Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
マルチスレッドの実現方法 ~カーネルスレッドとユーザスレッド~
Search
Satoru Takeuchi
PRO
April 13, 2025
Technology
2
120
マルチスレッドの実現方法 ~カーネルスレッドとユーザスレッド~
以下動画のテキストです
https://youtu.be/3FzWDsJlB-8
Satoru Takeuchi
PRO
April 13, 2025
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
Rook: Intro and Deep Dive With Ceph
sat
PRO
1
110
会社員しながら本を書いてきた知見の共有
sat
PRO
3
790
デバイスにアクセスするデバイスファイル
sat
PRO
1
38
ファイルシステムのデータを ブロックデバイスへの操作で変更
sat
PRO
1
32
デバイスドライバ
sat
PRO
0
49
共有メモリ
sat
PRO
3
70
マルチスレッドプログラム
sat
PRO
3
59
Linuxのブートプロセス initramfs編
sat
PRO
2
88
Linuxのブートプロセス
sat
PRO
6
190
Other Decks in Technology
See All in Technology
Getting to Know Your Legacy (System) with AI-Driven Software Archeology (WeAreDevelopers World Congress 2025)
feststelltaste
1
130
第4回Snowflake 金融ユーザー会 Snowflake summit recap
tamaoki
1
280
AWS認定を取る中で感じたこと
siromi
1
190
AI時代の開発生産性を加速させるアーキテクチャ設計
plaidtech
PRO
3
160
生まれ変わった AWS Security Hub (Preview) を紹介 #reInforce_osaka / reInforce New Security Hub
masahirokawahara
0
470
生成AI開発案件におけるClineの業務活用事例とTips
shinya337
0
260
KubeCon + CloudNativeCon Japan 2025 Recap
ren510dev
1
380
Lakebaseを使ったAIエージェントを実装してみる
kameitomohiro
0
110
事業成長の裏側:エンジニア組織と開発生産性の進化 / 20250703 Rinto Ikenoue
shift_evolve
PRO
2
21k
freeeのアクセシビリティの現在地 / freee's Current Position on Accessibility
ymrl
2
190
KiCadでPad on Viaの基板作ってみた
iotengineer22
0
300
Should Our Project Join the CNCF? (Japanese Recap)
whywaita
PRO
0
340
Featured
See All Featured
RailsConf 2023
tenderlove
30
1.1k
The Pragmatic Product Professional
lauravandoore
35
6.7k
Build The Right Thing And Hit Your Dates
maggiecrowley
36
2.8k
Cheating the UX When There Is Nothing More to Optimize - PixelPioneers
stephaniewalter
281
13k
Templates, Plugins, & Blocks: Oh My! Creating the theme that thinks of everything
marktimemedia
31
2.4k
The Art of Delivering Value - GDevCon NA Keynote
reverentgeek
15
1.5k
4 Signs Your Business is Dying
shpigford
184
22k
Testing 201, or: Great Expectations
jmmastey
43
7.6k
The Web Performance Landscape in 2024 [PerfNow 2024]
tammyeverts
8
690
Fantastic passwords and where to find them - at NoRuKo
philnash
51
3.3k
Rebuilding a faster, lazier Slack
samanthasiow
82
9.1k
Product Roadmaps are Hard
iamctodd
PRO
54
11k
Transcript
マルチスレッドの実現方法 ~カーネルスレッドとユーザスレッド~ Apr. 13rd, 2025 Satoru Takeuchi X: satoru_takeuchi 1
