基盤モデルを中心に発展してきた「現代AI」を構成するトピックの中から、比較的新しく、かつ重要と思われる観点について「歴史・流れ・気持ち」を大事にしながら概観をします。
IBIS 2026 でのチュートリアルセッションでの発表資料を加筆修正した内容となります。
https://ibisml.org/ibis2026/tutorial/#session3
--
コーディングエージェントをはじめとするAIの能力は飛躍的に向上し、連日、様々な分野で目覚ましい成果をあげている。GPT(2018)から8年、ChatGPT(2022)から4年、o1(2024)から2年、Claude Code(2025)から1年。AIの進展は減速するどころか加速する一方のようにも感じられる。この急速な能力の向上は何によるものだろうか?
実際には、この性能向上は単一の技術の進展が成し得たものではなく、プロセッサが2次元から3次元に集積を移したように、幾つもの壁に突き当たりながらパラダイムを模索し続けた産物である。その結果、現代のAIはもはや単体の言語モデルではなく、モデルを部品の一つとする「思考するシステム」の様相を呈している。
本チュートリアルでは、ChatGPTで華々しく広まった言語モデル型のAIが、様々な技術革新を経て「思考するシステム」となり、数学の未解決問題を解くに至るまでの歴史・物語を概観する。なかでも、比較的新しく、かつ現代AIの理解において重要な技術トピック4つ(Test-Time Scaling、Loop、Harness、RSI)について、講演者の研究グループの仕事も交えながら、現象と方式、理論と解釈、実用の3観点から解説を試みる。