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50年前からやり直そう:指標をめぐる記号論と言語人類学の分岐をめぐって

Kanta Tanishima
March 18, 2025
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 50年前からやり直そう:指標をめぐる記号論と言語人類学の分岐をめぐって

日本記号学会研究会「情報技術とプラグマティズム研究会」におけるオンラインセッション「記号論×言語人類学:記号論の一つのフロンティアとしての指標性」での報告スライド。

Kanta Tanishima

March 18, 2025
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Transcript

  1. アンドレ・バザン「映画のリアリズム」(「写真映像の存在論」, 1945) ロラン・バルト「コードなきメッセージ(「写真のメッセージ」, 1964)」 ピーター・ウォーレン『映画における記号と意味』(1969) ロザリンド・クラウス 「指標論ノートI/II」(1977/1978) パースの指標の観点からの再解釈 (ヤコブソンによるパース再評価の強い影響) メディア論的指標概念とは

    写真を範例として、記号と対象(現実)との技術過程と紐づいた 物理的・因果的連続性に基づく表現効果を説明するためにパースの 指標概念を援用するアプローチの産物 ちなみに Silverstein, Michael. 1976. “Shifters, Linguistic Categories, and Cultural Description.” 4
  2. 1) どの世界の中で 2) (どのような)誰にとって 3) その記号は 4) 何を指し示すのか 「客観的な物理世界」をあらかじめ前提とする空間・時間ダイクシスは 2)~3)で機能する(「あれ」、「さっき」、「わたし」)

    しかし多元的な社会世界が参照される場合には、1)が重要になる ☞「主体的定位 subjective orientation」(ビューラー) 「投錨anchoring」(シルヴァスティン) 社会的指標性 social indexicality (ex. ジェンダー、敬意、言語変種、その他さまざまなレジスター) 世界への投錨 11
  3. 「流通 distribution/ circulationの」問題系 ・わたしたちが投錨する流通回路が私たちが誰で あるかを一定程度作っている Miller, T., Schiwy, F., &

    Salván, M. H. (2012). Distribution, the forgotten element in transnational cinema. アメリカにおけるラテンアメリカ映画の流通について ・流通のチャンネルはエステティックなコミットメントの対象にもなる Larkin, B. (2004). Degraded Images, Distorted Sounds: Nigerian Video and the Infrastructure of Piracy. 海賊版のビデオというメディアインフラをインデックスする劣化した映像への エステティックなコミットメント 17
  4. 24 近年はすでに二つの文脈を交差させる試みも 2020年のSemiotic Review誌でのヴァーチャル座談会 “Opening Up the Indexicality of the

    Image, Again.” (Ball et al. 2020) 映画研究、パフォーマンス研究、言語人類学、映像人類学、アニメーション研究、 視覚文化、美術史などの7人の研究者が「イメージの指標性」をテーマに討議 「指標性についての議論や討論における両義性は、どのような記号を指標性の原型とみなすのかに関係し ていると思う。例えば、写真や映画研究においては、指標性はしばしば物理的な因果性や、それによって生 み出される「痕跡」の問題として組み立てられてきた。つまりは火による煙、足跡による足跡、筆跡による筆 跡、光による写真などである(いずれもパースの用語では類像的かつ指標的な単一記号である)。これとは 対照的に、言語学者にとって、正統的な指標記号とは、オットー・イェスペルセンに倣ってローマン・ヤコブソ ンがシフターと呼んだものである。人称代名詞やダイクシス、動詞の時制や証拠性のマーカーなど、言語的 言説に溢れる他の多くの記号のことである。(略)一方は非参照的で、他方は参照的である。一方は物理 的で客観的なものであり、他方は社会的で主観的なものである(エミール・バンヴェニスとがずっと以前に 論じたように、まさに主観性の基盤である)。このような二つの足場を媒介できるような指標性とは、どのよ うな記号の関係なのだろうか。そして、このヤヌスに面する記号論的基盤の一方または他方に焦点を当てて きた異なる学問的アプローチをまとめることで、私たちは何を学ぶことができるのだろうか。」 ( Constantine V. Nakassis によるオープニングリマーク) ☞
  5. 参考文献 Ball, C., Barker, M., Edwards, E., Kolich, T., Mitchell,

    W. J. T., Morgan, D., & Nakassis, C. V. (2020). Opening Up the Indexicality of the Image, Again. Semiotic Review, 9. https://www.semioticreview.com/ojs/index.php/sr/article/view/62 Miller, T., Schiwy, F., & Salván, M. H. (2012). Larkin, B. (2004). Degraded Images, Distorted Sounds: Nigerian Video and the Infrastructure of Piracy. Public Culture, 16(2), 289–314. Distribution, the forgotten element in transnational cinema. Transnational Cinemas, 2(2), 197–215. ウォーレン, ピーター. 1975. 『映画における記号と意味』岩本憲児訳, フィルムアート社. クラウス, ロザリンド. 2021. 『アヴァンギャルドのオリジナリティ: モダニズムの神話』谷川渥, 小西信 之訳, 月曜社. 小山 亘 (2008). 『記号の系譜―社会記号論系言語人類学の射程』三元社. バザン, A. (2015). 『映画とは何か(上)』野崎歓・大原宣久・谷本道昭訳, 岩波書店. バルト, R. (2005). 『映像の修辞学』蓮實重彦・杉本紀子訳, 筑摩書房. ラマール, T. (2023). 『アニメ・エコロジー:テレビ、アニメーション、ゲームの系譜学』上野俊哉監 訳, 大崎晴美訳, 名古屋大学出版会. 26