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Theoretical studies of laser-induced multiphoto...

kimikazu
December 19, 2006

Theoretical studies of laser-induced multiphoton absorption processes on diatomic molecules(二原子分子におけるレーザー誘起多光子吸収過程に関する理論的研究)

kimikazu

December 19, 2006
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  1. )

  2.  背景および序論  A. 多光子吸収 – 目的 – 理論・計算方法 –

    結果・議論 – 結論  B. 多光子解離・超閾解離 – 目的 – 理論・計算方法 – 結果・議論 – 結論  要約
  3.  超短パルス・強電場レーザーの利用が可能となり,同時に多光子 吸収を伴う非線形光学過程が,分子系の励起・イオン化・解離 過程と関連して強く興味が持たれるようになっている. – 結合軟化(Molecular bond softening) H2 +,

    P.H. Bucksbaum et al. Phys. Rev. Lett. 64, 1883(1990). – 超閾イオン化(Above-threshold ionization, ATI) H2 +, A. Gusti-Suzor et al. Phys. Rev. Lett. 64, 515(1990). – 超閾解離(Above-threshold dissociation, ATD) Li2 +, Na2 +, S. Magnier et al. J. Phys. Chem. A. 103, 10691(1999). OD, D.Č. Radenović et al. J. Phys. Chem. 119, 9341(2003). ClO, H. Kim et al. Phys. Chem. Chem. Phys. 8, 2964(2006) – 多光子吸収(Multi-photon absorption, MPA)
  4.  レーザー光を用いた量子制御・化学反応制御 ・特定の状態への選択的遷移. ・効率の良いレーザーパルスの設計. – π-パルス法 エネルギー準位間隔に一致する共鳴周波数を用いる.近接準位が存在 する場合,周波数分布を鋭くする必要があり時間がかかる. – チャープパルス法

    非断熱遷移が無視できるほど徐々に周波数を時間変化させる. – 誘導ラマン断熱通過法(STIRAP) 確率移動 |1> → 中間状態|2> → |3> を2つのパルスで実現するが,先に |2> → |3> 遷移に対応するストークスパルスを照射する. – 光誘起ポテンシャル断熱通過法(APLIP) STIRAPの拡張の1つ.準位の代わりに波束を用いており,核座標に依 存した制御が実現できる.
  5.  多準位・連続準位の取扱いの問題点 – 分子過程などの現実系には,多数の状態 が存在し,遷移双極子モーメントによっては, 強電場の下で目的状態への完全遷移を阻 害する多光子吸収が発生する. – 不安定な連続準位に至る多光子吸収過程 では,閾値を越えた光子の過剰吸収による

    超閾イオン化・超閾解離が生じる. – Carrollら(1992),Nakajimaら(1994)により N準位系・連続準位への拡張が試みられて いるが,完全遷移は得られていない. →モデルとして二原子分子の振動準位を用 い,レーザー誘起による多光子過程の機構 を明らかにする. 連続準位 束縛準位 始状態 
  6.  同時多光子吸収を利用した 振動準位の選択的遷移 |0> |1> |2> |3> |4> |17> 

        1. OHのMorse振動準位間遷移について, n次元連立時間依存Schrödinger方程式を 解き,多光子吸収(1-,2-,3-,4-光子)過程にお ける非線形性を解析する. 2. 高振動励起状態|4>を効率的に生成す るために,二光子吸収をPump-Stokesパル スに利用した誘導ラマン断熱通過 (STIRAP)法を適用する. →高収率の選択的遷移を目指す. K. Sugimori et al. Int. J. Quantum Chem., 105, 596 (2005).
  7.  時間依存Schrödinger方程式(TDSE)の解法:固有状態展開法 H 0 は分子系の無摂動ハミルトニアン,V(t)= - mE(t)は電場と分 子の双極子相互作用,m は遷移双極子モーメント演算子. 状態ベクトル|n>はH

    0 の固有状態(振動準位)で展開. m mn は準位|m> |n>間の遷移双極子モーメント,  mn は準位間のエ ネルギー間隔,占有率(ポピュレーション)は次式で求められる.   ( ) ( )exp mn mn nm n H t E t i t m   - -  0 ( ) ( ( )) ( ) d i t H V t t dt     ( ) ( ) n Ψ t C t n   ( ) ( ) ( ) m mn n n d i C t H t C t dt   2 ( ) ( ) n n P t C t 
  8. Matrix form of TDSE 1,0 2,0 0,1 2,1 0,2 1,2

