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事業の財務責任に向き合うリクルートデータプラットフォームのFinOps

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December 18, 2025

 事業の財務責任に向き合うリクルートデータプラットフォームのFinOps

2025/10/17にGoogle Cloud Modern App Summit '25で発表した菅沼・鈴木の資料になります。

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  1. 自己紹介 2017 年 株式会社リクルートライフスタイル(現 株式会社リクルート)入社。リク ルート データ組織におけるデータ エンジニア。 データ アプリケーション開発を効率化するデータ

    プロダクト(Internal Developer Platform)のプロダクト テックリード。 2025 年 Google Cloud Champion Innovators (Modern Architecture) 認 定。現 Google Developer Experts (Google Cloud)。 菅沼 孝二 データ エンジニア 3
  2. Google Cloud 05 利用拡大にともなって顕在化した課題 コスト最適化の壁 前に進むための決断 コスト vs OO性 で考える最適化 06

    総括 リクルートのビジネスモデルを支える データとテクノロジー 01 02 03 04 目次 5 横断プロダクト Knile における FinOps の導入
  3. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 7 リクルートグループの事業内容 マーケティング・マッチング・テクノロジー

    SBU HR テクノロジー SBU 人材派遣 SBU 国内派遣 海外派遣 選択・意思決定を支援する情報サービスを提供し、 「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。」 を実現する ※一部サービスのみを記載
  4. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved リクルートのビジネスモデル リクルート マッチングプラットフォーム

    クライアントとカスタマーを結びつける 対価としてクライアントからフィーを受領 カスタマー クライアント • リクルートにはカスタマーとクライアントという 2 つのお客様が存在 • 「企業と人(B to C)」 「企業と企業(B to B)」 「人と人(C to C)」のすべての間に立ち、双方にとって最適な マッチングを図る「場」を提供 8 カスタマーとクライアントを新しい接点で結び、 「まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。」 の場を創造する
  5. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 最適なマッチング実現のためにデータ活用先は多岐に渡る 9 [引用]

    データ推進室 リクルートのビジネスモデル | 株式会社リクルート キャリア採用特設ページ
  6. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved リクルートにおけるデータ活用事例 10 複数領域でデータ活用施策が実施されており、下記はその一例。

    リクルート カスタマー向け施策、クライアント向け施策、社内向け施策など、施策種別は多種多様。 機械学習モデル予測値を用いて、新ジャンルの予約数と 配信に伴う利用金額を予測。ギフト券配信の予算の制約 がある中、新ジャンルの利用者数を全てのジャンルにお いて増やす、最適な配信を実現。 『Airレジ オーダー』から定常取得される業務データを活 用することで提供遅れ時間の最小化を実現し、調理遅れ の件数を削減。 分析に適したデータ モデリングを実施し複雑さを解消す ると共に、モジュール分割・テストされたデータ パイプライ ンを導入し、データマート開発時の保守工数を削減。 [引用] データ推進室 事例紹介 | 株式会社リクルート キャリア採用特設ページ
  7. 複雑な実装詳細を適切に抽象化することで アプリケーション開発の Golden Path を提供 13 横断プロダクトにおける Google Cloud の構成例

    横断プロダクトによって採用される技術スタックは様々だが、利用者はそれを意識せずに開発可能 Crois
  8. 販促事業領域の中のいちデータ活用グループ内で利用開始 2015 Data Management G Data Engineering G Data Science

    G ※所属組織および対向組織のみ記載しています(他組織は記載していません) ※簡略化のため、実際の組織名 /組織構成とは異なる部分があります 所属組織 対向組織 同一部門のグループ内 での利用開始 15 株式会社リクルートライフスタイル (現 体制の販促事業領域相当) 2012 Knile 提供範囲 当時の販促事業領域におけるデータ エンジニアリング グループは、 • ビジネス課題解決のための企画を立案・推進する人材 • データ分析・モデリング・機械学習コードを実装する人材 • データ プロダクトを開発・運用する人材 が所属し、ワンチームで様々なデータ活用施策を進める体制。 そのグループに閉じたデータ アプリケーション開発の効率化のための データ プロダクト として誕生。 データ 組織 データ活用組織 の組閣 プランナー / ML エンジニア / データ エンジニア 等が同一グループ
  9. データ組織の拡大とともに Knile 提供範囲も拡大 2015 2025 2021 Data Management G Data

