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経営の意思決定を加速する 「事業KPIダッシュボード」構築の全貌

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September 18, 2025

経営の意思決定を加速する 「事業KPIダッシュボード」構築の全貌

2025/09/17に、TECH PLAY Data Conference 2025で発表した、白子の資料です。

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  1. 2 © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 2 プロダクト戦略室

    データ戦略U データ戦略G グループマネージャー 2017-2018 データマネジメント組織のTL 2019-2023 アナリティクスエンジニアリング組織のGM 2024-2025 データ戦略GのGM 白子 佳孝 Yoshitaka Shirako Profile 経歴  所属 @y0shirak0 
  2. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 4 組織概要 RCL全社戦略

    A領域 事業 戦略 B領域 事業 戦略 C領域 事業 戦略 ・ ・ ・ 経営企画 ▪扱うテーマ ・RCL事業ポートフォリオ ・財務戦略 ・買収・出資戦略 ▪扱うテーマ ・領域ごとの短期/中長期  の戦略推進 事業推進/プロマネ プロダクト戦略 ▪扱うテーマ ・各事業を横断するような  中長期戦略推進 データ戦略G データ戦略ユニット プロダクト戦略ユニット プロダクト戦略室 リクルートにおける 
 中長期戦略検討/意思決定 のための
 データ分析およびデータマネジメント推進 
 * 難易度の高いデータ分析や重点指標のKPIモニタリン グ環境構築など 
 ▪扱うテーマ ・事業戦略に沿ったデータ  案件の推進(DS/DE/AE) データ推進 ・ ・ ・ RCL横断事業戦略 データ案件推進 戦略マネジメントユニット
  3. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 6 元々リクルートでは、複数の事業コンディションを可視化するため月次でKPIモニタリングを実施し、 経営層への報告をしていたが、運用が徐々に形骸化していったことで、さまざまな課題が顕在化した

    顕在化した課題は下記 1. 各事業が独自の体裁で報告しているため、横並びで事業コンディションを把握できない 2. KPIが単体で報告されているだけで、事業コンディションを構造的に把握することができない 3. 他の指標数値が知りたい / 要因を深掘りたい、となってもすぐにできない モニタリング体制の課題
  4. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 7 モニタリング体制の課題 1.

    各事業が独自の体裁で報告しているため、横並びで事業コンディションを把握できない a. 各事業ごとに体裁(FMT)が違うため、横並びでの各事業コンディション把握が困難 b. そもそも、経営に報告している指標と事業でモニタリングしている指標や定義が異なる 2. KPIが単体で報告されているだけで、構造的に事業コンディションを把握できない a. 元々のKPIモニタリングでは予約数・ユーザー数など、いくつかの指標単体だけを報告していた b. KPI単体では事業を構造的に把握することが出来ず、 本当に見るべき指標が抜けていたり、数字の変動要因まで分からない状態 3. 他の指標数値が知りたい / 要因を深掘りしたい、となってもすぐにできない a. 経営判断に必要な重要な数値が組織やシステムに散らばっている状態 b. 仮に変動要因を深掘りしようとしても、データ抽出、分析、レポートまでに数週間かかることも c. かつ、指標定義が統一されていないため、人によって出す数字がバラバラ 上記によって、迅速かつ正確な経営判断が困難
  5. 8 © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 経営判断の迅速化を図るため、以下の3つの取り組みからモニタリング体制を刷新 1.

    経営と事業の認識を統一する型を作る 2. 事業構造を可視化するKPIツリーの構築 3. 意思決定を加速するデータ基盤の整備
  6. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 経営と事業の認識を統一する型を作る approach #1

    狙い:経営と事業が同じ指標を見て議論できる状態にする
  7. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 10 • 元々は各事業独自のFMTで報告していたため、横並びでの各事業コンディション把握が困難

    • マーケットプレイスビジネスモデルにそって、売上からの分解(CL/店舗)と予約などのアクションか らの分解(CS/ユーザー)という構造に全事業横並びで揃えた 指標構造の共通化 カ ス タ マ | ク ラ イ ア ン ト マッチング 売上 ア ク シ ョ ン 掲 載 売上からの分解 アクションからの分解 事業A 事業B マーケットプレイスビジネスモデル
  8. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 11 経営&事業の視点を統合した指標アップデート •

    各事業を横並びで見た上で、そもそもどういう指標を見るべきか?を経営&事業責任者と議論し モニタリングすべき指標の全体設計を行った • 見るべき指標に対し、各事業が事業運営で使うものとズレが無いよう定義レベルで揃えるようにした • どういう定義で出したものなのかを誰が見ても分かる状態にし、認識ズレが無く議論できるようにした
  9. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 事業全体を見通すKPIツリーの構築 approach #2

    狙い:事業全体を構造的に捉え、一目で状況を把握できるようにすること
  10. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 13 KPIツリーを使った指標の構造化 •

    元々のKPIモニタリングではいくつかの指標単体だけを報告していたが、 経営層が見たいものは「売上とアクションのつながり」という全体像 • クライアントサイドは売上(KGI)からのCL指標(KPI)への繋がり/分解 カスタマーサイドはアクション指標(KPI)からの分解を一つのダッシュボードに内包 • 指標感の繋がりが直感的に理解できることで、KGIや重要指標の変動要因も特定しやすくなった 売上 (KGI) CS指標 (KPI) CL指標 (KPI) サブKPI*¹ *¹ ツリーには入らないが、   事業コンディションを図るために必要な指標
  11. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 意思決定を加速するデータ基盤の整備 approach #3

