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week6@tcue2024

MF
May 14, 2024

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  1. 構造的不正義とは? 特徴 どんな不正義?: 「抑圧」=個人の自律性(自分らしく生きる)の毀損 どのように?:マジョリティが無意識に再生産する 住居を失うシングルマザー(Young 2011) 当事者の境遇:当事者の常識的な行為とその社会的な脆弱性 当事者以外の個人行為:公正なルールのなかで自分の利益を追求している 制度(法律や政策)

    :都市計画や経済政策などに明らかな違法性はない →ジェンダー化した労働市場と人種的なイメージを反映した住宅事情 含意 (1) 女性の貧困は構造的不正義として理解できる。自己責任に還元できない。 (2) (個人として悪意がなかったとしても)マジョリティ側に責任がある。 ST06: ST05の復習 福原正人:[email protected]
  2. グローバルな貧困と市場社会(Young 2011) 途上国の「搾取工場(sweat shop)」 で働く女性 cf. ラナプラザ崩壊事故(バングラデシュ) 、NIKE不買運動 当事者の選択 途上国の女性は生活のために搾取工場で働かざるを得ない

    当事者以外の個人行為 (搾取工場の責任者や先進国の会社に責任を問えるが)消費行動に責任なし 制度(法律や政策) 他国籍企業を誘致する規制緩和に明らかな違法性はない 含意 (1) ジェンダー化した労働市場のグローバル化。自己責任に還元できない。 (2) (個人として悪意がなかったとしても)先進国の消費者側に責任がある。 ST06: 構造的不正義の事例(1) 福原正人:[email protected]
  3. マジョリティの責任とは? 二つの責任 a. 一般的な責任 「帰責性」(liability) モデル: (過去に遡って)不正を引き起こした行為者に割り当てられる個人責任 b. ヤングが提案する責任 「社会的連関」(social

    connection) モデル: 社会構造に関与する個人全員に割り当てられる(未来志向的な)集団責任 含意とその問題 マジョリティ側に社会構造を変革する責任。その一方で、(1)誰がどの程度の責任を負っ ているのか不明であったり、(2)ヤングが問いたい責任は本当に個人責任で問えないのか などが問題になる。 ST05: 構造的不正義の問題 福原正人:[email protected]
  4. 美容市場 (Widdows 2021) どんな抑圧? -(a) 男女を問わずに美的要求の高まり、(b)身体的なイメージに対する不安 -(外科手術のリスクを除く)公衆衛生上の懸念の他、自尊心などの心理的な害悪 当事者の境遇 (a)・(b)のなかで美容に関心をもたざるをえない社会構造 当事者以外の個人行為

    歯列矯正を進める親や、特定の施術や外見を薦めるインフルエンサーに責任なし 制度(法律や政策) -美容目的の外科手術などは違法性はない。 -安全性や十分な情報を踏まえて個人の「同意」 。 ST06: 構造的不正義の事例(2) 福原正人:[email protected]
  5. ノルウェーの社会学者ヤン・エルスター -Elster, Jon (1983). Sour Grapes: Studies in the Subversion

    of Rationality. New York: Editions De La Maison des Sciences De L'Homme.(翻訳あり) -社会心理学などの知見を用い「適応的選好形」を定式化する 適応的選好形成(adaptive preference formation)の定義 人間は置かれた環境に適応した選好を形成することもしくはその傾向があること 含意 人間は、寓話の狐のように、置かれた環境から満足感を得られるように選好を形成する (もしくは、選好を環境に適応させる) 。よって、選好を形成する環境が劣悪である場合 は、一見として非合理な選好を形成する。 ST06: 適応的選好形成 福原正人:[email protected]
  6. イメージしやすい特徴 (Sen 1995) 1. 悲しみや不満を言い続けない 2. 状況を変えようという動機を欠いている 3. 逆境とうまく付き合おうとする 4.

    小さなことでもありたがろうとする 5. 不可能なことを望まないようにする ST06: 適応的選好の特徴と途上国の女性(1) 福原正人:[email protected]
  7. インドの経済学者アマルティア・セン -Sen, A. (1995). Inequality reexamined. Harvard University Press.(翻訳あり) アメリカの政治哲学者マーサ・ヌスバウム

    -Nussbaum, M. C. (2000). Women and human development: The capabilities approach Cambridge university press.(翻訳あり) 途上国の女性は、抑圧する社会構造が生み出す規範を内面化して、男性に対して従属的 な社会的地位を受容するといった非合理な選好を形成している e.g. 虐待を行う男性と離婚しないこと、教育を受けないこと、性器切除などの慣習に従 うこと センとヌスバウムは、適応的選好形成を用いることで、当事者が納得しているからとい って、その社会や環境が放置されてもよいわけではないと主張して、途上国の経済開発 とそのための構造的な変革の重要性を説いた。 ST06: 適応的選好の特徴と途上国の女性(2) 福原正人:[email protected]
  8. 社会構造に対する批判 vs. 当事者の自律性(または同意) 家庭内の無償労働や結婚、美容的関心、ポルノなど、先進国で問題の選好は、社会構造 は、途上国の女性による選好の非合理さと比較して、その抑圧的な性質こそ同じだが、 もう少し微妙な評価が求められるかもしれない。 例えば、あなたは、以下のような事例の女性は、 「抑圧的な規範を内面化した女性」と評 価するか、 「自分らしく生きている女性」と評価するか。

    ある大学生の女性は、自分に相応しい外見でないことに悩んでいた。女性の両親は、非 常に保守的であり髪を染めることすら許さないひとであったが、女性は、独り暮らしを 機に、自分の好きな洋服を着たり髪を染めることにした。女性は自分に自信を取り戻し た。そして最近は美容整形にも関心を持っている。 ST06: フェミニズムの理論的な課題 福原正人:[email protected]