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『地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取り組み』 @第69回宇宙科学技術連合講演会

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November 25, 2025

『地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取り組み』 @第69回宇宙科学技術連合講演会

第69回宇宙科学技術連合講演会
『地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取り組み』

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  1. アークエッジ・スペースの国際展開(データ利活用以外も含む) 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 3 受注済・MoU締結済 商談中 ブラジル・パラグアイ 各機関とMoU締結

    パラグアイでは農業向けアプ リケーションリリース済み キルギス・タジキスタン 各機関とのMoU締結 ESA(欧州宇宙機関) ESA・JAXA共同の 彗星探査ミッション 「Comet Interceptor」 出典:首相官邸ホームページ (https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202405/04brazil.html) (https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202405/03paraguai.html) (写真)岸田前首相南米歴訪への同行 ベトナム 衛星運用・人材育成実施 (JICA事業) チリ大学 衛星通信機受注 ERIA (東アジア・アセアン経済研究センター) 違法漁業監視に関する 調査事業受注 台湾宇宙センター 6U衛星1機受注 ルワンダ宇宙庁 3U衛星1機受注 宇宙政策アドバイザー就任 スマートアフリカ アフリカ衛星網 に向けたMoU締結
  2. 事業開発・アプリケーション開発の経緯  背景 • アークエッジ・スペースは 2021 年より,「多品種の超小型衛星をいかに量産するか」に注力してきた. • 一方で,衛星データの利用の裾野を広げ,世界規模の課題を解決するためにも,2024 年

    1 月に,エンドユーザーに価値を 届けるアプリケーションを開発する事業部を発足した • 2024 年 3 月頃より,地理空間情報を活用したアプリケーションの開発を開始した. 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 4 どのように実現してきたか? 国外パートナーとの事業・アプリ開発 まだまだビジネスとして軌道にのっているという訳ではないが, 2年も経たずして,様々な国々で 多様なアプリケーションの実証を開始するに至った
  3. 国際展開における課題  グローバルサウス諸国における課題 • 経済的な余力のなさから,高額な衛星データやプロプライエタリ GIS ソフトの 継続利用が困難 • 支援プロジェクト等の終了後,アプリケーションを自律的に維持する体制が残

    りにくい  衛星データの課題 • ライセンス制約 • 二次配布不可等の理由で,アクセス可能な組織・ユーザーが限定されがち • 取扱いの複雑さ • 大容量・特殊フォーマット • 高価・高機能な GIS ソフトや専門知識が必要 ⇒ 現地利用のハードルが高い • データの特性による限界 • 精度・空間分解能・時間分解能の制約 • 衛星データ単体では価値提供に十分でない場合がある 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 6
  4. ArkEdge Insights® でのアプローチ 1. 誰でも使えるアプリケーション構築 • Web ベースで直感的に操作できる UI •

    専門知識がなくても使えることを重視 2. オープンデータ × FOSS4G による低コスト & アジャイル開発 • オープンで自由に使える地理空間データを積極的に活用 • FOSS4G 技術により,低コスト・高い拡張性・継続的な運用を実現 3. 地上計測データ (“Ground Truth”) 等の多様な地理空間データの統合 • 衛星データの限界を補い,現地ニーズに合ったサービスを提供するため に,以下を統合: • 現地パートナー(政府機関,協同組合など)が保有する既存データ • 当社の衛星 IoT ネットワークによる地上 IoT データ ⇒ 多様な地上データやローカルなデータを組み合わせることで, より精度が高く,価値の高い,地域に根ざしたサービスが可能に 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 7 IoT センサ & 通信網の開発と活用 国内外の現地パートナー保有のデータとの連携・活用 FOSS4G など OSS での貢献 Free and Open Source Software for Geospatial 自由でオープンソースな地理情報ソフトウェア 出典: 株式会社エイビット
  5. 事業開発に不可欠な高速プロトタイピングとそれを支える技術  ユーザーに寄り添う高速なアプリ開発 • 当社が様々な分野でグローバルに展開していることを活かし,貴重な機会を逃さぬようモックアップアプリを迅速に作成 • 高速にアプリを開発し,実際にユーザーに触れてもらい,フィードバック収集し,その結果を即時に反映 • トライ・アンド・エラーを繰り返しながら,このループを繰り返し,価値のあるアプリケーションを開発 

    高速なトライ・アンド・エラー(開発ループ)を可能にする技術基盤 1. アジャイルなアプリケーション開発を支えるソフトウェアアーキテクチャ 2. 全球対応を実現する On-the-fly 衛星データ処理 3. オープンデータ × オープン Web 技術の最大活用 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 8 パラグアイでリリースしたアプリの開発過程
  6. 1. アジャイルなアプリケーション開発を支えるソフトウェアアーキテクチャ  価値検証フェーズに応じて最適な構成を選択 初期の仮説検証段階では “静的データのみ” で十分 ⇒ バックエンドを最小化し,フレキシブルなフロントエンド開発に注力することにより高速開発を実現 

