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AIエージェントシステムのデジタルID技術とアーキテクチャ

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July 29, 2026

 AIエージェントシステムのデジタルID技術とアーキテクチャ

『MyData Japan 2026 - Revisiting MyData -』の資料になります。

主題:AIエージェント時代のデジタルアイデンティティ
副題:AIエージェントシステムのデジタルID技術とアーキテクチャ
https://mydatajapan.org/events/mydata-japan-2026/

今回はAIエージェントのシステムやプロセスという輪(Loop)と人間(Human)の概念を3つに分類し整理しました。

・Human-in-the-Loop
・Human-on-the-Loop
・Human-out-of-the-Loop

それぞれの概念を実現するにあたり必要となるデジタルID技術やアーキテクチャの例をご紹介しています。

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July 29, 2026

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Transcript

  1. 倉林 雅(くらはやし まさる) • 一般社団法人OpenIDファウンデーション・ジャパン 理事・ エバンジェリスト。 • OpenID、OAuth、パスキー(Passkeys)などの認証・認可 技術の普及啓発および教育活動に従事。

    • 国内大手インターネット企業において長年、大規模な認証 ・認可基盤の開発・運用を経験。現在はプロダクトマネー ジャーとして、安全で利便性の高いデジタルアイデンティ ティ基盤の構築を牽引している。 • 主な著書として「パスキーのすべて 」、監修書籍として 「OpenID Connect入門」がある。 • X: @kura_lab © OpenID Foundation Japan
  2. Human-in-the-Loop(HITL) AIやシステムが処理を実行する途中で、 「人間の明示的な承認や介入がないと次のステップに進めない」 状態を指す。 eコマースの購買 企業の厳格なアクセス管理 AIエージェントがユーザーの代わりにWebサイトへの サインアップや購買処理を行う際、最後のパスキー (Passkey)認証やOIDC(OpenID Connect)の認可

    画面(Consent Screen)だけは、ユーザー自身がデ バイスの生体認証( Touch ID/Face IDなど)を行って 承認するケース。 特権アクセス管理(PAM)において、AIがリスク分析し た結果に基づき、最終的なアクセス権限の付与を管 理者が手動で承認する フロー。 © OpenID Foundation Japan 5
  3. Human-in-the-Loop(HITL)で着目されているデジタルID技術 高リスクな操作(送金、データの完全削除、重要なアクセス権の付与など)を行う直前に、 AIエージェントが必ず人間に「お伺い」 を立てるモデル。 Client-Initiated Backchannel Authentication (CIBA) 最も有力視されているHITLの実装パターン。AIエージェントがバックエンドで「〇〇の処理を実行したい」と認可サーバー( IdP)に要求する

    と、認可サーバーがユーザーのスマートフォンに直接プッシュ通知( FaceID/Touch IDなどの生体認証要求)を送り、人間が承認するまで エージェントの処理を保留(ポーリングまたはコールバック待ち)にする。 OAuth 2.0 Step-up Authentication (RFC 9470) AIエージェントが通常タスクをこなしている最中、突然機密性の高い API(例: 財務データの閲覧)を叩こうとした際、 認可サーバーが「現在のアクセストークンでは権限不足」としてコンテキストを要求し、人間に多要素認証( MFA)を求める仕組み。 © OpenID Foundation Japan 6
  4. Human-on-the-Loop(HOTL) AIやシステムが自律的に判断して処理を一通り実行するが、 「人間がそのプロセスを監視しており、問題があればいつでも介入・停止・修正できる」 人間は実行の「ゲートキーパー」ではなく 「監督者」 になる。 状態を指す。 業務自動化の監視とロールバック 不正アクセスの検知とレビュー 企業のIDガバナンス(IGA)において、AIが組織変更に

    伴う数千人分のプロビジョニング(アカウント作成や権 限付与)を自動で実行し、管理者はダッシュボードでそ の成否や異常値を監視 して、不適切な権限付与を見 つけたら即座にロールバック(取り消し)するケース。 リスクベース認証において、AIがリアルタイムに不正ロ グインの兆候を検知してアカウントを自動凍結し、あと からセキュリティアナリストがその判断をレビューする 運用。 © OpenID Foundation Japan 8
  5. Human-on-the-Loop(HOTL)で着目されているデジタルID技術 AIが事前に定義されたポリシーの範囲内で自律的に数千件のタスクを実行し、人間はダッシュボードや監査ログを通じて「監 視」に徹するモデル。 Shared Signals Framework (SSF) & Continuous Access

    Evaluation Profile (CAEP) セッション開始時の1回限りの認可ではなく、セッション中もリアルタイムにリスク情報をセキュリティイベントとして 配信し合う仕組み。AIエージェントが「普段と違うIPから不審な一括ダウンロードを始めた」といったイベントを検知すると、 HOTL監視エン ジンが働き、エージェントのアクセストークンを即座に強制失効( Revocation)させる。 OAuth 2.0 Token Exchange (RFC 8693) 人間(Sponsor)のアイデンティティと、AIエージェント(Actor)のアイデンティティを厳密に分離しつつ、 「この人間から委託されたエージェントである」という委任のサプライチェーン( Subject-Actor関係)を証明する トークンを発行する。これにより、管理者は「誰の指示で、どの AIが、どの権限を動かしたか」を完全にトレースできる。 © OpenID Foundation Japan 9
  6. Human-out-of-the-Loop(HOOTL/OOTL) プロセスの開始から完了まで、 「人間の介入が一切なく、システムや AIが完全に自律して実行する」 状態を指す。 完全に自動化された 信頼空間 、または高度にサンドボックス化された環境 で適用される。 マシン間における

