくことの大切さを学べる。リーン思考 の本質とはこういうことかと。この本でなく ても老子を学んでみることはおすすめ。
ご清聴ありがとうございました