Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

末尾呼び出し最適化とJavaScript

 末尾呼び出し最適化とJavaScript

著者情報 : kota-yata.com
プレゼン動画 : https://www.youtube.com/watch?v=BcaPCnWZuvY

kota-yata

April 23, 2021
Tweet

More Decks by kota-yata

Other Decks in Programming

Transcript

  1. もう少し詳しく 末尾再帰関数(さっきの階乗の関数の例)の場合、スタックを追うと Trace at factorial (/Users/hoge/test.js:2:11) at factorial (/Users/hoge/test.js:4:10) at

    factorial (/Users/hoge/test.js:4:10) at factorial (/Users/hgoe/test.js:4:10) 末尾で同じ処理を繰り返してなんらかの条件で処理を終了する... ループと同じでは? 実質的な処理はループと同じなので、機械的にループ⽂に変換することができる 逆に末尾再帰でない再帰関数を機械的にループ⽂に変換するのはかなり難しい 2021/04/23 - @kota_yata
  2. TCOが適⽤される条件 その呼び出しが確実に最後の処理になる場合 ブロック直下での返り値 const hoge = () => { ...

    return hoge() // 確実に最後の処理になるためTCO が適⽤される } 2021/04/23 - @kota_yata
  3. TCOが適⽤される条件 その呼び出しが確実に最後の処理になる場合 if⽂の場合if内とelse内の両⽅ const hoge = () => { if

    (...) { return hoge(); } else { return hoge(); } } どっちに転んでも hoge() が実⾏されるためTCOの対象 2021/04/23 - @kota_yata
  4. TCOが適⽤される条件 その呼び出しが確実に最後の処理になる場合 try-catchの場合catch内 const hoge = () => { try

    { return hoge(); // この後にエラーハンドリングがあるのでTCO の対象外 } catch (err) { return hoge(); // このエラーハンドリングが最後の処理になるのでTCO の対象 } } などなどTCOが適⽤される条件は単純ではない 2021/04/23 - @kota_yata
  5. 経緯 2011年頃 : TC39内で同意をとり、TCOの実装をES6に盛り込んだ 2015年 : ES6がリリース。この時点ではまだどのブラウザもTCOを実装していなかった 2016年初頭 : Safariが実装。ChromeはExperimental

    Feature Flag(Origin Trials)として実 装した。ここでMozillaチームとMicrosoftチームが⽂句を⾔い始める 2016年中頃 : Mozillaの指摘を受けてChromeチームがSyntactic Tail Callsというプロポーザ ルを提出する 2021/04/23 - @kota_yata
  6. Syntactic Tail Calls(以下STC) その関数をTCOの対象にするかどうか明⽰的に指定するような⽂法を盛り込んだプロポーザ ル const formalHoge = () =>

    { return formalHoge(); // TCO されない従来の書き⽅ } const syntacticHoge = () => { return continue syntacticHoge(); // STC で盛り込まれたcontinue を⽤いた明⽰的なTCO の指定 } こうすることで、開発者が主体的にTCO対象にするか否かを選択できる。 デバッグが容易になり、スタックオーバーフローも正しく回避できる。 最⾼じゃん! 2021/04/23 - @kota_yata
  7. STCプロポーザルが提出された時点での⽴ち位置 Microsoft : TCOは実装すべきでない Mozilla : TCOは実装すべきでない。なんならTCOの仕様をES6から削除すべき Chrome : TCOの代替策としてSTCを提⽰した

    Safari : TCOをES6の仕様通りに実装すべきである そもそもSTCとES6のTCO仕様は共存できない(明⽰的に指定するか暗黙的に対象にする か) その上でSafariは唯⼀TCOの実装を推し進めているブラウザだったため、STCを承諾するわけ には⾏かなかった。 Mozillaも反対し、結局STCのプロポーザルは承諾されなかった。 2021/04/23 - @kota_yata
  8. じゃあどうすれば... ⾃分で最適化しましょう。 const factorial = (number, result) => { if

    (number === 0) return result; return factorial(number - 1, result * number); } // ⬇ ⾃分でwhile ⽂に書き直す const factorial = (number) => { let result = 1; let count = number; while(count > 0) { result *= count; count--; } return result; } // やってることはコンパイラが機械的に⾏っているTCO と同じ 2021/04/23 - @kota_yata