    狙い:深掘りを可能にし、迅速な意思決定を後押しすること
  12. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 15 基盤の整備 •

    組織やシステムに散らばっていたデータを分析環境(BigQuery)に連携+分析用のデータマートを作成 • データマートに加え指標定義やメタデータの整理によって、要因深堀りの分析等もスムーズになり 変化の兆しをダッシュボードで捉え、気になった指標を手間なく深掘りできる環境を整えた ① 散らばっていたデータをBigQueryに連携 ② 各領域データを組み合わせ、データマート作成 ②’ 各領域のデータ組織が管理しているマートをそのまま流用 ③ データマートからダッシュボード特化のマート作成 ④ ExtractDataでデータ抽出 ⑤ 抽出データを用いて描画 ① ③ ④ ⑤ 深掘りは②で作成したデータマートを使用 ② 事業BQ ②’
  13. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 16 データマート構成について •

    DWH及びDMTレイヤを用意し、深堀り分析はDWH、ダッシュボードはDMTと用途毎に使い分け • DWHレイヤはCL軸(月×店舗)とCS軸(日×アクションID)の2つのデータマートを基本セットとして用意 深堀りができるよう様々な分析軸のカラムを保持している • DMTレイヤはダッシュボード特化のため、指標ごとに集計した結果を保持 DWHレイヤ DMTレイヤ 事業BQ
  14. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 17 ダッシュボードについて •

    ツールとしてはLookerStudioを使用 • TableauやLookerも選択肢として上がっていたが、下記3観点からLookerStudioを選定 ◦ UI自由度:KPIツリー構造を表現可能 ◦ コスト面:リクルート横断利用を想定しておりコスト観点は重要 ◦ 権限管理:リクルートで標準利用されているGoogle Groupを活用し、柔軟かつ堅牢な権限管理が可能に • LookerStudioのExtractDataを使うことで、描画スピード1秒程度を実現(ライブ接続だと2-3秒程度) • グラフを組み合わせて1つの指標にすることで、実績と傾向が一緒に把握可能に スコアカード 折れ線グラフ
  15. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 19 事前数値確認 /

    示唆コメント 指標追加 / 定義変更 利用/最新化され続ける仕組みづくり • 毎月、経営層や事業責任者などが集まってダッシュボードを基に議論する場を設けたことで、全員 が同じデータを見て、事業のコンディション把握や投資対効果、ネクストアクションなどを議論す ることが可能に • 指標が随時更新されていく循環が生まれ、事業フェーズの変化に合わせてダッシュボードが進化 し、常に最新の状態に保たれるようになった モニタリング 最新化 月次定例 モニタリング会 経営層 事業 責任者 事業 責任者 事業 担当者 データ 戦略 データ 戦略 事業 担当者
  16. 20 © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 経営判断の迅速化を図るため、以下の3つの取り組みからモニタリング体制を刷新 1.

    経営と事業の認識を統一する型を作る 2. 事業構造を可視化するKPIツリーの構築 3. 意思決定を加速するデータ基盤の整備 迅速な経営判断を可能にする事業KPIモニタリング環境が完成 + 利用/最新化され続ける仕組みづくり
  17. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 21 ▪ 報告から議論へ

    • 経営陣への報告が目的だった業務から、経営陣と事業が一緒に事業をより良くしていくための 議論をすることが出来るようになった • 各事業の状況が可視化されたことで、的確な経営からのFBが出来るようになった ▪ タイムリーな意思決定 • 事業計画の誤りに早めに気づくことができ、事故を未然に防げるようになった • 投資に対する効果がKPIにどう跳ね返ってきているかをタイムリーに追えるようになった • これにより、更なる投資の意思決定など、スピード感の高い経営判断が可能になった ▪ 属人化からの脱却 • 今まで秘伝のタレのように集計していた指標が明確化されたことで、皆が指標定義を理解した 上でモニタリングできるようになった • これまでの事業KPIモニタリングでかかっていたスタッフコスト(関連する人たちの工数)が大 幅に削減され、その分、本質的な業務に注力できるようになった 取り組みによる成果
  18. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 23 得られた学び ▪ビジネスの全体像と事業最適の「橋渡し」

    • 経営層が見たい全体像と各事業が事業運営で使う指標という、2つの視点を「統一された型」 と「KPIツリー」という構造で結びつけ、同じモノサシを使うことで、経営層と事業部の認識 齟齬を解消することが、データ活用を成功させる鍵 ▪成功の鍵はツールではなく「仕組み」 • ダッシュボードという「ツール」を導入するだけでは不十分で、それを活用する「人(経営層 ・事業部)」と、継続的に活用され続ける「仕組み」があって初めて、データモニタリングは 機能する ▪データ活用の「信頼性」と「利便性」 • 意思決定のスピードを向上させるためには、単にデータを見るだけでなく、そのデータがすぐ に手に入り、誰もが使いやすく、信頼できる(定義が統一された)状態になっていることが重 要
  19. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 24 今後の展望 ▪AIを使ったさらなる進化

    私たちは、データ活用における自動化への道のりを属人化/型化/自動化の3つのステップで捉えています 今回の取り組みで、データや指標の定義は属人化から型化へと進化しました。これは、誰でも同じ指標を理解 し、活用できるようになったことを意味します 次のステップは、この型化されたアセットを使い、AIによって分析を自動化することです AIとの対話によって、事業コンディションの把握、要因分析、そして今後の見立てまでを一気通貫で行うこと ができます これにより、経営判断のスピードはさらに加速し、より深い検討と議論が可能になるはず 私たちは、このAI活用がリクルートの優位性の一つになると確信しています