    初期フェーズでのバックエンドレス構成の例 1. SPA(Single Page Application) on GitHub Pages シンプルな GIS アプリ開発 / GitHub エコシステムだけで開発〜デプロイが完結 / アクセス制御も容易 2. PMTiles( + Amazon S3 + CloudFront)によるデータ配信 ラスター・ベクターデータの両対応 / cloud-optimized & tile-based の高速配信 3. Protomaps Basemap / Amazon Location Service 初期は Protomaps をセルフホスト → その後 Amazon Location Sercive によって低コストで全球ベースマップを運用  事業開発フェーズが進み,よりリアルで洗練された UX が価値検証に必要になると... 価値検証が進むと,動的データ更新や対話的操作が必要(当然その他も修正が必要) ⇒ 次頁の「On-the-fly 処理」の技術が重要となる 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 9
  7.  どこでも・その場で・リアルなデータを使ったデモが可能 • 世界各地で顧客と議論するため,任意地点でモックアップを即時表示できることは重要 • 出張先でも現地の衛星データを使った高品質でリアルなデモが可能  なぜ On-the-fly が必要か?

    • 全球の衛星データを事前処理するのは非現実的 (膨大な計算資源・コストが必要) ⇒ ユーザー操作に応じて必要なときに必要な範囲だけを高速処理する仕組みがカギ  On-the-fly 処理の基盤 1. 世界中への高速にデータ配信可能な衛星データパイプライン • TiTiler をセルフホストし,衛星データ (COG 形式) を動的処理 • データの存在するサーバーと物理的に近いサーバーで処理(例: Sentinel-2 → AWS us-west-2) • 加工済データのみ(該当領域のみでかつ可視化済みなため軽量)を世界中のユーザーへ高速配信 2. 機械学習モデルの統合(地理空間解析をより直感的・高精度にサポート) • Meta Segment Anything Model 2 (SAM2) など最新の機械学習モデルを統合 • 機械学習推論を On-the-fly 動作できるよう最適化 選択された圃場のセグメンテーション・ 過去 5 年間分の衛星データの取得と,雲フィルタ・ 時系列処理・可視化のすべてがユーザー操作を トリガとした On-the-fly で処理される様子 世界中のどの点でも実行! 2. 全球対応を実現する On-the-fly 衛星データ処理 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 10 その場での即時なデータ処理
  8. 3. オープンデータ × オープン Web 技術の最大活用  課題に応じて適材適所のデータ活用 • 必要に応じて有償データや高度処理も組み込む

    • 一方で,オープンデータとオープン技術を最大限活用する開発方針を重視  時空間の同時超解像モデルの開発(特許取得) • 当社のユーザーニーズでは特に時間分解能が重要 • 広域観測衛星(高頻度・低分解能)と 中分解能光学衛星(低頻度・高分解能)を適切に 組み合わせることで, 生成 AI のハルシネーションを抑制しつつ空間・時間分解能を同時 に向上.目視判読用超解像ではなく,後段の処理で物理値として利用できる信頼あるデー タとして活用可能 • 特許取得済み(第7761824号,第7751926号)  FOSS4G などの OSS / オープンモデルの活用 • PMTiles,Protomaps,TiTiler などはすべて FOSS4G であり SAM2 もオープン ML モデル ⇒ これらを適切に組み合わせ,グローバルな利活用基盤を構築 ⇒ 当社も積極的にオープンソースコミュニティへ貢献 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 11 時空間の同時超解像の概要 河西特許庁長官より特許証を交付 オープンデータ活用例 オープン技術活用例
  9. 事例: パラグアイ  農業向けアプリ(リリース済み) • 11/13 に,政府関係者,関係国関係者,農業関係者,その 他関係者でリリースセレモニーを実施 • 国の農業生産認証制度や国土状況把握,大規模農家で活用

    • 国家植物・種子検疫・品質管理庁のデータベースとの連携 を協議中  防災・水資源管理向けアプリ(開発中) • 防災・物流のための河川水位予測機能が中心 • 政府から 65 年分の水文データの提供を受け,アルゴリズ ムを開発中 • 河川水位 IoT センサの設置に向けて協議中  ハザードマップ・避難経路アプリ(検討中) • ハザードマップ・避難経路のデジタル化 • 緊急事態庁からこれまでの事故事例などの地理空間データ の提供を受ける予定 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 12 防災・水資源管理アプリ 農業アプリ 防災関連地理空間データ リリースセレモニーの様子 受領した水文データに基づく アルゴリズム開発
  10. 事例: ブラジル  洋上石油プラットフォーム監視(試験提供中) • 衛星画像によるオイル漏れ・船舶検出と,AIS データによる船舶情報を 統合して解析(スペースシフト社・LocationMind 社と共同開発) •

