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DX(開発者体験)の向上を目指す ゲーム開発インフラの進化とDX(デジタル変革)

DX(開発者体験)の向上を目指す ゲーム開発インフラの進化とDX(デジタル変革)

YAEGASHI Takeshi

August 24, 2022
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  1. 自己紹介 2 • 八重樫 剛史 Takeshi Yaegashi • 株式会社バンダイナムコスタジオ (BNS)

    所属 • Linux・Unix・OSS・Go 言語が好きなエンジニア • 組み込みシステム開発、ゲームサーバ開発、 開発環境のクラウドシフトなどの業務に従事 • CEDEC 登壇は 3 回目
  2. アジェンダ 3 • 本日の話題 • バンダイナムコスタジオのゲーム開発インフラにおける「2つのDX」 • 2020年から現在に至るまでのゲーム開発インフラのDXの取り組み • クラウド上のゲーム開発スタジオ

    Bandai Namco DX Cloud Studios (仮称) の取り組み • おことわり • 本講演はプロダクション(PRD)がメインカテゴリとして登録されていますが、 サブカテゴリであるエンジニアリング(ENG)の話題の比重がかなり大きくなっています • バンダイナムコグループの主要なITインフラである Microsoft Azure の話題が中心ですが、 他ベンダのクラウドをお使いの方でも参考にしていただける内容があると思います
  3. • 日本CTO協会の提唱する DX Criteria での「2つのDX」の説明 • Digital Transformation (デジタル変革) •

    Developer Experience (開発者体験) • 健全かつ強力な開発者組織を作り維持するためには DX(開発者体験)の改善は重要 • ゲーム開発インフラ担当チームのミッション ゲーム開発者のDX(開発者体験)の向上を目指す インフラ分野のDX(デジタル変革)の推進 • インフラ分野DXの重点方針 • インフラ オンプレミス (社内) → クラウド • サービス セルフホスト → マネージド (SaaS) • セキュリティ 境界型 (VPN) → ゼロトラスト ゲーム開発インフラにおける「2つのDX」 4 Source: https://dxcriteria.cto-a.org/
  4. 2020/04: ゲーム開発インフラの状況 5 • 2020年4月 コロナ禍による緊急事態宣言 • バンダイナムコスタジオにおいてもほとんどの従業員が在宅勤務に移行 • 支給されたPCを社内ネットワークにVPN接続して業務を遂行

    • 門前仲町の事業拠点はほぼ無人状態に • 在宅勤務シフト後 • 未曾有の事態ながらも、開発者の工夫と努力により多くの製品を無事にリリース! • 新しい勤務形態、リモートワークを前提としたゲーム開発のノウハウの蓄積が進む • しかしながら、急ごしらえの在宅勤務シフト対応による開発インフラの様々な問題も表面化してくる
  5. 急激な在宅勤務へのシフトにより開発インフラに生じた変化・歪み・問題点 6 • 事業拠点のネット接続パフォーマンス • VPN装置の能力・通信速度がボトルネックとなり速度は出ない • 社内のファイルサーバやリポジトリへのアクセスが帯域を埋める • 事業拠点と開発機材の総所有コスト

    • 事業拠点に設置した物理機材のトラブル対応やメンテナンスのコストが増大する • 事業拠点で就業する従業員が減少し維持コストが見合わなくなる • 在宅勤務で使用する高額な開発機材が管理・セキュリティ上の問題になる • ワークプレイスの多様化・ハイブリッド勤務の一般化 • 就業場所が在宅100%ではない従業員も増加 (週1日だけ出社など) • メイン開発機材が自宅にあり出社すると会議くらいしかやることがない → 開発インフラのクラウド化の機運がかつてなく高まる
  6. 2020〜2021: 開発インフラクラウド化の取り組み 7 • CI/CDパイプラインのクラウド化に注力 • オンプレミス環境に置かれた物理ビルドサーバをなくしたい • セルフホストからマネージドへの利用サービスの移行 Jenkins

    CI → GitHub Actions, Azure Pipelines, etc. • Unity, Unreal Engine プロジェクトをターゲットに クラウドネイティブなCI/CD パイプラインの構築を目指す • ゼロトラストセキュリティの実現 • 過去の登壇 • Game Stack Live 2021: Building a Cloud Native CI/CD Pipeline for Unity Games • CEDEC 2021: 2020年代のゲーム開発のための クラウドネイティブCI/CDパイプラインの構築
  7. バンダイナムコグループ Microsoft 365・Azure AD・Azure の活用推進 9 • バンダイナムコグループのITインフラは歴史的に Microsoft/Windows 技術を基盤としている

