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慶應義塾大学 AI実践05 論文執筆の仕組み化
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Semantic Machine Intelligence Lab., Keio Univ.
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November 02, 2026
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慶應義塾大学 AI実践05 論文執筆の仕組み化
Semantic Machine Intelligence Lab., Keio Univ.
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November 02, 2026
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Transcript
慶應義塾大学 AI実践 第5回 大学院理工学研究科 論文執筆の仕組み化 情報工学科 教授 杉浦孔明
[email protected]
研究活動でよくある失敗 方針転換を繰り返し、半年経っても 研究が進まない 締切ギリギリまで実験と論文執筆を 並行し本人も指導教員も疲弊 コーディング・実験は内発的動機で 進むが、論文執筆は後回しになりがち -2-
研究活動でよくある失敗 方針転換を繰り返し、半年経っても 研究が進まない 開始時にPaper Skeletonを作成 締切ギリギリまで実験と論文執筆を 並行し本人も指導教員も疲弊 Leaderboard方式 コーディング・実験は内発的動機で 進むが、論文執筆は後回しになりがち
60QA -3-
前提 ▪ 研究の進め方・論文の書き方に関する書籍・情報は多く存在するので、まず はそちらを参考にすることを勧めます ▪ 研究の仕組み化には正解が無数にあります ▪ 限られた分野を対象とした「仕組み化」の例として以下を紹介します -4-
Paper Skeleton ▪ 研究開始前に論文の骨子を作成する ▪ 科研費提案書の雛形 ▪ Cf. スタートアップにおけるリーンキャンバス ▪
途中で方針変更は可能だが、最初に案を言語化することが重要 -5-
Paper Skeleton なぜこの問題が重要なのか 75文字以内 どれほど解くことが難しいか 75文字以内 既存研究のエラー原因は何か 75文字以内 解決策の新規性は何か 100文字以内
どんな尺度で評価するか 50文字以内 ベースラインとablation conditionは何か 50文字以内 -6-
Leaderboard方式の背景 背景 ▪ 研究は「無限タスク」になりがち Leaderboard方式 ▪ 手法の構築・評価サイクルを常に行う ▪ 論文執筆開始日以降は「提案手法」を固定 ▪
締切日直前に斬新な最良手法を思いついたら?次の会議に投稿すれば 良い -7-
Leaderboardの例 -8-
Leaderboard方式運用のコツ ▪ 「性能が改善したケース」のみの報告にならないようにする ▪ グループ全員がLeaderboardを閲覧可能とする ▪ 同じシートに比較不可能な数字を載せないデータセットを更新したら次の シートに移る ▪ シートが10程度に増えることもある
▪ ベースラインがないタスクは「誰でも思いつきそうな手法」をベースライン とする -9-
60 Questions & Answers - 10 -
論文添削の悩み 締切前になると急に赤入れ 依頼が殺到する これは… どこから修正すれば… 執筆スケジュールが後ろ倒し され続ける - 11 -
60QAを作った経緯 背景 ▪ 誰向けに・何を・どの流れで書けばいいのかわからず、途方に暮れるケース は多い(含自分) 経緯(2010年頃) ▪ 自分が書いた査読を分類・保存していた 着想 ▪
想定質問に答える形で論文が書けるのでは? - 12 -
60QAにおいて重視した点 分割統治 ▪ 論文全体を考えるから途方に暮れるのであって、分割すれば楽 ▪ 標準的な国際会議論文は約60段落からなる段落を質問への回答と考える 工数管理 ▪ 研究は工数管理できないが、論文執筆は工数管理できる -
13 -
