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小杉考司(専修大学)

Koji E. Kosugi
September 06, 2024

 小杉考司(専修大学)

日本心理学会第88回大会 SS-028 「構成概念はこうせい!心理学者が測っているものは何か」で話したスライドです。

Koji E. Kosugi

September 06, 2024
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Transcript

  1. お題;心理学者が測っている ものはなにか • この問いには「理論」と「方法」の2側面から答えられるが,えて してこの両者を混ぜて答えがち。これが惨憺たる現状の一因。 • 理論的な説明は杓子定規な感じで,「現実的にはそれほど 理想的にはいかない」という言い訳がいつも成り立つ • 方法論的な説明はHow

    toの解説になり,何をしてるのか わからなくても実践できてしまう • 心理測定学は研究法的側面と統計法的(数理的)側面をあわ せもっており,方法論の礎になるこの「学」が授業などで展開 されていないという構造的問題を指摘します 4 ҎԼɼ৺ཧई౓ʹݶఆ͓ͨ͠࿩ʹͳΓ·͢ɻ
  2. ৺ཧֶత࿈ଓମʢ৺ཧֶ͕ର৅ͱ͢Δൣғʣ ෺ཧత൓Ԡ ৘ใ ݸਓͷ ओ؍తҙຯ ࣾձత ؒओ؍త߹ҙ ଌఆํ๏ 物理的測定 (狭義の)心理測定

    態度測定 テスト ? 物理モデル 計算モデル 多変量解析 ? ଌఆϞσϧ ݚڀର৅ ݸਓͷओ؍తʮҙຯʯʮܦݧʯΛଌఆ͢Δํ๏΍Ϟσϧʹ͍ͭͯ͸΄ͱΜͲސΈΒΕͣɼ ࣾձతɾؒओ؍తҙຯͷଌఆϞσϧΛޡͬͯར༻͍ͯ͠Δέʔε͕ଟ͘ΈΒΕΔ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ
  3. 10 ࣾձతʹҰகͨ͠ର৅ ࣾձతଶ౓ͷԾఆ ㅟ ㅟ • 態度は対象がある • 態度は正と負がある •

    極端な態度を取る人は 少なく,中庸的態度が 一番おおい ෯E ΧςΰϦͷई౓஋ZE ີ౓ͷࠩZ 測定の モデル ਖ਼ن෼෍ΛԾఆ͢Δ
  4. 構成概念の「接地」 12 ݱ࣮ੈք ֓೦# ֓೦" ֓೦$ ࿦ཧత݁߹ Պֶతମܥ ݱ৅ੈք ܦݧత݁߹ʢૢ࡞తఆٛ౳ʣ

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  5. 理論的に言えること • 尺度作成の根本は学力検査,態度調査 • 社会の側に基準(正誤,個人差に対する仮定)がある • 「正規分布する」,すくなくとも何らかの理論的分布に従う,ということ が明らかにされていなければ適切な尺度化(数値化)はできていない • 個人の内部に関する要素の同一性(局所均質的構成概念の仮

    定;Borsboom(2005))が満たされないものは,カテゴリの度数を数え上 げることさえ限定的な意味しか持ち得ない • 本当はわからないけどこのカテゴリに反応したという意味で「同じ」とみ なす,という無機質な解釈なら可能 • →リッカートのような得点化は原理的に無理 • →因子分析のようなデータ生成メカニズムを扱うモデル化は不適切 ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ ㅟ 14
  6. 「理論」が求められている • 社会心理学の理論が弱い • 個人と社会(内と外)を分ける明確なアイデアがなく,社会的 刺激に反応する個人の内的プロセスを「態度」としてしまっ たのではないか。(ex.社会的態度の感情的側面) • 次第に 感情>感想>お気持ち>心,のように徐々に解釈が

    緩んでいったのでは? • 「方略」「思考」「イメージ」「評価」「動機」「〜感」はどの要素? • 個人内心理学をしたいのであれば,尺度化の理論はまだない • 我々は心の中を測れてはいない • そもそも個人の主観的経験を言葉でまとめること自体が可 能なのかという哲学的,原理的議論からやり直そう 15
  7. 方法論的に語られること • 尺度作成の手順と諸注意(ノウハウ) • 構成概念の明確化,尺度項目の準備,サンプリング,ワーディン グ,倫理的配慮,翻訳するときの標準的手順 • 尺度水準,信頼性と妥当性 • 因子分析(探索的,確認的)の様々なオプション

    • 語られないこと • 態度理論(=リッカート法はなぜカテゴリに数字を振れるのか) • 因子分析の数理的意味;相関行列の固有値分解など • 因子分析以外の多変量解析的アプローチ 18
  8. 小塩編(2024)心理尺 度構成の方法,誠信書房 • ちゃんと書いてる本が出た • 等現間隔法,シグマ法にもちゃんと 言及している! • 正規分布の仮定を強調している! •

    BorsboomからCOSMINまで幅 広く理論・実践をカバーしている! 19 分布の仮定がピュアすぎること,因 子 分析以外のモデルに 言 及していないことなど マニアには物 足 りない部分もありますが今のところ最良の 一 冊。
  9. 方法論的に取りうる対応 • 非計量多次元尺度構成法をもっと活用しましょう • 項目間相関でも個人間距離でもデータにできる • 測定モデルではない;距離関係を反映したモデル空間上での可視化 を目指したもの • 古くから個人差モデル(INDSCAL等)が提案されており,個人の内

    的世界の共通するところ・しないところが明示的にモデル化されて いる • クラスター分析ももっと活用しましょう • 用途が個人差の分類にあるのなら,測定モデルを介さなくても十分 23 ωοτϫʔΫ෼ੳ΋͍͍ΑͶʂ
  10. 1. 外的基準で数量化でき,それに対応する尺度である→心理尺度 である必要はないが,ラフな近似としての意味があるかも? 2. 反応パターンが一義的でそれに対応して直接意味のある数値化 ができる→テスト理論 3. 反応パターンが一義的で,反応カテゴリの集積が確率分布に従う と仮定できることから,尺度値が数値化できる→態度理論/因子 分析モデル

    4. 反応パターンが一義的だが,確率分布が仮定できない→測定モ デルを止める。MDS,クラスタリング,パターン分類へ 5. 反応カテゴリが一義的でなく,程度の評価は個人ごとに異なる→ 非計量MDSの3相モデルなど積極的に個人差をモデル化する 6. 反応カテゴリに個々人の意味が付与されており,その人にしかわ からない→測るという目的に合致しない 24 ৺ ཧ ई ౓ ͷ ར ༻ Մ ೳ ੑ
  11. まとめ • 理論的に;尺度を使う前にちょっと落ち着いて考えよう • 古い論文を読むと,Paper and Pencilで得られるものは本質 的でなく精度の低い近似値でしかないという扱いを受けていた • 発展したのは統計モデルにすぎない

    • 方法論的に;因子分析を使う前にちょっと落ち着いて考えよう • スコアの分布とその意味についても考察・報告するようにしよう • 非計量MDSやクラスター分析も検討しよう • 制度的に;研究法でも統計法でもない心理測定学を教えよう 25