本資料はSatAI.challengeのサーベイメンバーと共に作成したものです。
SatAI.challengeは、リモートセンシング技術にAIを適用した論文の調査や、より俯瞰した技術トレンドの調査や国際学会のメタサーベイを行う研究グループです。speakerdeckではSatAI.challenge内での勉強会で使用した資料をWeb上で共有しています。
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紹介する論文は、「Creation and environmental applications
of 15-year daily inundation and vegetation maps for Siberia by integrating satellite and meteorological datasets」です。
本研究では、気候変動によって最も強い影響を受けうる場所の1つであるシベリアを対象とし、植生量と水分量の15年に及ぶ長期トレンドを明らかにしました。
人工衛星データをつかった長期トレンド解析において、雲によるノイズは大きな不確実性をもたらします。そこで本研究では、機械学習を用いて、雲を透過するマイクロ波で観測された人工衛星データと、数値モデルと現地データの組み合わせによって得られる気象データから、植生量に反応するNDVIと、水分量に反応するNDWIを推定しました。これにより、シベリア地域全体を15年にわたってカバーする、NDVIとNDWIの長期雲なしデータセットを500 m×500 mの空間解像度で作成しました。
特に注目すべき点は、膨大な数の独立した学習器を並列処理で利用することで、マイクロ波と気象データからNDVIとNDWIを推定するデータフュージョンだけでなく、数 kmオーダーのマイクロ波・気象データから、より細かいグリッド(500 m×500 m)でNDVIとNDWIを推定する超解像も実装している点です。
本手法を活用することで、雲の影響を受けやすい熱帯域などでも、連続した植生量・水分量のトレンド解析が可能になる可能性があります。