    • Microsoft 365 → オフィスSaaS (10,000名以上のライセンス) • Azure AD → 全従業員の情報を持つID基盤 • Visual Studio → 標準開発ツール (BNSだけで数100名の Visual Studio Subscription With GitHub Enterprise ) • Azure → IaaS, PaaS (Visual Studio Subscriptionで様々な利用特典) • DXの推進を目的としたAzure ADの積極活用 • OpenID Connect, → ユーザー認証・認可・プロビジョニング OAuth2, SAML, SCIM SaaSのID統合 • Application Proxy → オンプレミスのWebサービスに社外からアクセスができる認証つきプロキシ いわゆるGoogle BeyondCorpのAzure版 • Azure AD Join → Azure VMでユーザーのSSOとMicrosoft 365利用が可能になる Azure Virtual Desktopで利用 • ゼロトラストセキュリティの実現を特に重視している
  8. バンダイナムコグループ 開発会社・関連会社の組織紹介 10 • バンダイナムコスタジオ(BNS)・バンダイナムコ研究所(BNKEN)・バンダイナムコアミューズメントラボ(BNAL) • 1955年創業の株式会社ナムコ (NAMCO LIMITED) を共通のルーツとして持つ開発会社

    • 事業拠点やITインフラを共有し3社で一体管理されている • バンダイナムコビジネスアーク (BNBA) • グループの各事業会社の管理業務を統括し共通業務(シェアードサービス)を提供する会社 • 1万名を超えるグループ従業員が利用するオンプレミスおよびクラウドのITインフラ管理を行っている Source: https://www.bandainamco.co.jp/group/ 株式会社バンダイナムコスタジオ (BNS) 株式会社バンダイナムコ研究所 (BNKEN) 株式会社バンダイナムコアミューズメントラボ (BNAL) 株式会社バンダイナムコビジネスアーク (BNBA)
  9. エンタープライズ (大企業) IT インフラ更新の困難を乗り越える努力 11 • エンタープライズにありがちなITインフラのアジリティ不足 • 前例のないAzure ADの機能利用や設定変更の要望を通すことが難しい

    • バンダイナムコグループのAzure ADはユーザーが1万人を超える巨大なテナ ントであり保守的になることはやむを得ない • 対話と根回し • ステークホルダーと共に時間をかけて説明し調整していく努力が必要 • 自社の上位役職者に説明し、事業会社として正式な要望を管理会社に申し 入れしてもらう • ベンダ (Microsoft) からも支援を得る • 自分事とする姿勢を見せる • 要望した事柄を他人事とせず、自分でも十分に研究・検証して管理者に やってもらうべきオペレーションやリスクの対処を一緒に考える • Microsoft 365 開発者プログラム: 実験用の Microsoft 365 / Azure AD サンドボックスがを利用して実験 • 信頼関係が得られれば、アジリティはだんだん向上していく Source: https://developer.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/dev-program
  10. 2021〜2022: BNBA+BNS 協業によるバンダイナムコグループ Azure AD の活用推進 12 • 2021/11: Azure

    AD 機能をフル活用できる体制への更新 • 実は、この更新自体は以前から予定されていた → BNBAよりロードマップの提示を受け、BNSとしては準備が整うのを待つ → 全従業員に Enterprise Mobility + Security (EMS) E3 ライセンス付与、Azure ADの様々な機能が活用可能になる • 2021/12: Azure AD Join ユーザー認証の実現 • AzureのWindow VMに対するRDP接続でクラウドユーザー認証が可能になる → Azure Virtual Desktop (DaaS) の利用準備が整う • 2021/12〜2022/04: GitHub Enterprise Managed Users の導入 (後述) • ユーザーのAzure AD SAMLによる認証とSCIMによるプロビジョニング → Visual Studio Subscription with GitHub Enterprise 数100名の GitHub Enterprise Cloud アカウントが自動開設 • 2022/07〜2022/08: Azure AD Application Proxy の導入 (後述) • オンプレミスネットワークでコネクタが稼働 → オンプレミスのWebサービスにVPN不要でゼロトラストにアクセスできる手段を獲得
  11. 2021〜2022: GitHub Enterprise Managed Users (GitHub EMU) の導入 13 •

