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July 09, 2024

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  1. 法律婚はなぜ廃止するべきではないのか? エリザベス・ブレイク (Elizabeth Brake):アメリカの政治哲学者 Brake, Elizabeth (2012). Minimizing Marriage: Marriage,

    Morality, and the Law(翻訳あり) 価値 / 制度 法律婚 代替案 事実婚 公的承認 ◦ △ × 公的支援 ◦ △ × 1. 国家による公的承認はその社会のなかで対等な市民であることを確認している。よって 市町村による代替案や事実婚では不十分である。 2. 特定のパートナー関係に公的な支援を行うこと自体が問題なのではなく、結婚を生殖と 結びつける性愛規範に基づく公的な支援が問題である。 3. 法律婚を廃止するのではなくその制度を改革するべきである。 ST13: ブレイクの最小の結婚 (1) 福原正人 : [email protected]
  2. 現行の法律婚はなぜ正当化できないのか? 価値 / 制度 現行の法律婚 ブレイクの案 公的承認 ◦ ◦ 公的支援

    full pkg minimal pkg 誰かと人生の一部を共有してパートナー関係を結ぶ理由は多様である。異性愛カップル が子供を作って生涯を添い遂げるというのは生き方の一つにすぎない。 国家の政治的権力は、どんな生き方のひとでも納得できる理由で正当化されなけれなら ない(理論的な主張/ここでは問題にしない) 。 よって、正しい結婚とは、特定の生き方にとっての手厚い公的支援ではなく、あらゆる 生き方をカバーするような最小限の公的支援でしかありえない。 ST13: ブレイクの最小の結婚 (2) 福原正人 : [email protected]
  3. 誰でも納得できるパートナー関係を結ぶ理由は何か? 価値 / 制度 現行の法律婚 ブレイクの案 公的承認 ◦ ◦ 公的支援

    性愛関係 ケア関係 誰でも納得できるパートナー関係を結ぶ理由は、人間は不可避な依然性ゆえに他者との ケア関係を必要とするから。 国家が、生殖や性愛関係ではなく、多様なパートナー関係に共通するケア関係に対し て、 (1) 公的承認、 (2) 最小限の公的支援を行うべきである。 e.g. 在留資格、面会と相続の権利 ブレイクの提案は、あらゆるケア関係を包摂するために、生殖や性愛関係から結婚を切 り離して、その制度的な内容を最小化せよということ。 ST13: ブレイクの最小の結婚 (3) 福原正人 : [email protected]
  4. 恋愛関係のない結婚? 男性: ADHD  女性:アスペルガー症候群 障碍を通じて信頼し合い互いの脆弱性を受け入れて助け合って暮らしている 恋愛関係や肉体関係はない 現行の制度下で異性愛カップルとして結婚した -上記の当事者は、表向きは異性愛カップルではある。しかし、二人のあいだには恋愛関係や 肉体関係がないので、 (生殖という観点からすれば)同性愛カップルと違いがないように思え

    る。 -あなたは、国家は、こうした恋愛関係や肉体関係がないカップルを承認また支援するべきで あると考えるのか。 cf. この事例は【発達障害の夫婦 ①】デザイナーの妻に 1日密着してみた | アスペルガー症候群 - YouTubeを参照。 ST13: 「最小の結婚」は絵に描いた餅か? (1) 福原正人 : [email protected]
  5. 民事連帯契約制度「 PACS」 ( Pacte Civil de Solidarité) 1999年フランスの民法改正で施行された、同性・異性を問わず、共同生活を営もうとするカ ップルを対象とする契約(非婚カップル保護制度)を指す。 結婚よりも法的要件が緩やか。一方の申し立てにより解消可能。

    (結婚と全く同じではないが)財産の共有や相続権、税制上の優遇措置が適用。 パートナー間の扶養義務や生活維持のための必要な負債への連帯責任を負う。 →日本のパートナーシップ制度の違いは、 (地方自治体ではなく)国家が、パートナー関係に 対して承認または支援を行っているという点にある。なお、 PACSが少子化対策になるという 指摘もあるがこれは意見が分かれるところ。 cf. コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度「 PACS」 - CLAIR Parisを参照。 ST13: 「最小の結婚」は絵に描いた餅か? (2) 福原正人 : [email protected]
  6. 社会制度を変革する標準的な方法は、民主主義およびその手続きに訴えるということ。 よって、フェミニズストにとっても、この制度の価値は看過できない。その一方で、 (1) 民主主義は唯一正しい統治制度だとは認められつつも、 (2) 市民のニーズを実現する十分 な方法であるのかについては懐疑的なひとが多い。例えば、民主主義への信用度は低下 しているし、東アジアを中心にして、民主主義からの離脱( Democratic deconsolidation)

    」現象も観察されている。 民主主義は、そもそも唯一正しい統治制度であるのか。民主主義は、他の統治制度と比 較して、望ましい統治制度であるという直観を支えている理念は何か。 今日のタスク (1) 民主主義とその正当化の難しさ、 (2) ケア(およびフェミニズム)から見た民主主義 のあり方( J.トロント『ケアリング・デモクラシー』 ) ST14: 今日のタスクなど 福原正人 : [email protected]
  7. 民主主義は当たり前の統治制度ではない? (1)現代民主主義の歴史 1788年 国政レベルの普通選挙(アメリカ) 1801年 選挙による政権交代 (アメリカ ) 1893年 女性の参政権

