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おい、テックブログを書け

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December 04, 2025
530

 おい、テックブログを書け

2025年12月5日に「おい、テックブログを書け 」という登壇をしました。
https://forkwell.connpass.com/event/377267/
#Forkwell_おい

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nwiizo

December 04, 2025
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Transcript

  1. 今日お話しすること 1. なぜ書くべきなのか 「書かない理由」を潰す 書かないコストを直視する 2. よくある失敗とAI活用 書けない・出せない・読まれない AIとの正しい付き合い方:身体性 3.

    何を書くか:ネタの見つけ方 日常からネタを発掘する技術 THINK BIGGER:6ステップの発想法 4. どう書くか:記事の書き方 技術ブログの種類と構成 タイトル・導入文・本文の型 5. より良い記事にするために 防御力の高いブログを書く 公開前チェックリスト 6. 実践編 どこに・いつ書くか 5
  2. この発表で解決できること 「書けない」 「書かない」を終わらせる こんな悩みを持っていませんか? 書こうと思っているけど、始められない 何を書けばいいかわからない 書き始めても途中で止まる 公開するのが怖い 続かない この30分で持ち帰れるもの

    「書くべき理由」の腹落ち AIとの正しい付き合い方(身体性) ネタを見つける6ステップの発想法 記事の型とチェックリスト 公開への心理的ハードルの下げ方 目標:この発表を聞いた人が、今週1本ブログを書く 6
  3. なぜ技術ブログを書くべきなのか 「書かない理由」を全部潰す 「時間がない」 → 30分の苦労を記事にすれば、100人の30分を救 う。書かない方が時間の無駄 「もう誰かが書いている」 → 同じ技術でも、環境・前提・視点が違う。あなた の言葉で救われる人がいる

    「間違ったことを書くのが怖い」 → 間違いは指摘されて直せばいい。書かなければ永 遠に間違いに気づけない 「自分なんてまだ経験が浅い」 → 初心者の「わからない→わかった」は、専門家に は書けない。鮮度が価値 7
  4. 「書かない」という選択のコスト 失われるものを直視する 学習効果の損失 読んだだけ、やっただけでは定着しない。書くことで 初めて「自分の知識」になる。書かなければ、3ヶ月 後には忘れる 存在証明の機会損失 GitHubは「何を作ったか」を示す。ブログは「どう考 えたか」を示す。思考が見えないエンジニアは選ばれ ない

    同じ説明を繰り返すコスト チームで何度も同じことを説明していないか?記事に すれば1回で済む。書かないから同じ苦労を繰り返す コミュニティへの負債 あなたも誰かの記事に救われた。受け取るだけで返 さないのはフリーライダー。書いて返せ 8
  5. 技術ブログ執筆がもたらす3つの価値 書くことの最大の受益者は、書いた本人だ 理解の穴が見える 曖昧に理解していたつもりが、言 語化しようとした瞬間に「説明で きない」と気づく → 調べ直し、考え直し、書ける → 理解は確実に深まる

    知識が構造化される 散らばった知識が、書くことで整 理される。 「なんとなく分かった」 が「説明できる」に変わる → 半年後の自分が助かる 継続の原動力になる 他者に読まれなくても、この価値 は消えない。 「書いたことで自分 は確実に賢くなった」 → 他者の評価に依存しない 9
  6. よくある失敗パターン① 書けない・出せない 完璧主義で出せない 「もっと調べてから」 「もっと良い文章に」 「誰かに突っ込まれ るかも」→ いつまでも下書きのまま 対策 80%で出す

    / 後から直せる(Webの良さ)/ 批判より「参考にな った」の方が多い ネタがない 「書くほどのことじゃない」 「誰かがもう書いてる」 「大したこ としてない」 対策 あなたの言葉で書く価値がある / 同じ内容でも視点が違う / 「ハ マったこと」は全部ネタ 💡 出さなければゼロ。出せば1。直せば1.1 12
  7. よくある失敗パターン② 読まれない・伝わらない 情報の羅列で終わる コードを貼っただけ / 公式ドキュメントの要約 / 「私」が不在 → 読者「で、何が言いたいの?」

