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事業のターニングポイントに向けて、開発ロードマップの策定と達成のためにPMがやったこと

Genya Ishida
November 28, 2023

 事業のターニングポイントに向けて、開発ロードマップの策定と達成のためにPMがやったこと

2023/11/29に開催された「pmconf2023」での登壇資料です。
https://2023.pmconf.jp/session/35_ttLbC

解説noteも書いています。
https://note.com/genya/n/n8d8687663e41

Genya Ishida

November 28, 2023
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Transcript

  1. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 2 今日の内容 • iOS/Androidアプリの開発チームについてのアクション

    • ゴールに対して何を考え、ロードマップを策定したか • ロードマップを達成するためのPMおよび開発チームの動き Luupの直近のターニングポイントであった改正道路交通法に関して、 開発ロードマップの策定と達成のためのアクションについてお話しします 今日話すこと 今日話さないこと • 開発チームの詳細な体制やワークフロー • iOS/Androidアプリ以外のプロダクト(ハードウェアやポート)の開発に関すること • 道路交通法の改正が決まるまでのLuupの取り組み
  2. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 3 0. 事業と前提 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 2. 開発ロードマップを達成するためにPMとしてやったこと 3. おわりに
  3. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 4 0. 事業と前提 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 2. 開発ロードマップを達成するためにPMとしてやったこと 3. おわりに
  4. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 5 • 街じゅうに高密度にポートを展開 •

    電動キックボード・電動アシスト自転車 の2種類のモビリティを提供 • 電動キックボード提供は、政府の実証実 験に参加する形で実施してきた Luupの事業について(1/2) ”街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”というミッションのもと 電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを運営 0. 事業と前提
  5. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 6 • 電動キックボードをはじめとする、 電動マイクロモビリティ専用の

    交通ルールが初めて定められた • 約30年前に、電動アシスト自転車が 新しいモビリティとして認められたとき以 来の大きな改正 Luupの事業について(2/2) 2023年7月1日 ”改正道路交通法” が施行 0. 事業と前提
  6. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 7 前提(1/2) アップデートのタイムリミットは半年弱 •

    改正内容は2022年4月にはすでに公表されていた • ただし、施行日がいつになるかは2023年1月下旬に初めて発表された Must要件のすべてはわかっていない状態 • 法律には明記されない事業者が守るべきガイドラインや、保安基準等は現在進行 中で議論がされていた 施行日当日に電動キックボードの提供ができるか 不明な状態でプロジェクトスタート 1 2 0. 事業と前提 置かれていた状況
  7. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 8 前提(2/2) 利便性の向上 …

    最大速度が20km/hに (自転車と同程度) 利用者層の広がり … 16歳以上が乗車可能 ルールの明瞭化 … 交通ルール、罰則や保安基準などの策定 サービスの理解浸透・利用拡大の機会とするべく、 施行日である7月1日に集中する動きへ全社としてシフト 1 2 3 0. 事業と前提 改正法施行後の大きな変化
  8. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 9 0. 事業と前提 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 2. 開発ロードマップを完遂するためにPMとしてやったこと 3. おわりに
  9. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 10 • いくつかの開発案件は期日までに必達 •

    不確実性をはらむ進行の中でも遅延は 許されない • 一方、事業運営上 二度とは来ないイベ ント 1. アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 考えたこと 状況は変化する可能性があるが いま見えている情報の中で “最善手”を考える 考え方の見直し 最初の考え
  10. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 11 期日までに最低要件をリリースすること 設定したゴール 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 7月1日から利用のスタートダッシュを切れる状態に仕上げること。 半年弱かけてリリースを重ね、事前期からワクワク感を醸成する。 • アプリはユーザーとの重要なタッチポイント • 7月1日から初めて興味を持ってもらうのではなく、すぐ試したくなるような期待値を事前につ くりたい • そして、当日から安心・安全にご利用いただくことが重要。 ルールの変化や注意点を前もって正しく理解してもらえるよう、なるだけ早く情報提供したい
  11. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 12 最終的なロードマップ(1/2) タイムウィンドウに対して ”どこに何を置くべきか”

    “いつなにを達成したいか”という意思を持つことができた START GOAL START GOAL 1. アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか デッドラインを基準に 単に後ろから並べるマッピング 与えられた時間枠の全体を俯瞰した 適切なタイミングでの配置 成果最大化をはかるためのマッピング
  12. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 13 • いつまでに何を出したいかを明確にすることによって、最初期から健全な焦燥感をもつことができた •

