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Web3の世界にようこそ

 Web3の世界にようこそ

Web3とブロックチェーンの基礎知識とWeb3の可能性を紹介します.Web3の世界に参加するかどうかの判断材料にして下さい.

Takayuki Watanabe

May 12, 2024
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Transcript

  1. 目次 1. 自己紹介 2. Web3とブロックチェーン入門 3. Web3とブロックチェーンのキーワード 4. Web3で重要な概念 5.

    地球環境の危機&資本主義の限界 ⇒ Web3の可能性 6. Web3のSocial Design(渡辺の研究テーマ) 5 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  2. 渡辺隆行 https://researchmap.jp/nabe/ 1. 物理学の研究(~1998年):原子核・素粒子実験.理学博士.東大助手. 2. プログラミング:2001年度のIPA未踏ソフトウェア創造事業 3. Webアクセシビリティ(2003年後半~):JIS X 8341-3:2010

    策定WG主査, 「ウェブアクセシビリティ基盤委員会」創設&初代委員長,「みんなの公共サ イト運用ガイドライン」委員,NPO活動法人「ウェブアクセシビリティ推進協 会」理事長など 4. デザインと人間中心設計の研究・教育・実践(2016年~):東京女子大学・心 理コミュニケーション学科・教授.人間中心設計専門家. 5. 技術・人・社会の3層に関心(2018年~):理工系&社会科学系,Art 6. 地球環境に負荷をかけないWeb3のSocial Design(2022年~) 6 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  3. Web3の特徴 • ベースはブロックチェーン技術 • ブロックチェーンの特徴が(原理的には)Web3の性質を支配 • トークンを発行できる → 独自の経済圏を生成 •

    暗号資産,NFTなどのトークン → インセンティブを生み出せる • 自律分散 → 新たな社会形態(例:DAO)を生み出す可能性がある • 玉成混合のいろいろな実装が始まっている • 新しい技術・経済・社会を生み出す可能性がある&生み出している 11 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  4. ブロックチェーン • サトシ・ナカモト(2008)のホワイトペーパー:“Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”が発端(注:リーマンショック直後の提案) • ブロックチェーン:ネットワーク参加者全員で会計監査済みの,お金の入出金

    の共有台帳(記録) • 暗号学的ハッシュ関数で計算したデータブロックをPoW(Proof of Work)やPoS (Proof of Stake)でチェーン化.このチェーンの改変は困難な仕組み. • Socio-technicalなインセンティブがあるので多くの人がPoW・PoSに参加. 13 山崎ら『ブロックチェーン技術概論 理論と実践』講談社 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  5. ブロックチェーンの特徴 • トラストレスなトラスト(金融機関のような信頼できる第3者がいなくてもトラストが 保障される) • お札は二重使用できないが電子通貨は原理的にコピー可能.その電子通貨の二重使用問 題を解決(共有台帳に記録された入手金記録を会計監査) • デジタル署名による暗号資産の送金(トランザクション).公開鍵が送金者を識別. •

    時系列的ハッシュチェーンによる共有台帳(ブロックチェーン) • 共有台帳への合意(コンセンサス)はDecentralized(分散的). • 構造のないP2Pネットワークシステム(単一障害点がない). • ブロックチェーンには、暗号資産の取引履歴が書き込まれる。書き込まれた内容は誰で も確認でき改ざんできない仕組み.中央管理者がいない分散型データベース. 15 山崎ら『ブロックチェーン技術概論 理論と実践』講談社を一部改変 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  6. ブロックチェーンの仕組み ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 16 「ブロックチェーンを図解入門!初心者こ そ知っておきたい基礎と仕組み」の図 https://www.sejuku.net/blog/80577 • 個々の取引記録が電子署名と供に