    Engineering G Data Solution 1G Data Solution 2G Data Management G Data Engineering G … Data Solution 1G Data Solution 2G Data Management G Data Engineering G … Data Platform G ソリューション別組織 の編成 データ活用先・手段の多様化により それぞれのソリューション別に組織分割 事業A Unit Data Solution 1G / 2G /… 事業A Unit Data Engineering 1G / 2G /… 事業A Unit Data Management G 事業B Unit Data Solution 1G / 2G /… 事業B Unit Data Engineering 1G / 2G /… 事業B Unit Data Management G プラットフォーム開発組織 の編成 複雑なパイプライン構築を担う Engineering G とプ ラットフォーム層を担う Platform G を分割 Data Product Engineering 1G / 2G /… 横断データ プロダクト運営組織 の編成 データ プラットフォームをプロダクトとして運営 プロダクト特性別に複数グループを編成 Data Science G Data Science G … データ活用組織 の組閣 プランナー / ML エンジニア / データ エンジニア 等が同一グループ ※所属組織および対向組織のみ記載しています(他組織は記載していません) ※簡略化のため、実際の組織名 /組織構成とは異なる部分があります 所属組織 対向組織 同一部門のグループ内 での利用開始 部門を跨ぐ複数グループ への提供 特定事業領域全体 への提供 複数事業領域へ の提供(=横断化!) 16 株式会社リクルートライフスタイル (現 体制の販促事業領域相当) 株式会社リクルート (リクルート統合) 2012 Knile 提供範囲 データ 組織
  10. Knile の利用規模 300+ developers, users 250+ data projects 5- platform

    maintainers 6,000+ developers’ releases per year 400+ maintainer’s releases per year 6+ business units 様々な事業領域にて多くのデータ利活用施策を実施 多くのデータ アプリケーション開発者 / 利用者を小さいチームでサポート アプリケーション・プラットフォームともに多く・素早いリリースでデータ利活用を改善 18
  11. 想定以上のコスト増・不透明性 21 Knile 本番環境 Google Cloud Project の利用額推移 Knile がマルチテナント構成となっていることもあり、どの施策に・どれだ

    けのコストがかかっているのか、どこがコスト増の主要因なのか、利用者 も Platform Team もわからない状態...
  12. 費用負担構造の不平等性 22 歴史的経緯により横断プロダクトの費用負担の構造は歪なものに。。。 • 全社コスト時代 ◦ 横断プロダクトのコストは全社コストとして賄われていた ◦ 利用組織に支払い義務はなく、コスト意識が低い状態 •

    固定費請求時代 ◦ 上記課題を踏まえ、利用組織に請求する形をとった ◦ ただし、コストの内訳が不明だったため固定費請求の形 となった ◦ 利用増減で実態と請求が乖離するため、利用組織としては納得感がなく、 コスト削減の動機も発生しづらい 利用組織が利用した分だけ支払う「受益者負担の原則」の実装が求められた
  13. これまでも可視化できていたリソースの Usage & Rate に加えて、コストも可 視化されたことにより、 どこで浪費( cloud waste)が発生しているのかが 特定可能

    となったことで、コスト削減に向けた実行計画や優先度決定、実 際の取り組み後の振り返り分析が容易 となった。 Phase: Inform & Optimize 28 [図 引用] Maximize Business Value with Cloud FinOps | Google Cloud (例) サンプル施策用のリソース Usage & Rate ダッシュボード 一部抜粋
  14. Phase: Optimize & Operate [図 引用] Maximize Business Value with

    Cloud FinOps | Google Cloud 浪費(cloud waste)を徹底的に削減 するための Low effort // low savings な取り組みから始めて、 High effort // high savings な取り組みも実施中。 最 適化実施と効果振り返りを繰り返し ながら、全体の成果を高めていった。 適用済 適用中 未検討 29 未適用
  15. 35 [仮説] 横断プロダクトでなければ 発生しない課題では? Knile でより高いコスト効率を目指そうと したが思うように効果を出せなかった • 検証・承認に時間がかかる ◦

    コスト最適化の取り組みが全事業に影響するため • 横断プロダクトを運営するために必要な要件の実現・運用に工数がかかる ◦ 例:課金請求機能、厳格な権限分離など
  16. 横断プロダクト Knile で実現していたものを 事業独自プラットフォームに作りかえる • 横断組織が、事業独自プラットフォーム構築を全面的にサポート • 事業ごとの規模や特性を踏まえた設計(必要な機能だけに絞るなど) 36 事業

    A データ組織 事業 B データ組織 横断プロダクト Knile 事業 C データ組織 移管 事 業 横 断 横断プロダクト X 横断プロダクト Y 事業領域 A 事業領域 B 事業領域 C 各事業領域のデータ利活用への コミットメント 独自 独自 支援 プロダクト利用
  17. 横断プロダクト Knile で実現していたものを 事業独自プラットフォームに作りかえる • 横断組織が、事業独自プラットフォーム構築を全面的にサポート • 事業ごとの規模や特性を踏まえた設計(必要な機能だけに絞るなど) 37 事業

    A データ組織 事業 B データ組織 横断プロダクト Knile 事業 C データ組織 移管 事 業 横 断 横断プロダクト X 横断プロダクト Y 事業領域 A 事業領域 B 事業領域 C 各事業領域のデータ利活用への コミットメント 独自 独自 支援 プロダクト利用
  18. デメリットもあるが、 今ならメリットが上回ると予想して検証中 ✅ 一つの事業への影響だけを考えれば良いので、変更しやすい ✅ 事業戦略に沿った目標設定・コスト最適化をしやすい ❌ 知見のサイロ化 ❌ プラットフォーム開発