    環境・再生可能天然資源院 (IBAMA) からの要望とデータ提供を受け開発 • ダッシュボードを開発し,IBAMA に試験提供・評価中  その他の環境管理(検討中) • IBAMA と以下のような課題についても議論を継続中 • アグロフォレストリーによる環境回復モニタリング • セラード・バイオームの劣化・回復のモニタリング • 海洋油汚染検出や質的な観測 • マングローブのモニタリング整備 • 違法採掘モニタリング 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 13 2.0x 今後打ち上げ予定の当社の ハイパースペクトル衛星の活用も予定 提供中のダッシュボード 環境モニタリングをテーマに COP30 で展示 / 処理フロー 解析例
  11. 事例: キルギス & その他の中央アジア  背景 • 天山山脈など山岳地帯は地球上でもっとも気候変動の影響を早く受ける地域といわれている • 中央アジアの国々は国土が広く,物理的アクセスや通信環境も不十分

     概要 • 衛星リモセンや地上 IoT データ,水文シュミレーション(Aqunia 社と協力)を統合した気候監視・予測を検討中 • 気候変動によって発生する課題に ① 災害監視・予測 ②インフラ建設基準の見直し ③水源管理の最適化 で適応 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 14 IoTセンサ 馬に2時間のって現場へ 1.災害監視・予測 2.建築基準の見直し 3.水資源管理の最適化 河川流量の増加による水害の頻度 が高まっている.工業汚染など 二次被害も考慮する必要がある 衛星リモセン×IoTセンサーで 高リスクエリアの重点監視を行う 旧ソ連時代の測量・気候データに 基づく建設基準を現在の環境に 適応するよう更新する必要がある 建設予定地の気候リスク (洪水等)を水文シュミレー ションによって評価する 上流国が有する氷河は中央アジア 全体の水資源になっており, 水不足は国際問題にも発展する 水利活用計画のため利用可能な 水量や水質を把握する 課 題 活 用 解 決 策 ※ (Current) (24h later)
  12. 現在進行中のさらなる展開  地上データ(Ground Truth)収集のために, IoT 衛星群の拡充 • インターネットや携帯回線が未整備であっても,世界中でデータが収集が可能 • だれもが低コストで使える,Open

    な IoT 通信網を構築予定 ⇒ IoT 衛星も含め,2028 年までに 60 機以上のコンステレーション展開を目指す  オープン思想によるエコシステム構築 1. ツールやソースコードを大学や研究機関,パートナー企業に公開 • 当社は衛星データを中心とした地理空間情報の取扱,IoT通信,ユーザーニーズに寄り添った Web アプリケーション開発 は得意な一方で,農業・防災・環境といったその他のドメインにおいては専門家ではない • 衛星データを扱うツールやソースコードを提供することで,農業や環境などの各分野のプロフェッショナルな方々が衛星 データをより効率的に扱うことができるようになる • グローバルサウス諸国への展開時の現地での自律的な運用・改良・横展開の促進 / 人材育成にも貢献 2. プラットフォームやソースコード・ノウハウを Web/IT 企業にも公開 • これまで衛星データは普通の Web/IT 企業にとっては扱いにくかった • 「普通の Web/IT 技術」でこれらのデータを扱えるようになると,より衛星データの普及や利活用の幅が広がる 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 15 TICAD9 でのアフリカ諸国との MOU 締結 UNISEC GLOBALと提携した衛星 IoT イニシアチブでは 70 件超の共同実証提案を受領 当社とのコラボレーションも 促進されることが期待される
  13. まとめ  衛星データの利用の裾野を広げ世界規模の課題を解決するためにも,2024 年から地理空間情報を活用した事業開発とアプ リケーションの開発を開始し,地理空間情報プラットホーム “ArkEdge Insights®” を立ち上げた.  オープンデータ

    × オープン Web 技術による低コスト & アジャイル開発と,誰でも使える Web ベースのアプローチ UI に よって,短期間で様々な国々で多様なアプリケーションの実証を開始することができた.  これらのアジャイルな事業開発・アプリケーション開発は,適切なソフトウェアアーキテクチャ,高度な On-the-fly データ処理,機械学習モデルの独自開発・利活用など,様々な技術によって支えられている.  衛星データの限界を補い現地ニーズに合ったサービスを提供するために,現地パートナーが保有する既存データや,当社 の衛星 IoT ネットワークによる地上 IoT データを “Ground Truth” として統合することで,より精度が高く,価値の高 い,地域に根ざしたサービス提供が可能に.  今後,さらなる衛星コンステレーション整備によって,衛星 IoT 通信網の活用とデータ収集を加速させていく.  現地パートナー,研究機関,衛星データ等の地理空間情報企業,Web/IT 企業,その他のドメインエキスパートらとの協 力や,エコシステム構築を引き続き進めていく.  ユーザーの真のニーズを捉えるためには,技術開発だけでなく自ら現場に赴き,人々と信頼関係を築きながら共に課題を 理解し解決策を生み出していくことが不可欠であり,現場視点・共創型アプローチで常にリアリティに寄り添いながら衛 星開発・データ利活用事業開発をしていきたい. 2025/11/25 宇科連2025 地理空間情報プラットフォームの開発と衛星データ利活用の取組み (1A08) 16