行うことが可能である. また, 稼働状況は自動潅水コントローラからMQTT プ ロトコルを用いて農場ネットワーク内の LTE ルータを 介し, クラウド上の可視化システムに送信することで遠 隔監視を実現している. 稼働状況の遠隔監視 図 3 に、潅水システムの可視化の例を示す。 図 3 潅水コントローラの稼働状況及び 環境センシングデータのクラウドでの可視化例 クラウド側では, 自動潅水に関して以下の要素をモニタ している. ・バルブおよびポンプの制御指令 ・システム電圧, 消費電流 ・圧力センサの指示値 本システムでは, 自動潅水動作に加え, 手動スイッチ盤 による手動操作も併用している. また, 工事の進捗の都 合により, 本報告の段階では全16 か所中8 か所のみの導 入に留まっているが, 圧力センサの指示値および消費電 流のモニタ結果から, 手動バルブ操作の状況も遠隔で推 定可能であることが確認されている. 図 4 潅水稼働時の水圧の推移 図 4 に潅水システム稼働時の水圧推移を示す. 導入当 初(2 月 10 日〜2 月 18 日)は水圧が十分に上がらず, 潅 水チューブでムラなく潅水できる圧力が得られなかった. その後, ポンプ下流に設置されたストレーナーをユーザ が洗浄した結果(2 月 25 日以降), ムラなく潅水可能な レベルまで圧力が回復していることがデータから確認で きる. また, バルブおよびポンプ制御はコントローラか らは行われていないものの, 消費電流の推移からモータ 制御用の電磁接触器が手動スイッチにより作動し, その 結果として圧力変化が生じていることがモニタされてい る. これにより, 自動化未導入箇所における手動弁操作 も遠隔で推定可能であることが明らかとなった. ユビキタス環境制御システムとの連携 ここまでで潅水コントローラ単独での動作について述 べたが, 本節ではユビキタス環境制御システム(UECS) を併用した場合の潅水遠隔監視の活用について述べる. 土壌水分や日照量に応じた潅水量最適化については, 既 に各社で製品化が進んでいるため詳細は割愛するが, そ の際に必要となる流量の計測には課題がある. 流量計に よる直接測定は可能であるものの, 流量計のコストや保 守, さらに圧力損失といった導入上の障害が存在する. これに対し, 各ハウスの電磁弁直後, 潅水ホース手前に 圧力センサを設置し, UECS ネットワークを介して圧力 データを取得する方法が考えられる. この場合, 潅水コ ントローラ側で取得した送水端圧力との差分により管路 内の圧力損失を実測できる. 流量は圧力損失の平方根に 比例するため, 事前に較正を行うことで流量推定が可能 となる. 圧力センサは流量計に比べ安価かつ設置も容易 であり, また潅水ホース手前の圧力情報は潅水状況の把 握や, フィルタ, 潅水ノズルの保守にも有用である. し たがって, UECS 対応の圧力センサノードの開発と, その 有用性の検証が今後の課題である. さらに, 現状の潅水ポンプは ON/OFF 制御であり, 複数 ハウスのバルブを手動で開閉して圧力調整を行っている が, ポンプにインバータ制御を導入することで, 圧力調 整の自動化が可能になると考えられる. インバータは工 場ラインのリユース品が 1 万円前後で入手可能であり, RS485 等の汎用プロトコルに対応したインバータ制御用 UECS ノードの開発も有効と考えられる. また, 稼働状況の監視については, 利用者が関心を持つ のは「正常に動作しているか否か」の情報である. よっ て, 圧力推移などから正常稼働を判定し, LPWA 等の安 価な無線ネットワークを用いてクラウド経由で, LINE 等 の一般的なメッセンジャーによる通知を行うことが現実 的である. この機能を実現するためには, UECS ネットワ ーク内のデータから稼働情報 (正常/異常/健全度等) を生 成し, LPWA 等を介してクラウドに送信するゲートウェ イの開発が有効と考える. 謝辞 本報告の開発にあたり, ご協力いただいた福岡県三潴 郡大木町の熊丸様には, 数々のご指摘とご助言を賜り, この場を借りて深く謝意を表する.