    対策 「私はこう使った」 「私はこう思った」を入れる / なぜその方法 を選んだか / 失敗談も書く 結論がわからない 最後まで読まないとわからない / 「で、どうすればいいの?」 対策 最初に結論を書く / タイトルに結論を含める / 「TL;DR」セクシ ョンを設ける 💡 「私」を入れるだけで、記事は生きる 13
  8. AIに記事を書かせるとは何か 「それは本当にあなたの記事なのか」 私の答えは明確だ。記事はほとんどAIに書かせている。しかし、価値の源泉は私にある。 すでにAIの支援を受けている 予測変換 LSP(Language Server Protocol) コード補完 スペルチェック

    → 生成AIはその延長線上にある では、私は何を担っているのか 「身体性」を供給している 私が素材(身体性)を提供し、AIが構造化し、私がレ ビューして調整する → この協働が現代の「執筆」 💡 AIは編集者。価値の源泉は、あなたの「身体性」にある 16
  9. 身体性とは何か 知識が「情報」から「経験」へ変容する過程 Rustの所有権システムを学んでいる。The Bookを読み、概念は「理解した」つもり。しかしコードを書くと cannot borrow as mutable... 。 「知っている」と「書ける」の間にある断絶——これが身体性の欠落。

    断絶を越えた瞬間の記録 なぜエラーになったか格闘した イテレータの内部構造に気づいた 腹落ちした瞬間があった → 「生きた知見」として伝達可能 AIには生成できないもの 私の代わりに試行錯誤すること 私の代わりにコンパイラに叱られること 私の代わりに悔しがること → 苦闘から理解への遷移 💡 AIは「生の体験」を読める文章に整える。編集者の仕事だ 17
  10. では、具体的にどう使うか 監修者としてのAI活用ガイドライン 頼んでいいこと(編集者として) 記事構成の相談 下書きのレビュー 文章のリライト タイトル案の生成 誤字脱字・事実チェック → 「相談」

    「壁打ち」の姿勢で 頼んではいけないこと(身体性の捏造) 経験していないことの執筆 技術的判断の丸投げ 動作確認なしのコード掲載 検証なしでの公開 → 「書いて」は危険 💡 AIは編集者。 「身体性」を供給するのはあなたの仕事 20
  11. 身体性の本質: 「情報」と「経験」の違い 同じ事実でも、伝わり方がまったく違う 情報としての記述 「リソース制限は重要な設定項目です」 検索すれば出てくる 誰が書いても同じ 読んでも行動が変わらない → 右から左に流れていく

    経験としての記述 「リソース制限をナメていた。OOMKilledで3時間溶 かすまでは」 あなたにしか書けない 痛みが伝わる 読者の行動が変わる → 記憶に残る 💡 情報を右から左に流すな。経験を通過させろ 22
  12. 身体性の3つの要素 経験を言語化するための視点 ① 苦闘(Struggle) 何につまずいたか、何時間溶かし たか、どこで間違えたか → 読者も同じ穴に落ちる前に救え る ②

    転機(Turning Point) 何がきっかけで理解できたか、ど の瞬間に腹落ちしたか → 読者に追体験させられる ③ 教訓(Lesson) 次から何を変えるか、どう予防す るか → 読者の行動を変えられる AIが整え、あなたが魂を吹き込む。これが現代の執筆だ 23
  13. Step 1:課題を選ぶ 一言で言うと: 「何について書くか」を決める このステップでやること → 記事のテーマを決める ポイント:サイズ感が重要 大きすぎると書ききれない 小さすぎると内容が薄い

    「1記事で完結する」サイズを探す 具体例で比較 「Kubernetesの使い方」→ 大きすぎ 「kubectl getコマンド」→ 小さすぎ 「本番障害を防いだリソース制限の設定」 💡 「誰かの役に立つ」かつ「自分が書ける」サイズを見つける 31
  14. Step 1:よくある失敗パターン テーマ選びでつまずく人の共通点 大きすぎるテーマを選ぶ 「Kubernetesについて」 「AWSの使い方」 → 書ききれない → 途中で挫折

    小さすぎるテーマを選ぶ 「このコマンドのオプション」 → 内容が薄い → 書く意味を見失う ちょうどいいテーマの見つけ方 「自分が2〜3日かけて解決したこと」がベスト → 深みがある & 1記事で完結する 32
  15. Step 1:課題のレベルを上げ下げする ちょうどいいサイズを探す技術 レベルを上げる(抽象化) 「CI/CDパイプラインの高速化」 ↑ 「GitHub Actionsのキャッシュ設定」 より大きな視点で課題を捉え直す レベルを下げる(具体化)

