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大規模ソースコードの読み方
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Satoru Takeuchi
PRO
October 12, 2017
Programming
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大規模ソースコードの読み方
Tips of how to understand the source code of big software projects
Satoru Takeuchi
PRO
October 12, 2017
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Transcript
1 大規模ソースコードの読み方 v1.0.0 2016/2/13 Satoru Takeuchi <
[email protected]
>
2 はじめに • 大規模ソースコード(以下ソースと記載)を、未 経験者が前提知識を持たない状態で読もうとす ると、ほぼ確実に挫折する • 例えばLinux kernelの場合一千万行をゆうに超える •
一日千行読んでも一万日かかる… • 本スライドは大規模ソースを読む上でのコツを いくつか紹介 • 想定読者 • これまで大規模ソースを見たことが無い人/見よう としたが、挫折した人 • Linux/UNIXユーザ
3 目次 • ソースを読む前 • 目的の明確化 • 設計意図の理解 • 読むソースの絞り込み
• ソースを読むとき • タグジャンプツールの使用 • 実際に動かしてみる • まとめ
4 目的の明確化 • まず自分がどの機能の実装を理解したいのかを明確化 • 目的が無いまま闇雲にソースの字面を眺めるだけでは 内容の理解は困難 • 「全てを理解しなくては!」や「とりあえずmain()か ら芋づる式に辿ろう」という考えかたは挫折への近道
• 大規模プログラムでは、全ソースを完璧に理解して いる開発者は少ない/居ない。全部を理解していな いのは別に恥ずかしいことではない • 最終目的はあくまで機能の実装を理解することであり、 ソースを読むのは手段であることを常に意識しておく
5 設計意図の理解 • 機能が何のためにあるのか、どういう方針で設 計されているかという意図を理解する • ドキュメントを見る • マニュアル、コメント、パッチのコミットログ •
自分なりの仮説を立てる • この機能を実現するためには設計はこうなってい るはず…と考える • 構造体の関連図がわかっていると、仮説を立て やすい • アルゴリズム+データ構造=プログラム • 仮説が外れていても、無いよりは全然よい
6 gitの活用 • 設計意図を知るのにはgitが役立つ • 無論ソースがgitで管理されていることが前提 • 他のVCSについては割愛 • ここでは2つのgitコマンドを紹介
• git log • git blame
7 git log • git log <path>: <path>を変更したパッチの一覧を 表示 •
機能追加、実装の再設計をしたパッチセットの先頭 パッチに設計意図が書いていることが多い • パッチそのものではなく、当該パッチセットを開発 MLに投稿した際の”[PATCH 0/X]”というメールに 書いていることもある
8 git blame • git blame <file>: <file>の各行を最後に変更した パッチを表示 •
<file>の各行が、どのような意図で現在そうなって いるかがわかる • もちろんまともなコミットログがあることが前提 • git logより細かい粒度の情報が得られる
9 読むソースの絞り込み • ソース全体のうちの、どこを読めばいいのか、 及び、どこを読まなくてよいのかを絞り込む • 余計なところを”読まない”ことが重要 • なるべく読む対象のソースを少なくする •
大規模ソースは大抵複数、かつ階層状のモ ジュールに細分化されている
10 絞り込みの例 • 興味のある機能の実行中に出てくるメッセージ を用いてgrepをかけることによって、関連ソー スの位置を知る • デバッガを使ってプログラム内の興味のある機 能を動かしてみることによって、当該機能の ソース上の位置を知る
11 実際にソースを読むにあたって • ここからようやく実際にソースを熟読する • これまでに述べたことが全てできていれば、必 要な作業の八割程度は終わっている • 一部しかできていなくても、漫然とソースを読むよ りは、はるかに良い
• ソースを読む前の作業は戦略、実際にソースを読む 作業は戦術
12 タグジャンプツールの使用 • ソースを読むにあたって、テキストエディタと基本コマン ドだけでソースを読むのは非常に面倒。以下、一例。 • foo()という関数内でbar()という関数を呼んでいる。bar()が何 をしている関数か知りたい • foo()の引数の型であるstruct
hogeの定義を知りたい • grepコマンドなどでソースを全て検索した上で、マッチ したファイルを開いてカーソルを所定の場所に移動、と いった操作を毎回実行するのは面倒、かつ非効率 • bar()やstruct hogeの調査後、foo()の調査を再開したいよ うな場合はさらに面倒 • これを解決するのがタグジャンプツール
13 タグジャンプツールの仕組み • ソースコードを走査して、ソースのどこにどのような シンボル(前述の例でいうとfoo,bar,およびhoge)が定義 されており、それぞれどこで使用されているのかを記 録したデータベースを作成 • エディタなどからシンボルを指定すると、当該シンボ ルの定義場所、および使用箇所に自動的にジャンプ
• 検索ごとの全ソース調査が不要なため、高速。マシ ンパワーも節約可能 • ジャンプ履歴を覚えているため、たとえばfoo()から bar()へのジャンプ後に、元のfoo()に戻ることも可能
14 タグの形式 • タグには色々な形式があり、それぞれ一長一 短。以下に著名なものを記載 • cscope • GNU Global
• ctags • etags • 詳細はそれぞれのドキュメントを参照 • タグジャンプ相当機能を内蔵している開発環境 もある(例: eclipse)
15 プログラムを動かしてみる • ソースを読みつつプログラムを実際に動かして みるのは非常に有用 • デバッガを用いてプログラムを動かしてみることに よって、関数の呼び出し関係、引数、およびデータ 構造の意味を知る •
興味のある箇所にprintf()などのデバッグメッセー ジを突っ込んで実行してみる • ソースを少し変更した上で挙動の変化を見る • ソースの読み/書き、実行を行き来することに よってソースの内容を理解
16 まとめ • 大規模ソースを読むためにはソースを読む前/読 むときについて様々なコツがある • 最終目標はソースを読むことではなく、実装を 理解することだと常に意識する • 機能の実装を理解するために必要なことの八割
は、ソースを読む前に終わっている • 実際にソースを読む際も、ただ読むだけではな く、タグジャンプツールを使ったり、読み書き 実行を行き来したりして、作業を効率化する
17 Happy Hacking!