    0,1 0,2 0 0 1 1,0 1,2 1 2 2 2,0 2,1 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 i t i t i t i t i t i t E t e E t e C t C t C t i E t e E t e C t C t C t E t e E t e       m m m m m m - - - - - -                                ・解くべき連立微分方程式(3準位系) 1,0 17,0 0,1 17,16 0,17 16,17 0,1 0,17 0 0 1,0 1 1 16 16,17 17 17,0 17,16 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) ( ) 0 i t i t i t i t i t i t E t e E t e C t C t E t e C t C t i C C t E t e C t E t e E t e       m m m m m m - - - - - -                                    16 17 ( ) ( ) t C t                 ・解くべき連立微分方程式(18準位系) 1, , ( ) nm nm n m n r m m     - e e エネルギー間隔,遷移双極子モーメント行列が必要
  9. 電子基底状態のab initio計算 ・ 方法: UQCISD (非制限開殻 Quadratic CI法) ・ 基底関数:

    cc-pVTZ (Dunningによる電子相関用三倍原子価基底関数系) ・ 基底電子状態(X2P)のポテンシャル・エネルギー曲線を計算 ・ Morse近似関数U(r)への フィッティング (パラメータDe , a, re の決定) Parameter for Morse oscillator Dissociation energy D e / a.u. 0.1703 Equilibrium distance r e / Bohr 1.7820 a / Bohr-1 1.3730 ( ) 2 ( ) (1 ) e r r e U r D e a - -  -
  10. |0> |1> |2> |3> |4> |17>    

     振動準位:解析解の利用 2 2 r 1 ( ) ( ) ( ) 2 d U r r r dr   m   -       e (bound state : n = 0, … , 17) 2 1 1 2 2 n h e h n x n         -          e  )  )  ) 1 2 2 1 2 2 0 ( ) ( ) 1 2 2 n n n n b b n n n b b n j n j d j z N e z L z n N e z j d n z d n j  -  - -  -      -      -   - -  ・ここではMorse oscillatorの解析解で展開する. ( ) 2 ( ) (1 ) e r r e U r D e a - -  - ・MorseポテンシャルU(r)に従うSchrödinger方程式を対角化して 固有値・固有ベクトルを求めればよい. |0> |1> |2> |3> |4> |17>     
  11. 各振動準位間の遷移双極子モーメント 1 2 1 2 , ! (2 ) (

    ) ! (2 ) z nm n m n m z m d m b b n d n       -     -   μ ・z成分の遷移双極子モーメント , 2 ( ) nm z nm r m n a m    - μ μ 1 2 , 2 n b d n    - -     1 2 (2 ) r e D d m a  ここで ・遷移双極子モーメント Table: Transition dipole moment of mn ,n +1 of OH. n , n +1 0, 1 1, 2 2, 3 3, 4 4, 5 5, 6 6, 7 7, 8 8, 9 9, 10 0.1242 0.1783 0.2217 0.2600 0.2954 0.3290 0.3616 0.3934 0.4250 0.4565 10, 11 11, 12 12, 13 13, 14 14, 15 15, 16 16, 17 0.4882 0.5202 0.5524 0.5844 0.6144 0.6321 0.4690
  12. シミュレーションの計算条件: ・1-,2-,3-,4-光子吸収に対応するパルス周波数 (a) 1-光子吸収:   1 -0 ) =

    3982 [cm-1] (b) 2-光子吸収:   2 -0 )/2 = 3871 (c) 3-光子吸収:   3 -0 )/3 = 3747 (d) 4-光子吸収:   4 -0 )/4 = 3628 ・パルス幅: s  30ps に固定 電場: Gauss波形 ・目的状態のポピュレーションが 最大になるまで電場強度 I を変化  )2 0 0 2 ( ) exp cos t t t E t  s   -  -       E 9 (V/cm) (a.u.) 5.14 10 | ( )| E t   E 2 16 2 (W/cm ) (a.u.) 3.52 10 | ( )| I t   E
  13.  最大ポピュレーション時の電場強度Imax (W/cm2)  P(I)=sn In から求められたcross section sn 1-photon

    4.88 × 10-7 (cm2/W) 2-photon 7.29 × 10-18 (cm4/W2) 3-photon 1.37 × 10-29 (cm6/W3) 4-photon 7.66 × 10-42 (cm8/W4) cross section sn Imax Ratio (%) 1-photon 4.74 × 106 100.00 2-photon 5.68 × 108 99.98 3-photon 5.58 × 109 99.88 4-photon 2.36 × 1010 94.51 4光子吸収では, 目的状態の最 大ポピュレーションを得るために はより大きな電場強度が必要と され,完全遷移は達成されない. cross sectionは, 電場強度の大き な領域では定数を取らないが, 比較的小さな電場強度領域で はn次の摂動論で説明できる. →完全遷移を得るために多光子吸収過程を直接扱うことは困難
  14.  Pump-Stokes光 に二光子吸収過程を利用.  1 2 0 2 4 2