    「GitHub Actionsのキャッシュ設定」 ↓ 「node_modulesのキャッシュで3分短縮した話」 より具体的に分解する 技術ブログの「おいしいサイズ」 1記事で完結する / 読者が再現できる / 自分の経験が活きる 上げ下げしながら「書きやすく、読まれやすい」ところを探す 33
  16. Step 2:分解の具体例 テーマを見出しに分解する テーマ: 「OOMで落ちたPodを調査した話」 分解結果(= 見出し) 1. 何が起きたか(症状) 2.

    どう調査したか(手順) 3. 原因は何だったか(分析) 4. どう解決したか(対策) 5. 再発防止(教訓) 💡 分解すると記事の構成が見えてくる 36
  17. Step 2:分解の実践例 「OOM調査」をさらに分解してみる 最初の分解(大きい) 1. 症状 2. 調査 3. 原因

    4. 解決 5. 再発防止 さらに分解(細かい) 1. 症状 → エラーログ、影響範囲 2. 調査 → コマンド、ツール 3. 原因 → 仮説、検証 4. 解決 → 設定変更、確認 5. 再発防止 → 監視設定 分解のコツ 最初は大きく分解 → 書きながら細かくする 「これは1段落で書ける?」が目安 細かくしすぎると読みにくい → バランスが大事 37
  18. Step 2:なぜ「5つまで」なのか ジャムの法則をここでも活かす 選択肢が多すぎると選べない ジャムの法則と同じ。サブ課題を10個も20個も出す と、どれに注力すべきか分からなくなる。 5つに絞る効果 本当に重要なものを見極められる 各サブ課題に十分な時間を割ける 記事の構成がシンプルになる

    絞る過程で見えてくるもの 「これは本当に必要か?」と自問すると... 実は同じことを言っている項目 なくても成立する項目 別の記事にした方がいい項目 → 削ることで本質が見える ⚠️ 「網羅的に」より「絞って深く」の方が読者に刺さる 38
  19. Step 3:望みを比較する 一言で言うと: 「誰のために書くか」を決める このステップでやること → 「自分・読者・会社」の望みを整理し、優先順位をつける 3つの望み 1. 自分

    → 書きたいこと、伝えたいこと 2. 読者 → 知りたいこと、解決したいこと 3. 会社 → 宣伝、採用、ブランディング 結論:自分を優先してOK 全部満たそうとすると薄くなる。 まず自分が書きたいことを書く → 熱量のある記事は読者にも伝わる 💡 「誰かのために」より「自分のために」書いた記事の方が刺さる 40
  20. Step 3:具体例で考える 同じテーマでも「誰のため」で変わる テーマ: 「GitHub Actionsでテストを高速化した話」 自分の望み優先の記事 試行錯誤の過程を詳しく 失敗した方法も書く 自分の学びを残す

    → 技術的に深い記事に 読者の望み優先の記事 結論を先に コピペで使える設定 手順だけシンプルに → 実用的な記事に → どちらも正解。**今回どちらで書くか**を決めるのがこのステップ 41
  21. Step 3:望みの対立を認める 全部は満たせない、だから選ぶ よくある対立 自分:詳しく書きたい 読者:早く結論を知りたい 会社:会社の宣伝を入れてほしい 全部を満たそうとすると... → 長くて読まれない記事になる

    選択する勇気 今回は「自分の学び」を優先 今回は「読者の課題解決」を優先 今回は「会社への貢献」を優先 1記事1テーマで強弱をつける ⚠️ 全方位に良い顔をしようとすると、誰にも刺さらない 42
  22. Step 4:箱の中と外を探す 一言で言うと: 「書く前に下調べ」をする このステップでやること → 記事の材料になる情報を集める 箱の中(同じテーマ) 公式ドキュメント 他の人の同テーマの記事

    GitHub Issues、Stack Overflow → 正確性を担保する・抜け漏れ防止 箱の外(自分の経験) 実際に試した結果 ハマったポイントと解決策 自分なりの工夫や改善 → オリジナリティの源泉 💡 「調べた情報」+「自分の経験」= 価値のある記事 44
  23. Step 4:下調べの具体的な方法 どこで何を調べるか 正確性のための調査 公式ドキュメントで仕様を確認 他の記事と自分の理解を照合 バージョン情報を確認 最新の情報かどうかチェック → 間違いを書かないために