    GitHub EMU の特徴 • Azure AD など外部 ID プロバイダでユーザー・チームの管理ができる GitHub Enterprise Cloud サービス • GitHub Enterprise Cloud 上に隔離された Enterprise を作ることができる • 導入のタイムライン • 2021/07 バンダイナムコグループ従業員の Visual Studio サブスクリプションが "with GitHub Enterprise" に更新 • 2021/10 GitHub EMU サービスが GA • 2021/12/21 GitHub/BNBA/BNS キックオフミーティング • 2022/02 – 03 BNBA/BNS Azure AD SAML SSO およびSCIM User/Group プロビジョニング設定 • 2022/04 バンダイナムコグループ GitHub EMU サービス開始 バンダイナムコスタジオ エンジニア新人研修で利用開始
  12. GitHub Enterprise Managed Users (GitHub EMU) 導入のねらい 14 • Azure

    AD と GitHub Enterprise Cloud との ID 統合 • Azure AD ユーザー・グループを GitHub Enterprise Cloud ユーザー・チームに自動反映 • 数100名の従業員個人のユーザー登録手続きが消滅、管理の労力が大幅に削減、サービス利用率向上 • 公私のアカウント分離によるセキュリティ向上 • Enterprise 内部と外部の厳密な隔離 • Enterprise 内の組織・リポジトリ・ユーザーは、Enterprise 外の一般ユーザーからはまったく見えない • GitHub Enterprise Server をデプロイしなくとも強固なセキュリティと情報漏洩対策が実現できる • 設定ミス・操作ミスによる情報漏洩の懸念を根本的に解決 • バンダイナムコグループ専用の安心・安全なコード共有・共通開発基盤の実現 • オープンソースの開発手法を商用ソフトウェア開発で実施するインナーソース文化の導入 https://resources.github.com/topics/innersource/
  13. 2022: Azure AD Application Proxy (App Proxy) の導入 15 •

    App Proxy の概要 • プライベートネットワーク上のWebサーバにアクセスできる Azure AD 認証つきのリバースプロキシサービス → オンプレミスで稼働するWebサービスを簡単にVPN不要のゼロトラストサービスにできる → Google BeyondCorp Enterprise, Cloudflare Access, Akamai EAA などが同じコンセプトの製品 • プライベートネットワーク上のWindows Serverで「コネクタ」を動かす • Azure AD Premium P1 ライセンスが必要 (EMS E3 に含まれる) • App Proxy の用途 • クラウド移行・ゼロトラスト化することが難しい、オンプレミスで稼働するWebサービスの「延命」 • 今後新規構築するWebサービスには使わない → 最初からゼロトラストなサービスとして実装する • バンダイナムコスタジオでの利用事例 • Confluence および JIRA → 大量の情報・ナレッジが蓄積されており簡単にクラウド移行できない • さまざまな基幹業務システム → 古すぎてメンテナンスが困難
  14. DX Cloud Studios のねらい 17 • Work From Anywhere •

    ゲーム開発にかかわるすべての従業員が利用できるリモートワークのインフラを提供 • エンジニア・アーティスト・テスターなど各職種の要件に対応できるクラウド仮想デスクトップを導入 • レガシーアセットのサポート • レガシーアセット = ゼロトラストセキュリティに対応できないサービス、ソフトウェア、デバイスなどの従来資産 • サービスの例:Confluence/JIRAなどのセルフホストの社内Webサービス • ソフトウェアの例:分散ビルドシステム、高速リモートデスクトッププロトコルなど • デバイスの例:家庭用コンソールや業務用製品の開発検証機など • ゼロトラストセキュリティ実現までのつなぎとしてAzure AD App Proxyや専用VPNアプライアンスでサポート • 既存インフラの理解・活用・共存 • ID 基盤、クラウドサービスサブスクリプション、 ソフトウェアライセンスなどの既存インフラを理解し最大限に活用 • 従来のセキュリティポリシーを尊重、大規模なインフラの変更を回避、コストを削減 • つまりBNBAの管理するインフラを活用しさらに連携を深めていくということ
  15. DX Cloud Studios の構成要素 • 開発・テスト隔離ネットワーク (DevTest DMZ) • 仮想マシンやレガシーアセットが接続できる隔離されたネットワークを各プロジェクトに割り当て