    (ニュージーランド ) 1925年 日本での普通選挙開始 1945年 日本での女性の参政権 (2)投票の普及率 ・ 1970年頃から政治制度として投票を採用する国家が増えているが、有権者にとって政権交 代が実現する見込みがあるという意味で、 「競合的な投票」を行っている国家は少ない。 2000年では存在する国家のうちの約 20%ほどである。 cf. A.プシェヴォスキ 『それでも選挙に行く理由』白水社を参照。 ST14: いまさら民主主義を問い直すのはなぜか? (1) 福原正人 : [email protected]
  8. 民主主義はどうも人気がないらしい? (1)民主主義への不信感 ・既存の政党政治への不満や政治無関心 自分の利益や意見を適切に代表してくれない e.g. 産業構造の変化、ライフスタイルの多様化 cf. 日本人の 15%、与党支持者の 3割が「民主主義は大事じゃない」と思っている

    …驚きの調査 結果(秦 正樹) | 現代ビジネス | 講談社( 1/6) (2)非民主的な統治制度の台頭 ・少数者が支配する国家の台頭 e.g. コロナ感染症対策とそのパフォーマンス ・ 「 AIによる統治」の兆候 e.g. データ分析によるマーケティング ST14: いまさら民主主義を問い直すのはなぜか? (2) 福原正人 : [email protected]
  9. 民主主義とは? (1) 投票による多数決 政治決定はみんなの選好を集計して行われる e.g. 政策を選ぶ:直接民主主義、代表者を選ぶ:間接民主主義 =「集計(型)民主主義」 (2)意見の交換 政治決定はみんなの意見を交換したり説得されることで行われる e.g.

    議会のようなフォーマルな制度の他、学校や会社、家庭、デモ、ネット上などのインフォ ーマルな社会実践も含む =「熟議(型)民主主義」 →政治的決定の手続きにおいて<平等な>権利を保障する統治制度  これが正しいまたは望ましい統治制度の特徴であるとする根拠はあるのか? ST14: 民主主義の特徴 福原正人 : [email protected]
  10. 政治的無知 投票者の大多数は、 (驚くほど)政治的に無知である 現代の選挙民における政治的情報の分布( …)の単純な真理は、平均の低さと分散の大 きさである 少なくとも投票者の 35%が何もしらない、非投票者はさらにひどいと予測できる e.g. EU離脱をめぐるイギリスの国民投票で

    EUからの離脱派は、移民に対する児童手当を実 際の額の 40倍から 100倍ほど多く見積もっていた cf. ジェイソン・ブレナン『アゲインスト・デモクラシー』勁草書房  イリヤ・ソミン『民主主義と政治的無知 ― 小さな政府の方が賢い理由』信山社 ST14: 投票行為と正しい決定 (2) 福原正人 : [email protected]
  11. 多様性は能力を勝る( Diversity Trumps Ability, DTA)定理 集団の問題解決能力において多様性が重要な役割を果たすことを数学的に示した定理 個人が問題を解決するための知識やスキルの高さは要求しない 異なる視点、背景、経験、知識、問題解決のアプローチは複数あると仮定する 他人の意見に誠実に耳を傾ける 多様性がある集団は、特定の問題解決能力が高いが同質的なメンバーの集団よりも優れた解

    決策を見つける可能性が高い →個人としての政治的知識は乏しいとしても、多様な意見をもった市民が集まって意見を交 換してゆけば、その熟議は社会にとっての問題解決能力で優れている! cf. Landemore, H. (2013). Democratic Reason. Princeton University Press(翻訳予定) ST14: 熟議と正しい決定 (1) 福原正人 : [email protected]
  12. 民主主義はパフォーマンスが高いのか? ブレナンは、 『アゲインスト・デモクラシー』のなかで、現代の選挙民は以下三つに特徴付け られるが、そのほとんどはホビットとフーリガンであると指摘する。 ホビット : 無知、無関心 e.g. 投票を棄権するひと、投票にいちおう行くひと フーリガン

    : 偏った知識、熱狂 e.g. 政治に熱心に参加するひと、政党員、政治家 ヴァルカン : 合理性、冷静さ →ほとんど存在しない ホビットとフーリガンに<平等な>政治的権利を保障する政治制度は、高いパフォーマンス が期待できない。 (よって、正しい統治制度とは言えない) 。 ST14: まとめ 福原正人 : [email protected]
  13. 今日のお題 道具的正当化からアプローチする場合。民主主義のパフォーマンスを高めるためにはど のような制度が提案ができるだろうか。 とくに何も浮かばなければ、以下のネット記事を参考にして考えてみよう。 くじ引きで国会議員に?  「ロトクラシー」というオルタナティブ(山口 晃人) | 現代新 書

    | 講談社( 1/6) 【前編】世界でひろがる「ミニ・パブリックス」とは? OECD本から読み解く! | PublicAffairsJP | マカイラ 内在的正当化からアプローチする場合。内在的正当化によれば、民主主義は<そのプロ セスそれ自体として>価値がある。では、どのプロセスにどのような価値があると言え るだろうか。 ST14: learnwizone 福原正人 : [email protected]
  14. 民主主義のパフォーマンスを高めるためには? (1) 無作為抽出やくじ引き民主主義(ロトクラシー) 熟議は、適切な環境下では、それなりのパフォーマンスがあることが実証されている (ジ ェイムズ・フィシュキン『人々の声が響き合うとき――熟議空間と民主主義』早川書 房 )。 そこで、社会の多様な意見が反映されるように、無作為抽出やくじ引きを通じて市民を 選出して、この代表者がファシリテーターの下に熟議することで、既存の代表制民主主

    義を補完する立法制度( =ミニ・パブリック)として機能させる。 フランス・パリや日本・札幌市での気候市民会議など、すでに部分的に実現されている 新たな民主主義のあり方として議論されている。 cf. 吉田徹『くじ引き民主主義 政治にイノヴェーションを起こす』 (光文社新書 ) ST14: オルタナティブ (3) 福原正人 : [email protected]