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AWSでAgentic AIを開発するための前提知識の整理

AWSでAgentic AIを開発するための前提知識の整理

2025/10/15 豊洲会LT

近年、生成AIの発展により、AIは単なるコンテンツ生成から、業務プロセス全体を支援する段階へと進化しています。こうした進化の先に位置づけられる「Agentic AI」は、生成AIに記憶・推論・計画・行動の要素を統合し、AI自身が目的を理解して自律的に行動する仕組みを実現するものです。

ただ、これを実現するエージェント間の協調やAgentic loopにおける制御は容易でなく、特に非同期処理との組み合わせでは高コスト化やリソースの浪費が発生することが確認されています。これらの課題を具体的な事例(動画生成エージェント)を通じて分析し、Agentic loopの制御やツール呼び出し設計の留意点を提示しています。

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Kiminori Yokoi

October 15, 2025
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  1. 5 <事例> プロモーション動画生成エージェント • 「台本作成」 「音声生成」 「動画生成」 「動画編集」 の4つの ツールを持たせたAIエージェント

    • AIエージェントに自然言語で指示を出すと、これらのツールを 自律的に組み合わせて、動画を生成する • 従来、これらのタスクは別々な人が行ったものを切り貼りする ような形で実施していたため、 コミュニケーションも含めて、 完成までに多大な時間を要したが、AIエージェント化したこと で、作業速度が向上し、リトライ検証も容易になったため、 完成までの時間が90%近く削減 (但し質はそれなりの物)
  2. 7 • 生成AIの進化により、AIは文章や画像を生成するだけでなく、業務支援にも 広く使われるようになった • しかし、実際のビジネス現場では、単発の応答ではなく、文脈を理解し、継 続的に判断し、他システムと連携して動く能力が求められる • この課題を解決する Agentic

    AI という考え方とその実装が登場した • ただ出力するだけであった生成AIの能力に、記憶・推論・計画・行動の要素 を加え、AIが自ら目的を理解して行動する仕組みを実現する • このサービス実装が Amazon Bedrock AgentCore • AIが企業全体のプロセスを横断的に担うことが期待されている Agentic AI とは
  3. 8 単なる業務効率化にとどまらず 企業全体の働き方や価値創出の仕組みを根本から変革する 生産性の向上 プロセスの最適化 研究と革新の加速 • 社員一人ひとりの知 的活動を支援する 「パーソナルアシス

    タント」として機能 • 日常の定型業務を自 動化し、情報収集や 意思決定を補助 • 複雑な業務フロー全 体を再編成し最適化 • 部門をまたぐタスク をつなぎ、ポリシー 順守と作業効率を両 立 • 膨大なデータから新 たな知見を導き出し、 研究開発の速度と質 を同時に向上 • 未知のパターンの発 見、新たな解決策の 提案 Agentic AI の期待効果
  4. 9 Agentic AI (マルチエージェント) ・複数エージェントが連携 ・文脈理解、計画、行動 → 協調的で自律的 Generative AI

    ・文章や画像を生成 ・単発の応答で支援 → 出力中心のAI AI Agent (シングルエージェント) ・特定のタスクを自律実行 ・限定領域で判断 → 局所的な自律 Agentic AI への進化
  5. 10 エージェントの協調パターン パターン1 直列実行型 パターン2 並列実行型 パターン3 監督型 在庫 決済

    配送 調査1 調査2 調査3 結果1 結果2 結果3 監督者 検索 作文 変更 結果 結果 1と2を組み合わせてワークフローに パターン3に夢を見がちだが、それだけで何とかしようとすると失敗しやすい エージェント
  6. 12 Agent の協調パターン パターン1 直列実行型 パターン2 並列実行型 パターン3 監督型 在庫

    決済 配送 調査1 調査2 調査3 結果1 結果2 結果3 監督者 検索 作文 変更 結果 結果 ツールの使用も Agentic Loop も、その Agent 内で完結する エージェント ツール
  7. 13 Agent の協調パターン パターン1 直列実行型 パターン2 並列実行型 パターン3 監督型 在庫

    決済 配送 調査1 調査2 調査3 結果1 結果2 結果3 監督者 検索 作文 変更 結果 結果 各 Agent の実行にプロンプトが必要 & 図示していない Agent 外の処理もある エージェント ツール プロンプト
  8. 14 何も考えずに開発するとどうなるか • 何度も同じツールを呼び出そうとする • かなり大きなお金がかかるAPIを何回も呼び出してくれちゃってこの • もうできているのに何故あなたはもう一回作ろうとするのですか もうやめてy (ry

    • いったい何回実行すれば気が済むのですか • 振り出しに戻ろうとする • もうゴールしてください、双六じゃないんですよ エージェント間の協調以前の問題に直面する Agentic Loopとは、制御し難いものである
  9. 15 Agentic Loop と向き合おう 引用: https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/introducing-strands-agents-an-open-source-ai-agents-sdk/ • 推論が高額なモデルに繰り 返し指示 (破産リスク)

    • リクエスト上限への到達 • APIリクエスト課金の上昇 (破産リスク) • リクエスト上限への到達 • ツールは1回呼び出して終わることもあれ ば、10回以上の時もある (不確実性高) • 途中の生成物は破棄されて無駄になる サービス運営者の苦労は計り知れない • 実行機会あたりの処理時間 の上昇による課金の高額化 • 無駄な生成物が蓄積される ことによるストレージ課金
  10. 16 特に非同期処理待ちと Agentic Loop の組み合わせは危険 • Agentic Loop の中で処理の完了待ちをするのはやめる (Loop

    の外で待つようにする) 動画生成ツール 動画生成指示 (start_async_invoke) ※非同期 動画ができるまで繰り返しステータス確認 (get_async_invoke) ※非同期 待ち時間が長くなる (6秒間の動画に約90秒、2分間の動画に約14分~17分)
  11. 18 特に非同期処理待ちと Agentic Loop の組み合わせは危険 • その結果「(動画生成ツールから) tool_result が返ってくるはず なのに、(別なツールの処理が割り込んだせいで)

    返ってこな かった」というエラーが発生して、Agent の処理が落ちる • ちなみに動画生成処理は投げっぱなしで落ちない。非同期だから、、、
  12. 19 Agentic Loop に組み込まない方が良いと考えられる処理 • 待ち時間が長い同期処理 • 60秒でも他のツール実行処理に割り込まれてしまう • 繰り返し実行するポーリング処理

    • 完了するまで繰り返してくれれば良いが、その保証がない • 動画生成などの完了待ちは、429エラーのリスクもある • エクスポネンシャルバックオフすると前述の割り込みリスク有 • 繰り返されたら困る処理 • 高額課金を伴うなど これらは Agent オブジェクトの外で処理する
  13. 20 Agentic Loop の本質に迫ってみる • 各 Agent は、推論の度にプロンプトを作り直している • ツールの実行結果はプロンプトに引用される

    • これらの特徴を押さえると Agentic Loop を制御できる 可能性が高まる (完全に制御できるとは言っていない)
  14. 22 ツールの実行結果を工夫して Agent の実行に関与する ツールの結果 (return) に指示文を書くと、これが契機となって Agentic Loop の

    動作に関与することが可能と判明 なお、この実装を作って動かしたところ、Loop の回数が #85 まで行った しかし、動画生成前に終わってしまった (不確実性が高いことは変わらない) やはりポーリングをLoopに組み込むのは非推奨と言える ただ、この方法でLoopの動作を変えることができたのは間違いない