    • VDIやVPNによる手軽かつ安全なアクセス手段を提供 • クラウド仮想デスクトップ (VDI) • 1人1台の割り当てを基本とするオンプレミス環境と同等のWindowsデスクトップを提供 • PCだけでなくスマホ・タブレット・シンクライアントによるアクセスに対応 • 高速リモートデスクトップ技術:アーティスト向けDCCツールやゲームのテストプレイに対応 • クラウド仮想ネットワーク接続 (VPN) • オンプレミス(会社)環境ではなく在宅勤務環境をクラウドに接続する • オンプレミス環境とクラウド環境への同時VPN接続が可能 • 既存のセキュリティポリシーを維持しつつ、通信帯域・遅延のボトルネックを解消 18
  16. 従来のリモートワーク環境 19 • On-Prem Studio = オンプレミス(社内)の開発環境 ❶ • On-Prem

    Studio VPN ❷ • 在宅勤務環境から社内へのアクセスに使用 • 社内にはファイルサーバ・Confluence・JIRAなど の業務上重要なサービスが多数存在する • 厳格なセキュリティポリシー ❸ • デフォルトルート設定により社外インターネット へのアクセスもOn-Prem Studio VPNを通過する • 社内のFirewall規則により利用可能なポートやプロ トコルの制限を受ける • 開発環境のボトルネック • 多数の従業員の利用によるVPNの帯域逼迫 • 家庭のインターネット接続の本来の帯域を活かせない • 厳しいFirewall規則によりクラウド環境に設置した独自プロト コルを用いる開発テストサーバにアクセスできない ❷ ❸ ❸ ❶
  17. DX Cloud Studios が実現するリモートワーク環境 20 • Cloud Studio = クラウド上のゲーム開発スタジオ

    ❶ • On-Prem Studio とは重ならないプライベート アドレス空間を割り当てる • Cloud Studio VPN ❷ • Cloud Studioに直結する高速なVPN • On-Prem Studio VPNと同時接続可能で 既存のセキュリティポリシーを維持する • Cloud Studio VDI ❸ • Azure Virtual Desktop / Windows 365 Enterprise • Cloud desktops = 個人用Windows仮想マシン • DevTest DMZ ❹ • プロジェクトごとに専用アドレス空間が 割り当てられる開発・テスト用の隔離 ネットワーク • Firewall ❺ • VDI・VPN・DMZ の間の通信の厳密な アクセス制御と隔離を実現 ❶ ❷ ❸ ❹ ❹ ❺
  18. DX Cloud Studios 内部のネットワーク構成 21 • 仮想ネットワーク(VNet)ピアリング ❶ • Core

    VNetを中心としたハブ・スポーク構成 • Azure FirewallがVNet間とインターネットのアク セスを制御する • VNet: Cloud Desktops ❷ • 用途ごとにVMのスペックやリモートデスクトッ プソフトウェアを使い分け • VNet: DevTest DMZ ❸ • プロジェクト所有が所有するVNetをCore VNetと 相互にピアリング接続 • DevTest DMZ専用のVPNエンドポイントを提供 • NSGによるアクセス制御が可能 • On-Prem Studio Legacy Services ❹ • Azure AD App Proxy を運用 • オンプレミスConfluence・JIRAにアクセス可能 ❶ ❷ ❸ ❸ ❹
  19. Cloud Studio VPN: WireGuard + Subspace 22 • WireGuard https://www.wireguard.com

    • 最新の暗号アルゴリズムによるVPNソフトウェア • Windows/macOS/Linux/Android/iOS 多様なOSに対応 • サーバはLinux VM上で稼働しOpenVPNよりも軽量・高速 • Subspace https://github.com/subspacecommunity/subspace • WireGuardと同じサーバ上で動く管理用Webアプリ • Azure AD SAML SSO ユーザー認証・承認 • ユーザーはセルフサービスで開発機材PCを登録して接続する • WireGuard + Subspace • AzureのVPNサービスに比べると格段に安くパフォーマンスが高い → 安価な1コアのAzure Linux VMでも1Gbps以上スループット → プロトコルの制約もなく別格のパフォーマンス • Subspaceはコンテナ化されておりデプロイや更新が簡単 • スケーラビリティ・冗長性という点ではちょっと弱い 1インスタンスにつき253デバイスまで
  20. WireGuard クライアントアプリ 23 • Windows/macOS/Linux/Android/iOS 各OS用のクライアントアプリが存在 • Subspace からダウンロードした設定ファイルをインポートして簡単にWireGuard接続ができる •