    各部署との連携や、ユーザーリサーチなど付随的なアクションも自然と生まれた 最終的なロードマップ(2/2) 結果として、はじまりから緊張感のある“攻め”のロードマップに 1. アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月1日 既存のロードマップに則った リリース テスト・リリース 新交通ルール テスト機能 ルール学習 コンテンツ 年齢確認書類 提出機能 新機能追加の ためのフロー整理 英語化・ 国外ストアリリース CRM施策 デザイン・実装 企画・設計 テスト・リリース デザイン・実装 企画・設計 テスト・リリース デザイン・実装 企画・設計 テスト・リリース デザイン・実装 企画・設計 テスト・リリース1 デザイン・実装 企画・設計 テスト・リリース2 デザイン・実装 テスト・リリース デザイン・実装 企画・設計 キャンペーン テスト・リリース1 デザイン・実装 リリース2 リリース3 企画・設計 ※図はマイルストンを 割愛した概略 ※
  13. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 14 0. 事業と前提 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 2. 開発ロードマップを達成するためにPMとしてやったこと 3. おわりに ※ 厳密には、PMとして意識しつつも チームのみんなで取り組んだこと (PMだけに限らない動きも含む)
  14. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 15 ロードマップを達成するための進行を考える • 施行日はコントロール不可能なデッドライン

    • 1日の遅れが顧客の利便にも、事業成長にも大きな損害を生むおそれ • 各部署が連携して動く中で、遅延や不確実性をはらむ状態はなるだけ避けたい • ライトなWant案件だけが手堅く出てしまう等が最悪のパターン 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと 懸念事項 “攻め”のロードマップに対して、“守り”のプロジェクト進行が必要
  15. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 16 • 開発遅延や工数の肥大化は、特別な事情から発生することは稀 •

    ワークフローがうまく回ってなかったり、コミュニケーションが不十分・齟齬が起きることに依るよう な”当たり前”が出来ていないケースが多い 進行上 意識したこと 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと 一般に大事とされている“基本”の徹底を強く意識 自身の経験則 意識したこと • 開発内容のチャレンジと、チーム運営のリスクは別物 • 必要以上のリスクを取ったり、無理な背伸びはしない • ある種 教科書的なTipsを 自分たちなりに徹底できるように、PMができる役割を全うすることを意 識した
  16. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 17 1.PM間の持ち場・裁量を明確にわける 2.キメの問題はすぐキメる 3.“ついでに”と”欲張り”の線引をシビアに見る

    4.不確実性の低い案件こそ なる早で終わらせる 5.他部署コミュニケーションはシナリオを明確にする 1.既存のロードマップをすべて捨てる 2.可能な最大範囲の共通認識を最速で取る 3.有事だからこそ、慣れている開発スタイルを貫く 大きく遅れるリスクをなくす・小さな遅れを積み重ねない 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと 大きく遅れないようにやったこと 小さく遅れないようにやったこと
  17. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 18 既存のロードマップをすべて捨てる 大きく遅れないようにやったこと(1/3) •

    Luupは1〜6月が上半期であり、進行途中の上半期のロードマップを一度白紙にする意思決定をした • ロードマップは全部捨て、バッファを最初に取る(なにかが起きたときに耐えられる最低期間を設定する) 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと もともとのロードマップ。 2月以降に想定していた動きはすべて取り消し、全社戦略にアラインするための余白を作った
  18. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 19 可能な最大範囲の共通認識を最速で取る 大きく遅れないようにやったこと(2/3) •

    PMが見えていないタスクや、1人では想像しきれなかった対応も、全員で考えると湧き出てくる • 「まだ決まっていないこと」の共通認識をとるのも大事 • 「スケジュールが伸び縮みに影響する注意点はココだ」というアンテナを皆で持つことができる PMの頭の中にある全体像を Figmaで可視化 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと
  19. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 20 有事だからこそ、慣れている開発スタイルを貫く 大きく遅れないようにやったこと(3/3) •

    PMがチケットをひとまず作成しきり、7月1日までの全Sprintに並ぶものを開発チーム全員ですりあわせ • どういう順序・速度で完了する必要があるかが早くから想像できる状態に(無茶ではないと算段がついた) • 余裕があるわけではないので、いつものスタイルをより一層強固なものにするという改善意識が芽生えた 半年間の大きくまとまった活動を、 2月頃から7月上旬までのSprint(計10)にブレイクダウンして平常運転化 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと
  20. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 21 デザイン要求作成 PRD・仕様方針 PM間の持ち場・裁量を明確にわける