    Pump: ( )/ 2 Stokes: ( )/ 2        -  - Table: Laser Parameters of 2-photon STIRAP Temporal Frequency Intensity center (cm-1) (W/cm2) (ps) 1 (Pump) 7742.64 5.49×109 115 2 (Stokes) 6784.99 1.42×109 85 パルス幅: s  30ps 2 1
  15.  Morse oscillatorで記述した振動準位で展開したn次元連立 TSDEにより,多光子吸収過程(1-,2-,3-,4-光子過程)を計算した.  ポピュレーション変化は電場強度 I に依存し,電場強度の弱い領 域では摂動論の意味でのcross sectionが数値的に求められた.

     高振動励起状態|4>を効率的に生成するために,直接の多光子 吸収を利用するのではなく,遷移確率の高い2光子吸収過程を Pump-Stokesパルスに利用したSTIRAPを適用した.結果としてほ ぼ完全に目的状態を得られた.  より強い電場を用いる場合には,連続(解離)状態まで含んだ多光 子過程の検討が必要
  16. |10> | E > |17> |0>  非共鳴パルス周波数を用いた 振動準位→連続状態遷移 1.

    波束ダイナミクスを用いて,OHのMorse 振動準位-連続準位間遷移に伴う多光子解 離過程を解析する. 2. 高強度レーザーパルスにより生成した 連続状態波束のエネルギースペクトルを解 析し,超閾解離(ATD) の機構について知見 を得る. ・一定以上の強電場の場合には,目的とす る振動-振動準位間のみならず,望まない 振動-連続状態間に遷移確率が生じるため, 連続状態の考慮が必要となる. K. Sugimori et al. Int. J. Quantum Chem., 106, 3079 (2006).
  17. Morse oscillator model of OH molecule : Time-dependent Schrödinger equation

    :波束伝播法 0 ( ) ( ( )) ( ) d i t H V t t dt     ( ) 2 M ( ) (1 ) e r r e V r D e a - -  - 0 M H T V    ) 0 ( ) exp ( ) (0) i t H V t      -      形式解 実際の計算では,波動関数を短時間Dtで伝播していく波束と して表わし,繰り返し計算をする.
  18. Split-operator method(分割演算子法): 各振動状態の占有率 (Population): |n> はMorse振動子の振動固有状態で展開 DVR(座標空間の離散変分表現): N=65536, Dx=0.01 [Bohr]

    ( ) ( ) ( ) t t U t t  D  D  M M ( ( )) ( ( )) 2 2 ( ) i i i i H t V V t t T t V V t t U t e e e e - D -  D - D -  D D   2 2 ( ) ( ) ( ) n n P t C t n t    ( ) ( ) ( ) V t r t  -  μ E where ( ) r x  μ Dt=0.01[ps] ( ) ( ), where N i i i x x x i x     D 
  19. 1 1 0.1703 / a.u. 1.7820 / Bohr 1.3730 /

    Bohr 2633/ cm e e D r a  - -     Laser field :  ) 0 2 0 2 ( ) sin ( ) exp E t E t t t s    -  -      初期状態 : |10> 非共鳴周波数 :  連続状態 |E> 振動状態 |n>
  20. Continuum state and dissociation probability: 解離確率 連続状態波束 Time-dependent spectrum method:

    17 D 0 ( ) 1 ( ) n n P t P t   -  17 cont. 0 ( , ) ( , ) ( ) ( ) n n n r t r t C t r      -    / 2 2 1 ( , ) ( ) ( ) sin ( ) / 2 ( ) ( ) / 2 ( ) ( ) ( ) t T iE t n n n n n n n S E t e t d T E T C t E T C t E T         -  -  -      e e e 振動準位エネルギーn に 棒状スペクトルが現れる. 解離確率には,連続状態に 含まれるエネルギー分布の 情報は得られない.
  21. E0 = 4.0 × 10-3 a.u E0 = 6.0 ×

    10-3 a.u bound state bound state dissociation dissociation
  22. t = 12.5 ps 3 4 5 6 |E> |10>

    |6> 3 4 5 6 |E> |10> |6> t = 20 ps
  23. t = 12.5 ps 3 4 5 6 |E> |10>

    |6> 3 4 5 6 |E> |10> |6> t = 20 ps 3 4 5 6 |E> |10> |6> t = 25 ps
  24.  非共鳴パルスを用い,OHラジカルの基底状態Morse potentialモデル における,高振動励起状態|10>から連続状態への多光子解離をシミュ レートした.1次元波束は656[Bohr]までの座標空間を伝播させため,高 いエネルギーを持つ連続状態波束の解析が可能となった.  連続状態に現れる波束のエネルギー分布は,各時間で取り出した波束 を用いたスペクトル法により求められ,連続状態の領域にATDスペクトル が見出された.本手法によるエネルギー分布は,時間を追って取り出すこ