    複数のVPNサーバに同時に接続できる • 会社のVPNにはWireGuardサーバの スプリットトンネル設定を追加してもらう • 各接続先のIPアドレス空間が重ならないことが重要
  21. DX Cloud Studios のクラウド仮想デスクトップ 25 • クラウド仮想デスクトップの利点 • ハイスペックな物理機材の調達・故障対応・バックアップなどのメンテナンスが不要になる •

    セキュリティの向上 → 映像・音声のみを伝える仮想デスクトップからはファイルや情報の盗難や破壊が発生しにくい • モビリティの向上 → ユーザーはラップトップやタブレットなどの軽量端末のみがあればよい → 在宅勤務でも出社勤務でも同じVMで業務を続けることができる • クラウド仮想デスクトップの欠点 (後述) • 映像・音声の品質と通信遅延、特殊デバイス対応、GPU搭載VMコスト、需給逼迫
  22. Microsoft/Azure が提供する Desktop as a Service (DaaS) の概要 26 •

    Azure Virtual Desktop (AVD) • Windows VM への手軽なリモートデスクトップ接続を無料で提供するAzureのサービス • VM は自分で用意する → 従量課金、コストを抑えるにはVM未使用時の電源オフが重要 • Windows 365 Enterprise (Win365E) • Microsoft 365のサービスだが、Azureネットワークに接続可能なVMが提供される • VM 従量課金なし、ただし選択可能なVMスペックは限定される → Office事務作業、GPUが不要なプログラミング向け • Microsoft Dev Box (2022/08 public preview) • 製品開発プロジェクトの開発者にVM作成・削除の権限を移譲できるAzureのサービス • Azure DevTest Labsと思想と目的が似ている • 上記すべてのサービスがAzure AD SSOに対応 • VMとユーザーはAzure AD Joinによりクラウド認証される • ユーザーは普段使うアカウントとパスワードでVMにアクセスできセキュリティと利便性が向上
  23. ゲーム開発におけるAzure Virtual Desktopの課題と懸念点 27 • 映像・音声の品質と通信遅延 • ゲーム開発作業においては非常に重要な要素 → Unity

    Editor・Unreal Editor・各種DCCツール・ゲームのテストプレイ • AVDとWin365Eは間接接続のRDPで通信遅延が不利だが、それを補う技術やサードパーティのアプリが存在する → RDP Short Path・Teradici・Parsec (後述) • GPU VMのコスト • GPUが必要となる業務が多いが、GPU搭載VMの料金が非常に高く、大規模な導入にはかなりの覚悟がいる → 物理機材の 4.4 倍のコスト (アーティスト向けPC 4年償却の費用総額で試算) → コスト削減対策: 平日昼間だけ動かす(22:00で自動シャットダウン)、予約インスタンスやスポットVMを使う → やってみて初めてわかるコスト増加・削減も多々あり正確なTCOの算出は難しい • GPU VMの需給逼迫 • 2022年春以降、東日本リージョンのGPU搭載VMの確保が難しくなっている • 通信遅延に影響するため、他の国のリージョンで置き換えられるわけではなく対応に苦慮
  24. Parsec remote desktop is now available on Azure 28 •

    Parsec – 高速リモートデスクトップソリューション • 2016年創業・2021年9月Unity Technologiesが買収 • ホストの GPU を活用して低遅延・高品質 な映像・音声伝達を実現 • アーティストが使用するDCCツール (Photoshop, Maya など) の GPU を多用する デスクトップワークロードにも対応可能 • NAT越えプロトコルとサーバを実装 (STUN) • VPNが不要となりネットワーク設計が簡略化できる • Azure AD SAML SSO に対応 • Azure Virtual Desktopでも動作確認済み • 2022/08時点ではNVIDIA GPU VMのみ対応 • AMD GPU VMでは残念ながら動作しない GPU VM需給逼迫解決の鍵となるため対応が望まれる Source: https://developer.microsoft.com/ja-jp/games/blog/parsec-remote-desktop-is-now-available-on-azure/
  25. 事例: DevTest DMZ における Incredibuild 運用 29 • DevTest DMZにIncredibuild環境を構築、Unreal