60QA公開版 https://docs.google.com/document/d/180tNamxQFV2fWUOmEdtTFVy-R-sTgiFlbxL-o3Lg6n4/edit?usp=sharing - 14 -
使用例 ▪ コメント機能は使用せず、要修正部・ 各著者を色分け コメント機能は元の文を削除したら 消えてしまう ▪ よくある間違いは注意を記載 注意書きが常に改良される ▪
回答ごとに記録を残しながら添削 添削側の認知負荷を減らす - 15 -
執筆の工数管理 ▪ ソフトウェア開発と類似 ▪ 研究や実験は内発的動機で進む ⇔論文執筆が締切ドリブンの研究者は多い ▪ 執筆開始から投稿まで: N日 ▪
Nは分野や経験に依存 ▪ 間に合わない場合は対象会議を後ろ倒し - 16 -
執筆順序 do {3問題設定} while (完了率<66%); do {5実験設定} while (完了率<66%); do
{4手法} while (完了率<50%); do {6実験結果} while (完了率<66%); do {3問題設定, 4手法, 5実験設定, 6実験結果} while (完了率<100%); do {7結論} while (完了率<66%); do {1はじめに} while (完了率<66%); do {2関連研究} while (完了率<66%); do {1はじめに, 2関連研究, 7結論, 0前提・アブストラクト} while (完了率<100%); - 17 -
60QAは何であって、何ではないのか 何と似ている? ▪ 典型的な査読質問 ▪ RebuttalにおけるQA 何と違う? ▪ 論文執筆初心者向けであって、経験豊富な著者向けではない ▪
理論系・解析系向けではない(質問を大幅に入れ替える必要有り) ▪ 個人的な考えであって、全著者・全PI向けではない - 18 -
(予告)実習(10分) ▪ 以下を満たす論文をダウンロードし、質問への回答部分を探せ ▪ 本講義で紹介した国際会議(直近2年) ▪ 手法に関する内容 ▪ 対象質問: Q1-4,
1-5, 4-9, 6-3 ▪ 発表内容 ▪ 論文タイトル ▪ 回答部分の行番号 ▪ 時間が余った場合はそれ以外のQについて探してください。 - 19 -
はじめに・序論(1) ▲ 1-1. 本研究の社会的背景は何か? 第1文は、読者と共有できる最大公約数的事実から始めることが多い。100人いたら90人が賛成するような文と いう意味。 以下のようなロジックが理解されやすい(Q1-1からQ1-6)。 [Q1-1] Aは重要である。 読み手「ほぼ賛成」
[Q1-1からQ1-3] AのうちBにはCという問題がある。[Q1-4] Cは難しい。 読み手「まあそういうものかな」 [Q1-1, 1-5] 既存研究ではCを解くには不十分であった。[Q1-6]そこで本研究では...を提案する 読み手「了解」 ▲ 1-2. 本研究の対象タスク・問題は何か? ▲ 1-3. その対象問題のユースケース(具体例)は何か? - 20 -
はじめに・序論(2) ▲ 1-4. その対象問題が難しいと言う根拠は何か?既存手法が誤る例はどんなケースか? ▲ 1-5. 既存手法群には何が不足しているのか? 既存手法として1つだけを引用するのはNG。提案手法が狭い範囲を扱ったように見えるし、著者が不勉強である と受け取られる。 既存手法群の不十分な点を抽象化すべし。英語では既存手法を複数形とすべし。
▲ 1-6. 本研究では何を提案し、何を解決するのか? - 21 -
はじめに・序論(3) ▲ 1-7. 提案手法は既存手法と何が違うのか?主要な違い1点のみに絞って述べよ。 ▲ 1-8. 提案既存手法との違う部分は、なぜ導入するべきなのか?なぜ導入するとうまくいく と予想されるのか? ▲ 1-9.
本研究の主要な貢献をまとめよ ▲ 1-10. 【査読がある会議のみ】提案手法全体の構成を概要図を用いて示せ - 22 -
関連研究(1) ▲ 2-1. 論文を複数挙げて、1個目の関連分野を説明せよ ▲ 2-2. 論文を複数挙げて、N個目の関連分野を説明せよ(この項目を個数分コピーしてくだ さい) ▲ 2-3.
XXX分野の標準ベンチマーク群について説明せよ ▲ 2-4. 提案手法と類似手法A(+類似手法B、類似手法C)との違いは何か? - 23 -
問題設定(1) ▲ 3-1. 本研究では何というタスクを対象とするか?その内容を説明せよ ▲ 3-2. 対象タスクの望ましい解・出力について説明せよ(何をもって良い解だとするのか) 本タスクでは、…が望ましい ▲ 3-3.