    とができ,振動-連続状態間および連続-連続状態間の詳細な遷移機構が 解析可能となった.  ATDスペクトルにより,多光子解離後のフラグメント原子・イオンのエネ ルギー分布の解析および制御につながる知見が得られた. 検討課題  STIRAP法などの制御法を用いて,特定のATDピークを抽出するパルス 列をデザインする.解離フラグメントイオンが持つ運動量を制御することが 可能となれば,その後の化学反応制御が期待される.
  25. A) 多光子吸収:振動準位→振動準位 – 振動準位で展開したn次元連立TSDEにより,多光子吸収過 程(1-,2-,3-,4-光子過程)を計算し, 多光子吸収過程では,目 的状態のポピュレーションが最大となる電場強度Iのcross sectionが摂動論の範囲で説明されrた. – 2光子吸収過程をPump-Stokesパルスに利用したSTIRAP法

    により,高振動励起状態を効率的に生成した. B) 多光子解離:振動準位→連続準位 – 波束ダイナミクスにより,非共鳴パルスを用いて高振動励起状 態|10>から連続状態への多光子解離をシミュレートした. – 連続状態波束のエネルギースペクトルを各時間で追跡するこ とで,振動-振動準位間および振動-連続準位間の遷移過程を 解析した.ATDに特徴的に現れる吸収光子数に応じたピーク が得られた.
  26.  回転遷移・電子遷移への拡張 – 遠心力項により,回転量子数 j を考慮に入れる. – 電子基底状態と電子励起状態ポテンシャルとの相互作用を 考慮に入れ,紫外領域(UV)の周波数を用いた多光子解離過 程の検討.

     最適化制御法の組み込み – パルスパラメーターの調整に最適化制御法を導入.ただし, 計算コストが問題となるため,高速化が必要.  連続状態のエネルギー分布(ATDスペクトル)の制御 – 倍音パルス周波数(2)を同時に照射させ,ATDのコヒーレン ト制御を試みる.また,連続状態を経由させての選択的遷移 も検討する必要がある.
  27.  線形近似: m(r) = x |10>    |E>

    解離確率 PD = 0.5 ; 電場強度 E = 0.002 a.u (1.4 × 1011 W/cm2)  Mecke 関数: m(x) = m0 x exp[ - x / x0 ] |10>    |E> 解離確率 PD = 0.5 ; 電場強度 E = 0.116 a.u (4.7 × 1014 W/cm2) P10 Bound state Dissociation  intermediates
  28. 1 1 0.1703 / a.u. 1.7820 / Bohr 1.3730 /

    Bohr 2633/ cm e e D r a  - -     Laser field :   1 2 2 0 2 ( ) sin sin( ) ( ) ex 2 p E t E t E t t t s       -  -       初期状態 : |10> 非共鳴周波数 :  倍音周波数: 2 連続状態 |E> 振動状態 |n>
  29. E1 = 2.0 × 10-3 a.u E2 = 4.0 ×

    10-3 a.u 位相因子 = 0 重ね合わせた倍音パルスの影響はほとんど見られない. 3 4 5 6 |E> |10> |6>
  30. E1 = 2.0 × 10-3 a.u E2 = 4.0 ×

    10-3 a.u 位相因子 = p |10> |E> |6> 3 4 5 6 位相の調整により,4光子吸収に対応するピークが抽出された. 3 4 5 6 |E>
  31.  p-pulse法 1,0 2,0 0,1 2,1 0,2 1,2 0,1 0,2

    0 0 1 1,0 1,2 1 2 2 2,0 2,1 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 i t i t i t i t i t i t E t e E t e C t C t C t i E t e E t e C t C t C t E t e E t e       m m m m m m - - - - - -                                ・解くべき連立微分方程式(3準位) 1,0 17,0 0,1 17,16 0,17 16,17 0,1 0,17 0 0 1,0 1 1 16 16,17 17 17,0 17,16 0 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) 0 ( ) ( ) ( ) ( ) 0 i t i t i t i t i t i t E t e E t e C t C t E t e C t C t i C C t E t e C t E t e E t e       m m m m m m - - - - - -                                    16 17 ( ) ( ) t C t                 ・解くべき連立微分方程式(18準位) STIRAP(誘導ラマン断熱通過)法