    トランザクションに格納される • 前のブロックを改竄するとハッ シュ値が変わるので改竄を検知で きる • マイナーがトランザクションを承 認してブロックを追加する.その 作業の対価として暗号資産が支払 われる. • マイナーのコンセンサスによって ブロックチェーンは一意に保たれ る.
  7. トークン(Token) • 暗号資産:ブロックチェーンで発行されるBTCやETHなどのトークン.通貨なので代替性 がある. • NFT(Nun-Fungible Token):通貨のような代替性を持たないトークン.デジタル世界で現 実世界の資産の所有権を示したり,デジタルアセット(画像,土地,靴など)の所有権 を示したりできる. •

    ガバナンストークン:コミュニティ(DAO)での発言権や議決権を持つ • ユーティリティトークン:乗車券や入場券のような働きを持つ • セキュリティトークン:有価証券と同じ働きを持つ • SBT(Soul Bound Token):譲渡不可能なNFT.デジタル・アイデンティティを示せる. • RWA(Real World Asset)トークン:実世界の資産(不動産や債権など)をトークン化した もの. 21 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  8. 大流行(2021年8月~2022年5月)したNFT • 誰でも簡単に作成可能.通貨ではないが価値がつけば売却も購入もできる. • 2021年3月11日にNFTアートが75億円で落札された.その後もシンプルなドット絵 などに高額な値段がついたことが報道された. • 2021年に,Play to EarnゲームのAxie

    Infinity(AxieモンスターをNFTとして収集して 戦わせる対戦ゲーム.エコシステムに貢献すると暗号通貨を稼げる)で生活費を 稼ぐ人がフィリピンに現れた. • わかりやすいNFTの人気は根強く,色々な企業がNFTを作って商売を始めている. • 山古志村では,特産の錦鯉のデジタルアートをNFTにして,デジタル村民の参加権 にした.このNFTの販売で利益も上げている.地方創生の類似例は多数ある. 22 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  9. なぜトークンに価値がつくのか? • 参加者が価値があると信じているから.日本銀行を信用しているから円を商品といつでも 交換できるし,円を貯金する.暗号資産やNFTも価値があると信じているから購入する人 がいる. • デジタルならの利便性:取引コストの削減,効率的な24時間取引の実現,透明性の向上, 流動性の増加,少額決済,手数料安価,海外ともすぐに交換できるなど,既存の金融にな いデジタルならではの利便性がある. •

    実用性.ガバナンストークンなど利用価値がある. • 需要と供給のバランス.稀少なトークンの需要が高くなると価格が上昇する. • 投機.AirDropなどで希少価値があるトークンを入手して,価格が高い間に売却してお金 儲けしようとする人がいる.(安く買って高く売り抜ける) • 流行.NFTがはやっているから,かっこいいから買ってみる. ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 27
  10. デジタル・アイデンティティ • サイバー世界でのアイデンティティ.SSIなので自分で管理. • (暗号技術で守られているので)セキュリティが強固. • サイバー世界で活動している主体が人間であることを示す必要もある. • ブロックチェーンは匿名性があるので匿名性を備えた自分の証明が可能. •

    リアル世界の人間と結びつけたい場合もある. • 一人の人間が複数のデジタル・アイデンティティを使い分けることも可能. • サイバー世界でも,個人の信用やどういう人かを示す必要がある.証明書や活動 歴などが個人の(特性や能力など)証明になる.(例:Digital Identity Wallet) ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 33
  11. DAO (分散型自律組織) (Decentralized Autonomous Organization) • 多くはパブリック・ブロックチェーン(特定の管理者が存在せず誰でも参加できる)上で構 築され,人の意志ではなく,スマートコントラクトによって組織運営が実行される. • 中央集権的な管理者がいない.DAOコミュニティの参加者全員が(平等な)権利を持ってい

    る.誰でも自由に参加できる. • ガバナンストークンを発行して管理運営することが多い. • 管理運営の記録はブロックチェーンに記録されるので,誰でも確認できるし改ざん不可能. • ガバナンストークンを発行して資金調達できる可能性.(コミュニティの経済が成長) • DAOと称していながら,(トークンを発行しているだけで)上記の特徴を持たない活動が多 いので注意. 37 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  12. 地球環境の破壊と脱成長?? • 人類の経済成長が地球環境を破壊.格差も拡大. • 化石燃料の使用による地球温暖化 • 農地や木材伐採により地球の森林資源が大規模に伐採されている • 先進国の廃棄物が開発途上国の環境(土地,水,空気)を汚染している •