    Engine の分散ビルドなどを実施 • 高速な Cloud Studio VPN により在宅勤務PCからの分散ビルドが On-Prem Studio クラスタ利用と比較して大幅に高速化 • Helper AgentのAzure VMの数を負荷に応じて増減することでコストを削減
  26. 事例: Perforce Proxy On-Prem Studio VPN ボトルネックのバイパス 30 • On-Prem

    Studio VPN 経由では時間がかかりすぎる大容量のトラフィックを Azure クラウドでキャッシュ・バイパス • DevTest DMZ に On-Prem Studio の Perforce リポジトリにつながる Proxy (P4P) を設けて VPN 経由でアクセス
  27. 事例: オンラインゲームの開発環境 31 • DevTest DMZのAzure VMでゲームサーバの開発や自動ビルド・テストなどを実施 • Cloud Studio

    VPNにより在宅勤務環境のワークステーションからAzure VMに高速・安全なアクセスを提供
  28. GEMini: バンダイナムコスタジオ新人制作研修 32 • GEMini 実施概要 • エンジニア、プランナー、アーティストなどの全職種を含む 10人程度のチームを数個編成して半年程度でゲームを制作 •

    ここ数年はWindowsがターゲットのミニゲームをUnityで作る • 2021年度GEMini研修の成果 • Goonect – Steamで2022年5月27日リリース! https://store.steampowered.com/app/1850360/Goonect/ • インタビュー記事:『Goonect』ができるまで https://www.bandainamcostudios.com/works/episode/2314 https://www.bandainamcostudios.com/works/episode/2340 • 2021年はAzure DevOpsやMicrosoft 365などのSaaS活用にとどまる (Gitリポジトリ、CI/CDパイプライン、ビルドの配布など) • 2022年度GEMini研修が進行中 • クラウド開発インフラとして DX Cloud Studios を使用 • VDIを含む "フル" クラウド開発インフラの実現を目指して様々な検証を実施
  29. GEMiniプロジェクトによるクラウド開発インフラ推進 33 • 新人研修プロジェクトの特徴 • 小規模プロジェクト → インフラ投資額を抑えられる • 新規プロジェクト

    → 既存の大規模プロジェクトに存在する様々なしがらみが少ない • 研修プロジェクト → 収益化のプレッシャーがなく、様々な実験と検証に適している • 新人(特にエンジニア)はクラウド開発インフラの活用能力が高い • 先輩よりもクラウド開発インフラを使いこなせる優秀な新人が多い • Gitによる協調開発やCI/CD構築などは一般教養のひとつであり入社前から経験がある • 新人研修でクラウド開発インフラの経験があれば、配属先プロジェクトでもクラウド推進の役割が期待できる • 2022年度GEMiniプロジェクト • 社長の肝入いり案件として "フル" クラウド開発インフラを実現し、全社向けのDX推進の礎を築く • クラウドベンダである日本マイクロソフト様からも様々な形で支援をいただいています
  30. 社内向けの情報発信・教育活動 35 • DX Study: クラウド開発インフラの活用方法を習得できる不定期開催の勉強会イベント • この他にも日本マイクロソフト様のご協力によりAzureセミナー・ハンズオンイベントなどを開催しています 実施日 タイトル

    2022/02/01(火) DX Study #1 Azure Boards 勉強会 2022/03/08(火) DX Study #2 Azure AD・MS365 勉強会 2022/04/26(火) DX Study #3 GitHub Enterprise Managed Users 勉強会 2022/07/05(火) DX Study #4 CI/CD 勉強会 ① 2022/06/30(木) DX Study #5 GEMini 2022 クラウド開発インフラ勉強会 2022/08 (予定) DX Study #6 Azure Virtual Desktop & Parsec 勉強会 (仮)
  31. まとめ 36 • バンダイナムコスタジオにおけるゲーム開発インフラのDX推進の取り組みを紹介しました • バンダイナムコスタジオのゲーム開発インフラにおける「2つのDX」 • バンダイナムコグループのクラウドITインフラ活用のための組織 • クラウド上のゲーム開発スタジオ:

    Bandai Namco DX Cloud Studios (仮称) • 2022年度バンダイナムコスタジオ新人制作研修: GEMini • 始めたばかりの取り組みについては今後も機会をとらえて進捗を随時報告していきます • ゲーム開発インフラ改善の参考になれば幸いです