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安定した基盤システムのためのライブラリ選定

 安定した基盤システムのためのライブラリ選定

実践!バックエンドTypeScript〜現場から学ぶtsの可能性〜
https://findy.connpass.com/event/360678/
での登壇資料です

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KAKEHASHI

July 14, 2025
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  1. ©KAKEHASHI inc. 機能要求 #1 医療プロダクトを支える基盤システム • 認証・認可 複雑な状態遷移を伴う • ディレクトリサービス

    ユーザー・店舗・テナント・グループ・組織階層... 複雑なリレーションシップが絡み合う • ライセンス 契約とコンプライアンスに直結する
  2. ©KAKEHASHI inc. 非機能要求 #1 医療プロダクトを支える基盤システム • セキュリティ 患者の薬歴などの要配慮個人情報を取り扱う • 可用性

    医療の現場の業務を止めてはいけない • 移植性 基盤システムとして永く運用し続ける必要がある • 性能・拡張性 日本の薬局は約60,000店舗 薬局は常に一定の時間に開局・閉局する データ量やトラフィックはある程度上限が推定できる
  3. ©KAKEHASHI inc. なぜTypeScript? #2 TypeScriptで基盤システムを構築する 基盤システムでは複雑な機能要件を表現したい 認証・認可、ディレクトリサービス、ライセンスなど 複雑な状態遷移とリレーションシップがコード上で表現されてほしい TypeScriptの型の表現力でモデリングする 値やエンティティ、そして状態を型で表現する

    コードや仕様の誤りを型検査時に発見できる • 「関数型ドメインモデリング」 (アスキードワンゴ社) • TypeScript 関数型スタイルでバックエンド開発のリアル - Speaker Deck • TypeScript開発にRailway Orientedを持ち込み、より型安全なエラーハンドリングへ - Sansan Tech Blog
  4. ©KAKEHASHI inc. 例) ディレクトリサービス #2 TypeScriptで基盤システムを構築する OrgRoot OrgGroup OrgGroup OrgGroup

    OrgStore OrgGroup OrgGroup OrgStore OrgStore 店舗の親は グループのみ グループの親は グループかルート ルートは親を 持たない 親子関係の正確な表現
  5. ©KAKEHASHI inc. 例) ディレクトリサービス #2 TypeScriptで基盤システムを構築する OrgRoot OrgGroup OrgGroup OrgGroup

    OrgStore OrgGroup OrgGroup OrgStore OrgStore シグニチャを 見れば発生する エラーがわかる 振る舞いの事後条件を型で示す
  6. ©KAKEHASHI inc. TypeScriptを採用する場合の注意点 #2 TypeScriptで基盤システムを構築する • クラスや例外機構における型推論 😭 過去のJavaScriptコードへ漸近的に型付けできるように クラスに対する型推論はゆるめなことも多い

    例) メソッド記法は双変になってしまう 😭 try-catch文ではすべての例外がunknown型になるため ランタイムでの型の検証が必須 • CPU boundな処理が苦手 Node.jsはシングルスレッド ✅ I/O boundな処理 (非同期処理) をイベントループで高速に捌ける ❌ CPU boundな処理 (同期処理) を掴まされると他イベントの処理が詰まる
  7. ©KAKEHASHI inc. 指針 #2 TypeScriptで基盤システムを構築する 設計方針 • 型とスキーマを活用し、自己文書化されたコードを目指す • 移植性を高く保つ

    • クラスや例外機構に頼らない ライブラリ選定方針 • スキーマ駆動である • 標準に基づいている • クラスや例外機構への依存度が低い
  8. ©KAKEHASHI inc. スキーマ検証ライブラリの選び方 #3 型とスキーマを活用した基盤システム - JSON Schemaベース Ajvなど 移植性を重視した選択肢

    - Standard Schema準拠 Zod、Valibot、Arktype、Effect Schemaなど 多くのスキーマ検証ライブラリがサポートする標準インタフェース エンティティ、値オブジェクト、状態などの定義にもスキーマ検証ライブラリを使うなら TypeScriptでスキーマを定義できるZodがおすすめ ただしメールアドレスの検証ルールはライブラリによって細かく異なる場合がある 既存データを弾いてしまう / 不正データを許してしまうことがないようによく検証する
  9. ©KAKEHASHI inc. Webフレームワーク #3 型とスキーマを活用した基盤システム Hono 段階的に採用を進行中 • 様々なJSランタイムで実行可能 •

    Web標準に基づいたデザイン fetch、Requests、Responses、URL、URLSearchParamなど • Standard Schemaをサポート リクエストやレスポンスをStandard Schemaで検証できる NestJS 新規では採用しない予定 Spring BootのようなリッチなDIコンテナを提供する • 型検査時ではなくランタイム時まで依存性の検証ができない • 明らかに型と一致しないサービスを注入できてしまう
  10. ©KAKEHASHI inc. データベースとの接続 #3 型とスキーマを活用した基盤システム Kysely 継続利用中 事前に用意した型定義に従ってクエリ結果に型を付けてくれるクエリビルダー Drizzle 注視

    同じくクエリ結果に型を付けてくれるクエリビルダー Kyselyよりもリッチなマイグレーション機能を有する Prisma ORM 弊チームでは撤退済み (2023年頃) 様々なデータベースをサポートするType-safeを謳うORM 発行されるクエリが予想しづらく断念 • Prisma ORMを2年運用して培ったノウハウを共有する - Speaker Deck
  11. ©KAKEHASHI inc. CPU boundな処理との向き合い方 #4 TypeScriptの注意点を乗り越える コンピューティングリソースを分離する 最もシンプルな解決策 • 他のAWS

    ECSサービス/Cloud Runへ • 他のAWS Lambda/Cloud Run functionsへ Worker threadsを利用する CPU Boundな処理を他のスレッドへ逃がす方法 適切にWorker threadをハンドリングする能力と気合が必要