    差別化のための整理 他の記事にない視点は何か? 自分だけが経験したことは? より詳しく書ける部分は? 図解できる部分は? → 読む価値を作るために 💡 「正しさ」と「独自性」の両方を意識して材料を集める 45
  24. Step 4:よくある下調べの失敗 これをやると記事の質が下がる 下調べ不足 公式ドキュメントを読まずに書く 古い情報をそのまま引用 自分の環境でしか試していない → 間違った情報を広めてしまう 下調べしすぎ

    完璧に理解してから書こうとする 他の記事を読みすぎて書けなくなる 「もう書かれてる」と諦める → いつまでも書き始められない 💡 「正確性を担保できる程度」の下調べでOK。完璧を目指さない 46
  25. Step 5:選択マップ 一言で言うと: 「集めた情報を整理して、何を書くか選ぶ」 このステップでやること → 調べた情報を「選択マップ」で整理し、記事に使うものを決める 選択マップとは THINK BIGGERで紹介されている思考ツール

    集めた選択肢を視覚的に整理し、最適な組み合わせ を見つける方法 なぜ必要か 調べた情報が多すぎて迷う 何を書くべきか決められない 全部詰め込むと散漫になる 「選ぶ」ことで記事が締まる 49
  26. Step 5:選択マップを使う例 「OOMKilled 調査」記事の場合 調査方法は複数ある kubectl top Grafana pprof 3rd

    party tool 読者に最も役立つのはどれか? を選択マップで整理する 53
  27. Step 5:選択マップの具体例 「OOM調査方法」の選択マップ ┌─────────────────────────────────┐ │ OOMKilledの調査方法を紹介したい │ └─────────────────────────────────┘ │ ┌───────────────┬─────┴─────┬───────────────┐

    ▼ ▼ ▼ ▼ ┌───────────┐ ┌───────────┐ ┌─────────┐ ┌────────────┐ │kubectl top│ │ Grafana │ │ pprof │ │3rd party │ └───────────┘ └───────────┘ └─────────┘ └────────────┘ │ │ │ │ ◎ 簡単 ◎ 可視化 △ 詳細 △ 導入コスト ◎ すぐ使える ◦ 履歴見れる △ 設定必要 △ 学習コスト △ 瞬間値のみ △ 要セットアップ ◦ 根本原因 ◦ 高機能 選択結果:読者の多くは「まず何が起きてるか知りたい」 → kubectl top + Grafana を中心に書く(pprof は発展編として軽く触れる) 54
  28. Step 5:選択マップから記事構成へ 選んだものを「どう並べるか」 選択マップの結果 kubectl top:◎(簡単、すぐ使える) Grafana:◦(履歴が見える) pprof:△(上級者向け) → kubectl

    top + Grafana を中心に書く 記事構成に落とし込む 1. 問題発生(何が起きたか) 2. kubectl top で現状確認 3. Grafana で推移を可視化 4. 原因特定と解決 5. (発展)pprof で深掘り 💡 選択マップで「選んだもの」を軸に記事構成を作る 55
  29. Step 6:第三の目で検証する 一言で言うと: 「一晩寝かせてから見直す」 このステップでやること → 時間を置いて、または他者の視点で記事をチェックする 方法①:次の日の朝に読む 書いた直後は「完璧」に見える 一晩寝ると冷静に読める

    「なんでこんな書き方した?」が見つかる → 時間が「第三の目」になる 方法②:AIにチェックしてもらう ChatGPT / Claude に記事を貼る 「わかりにくい部分を指摘して」 「誤字脱字をチェックして」 → 24時間使える校閲者 💡 「書いた直後に公開」は危険。最低でも翌朝チェック 59
  30. Step 6:なぜ検証が必要か 書いた本人には見えない穴がある 書いた本人あるある 「当然わかるでしょ」と省略 専門用語を説明なしで使う 論理の飛躍に気づかない 誤字脱字を見落とす → 自分では完璧に見える

