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カーネルコードの歩き方

 カーネルコードの歩き方

以下イベントのセッションスライドです。
https://techfeed.io/events/techfeed-experts-night-19

Satoru Takeuchi

May 24, 2023
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Transcript

  1. はじめに • 著者 ◦ 社会人一年生から15年くらいカーネル開発 /サポートをやってきた ◦ 今も必要に応じてカーネルソースを見ている • 本LTで学べること

    ◦ Linuxのカーネルソースの読み方についての勘所 ◦ 汎用的な、あらゆるソースコードの読み方についても同様の知識 • 前提知識 ◦ なんらかのプログラミング経験がある ◦ Gitが使える 2
  2. Linuxカーネルソースの規模感 • V6.3時点で > 3,000万行 • バージョン間の変化: v6.2 -> v6.3(リリース間隔は約2か月)

    ◦ コミット数: > 15,000 ◦ 増加した行数: > 47,000 • 目的を定めずに「とりあえず読んでみるか」はかな り厳しい! 4
  3. 読むコツ • 明確、かつ、小さめの目標を立てる ◦ 「カーネルを完全に理解したい」 => つらい(3000万行) ◦ 「この機能でこのオプションを使ったときの挙動を知りたい」 =>

    それならなんとか(1000行) • gitなどのツールを駆使して読まなければならないコード量を減らす • 読むだけでなく実際に動かしてみる • 本やWeb記事を読んで前提知識を適宜身に着ける(スライド末尾の付録参照) ◦ OSカーネルの専門知識 ◦ Linuxカーネルの独自用語 5
  4. 実例 • きっかけ ◦ 出版した書籍で言及していた /proc/sys/kernel/sched_latency_nsというファイルが存在しないと読 者に突っ込まれた ▪ https://zenn.dev/satoru_takeuchi/articles/cec2160c6b1b13 ◦

    実機検証はしたはずだが …なぜだ!? • 問題のスコープ ◦ 読者のカーネル(v5.15)でファイルがなくなっているのかを確認 ◦ 本当になくなっていたのであれば、いつなくなったかの確認 6
  5. 実機検証 • やること ◦ 特定のカーネルでブートしたシステムにログインして /proc/sys/kernel/sched_latency_nsファイルが あるかどうか確認 • 結果 ◦

    自分の環境のカーネルバージョン (v5.4) ▪ ファイルはあった ◦ 読者のカーネルバージョン (v5.15) ▪ ファイルはなかった 9
  6. 参考書籍 • 詳解Linuxカーネル ◦ https://amzn.to/3IvCneV ◦ 昔の本だが概念の理解には役立つ。実装の説明は流し読みかスルーでいい • Linux Kernel

    Development 3rd edition ◦ https://amzn.to/439tW0y ◦ これまた古い本だが概念の理解に役立つ。詳解 Linuxカーネルよりだいぶ読みやすい • Linuxのしくみ 増補改訂版 ◦ https://amzn.to/45keroj ◦ 概念の理解に役立つ。この中ではいちばんやさしい。ソースは出てこない • Linux Kernel Programming ◦ https://amzn.to/41USNnV ◦ いまのところ一番新しい本。 11月に第二版が出るらしい 15