    API連携 AI同士による認可とデータ連携 マシンツーマシン(M2M)認証。マイクロサービス間で OAuth 2.0のClient Credentials Grantなどを使い、人 間を介さずにトークンを発行・検証し合う通信 。 AIエージェント同士が、あらかじめ定義されたポリシー の範囲内で、お互いのアイデンティティを検証し合っ てデータ連携を行うケース。 © OpenID Foundation Japan 11
  7. Human-out-of-the-Loop(HOOTL/OOTL)で着目されているデジタルID技術 人間が完全に介在せず、AIエージェント同士、またはAIとシステム (A2A: Agent-to-Agent, A2.M: Agent-to-Machine)が完全に自動で認証・認可を完結させるモデル。 Secure Intent Protocol (SIP)

    / Agentic JWT 直近(2025年後半〜2026年)でIETF等に提出され議論が始まっているドラフト仕様(draft-goswami-agentic-jwt など)。 AIエージェントのシステムプロンプトや設定から生成した識別情報(チェックサム)と自前の鍵ペア( PoP鍵)を用い、 認可サーバーを通じて「ユーザーの意図(Intent)」や「許可されたワークフロー情報」が暗号学的に紐付けられた 専用のJWT(Intent Token)の発行を受け、それを所持証明(PoP)とともに相手システム(API)に提示するプロトコル。 Workload Identity Federation (SPIFFE/SPIRE等) の応用 クラウドネイティブな環境におけるマイクロサービス同士の認証( mTLSベース)の仕組みを、AIエージェント専用のワークロードに拡張する 動き。従来のように API キーや OAuth 2.0 の Client Credentials 用シークレット(静的認証情報)をコンテナに埋め込むのではなく、 SPIFFE/SPIRE などの環境アテスト機能を用いて、AIエージェントコンテナ起動時に暗号学的なアイデンティティ( SVID/X.509証明書)を 動的発行する。これにより、人間を一切介さず、かつ暗号的に保護されたmTLS 通信で自律的に社内DBやベクターインデックス等へ安 全にアクセス・操作させる手法。 © OpenID Foundation Japan 12
  8. HITL / HOTL / HOOTL の比較表 概念 Human-in-the-Loop(HITL) Human-on-the-Loop(HOTL) Human-out-of-the-Loop(HOOTL/OOTL)

    位置づけ 人間が実行のゲートキーパー 人間がプロセスの監督者 システムが完全自律駆動 メリット ・セキュリティと信頼性が最高 ・法的責任の所在が明確 ・ハルシネーションを水際で防ぐ ・効率性と安全性のバランスが良い ・大量のバッチ処理が可能 ・異常時のみ人間が動けば良い ・24時間365日の完全自動化 ・人間によるボトルネックがゼロ ・高速なマシン間(M2M)連携 デメリット ・人間の承認待ちで処理が止まる ・大量の承認要求で「承認疲れ」が起きる ・リアルタイムの被害を完全には防げない ・事後ログ追跡の負担が大きい ・AIの暴走、不正認可の検知が困難 ・フィッシングやなりすましに極めて弱い Identity領域 の課題 頻繁なコンセント(認可)画面によるUXの著し い低下をどう防ぐか。 AIの行動が「ポリシー違反」かどうかをリアル タイムで判定する動的認可エンジン の不足。 人間のコンテキストから切り離されたAIに、どうやっ て安全にトークンを委譲・失効させるか 。 デジタル ID 技術 ・Client-Initiated Backchannel Authentication (CIBA) ・OAuth 2.0 Step-up Auth ・Shared Signals Framework (SSF) & Continuous Access Evaluation Profile (CAEP) ・OAuth 2.0 Token Exchange ・Secure Intent Protocol (SIP) / Agentic JWT ・Workload Identity Federation (SPIFFE/SPIRE 等) の応用 © OpenID Foundation Japan 14
  9. まとめ • 人間の関与度による 3つのモデル分類 ◦ AIエージェントのプロセスに対し、人間が実行の判断(ゲートキーパー)を行う「 Human-in-the-Loop (HITL)」、プロセスを監視・介入する「 Human-on-the-Loop (HOTL)」、AIが完全自律する

    「Human-out-of-the-Loop (HOOTL)」の3段階で概念を整理しました。 • 各モデルに対応するデジタル ID技術とアーキテクチャ ◦ HITLではCIBA、HOTLではリアルタイムなリスク共有を可能にする SSF/CAEP、HOOTLではAI自 身の署名を用いる Agentic JWTなど、それぞれのモデルの特性に適した技術プロトコルをご紹介し ました。 • 標準化の現状とアイデンティティ領域の課題 ◦ AIエージェントの認証・認可は策定中の段階であり、頻繁な認可要求による UXの低下、動的な認 可を実現する技術の不足、人間不在の AIに対する安全な権限委譲といった課題の解決が今後の 焦点となっていくと思われる。 © OpenID Foundation Japan 15