    読者の視点で見ると 「なんでこうなるの?」 「この用語わからない」 「話が飛んでる」 「誤字があると信頼度↓」 → 書いた本人には見えない 💡 「自分以外の目」を通すだけで、記事の質が劇的に上がる 60
  31. Step 6:最終確認 技術ブログならではのチェックポイント 技術的な正確性 コードは実際に動くか? バージョン情報は正しいか? コマンドの出力は正確か? リンク切れはないか? → 動かないコードは信頼を失う

    読みやすさ 専門用語に説明はあるか? コードブロックは見やすいか? 図や画像は適切か? 長すぎるセクションはないか? → 公開前に一度通して読む 💡 未来の自分が読んだ時に「わかりやすい」と思えるか 61
  32. 6ステップのまとめ① どこで詰まっているかを特定する Step 1が不足 課題が大きすぎ/小さすぎ → レベルを上げ下げ → 「書ける」サイズに Step

    2が不足 課題が漠然としている → サブ課題に分解 → 5つまでに絞る Step 3が不足 誰向けか曖昧 → 望みを書き出す → 優先順位をつける Step 4が不足 視点が狭い → 領域外の事例を探す → 成功事例に注目 Step 5が不足 構成が決まらない → まず全部書いて削る → 「選ぶ意識」を持つ Step 6が不足 独りよがりになる → 他者に説明する → 説明し返してもらう 62
  33. 6ステップのまとめ② 選択の連続で記事は生まれる THINK BIGGERの本質: 「選ぶ」ことの連続 課題を選ぶ → サブ課題を選ぶ → 望みを選ぶ

    → 戦術を選ぶ → 組み合わせを選ぶ → 検証で磨く 選ぶ → 分解 → 比較 → 探す → マップ → 検証 💡 「書けない」は才能の問題じゃない。この6ステップのどこかが詰まっているだけ 63
  34. 6ステップの本質:引き算の技術 「足す」より「削る」が難しい THINK BIGGERの6ステップは、すべて「引き算」のプロセス Step 1-2 無数のテーマから1つを選ぶ → 他を捨てる決断 Step

    3-4 読者の望みを絞る → 全員に届けようとしない Step 5-6 選択肢を比較して削る → 最良の1つに絞る 足し算の発想 あれもこれも詰め込む → 焦点がぼやける → 誰にも刺 さらない 引き算の発想 「これだけは伝える」を決める → 残りは捨てる → 刺 さる記事になる 💡 良い記事は「何を書かないか」で決まる 64
  35. 技術ブログの種類② トラブルシュート記事(過去 × 中間) 障害・バグを追跡し、解決するまでの思考過程を共有 なぜ価値があるか 同じ症状で困っている人を直接救える 「思考の過程」は検索で出てこない 間違った仮説も含めて共有することで学びが深ま る

    構成例 1. 何が起きたか(症状) 2. 最初の仮説(間違いも含む) 3. 原因の特定過程 4. 解決策と再発防止 💡 「この方法じゃダメだった」は「この方法でいけた」と同じくらい価値がある 68
  36. 技術ブログの種類④ 教訓・振り返り記事(過去 × 抽象) 経験から抽出した一般化可能な教訓を共有 なぜ価値があるか 具体的な経験を抽象化することで汎用的な学びに なる 失敗談は成功談より学びが深い 「思っていたのと違った」は最も価値のある情報

    構成例 1. 状況と背景 2. 当初の想定 3. 実際に起きたこと 4. なぜ想定と違ったか 5. 得られた教訓 💡 「〜だと思っていたけど実際は違った」←読者が最も求めている情報 70
  37. 技術ブログの種類⑥ 比較・評価記事(現在 × 中間) 複数の選択肢を比較し、評価基準を示す なぜ価値があるか 選択に迷っている人の判断材料になる 「どれも良さそう」を「この場合はこれ」に変換 できる 評価軸を示すことで読者の思考を助ける

    構成例 1. 比較の目的と前提 2. 比較対象の概要 3. 評価軸の設定 4. 各項目の評価 5. 結論と推奨 💡 「どれがいいか」ではなく「どういう場合にどれがいいか」を示す 72
  38. タイトルの付け方⑥ まとめ:タイトルは「約束」である 3つの原則 1. 3要素を含める(対象・行動・結果) 2. 強度を意識する 3. 約束を守る 実践のコツ

