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Conwayの法則を"ちゃんと"使うために — 原典でConwayは何を言っていたのか

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July 11, 2026

Conwayの法則を"ちゃんと"使うために — 原典でConwayは何を言っていたのか

スクラムフェス仙台2026での講演資料です。
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皆さんお馴染みのConwayの法則。チームトポロジー、マイクロサービス、逆Conway戦略、などなど、あちこちで引き合いに出される、アジャイル界隈では本当によく耳にする言葉です。

でも、Conwayが1968年の原論文で本当に言っていたことは、今みんなが言っているアレとはぜんぜん違う、と言ったら、皆さん驚くのではないでしょうか。

実は原典を読み返してみると、現在広く流通している"Conwayの法則"とはかなり違った主張を展開しています。鍵になるのは、Conway自身が「組織とシステムは準同型になる」と数学用語を使って表現していることです。聞き慣れない言葉かもしれませんが、重要なことは、これは「組織とシステムは相似形になる」という意味ではない ということです。相似形、あるいは1対1対応する、というのは準同型ではなく、同型 という、似ているようで、そこから得られる意味は全く異なるものです。

Conway自身は原論文で「準同型」と言う表現で説明していたものが、その後さまざまな文献で引用されるたびに少しずつ解釈がスライドしていき、いつの間にか「同型」に近い意味で語られるようになりました。それゆえ、現代において逆Conway戦略は「組織とシステムは相似形になる」という前提で解釈されることが多いのですが、Conwayのオリジナルの解釈を踏まえると、逆Conway戦略からは全く違った景色が見えてきます。

そもそも原典を読むと、Conway自身、Conwayの法則を踏まえて組織をどう設計すべきか、について現代の逆Conway戦略とは全く違う主張をしています。ここには立ち止まって考える価値があります。逆Conway戦略はきちんと使えば有用なのですが、濫用されがちなものでもあります。本来の意味を知ることで、もっと深く考えながら使えるようになるはずです。

このセッションでは、

- 原論文でConwayが本当に言っていたこと
- 原典の「準同型」がどう引用され、どう変遷して、いまの姿になったのか
- 「準同型」を前提にすると、Conwayの法則はどう解釈できるのか

について、数学の前提知識なしで理解できるよう解説を試みます。

また、数学者である松谷先生・大森先生が、平鍋さんや羽生田さんらと共著で著した2023年の論文 "Conway's law, revised from a mathematical viewpoint" にも触れていこうと思います。これはConwayの原論文をベースに、数学的に厳密に再解釈した、というものです。こちらも、「すると何が面白いの?」といったあたりを、数学があまりわからなくてもわかるように解説していきます。

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Takeo Imai

July 11, 2026

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Transcript

  1. Conwayの法則 [O]rganizations which design systems (in the broad sense used

    here) are constrained to produce designs which are copies of the communication structures of these organizations. 組織が(広い意味での)システムを設計するとき、組織構造を模倣したような設計に縛 られがちである Melvin E. Conway, "How Do Committees Invent?" より Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 4
  2. 原論文 "How Do Committees Invent?" 1968年に公開 当初 Harvard Business Review

    に投稿したが 不採録となり、翌年 IT系雑誌 "Datamation" に 採録 Conway自身のwebサイト(melconway.com)で無 料公開されている Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 12
  3. タイトルを直訳すると「委員会はどうやって発明をするか」 委員会(いいんかい、英: committee、commission、board)は、複数の委員からなる合議制 の機関を指す。(Wikipedia より) 参考) 「委員会による設計」 ("design by committee")

    → 多数の人間が設計に関与すると一貫性・シンプルさを失う というアンチパターン Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 13
  4. 原論文の結論にある、よく引用される「Conwayの法則」の定義 (再掲) [O]rganizations which design systems (in the broad sense

    used here) are constrained to produce designs which are copies of the communication structures of these organizations. 訳 :組織が(広い意味での)システムを設計するとき、組織構造を模倣したような設計に縛ら れがちである Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 14
  5. なぜ1対1対応しなくていいか ちゃんと原論文に書いてある Notice that this rule is not necessarily one-to-one;

    that is, the two subsystems might have been designed by a single design group. 複数のモジュールを同じグループが担当する場合は当然ある じゃろ? Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 26
  6. Yourdon & Constantine "Structured Design" (1978) 日本語訳『ソフトウェアの構造化設計法』 「準同型」ではなく「同型」と言い切っている Actually, Conway's

    Law has been stated even more strongly: The structure of any system designed by an organization is isomorphic to the structure of the organization. (実際のところ、Conwayの法則はより強い形で述べられる: ある組織によって設計されたどのようなシステム の構造も、その組織の構造に 同型 になる。 ) Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 29
  7. P A R T I I I Conwayは結局何を主張していたか Conwayの法則を "ちゃんと"

    使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 33
  8. それゆえ、組織には 柔軟性 が求められる 組織構造が柔軟でないと、あらゆる設計にその足跡が残る To the extent that an organization

    is not completely flexible in its communication structure, that organization will stamp out an image of itself in every design it produces. 組織が大きいほど柔軟性は失われる The larger an organization is, the less flexibility it has and the more pronounced is the phenomenon. Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 35
  9. 数学者 × アジャイル実践者 によるConwayの法則の再解釈 Conwayの原論文を クソ真面目に 数学的に解釈するとどうなるか? ―― に本気で取り組んだ論文がある Matsutani

    et al. "Conway's Law, Revised from a Mathematical Viewpoint" (2023) ( 『Conwayの法則、数学的観点からの再訪』 、http://arxiv.org/abs/2311.10475 ) 著者は数学者 × アジャイル・ソフトウェア開発 実践者 松谷 茂樹(金沢大学) 大森 祥輔(法政大学) 平鍋 健児(永和システムマネジメント) 羽生田 栄一(豆蔵 / IPA) Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 39
  10. 同じシステムでも、タスクの切り方で組織との関係が変わる レイヤー単位のタスクで束ねる UIチーム APIチーム 検索UI 決済UI 検索API 決済API チーム間に露出する依存:2本 機能を1つ触るたび、2チームの調整が走る

    機能単位のタスクで束ねる 検索チーム 決済チーム 検索UI 決済UI 検索API 決済API チーム間に露出する依存:1本 チームをまたぐのはAPI間だけ タスクの導入により、Conwayの法則による組織設計の問題を より明確に可視化・整理できる Conwayの法則を "ちゃんと" 使うために ぼのたけ @ スクラムフェス仙台2026 42