    / 運用工数を事業側が負担する ❌ 独自プラットフォーム間で品質格差 39 ただし、クラウドの進化・ AI Coding の発展により 以前よりこれらのデメリットは緩和している!
  19. デメリットもあるが、 今ならメリットが上回ると予想して検証中 40 ただし、クラウドの進化・ AI Coding の発展により 以前よりこれらのデメリットは緩和している! ✅ 一つの事業への影響だけを考えれば良いので、変更しやすい

    ✅ 事業戦略に沿った目標設定・コスト最適化をしやすい ❌ 知見のサイロ化 ❌ プラットフォーム開発 / 運用工数を事業側が負担する ❌ 独自プラットフォーム間で品質格差
  20. 支出 = 収入(利益 = 0) になるように各事業に按分して請求するだけだった → 事業戦略に沿った目標を設定し、その目標を達成しなければならない立場になったこ とにより、コスト最適化に対する財務責任 /

    オーナーシップ が生まれた すると、これまで浪費 (cloud waste) を削るのが主だったのが、もう一歩踏み込み  「これまで維持してきた品質は本当にこのコストに見合う?」  「そもそも維持しなければならないと思い込んでいただけでは?」 と考え、品質を変えることも選択肢に入れられるように なった 41 Platform team の考え方も変わった
  21. 42 Platform team の考え方も変わった 支出 = 収入(利益 = 0) になるように各事業に按分して請求するだけだった

    → 事業戦略に沿った目標を設定し、その目標を達成しなければならない立場になったこ とにより、コスト最適化に対する財務責任 / オーナーシップ が生まれた すると、これまで浪費 (cloud waste) を削るのが主だったのが、もう一歩踏み込み  「これまで維持してきた品質は本当にこのコストに見合う?」  「そもそも維持しなければならないと思い込んでいただけでは?」 と考え、品質を変えることも選択肢に入れられるように なった
  22. トレードオフ① 開発生産性 vs コスト ロギングは、オブザーバビリティの重要な要素の 1 つ 45 しかし、 Cloud

    Logging のコストが全体の 15 % (第 3 位) → 我々のユースケースではログ全量を Cloud Logging   に連携する価値は、そのコストに見合っていない
  23. トレードオフ① 開発生産性 vs コスト 46 重要度の低いログの連携を停止 ただし、 • 障害対応に必要なクリティカルなログの Cloud

    Logging 連携は残す ◦ 障害発生時の分析・調査および共有は可能 • 重要度の低いログも含めてログ全量を BigQuery にシンク ◦ 過去長期データの調査・分析(傾向変化など)は可能 • 開発生産性を著しく低下させないための代替手段は残っている ◦ $ kubectl logs でリアルタイムにコンテナログを調査可能
  24. チャレンジ! • Google Kubernetes Engine Node に Spot VM を本番導入

    ◦ Spot VM は ▪ 安価なマシン ▪ サービスレベルがなく、提供・shut down のタイミング・頻度が不明 ただし、エラーバジェットを消費しすぎる機能は本番導入を見送り • Bigtable の auto-scaling は本番反映を断念 トレードオフ② 信頼性 vs コスト 48
  25. 49 チャレンジ! • Google Kubernetes Engine Node に Spot VM

    を本番導入 ◦ Spot VM は ▪ 安価なマシン ▪ サービスレベルがなく、提供・shut down のタイミング・頻度が不明 ただし、エラーバジェットを消費しすぎる機能は本番導入を見送り • Bigtable の auto-scaling は本番反映を断念 トレードオフ② 信頼性 vs コスト
  26. BQ Slot Reservation BQ Slot Reservation (new!!) トレードオフ③ 性能 vs

    コスト 51 クエリ チューニングの動機を生む 特に効率の悪いクエリは、Platform チームが Gemini を活用しチューニング usage_time slot usage
  27. トレードオフを加味したコスト最適化の成果 53 直近半年の効果実績 2025 / 01 => 2025 / 07

    比で 35.8 % 減! 今年の効果見立て 2025 / 01 => 2026 / 01 比で 44.5 % 減 見込み! 昨年 今年 2026 年 1 月 (見 立 て ) 既存 品質・構成 でのコスト削減 - 35.8 % - 44.5 % 見込み トレードオフを加味したコス ト削減 ※実績に基づく社内評価
  28. 総括 56 リクルート データ推進室では、事業領域やプロジェクトを越えて活用可能なシステ ムを「横断プロダクト」と認定した上で、各領域への展開。 コスト効率の要求レベルが高まるにつれ、横断プロダクト Knile では各事業が求 める要求に応えられないという課題に直面し、新たな取り組みを実施。 1.

    “横断” プロダクト Knile を特定事業に “専有” 化 2. 当たり前とされた品質にメスを入れるコスト削減 変更容易性 と 財務責任 / オーナーシップ を獲得し、Knile は事業が求める高い 水準のコスト効率を達成。
  29. これが最終的な形とは限らない 2025 年 特定事業に専有化 2015 年 事業専有プラットフォームとして誕生 2021 年 ~

    横断化 あくまで らせん状に進化する 過程の一部 事業の成熟度や 組織の特性にあわせ てこれからも変わり続 ける 57
  30. © Recruit Co., Ltd. All Rights Reserved 58 We are

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