対象タスクの代表例を示せ(図を付けること) - 24 -
問題設定(2) ▲ 3-4. このタスクで与えられる入力は何か? 提案手法に限らず、どの手法であっても与えられる入力について書きましょう。 ▲ 3-5. タスクで求められる出力は何か? ▲ 3-6.
使用する用語を定義せよ ▲ 3-7. 本研究では何を扱わないか(=何を前提にしているか) ▲ 3-8. タスクの評価尺度は何か? - 25 -
手法(1) ▲ 4-1. 本研究は何の手法を拡張した何を提案するものか? ▲ 4-2. 提案手法で行った主たる拡張は、上記の既存手法以外にも広く適用可能であることを 説明せよ(=他の既存手法に適用できないのであれば一般性がない拡張である) - 26
-
手法(2) ▲ 4-3. 提案手法と既存手法の違いを箇条書きせよ ▲ 4-4. 提案手法のモデル構造を示せ(図) ▲ 4-5. 提案手法は何個の主要モジュールを有するか?各主要モジュールの名称を示せ。
- 27 -
手法(3) ▲ 4-6. 入力を数式記号(x等)を用いて説明せよ。各入力はそれぞれ何次元か? 例えば、「モデルの入力はx_imgである。ここに、x_imgはmagnetogram画像を表す。」のように説明したとす る。それにより、曖昧性を減少させると同時にスペースの無駄遣いを回避できる。 ▲ 4-7. どのように入力特徴を抽出したのか(例えばバックボーンネットワークについて説明 せよ)?
- 28 -
手法(4) ▲ 4-8a. N (=1,2,…)個目のモジュールの導入の動機・役割・入出力・構造を示して説明せよ( この項目を個数分コピーし、4-8b, 4-8c, ...としてください) ▲ 4-9.
予測を数式で定義せよ。ただし、4-8a,4-8b,..で定義済みの記号を用いよ。 ▲ 4-10. 損失関数の定義を示せ。 - 29 -
実験設定(1) ▲ 5-1. 【データセットを新規構築した場合】なぜデータセットを新規構築する必要があった のか?データセットはどのような仕様・特徴を有するべきか?なぜ標準データセットを使わ なかったのか?構築したデータセットの独自性は何か? このQ以降は過去形で書くべし。 - 30 -
実験設定(2) ▲ 5-2. 【既存データセットを使った場合】何というデータセットを使用したか?なぜそのデ ータセットを使用したのか? ▲ 5-3. どのようにデータセットを構築したか(データセットのアノテーション方法や、アノ テータへ指示の詳細、品質管理のためのクロスチェックの方法、等) -
31 -
実験設定(3) ▲ 5-4. データセットをどのように事前処理(またはデータ拡張)したか? ▲ 5-5. データセットの統計情報を示せ。サンプル数、画像数、軌道数・時間、語彙サイズ( ユニーク語数)、全単語数、平均文長、言語、アノテータの数、シミュレーションまたは実 機、等について説明せよ -
32 -
実験設定(4) ▲ 5-6. 訓練集合・検証集合・テスト集合をどのように分割したか?各々のサイズを示せ。 ▲ 5-7. 訓練集合・検証集合・テスト集合を各々どのように使用したか。 - 33 -
実験設定(5) ▲ 5-8. 提案手法の設定(最適化手法、学習率+ウォームアップ+アニーリング、エポック数 、ハイパーパラメータ等)を表にまとめよ - 34 -
実験設定(6) ▲ 5-9. 提案手法の学習可能パラメータ数とFLOPsまたは積和演算数を示せ。 ▲ 5-10. 訓練に用いたハードウェア構成を示せ ▲ 5-11. 訓練に要した時間を示せ。また、1サンプルあたりの推論に要した時間または
FLOPsを示せ(テストセットサイズで割ればいいだけ)。 - 35 -
実験結果(1) ▲ 6-1. ベースライン手法との定量的比較結果を示せ 縦と横の意味は?数字の意味は?平均と標準偏差なのか?何回実験したのか?Human performanceが存在するな ら表示せよ。 - 36 -
実験結果(2) ▲ 6-2. 何をベースライン手法(群)としたか? ▲ 6-3. 上記ベースラインを選んだ理由を説明せよ ▲ 6-4. 評価尺度(群)について数式で説明せよ。複数あるのであれば、どれが主要尺度か?