    本文を書き終えてから確定 迷ったら「中」の強度から 数字や技術名を入れる これらはあくまで守破離の「守」 。型を身につけたら、自分のスタイルを見つけていく。 79
  39. 導入文の書き方③ 信頼性の示し方:謝罪ではなく限定 謝罪で信頼を損なう 「初心者なので間違いあるかも」 「間違ってたらすみません」 「備忘録です」 → 読む価値があるか不安になる 限定で誠実さを示す 「私の環境(Ubuntu

    22.04)で検証」 「執筆時点(2025年12月)の情報」 「〇〇については扱いません」 → 信頼性が上がる 💡 謙虚さは「限定」で表現する。謝罪で表現しない 83
  40. 本文の構成パターン① 問題解決型(最も汎用的) 構成:問題 → 調査 → 解決 → 結果 バグ修正、トラブルシューティング、エラー解消に最適

    1. 問題:症状・発生状況・影響範囲 2. 調査:仮説→試行錯誤→原因特定 3. 解決:解決策・コード・理由 4. 結果:解決後の状態・再発防止・学び 💡 迷ったら「問題解決型」から始めよう。最も読者ニーズが高い 85
  41. 本文の構成パターン② チュートリアル型・比較検討型 チュートリアル型 構成:完成像 → 手順 → 確認 環境構築、セットアップに最適 まず何ができるようになるか

    ステップバイステップで説明 動作確認の方法 比較検討型 構成:背景 → 選択肢 → 比較 → 結論 技術選定、ツール比較に最適 なぜ比較が必要になったか 評価軸と比較結果 選んだ理由と根拠 86
  42. 本文の構成パターン③ 振り返り型・概念解説型 振り返り型 構成:実施 → 良かった点 → 改善点 経験談、プロジェクト振り返りに最適 何をやったかの概要

    うまくいったこと / 改善すべきこと 次回への教訓 概念解説型 構成:What → Why → How 技術解説、入門記事に最適 それは何か(定義) なぜ必要か(背景) どう使うか(実例) 87
  43. コードブロックの使い方① コードの見せ方で記事の質が決まる 悪い例 コードだけ貼る resources: limits: memory: "128Mi" cpu: "500m"

    → 何のコードかわからない → なぜこの値かわからない → コピペしても意味がわからない 良い例 前に説明 → コード → 後に補足 「Podのメモリ上限を128MiBに設定します」 resources: limits: memory: "128Mi" # これを超えるとOOMKilled cpu: "500m" # 0.5コア分のCPU 「128MiBは小さめの値です。アプリの実際の使用量に 合わせて調整してください」 💡 コードは「何を」 「なぜ」 「どう使うか」とセットで 88
  44. 図解とスクリーンショットの活用① 図解を入れるべき場面 アーキテクチャ図 システム構成、コンポーネント間の関係 → 文章だけでは伝わらない フロー図 データの流れ、処理の順序 → シーケンスが重要な場合

    スクリーンショット GUI操作手順、エラーメッセージ → 「この画面のこのボタン」が一目でわかる 比較表・グラフ パフォーマンス比較、機能比較 → 数値の違いが視覚的にわかる 💡 「文章で説明するより図の方が早い」と思ったら図解する 90
  45. 図解とスクリーンショットの活用② おすすめツールと図解のコツ おすすめツール CleanShot X(Mac)注釈・GIF録画 draw.io(無料、多機能) Excalidraw(手書き風) Mermaid(コードで書ける) Napkin AI(AIで自動図解)

    生成AI(Gemini等で画像生成) 図解のコツ 色は3色まで / 矢印の向きを統一 余白を十分に取る 文字は読める大きさ(最低12px) キャプションを必ず付ける 91
  46. 情報の非対称性を埋める方法 読者の立場に立って書く 非対称性を無視した書き方 「〇〇を設定すればOK」 「当然△△を使います」 「ここは省略します」 いきなり解決策から書く 非対称性を埋める書き方 「〇〇を設定します。なぜなら〜」 「△△を使う理由は〜」