    先進国の産業は開発途上国の劣悪環境な労働力を使っている • 持続可能な経済活動が求められている(SDGs) • 経済成長を止める(脱成長)べき? • 資本主義や新自由主義の終焉? • 成長なしに人類は存続できるのか? ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 42
  13. サステイナブルな地球:Web3の可能性 • Web3の世界では,ブロックチェーンを利用した暗号資産を活用した経済活動 (crypto economy.DeFi)が行われる. • DAOのようなコミュニティベースの組織が活動する. • Web3の世界はコモンズ,コミュニティ,分散的,自律的な特徴をもつはず. •

    Web3の世界で既存の社会課題を解決できる可能性がある(実際に可能かどうかは まだわからない.幾多の試行錯誤や失敗&改良の積み重ねが必要だと思う.) ⇑ 渡辺の研究テーマ:Web3のSocial Design 44 ,渡辺隆行 ©2024 <[email protected]>
  14. 地球環境に負荷をかけている過剰な消費 • どのような経済活動が地球環境に負荷をかけているのか? • それらをメタバースに移行できるか? • 化石燃料の使用 → 自然エネルギー,原子核エネルギーの使用 •

    森林伐採(農地,牧草地) → 食料供給 → リアル地球でしかできない • 工業活動 → 工業製品 → 不可欠な製品もあれば広告で大量消費されている製 品もある → メタバースでの消費に代替できる製品があるはず • 農業 → 食料生産は不可欠 ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 49
  15. ドーナッツ経済+メタバース ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 50 図の出典:ケイト・ラワース(2021),『ドーナッツ経済』,河 出文庫. • ドーナッツ外側:メタバースで経済成長 •

    ドーナッツ内部:リアルな地球で活動 • ドーナッツ内側:ドーナッツ内部に入る までリアルな地球で経済成長 気候変動,窒素及び燐酸肥料の投与,土地転 換,生物多様性の喪失の4分野で地球環境を 破壊している
  16. リアルとメタバースの役割分担 • 過剰な広告が,不要なものまで購入(つまり生産と廃棄)する経済活動を生んで いる → 多様で大量で過剰な見かけ(ファッション,住居など)はメタバースで 実施すれば,生産と廃棄の問題が生じない. • メタバースの利点: •

    コピーが簡単(資源を消費しない) • 廃棄したら消えるだけ(資源は100%回収可能) • 制約を受けずに自由に生産,想像できる • 距離を超えた教育,娯楽,経済などが可能になる ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 51
  17. まとめ • Web3の技術基盤はブロックチェーン • ブロックチェーンは分散型の共有台帳 • ブロックチェーンの特徴:トラストレスなトラスト,分散型データベース,暗号 資産 • トークン:暗号資産,NFT,RWAなど

    • NFTは広く使われている • 自己主権(SSI),デジタル・アイデンティティ,DAO • Web3は実社会で広く使われ始めている • Web3は資本主義の限界を超えて地球環境を保護できる可能性がある ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 54
  18. 参考文献 • 渡辺隆行(2023),Web3とは?基礎知識・特徴・経営に活用できる可能性をわかりやす く紹介,ツギノジダイ. • Satoshi Nakamoto (2008), Bitcoin: A

    Peer-to-Peer Electronic Cash System, (Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3440802 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3440802). • 山崎,安土,金子,長田(2021),ブロックチェーン技術概論 理論と実践,講談社. • フレデリック・ラルー(2018),ティール組織,英治出版. • 自由民主党デジタル社会推進本部 web3プロジェクトチーム(2024),Web3ホワイト ペーパー2024~ 新たなテクノロジーが社会基盤となる時代へ~. • 斉藤幸平(2020),人新世の「資本論」,集英社新書. • 渡辺隆行(2023),Web3のSocial Design,日本デザイン学会第70回研究発表大会 梗概. ©2024 <[email protected]> ,渡辺隆行 55