    小さな遅れが積み重ならないためにやったこと(1/5) • 各PMの決定権を明確にし、レビュー不要でスピード感を持って進められるように • 確認や合意のプロセスがテンポを悪くしたり、責任範囲を曖昧にしてしまう • 週次の定例などでお互いの進捗などはしっかり共有し、必要に応じた相談や、案件をパスしあえる状態は担保 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと 調査・要求整理 デザイン要求作成 PRD・仕様方針 案件Xの裁量 案件Yの裁量 調査・要求整理 PM : A PM : B PM : C …
  21. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 22 キメの問題はすぐキメる 小さな遅れが積み重ならないためにやったこと(2/5) •

    「決まったこと」と「まだ決められないこと」の2つの分類になる早で着地させる • 中途半端な状態でスタックさせない。決めないことによる開発進行を止めない。数時間の遅れも無駄にしない 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと すでに決まったこと まだ決められないこと 決める必要があること まだ決めてないこと ✕
  22. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 23 “ついでに”と”欲張り”の線引をシビアに見る • 原則スコープはシビアに絞る。”やれるといいな”という欲は切り捨てる。

    • 反対に、やれてしまう改修はうまく取り入れる(半年間ユーザーに対して何の改善もないのは避けたい) 小さな遅れが積み重ならないためにやったこと(3/5) 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと 改修したいことA 改修したいことB 改修したいことC 改修したいことX 改修したいことY ついでに改修できる 欲張りすぎる 線引をした上でデザイン要求や PRDを作成する
  23. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 24 小 小 小

    不確実性の低い案件こそ なる早で終わらせる 小さな遅れが積み重ならないためにやったこと(4/5) • 不確実性の高い案件のリスクを早期に小さくするのはもちろんだが、不確実性の低い案件も油断しない • 時間はどんどんなくなっていくもの。時間あたりのスループットを高めることが大事 • なる早でやり切り、数を減らすことで、不確実性の高い案件にフォーカスできる余裕を維持していく 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと <<< 総じて大きく変わらなくても、複数を並行することと、一つに集中できるかでは大違い 大 大
  24. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 25 他部署コミュニケーションはシナリオを明確にする 小さな遅れが積み重ならないためにやったこと(5/5) •

    他部署と連携すべき事項は、「XとなるとX日に出せる、Xが遅れるとX日までずれ込む。XのリスクはXのみ」などと想定 されるシナリオをあわせて共有する • 他部署に要求する際も「X日までは待てるが、X日をすぎると影響が大きい」「Xだけはキメてほしい・Xはあとからでもい い」などシナリオを外さないように情報を伝達していく 2. 開発ロードマップを達成するために PMとしてやったこと イベントX シナリオAの進行へ シナリオBの進行へ
  25. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 26 0. 事業と前提 1.

    アプリ開発チームにとってのゴールをどう考え、設定したか 2. 開発ロードマップを達成するためにPMとしてやったこと 3. おわりに
  26. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 28 結果どうなったのか? 3. おわりに

    施行日前平均 施行後 7月以降 新規流入は 2~3倍に増加 4割強が前日までに 利用準備を完了 新規・リピーターともに 満足度が向上 施行日前日 7月から必要なキックボード利用資格の 準備完了者の割合(DAU比) アプリインストール数 7月前後での 最高速度に関する印象の変化差分 (+) 増加 (-) 減少 [1] 速すぎる [2] [3] 丁度いい [4] 遅すぎる [5] 機能リリース
  27. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 29 • しかしながら「想定外」はやはり発生。最初のロードマップどおりの進行とはならなかった ◦

    前提となる要件に変更がかかり、デザインの作り直しが発生 ◦ 依存関係が発覚し、リリース順序やタイミングの入れ替えが発生 ◦ etc… • 時間をシビアに突き詰めた進行でも、最終的に残ったバッファは小さいものだった • 予防策が足りず、なにかが大きくズレていれば、ギリギリの進行になっていた可能性が高い ロードマップの達成について 3. おわりに
  28. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 30 • 改めて、落とし穴を踏まないように基本を徹底することの重要性を感じた •

    半期が終わったあと、振り返りを実施し、チームとしても学びの機会となった • 今日お話しした内容も、すべてを最初から考えて行動していたわけではなく、 振り返った結果として”機能していた”と自覚したものが一部含まれている(振り返りも”基本”の一部) 学び 3. おわりに 振り返り(KPT)の様子
  29. Luup, Inc. - Confidential and Proprietary 31 まとめ 3. おわりに

    • 真にターニングポイントとなりえるには、 「期日を守る」ような一見正しいゴールだけでは不足すると考える • 取るべき最善手を考え、意思をもった”攻めのロードマップ”をつ くる • 不確実性と変化に耐えられる”守りのプロジェクト進行”を行い、 “基本の徹底”により成果最大化の足場を強く支える