    「前提として□□が必要です」 問題→背景→解決策の順で書く 実践チェックリスト [ ] 専門用語に説明を添えたか? [ ] 「なぜそうするのか」を書いたか? [ ] 前提条件を明示したか? [ ] 読者が再現できる情報を書いたか? 94
  47. 読者を惹きつける記事構成 ストーリーで読ませる 読者は「物語」を求めている 単なる情報の羅列ではなく、あなたの「物語」を共有する 1. 問題提起 何に困ったか 2. コンテキスト 状況説明

    3. 探求の旅 試行錯誤 4. 発見と学び 解決・気づき 5. 次のステップ 応用・展望 💡 失敗したアプローチも正直に書くと信頼性が上がる 95
  48. 公開前チェックリスト① 内容のチェック 基本事項 [ ] タイトルは具体的か [ ] 導入文で何がわかるか明示 [

    ] 結論・まとめがあるか 技術的内容 [ ] コードは動作確認済みか [ ] 環境情報あるか [ ] 実行結果を載せたか 💡 動かないコードを載せると信頼を失う。必ず手元で確認 100
  49. 公開前チェックリスト② 読みやすさとリスク回避 パッと見で読みやすいか [ ] 見出しだけで流れがわかる [ ] 段落は短く(3〜4行) [

    ] 視覚的要素は適切か [ ] 一晩寝かせて読み返したか 公開して大丈夫か [ ] 情報漏洩:機密・APIキー・顧客情報 [ ] 防御力:断定表現を避け限定しているか [ ] 誤字脱字:textlintを実行する 💡 一晩寝かせると、見えなかった粗が見える 101
  50. どこに書くか① プラットフォームの選び方 Zenn / Qiita 技術記事に特化したプラットフォーム 機能はほぼ同じ、設計思想・運営思想に違いあり マークダウンで書ける、検索流入が多い 初心者が始めやすい →

    どちらが合うか、調べて選ぼう はてなブログ(私の選択) 尊敬するまつもとりーさんが使っていた デザインの自由度が高い はてなブックマークとの相性◎(拡散力) テックブログ専用機能は少なめ → 憧れの人と同じ場所で書くのも良い 💡 初心者はZennかQiitaで始めよう。両方に投稿してもOK 103
  51. いつ書くか① 記憶の鮮度を活かすタイミング 問題解決直後 記憶が最も鮮明 感情が乗りやすい 「次の人のため」という動 機 → 最強のタイミング 業務終了直後

    「今日やったこと」が新鮮 振り返りとして機能 明日の自分への引き継ぎ 週末のまとまった時間 平日のメモを記事化 推敲・編集の時間が取れる 鮮度は落ちるがメモで補う 💡 鮮度が高いほど、書くコストが下がる 106
  52. いつ書くか② 習慣の力を活かす仕組み トリガーを決める 既存の習慣にくっつける 「PRをマージしたら書く」 「コーヒーを入れたら書く」 「電車に乗ったらメモする」 ハードルを下げる 完璧を求めない 「1行だけ」から始める

    下書きのまま保存OK 「見出しだけ」でも勝ち 仕組みで強制する 意志に頼らない 朝15分を固定枠に カレンダーに予約 仲間と約束する 💡 継続の敵は「完璧主義」と「孤独」 107
  53. いつ書くか③ 鮮度を保存する:コーディングエージェントをネタ帳にする 記憶の鮮度は時間とともに失われる。その場でメモを残す仕組みがあれば、後から記事化できる。 やり方 日報用のSlash Commandを作成 作業の区切りで /daily を実行 学んだこと・ハマったことを記録

    後で見返してブログネタに メリット 記憶が新鮮なうちに残せる コード作業の流れを止めない AIが要約・整理を手伝う 蓄積が資産になる 参考: Claude CodeのSlash Commandsで日報を作成する 108
  54. 参考書籍 もっと深く学びたい人へ Writing for Developers 技術ブログの書き方に特化した洋 書。アイデア出しから執筆・改訂 まで全工程をカバー。技術者とラ イターの共著で実践的 三行で撃つ

    〈善く、生きる〉た めの文章塾 近藤康太郎著。 「最初の三行で読 者を撃て」 「短く、近く、シンプ ルに」 。常套句禁止、熱量を込め ろ。厳しいが効く 言語化するための小説思考 小川哲著。直木賞作家が「伝わる 言葉」の生み出し方を開陳。読者 との情報の非対称性をどう埋める か 💡 技術だけでなく「書くこと」自体を学ぶと、記事の質が変わる 109