▲ 6-5. なぜそれらの評価尺度を使用したのか?他の評価尺度ではダメなのか? - 37 -
実験結果(3) ▲ 6-6. ベースラインと提案手法の性能を(相対的な性能差ではなく)絶対的な値で示せ 実験結果説明において、同じ文型をコピペして説明したら不採択になる、と思ってください。 少なくとも「Similarly」「as well」等を入れてください。 ▲ 6-7. 実験結果は統計的に有意(p<0.05)であったか?
- 38 -
実験結果(4) ▲ 6-8. 定性的結果:提案手法が成功した例(N個)を示せ。正解、ベースライン手法、提案 手法による予測結果をそれぞれ示せ 第1文で「表/図に**を示す」と書くべし。 結果の説明だけはNG(=「読者が勝手に解釈せよ」という意味だから)。どういう点が適切だったのかという 解釈と、何を根拠にそう考えるのかを説明せよ。 ▲ 6-9.
定性的結果:提案手法が失敗した例(M個。N>M)を示せ。なぜ失敗したのか? - 39 -
実験結果(5) ▲ 6-10. アブレーション実験において何のために何を取り除いたかを説明せよ。 アブレーシ ョン実験の結果に基づき、取り除いた要素が有効だったことを示せ。なぜ有効だったのかを 説明せよ Modelに(i)(ii)...のように番号を与えるべし。条件には(i)(ii)をつけてはならない。 本文の内容 XXX
ablation 説明(何をinvestigateするために、何を取り除いたの か)+ 定量的結果+考察 YYY ablation 説明+定量的結果+考察 ZZZ ablation ... Model 取り除いた結果のモデルをModel (i), Model (ii), ...と命 名する 提案手法とは、(i)(ii)...すべてを指す。(i)(ii)...のうちの1 つが提案手法のような書き方はNG。 表の列は以下のようになる。 Model (i) (ii) .. ▲ 6-11. 混同行列を示せ。 - 40 -
実験結果(6) ▲ 6-12. 提案手法の失敗例は予測結果の中に合計何サンプルあったか? ▲ 6-13. 失敗例を人手でカテゴリに分類せよ。各カテゴリの定義を示せ。 ▲ 6-14. 失敗の主要な要因と考えられる解決策について説明せよ
- 41 -
結論(1) ▲ 7-1. 本研究ではどのようなタスクを扱ったか? ▲ 7-2. 本研究の貢献を過去形で書け ▲ 7-3. 将来研究は何か?
- 42 -
(再)実習(10分) ▪ 以下を満たす論文をダウンロードし、質問への回答部分を探せ ▪ 本講義で紹介した国際会議(直近2年) ▪ 手法に関する内容 ▪ 対象質問: Q1-4,
1-5, 4-9, 6-3 ▪ 発表内容 ▪ 論文タイトル ▪ 回答部分の行番号 ▪ 時間が余った場合はそれ以外のQについて探してください。 - 43 -
付録 - 44 -
AI分野の会議を調べるには ▪ トップ会議の粗い傾向の理解 ▪ CSRankings (https://csrankings.org/) ▪ AIRankings (https://airankings.org/) ▪
CORE (https://portal.core.edu.au/confranks/) ▪ 清華大学TH-CPL ▪ どのリストも、全員が完全に合意できるわけ ではない ▪ 例:音声言語処理分野、若い会議 - 45 -
AI分野のトップ会議の主観的紹介 ▪ 人工知能全般 ▪ 機械学習 ▪ 音声・信号処理 ▪ 自然言語処理 ▪
コンピュータビジョン ▪ Robot Learning ▪ マルチエージェントシステム ※紹介する会議以外にも重要会議はあります - 46 -