はじめに • マルチスレッドを実現する方法は複数ある • 基本となるのは以下2つ ◦ カーネルスレッド: カーネル空間で実現 ◦ ユーザスレッド:
ユーザ空間で実現 • 📝 ここでいう「カーネルスレッド」は「カーネルの処理をするスレッド (psで”[kthreadd]”のように名前が”[” と”]”に囲まれているもの )」という意味でのカーネルスレッドとは別の概念 2
カーネルスレッド • スレッドごとにカーネルのスケジューリング単位が存在する ◦ このスケジューリング単位のことを LWP(Light Weight Process)と呼ぶ ▪ シングルスレッドプロセスは
LWPが1つだけ存在 ▪ マルチスレッドプロセスは LWPが2つ以上存在 • カーネルが提供する機能なのでシステムコールを発行して作成 ◦ glibcが提供するpthreadライブラリ(NPTL)で生成するスレッドはカーネルスレッド ◦ スレッドを作成するpthread_create()関数を呼ぶと、内部で clone()システムコールを呼び出して LWPを生成する ◦ スレッドの管理情報はカーネル内に存在 3
システムに存在するカーネルスレッドの一覧表示 4 $ ps -eL PID LWP TTY TIME CMD
… 756 756 ? 00:00:07 dbus-daemon 767 767 ? 00:00:03 systemd-logind 768 768 ? 00:00:00 containerd 768 802 ? 00:01:42 containerd 768 803 ? 00:00:00 containerd … カーネルのスケジューリング単位 LWP(Light Weight Process)のID
スケジューリングの様子 • システムに2つのプロセスP0,P1が存在 ◦ P0はシングルプロセス。 LWPはP0_0のみ存在 ◦ P1は2スレッドから成るマルチスレッド。 LWPはP1_0とP1_1の2つ存在 •
カーネルは3つのLWP(P0_0,P1_0,P1_1)に平等にCPU時間を与える 5 P0_0 時間 CPU上で 動作中のLWP P1_0 P1_1 P0_0 P1_0 P1_1 P0_0 …
ユーザスレッド • ライブラリレベルでスレッドを実装する ◦ スレッドを管理する情報はすべてユーザ空間に存在する • カーネルからはユーザスレッドが何個あるかは検出できない ◦ プロセス内に何個ユーザスレッドがあろうと ps
-eLではLWPは1つ • 📝 大昔のglibcのpthreadライブラリはユーザスレッドを使っていた ◦ pthread_create()を呼んでもLWPを作成するclone()システムコールは発行しない • スレッドライブラリがプロセス内のどのスレッドを動かすかを決める ◦ 例: 所定の関数を呼ぶとスレッドが切り替わる 6
スケジューリングの様子 • システムに2つのプロセスP0,P1が存在 ◦ P0はシングルプロセス。 LWPはP0_0のみ存在 ◦ P1は2スレッドから成るマルチスレッド。 LWPはP1_0のみ存在 •
カーネルは2つのLWP(P0_0,P1_0)に平等にCPU時間を与える • スレッドライブラリがP1_0内の2つのスレッドの実行を切り替える 7 P0_0 時間 CPU上で 動作中のLWP P1_0 P0_0 P1_0 P0_0 … P0_0 P1_0 • スレッドライブラリがP1_0内の2つのスレッドの実行を切り替える • カーネルはユーザ空間スレッドが2つあることを知らない
どっちがいいか • どっちも善し悪しあるので好きなほうを使うとよい • カーネルスレッドと比較したユーザスレッドの特徴 ◦ 生成コストが低い ◦ スレッド間のコンテキストスイッチが高速 ◦
一部スレッドがCPUを独占して動き続けてしまうリスクが高い ◦ スレッドがスリープすると全スレッドがスリープすることになる ◦ 複数スレッドがあっても 1つのCPU上でしか動作できない • カーネルスレッドとユーザスレッドのハイブリッドの実現方法もある! 8
プログラミング言語レベルのサポート • プログラミング言語レベルでスレッド機構を用意していることがある • 例: Go言語のgoroutine ◦ カーネルスレッドとユーザスレッドのハイブリッド ◦ 以下のようにすると関数を非同期的に呼び出せる
◦ ユーザはgoroutineが具体的にどう動かされるかは気にしなくてよい ◦ pthreadライブラリのようなものを直接動かすよりも楽 9 go func() { … }()
📝 スレッドの用語はめんどくさい! • 同じ概念を指す似たような用語がある ◦ カーネルスレッド ▪ カーネル空間スレッド ▪ カーネルレベルスレッド
▪ Light Weight Process(LWP) ◦ ユーザスレッド ▪ ユーザ空間スレッド ▪ ユーザレベルスレッド ▪ グリーンスレッド • ハードウェアの文脈でプロセスの文脈とは別の意味の「スレッド」がある ◦ SMT(Simultaneous Multi-Threading) ▪ 1つのCPUコアを論理的に2つ以上に見せる ◦ 📝 ハイパースレッディングは Intel社のCPUでSMTを実現したもの 10
まとめ • マルチスレッドの実現方法にはカーネルスレッドとユーザスレッドがある ◦ 両方使う場合もある • プログラミング言語レベルでマルチスレッドプログラムの難しさを隠蔽しているもの もある 11