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歴代のWeb Speed Hackathonの出題から考えるデグレしないパフォーマンス改善

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August 20, 2025

歴代のWeb Speed Hackathonの出題から考えるデグレしないパフォーマンス改善

Browser and UI #3の登壇資料です。

スライド内のリンクは、 Googleスライド版をご覧ください。

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August 20, 2025
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Transcript

  1. Web Speed Hackathon(WSH)の概要 • ⾮常に重たい Web アプリをチューニングして、いかに⾼速にするかを競う 競技 ◦ WebサーバーとAPIサーバーの両⽅の実装を改善

    • 詳細 ◦ 採点:提出されたURLに対して、GHAでLighthouseを動かして計測 ◦ 期間:2⽇間 • 過去のお題 ◦ 2025:架空の動画配信サービス「AREMA」 ◦ 2024:架空の漫画サイト「Cyber TOON」(did0esが作問を⼀部担当) ◦ 2023:架空のショッピングサイト「買えるオーガニック」 ◦ 2022:架空のベッティングサービス「CyberTicket」 ◦ 2021:架空のSNSサイト「CAwitter」 ◦ 2020:架空のブログサイト「Amida Blog(あみぶろ)」
  2. レギュレーション • 競技を進める上での公平性の担保のほか、以下が定められている ◦ 許可⭕ ▪ リポジトリのコードやファイルは全て変更して良い ▪ 外部のサービス(SaaSなど)は⾃由に利⽤して良い ◦

    禁⽌❌ ▪ Google Chrome最新版で著しい機能落ちやデザイン差異を発⽣させる ▪ 悪意を持ってVRTと⼿動テストを通過させるためのコードを書く
  3. UI以外で⼿を加えれば確実に改善につながる箇所の例 • ビルドツールの設定ミス ◦ 開発向けの設定で本番に出している ◦ サポート外のブラウザもサポートしようとしている • 重いパッケージを使っている ◦

    Polyfillや富豪的にリソースを使うパッケージが散在 • ブラウザのレンダリング遅延 ◦ ⼤量 or 重い同期的な処理 ◦ シーケンシャルなAPIコール • 応答が遅いAPI ◦ GraphQLのN+1 ◦ スロークエリ
  4. ビルドツールの設定ミス:2020年 • Webpack関連 ◦ source mapsやmodeなどを本番向けに変える • Babel関連 ◦ サポート外のブラウザ向けにトランスパイルしない

    • PostCSS関連 ◦ 不要なCSSをパージする 参考 :https://github.com/CyberAgentHack/web-speed-hackathon-2020/wiki/Web-Speed-Hackatho n-Online-%E5%87%BA%E9%A1%8C%E3%81%AE%E3%81%AD%E3%82%89%E3%81%84%E3 %81%A8%E8%A7%A3%E8%AA%AC
  5. 重いパッケージを使っている:2022年 • Bundle Analyzerやnpm lsなどでサイズを測って⼤きいものから剥がす • 以下2022年度に⽤いられた中で代表的なもの ◦ Polyfill系 ▪

    core-jsなどでサポート外のブラウザ向けのものは消す ◦ momentjs ▪ date-fnsやdayjsなど、軽量なものに変える ◦ lodash ▪ lodash-esや⽣JSに変える(You-Dont-Need-Lodash-Underscore) ◦ zengin-code ▪ バックエンドに持っていくか、Webpackでチャンク分割して遅延ロード ◦ axios ▪ Fetch APIに変える 参考:https://developers.cyberagent.co.jp/blog/archives/40123/
  6. ブラウザのレンダリング遅延:2021, 2023年 • <script>が同期的 ◦ deferで並⾏にする • リソースの読み込み順のミス ◦ 読み込みの優先度を変える

    ▪ 計測が必要 ▪ prefetchやpreloadなどを適切に使う • APIのコール順やコールするタイミングのミス ◦ 依存関係のないAPIはPromise.allなどで並列に ◦ Intersection Observerで画⾯に⼊ったタイミングでAPIコール 参考:https://zenn.dev/monica/articles/7e060938f72073
  7. 応答が遅いAPI:2023, 2025年 • やることがISUCONっぽいが、WSHでも有効 • [2023] N+1問題 ◦ GraphQLでN+1が発⽣することがある ▪

    DataLoader などを使って対処する • [2025] スロークエリ ◦ インデックスを張る ◦ レスポンスサイズを削るためにlimitをつける 参考:https://zenn.dev/shun_shobon/articles/173450f5bec890
  8. UIに⼿を加える前に • まず現状と向き合う ◦ よっしゃ改善やるぞうぉぉ!!!と前のめりになりがち ◦ 推測より計測 • テストを正とする ◦

    テストが落ちなければ、挙動のデグレはないと⾒做せる ◦ 特にE2E(VRT)を整備する ▪ 年度によってはローカル実⾏向けのE2Eが組まれている状態で提供 ◦ ユニットテストで⼩さくはじめても◯
  9. UI関連の改善の例 • CSSの値をJSなどで計算する ◦ アニメーション ◦ 過去にJSでしか出来なかったUIの表現 • マルチメディアのサイズが⼤きい ◦

    画像 ◦ 動画 ◦ アイコン系 • フォントを無駄に読み込んでいる ◦ 使わない⽂字まで読み込んでいる ◦ CLSを引き起こすような使い⽅
  10. CSSの値をJSなどで計算する:2022, 2024年 • [2022] アニメーションにframer-motionなどを使っている ◦ アニメーションライブラリ⾃体が重いケース • [2022] 画像がCanvas

    ◦ JSでobject-fit的なことをしてCanvasに描画している • [2024] 画像がCanvas + シェーダー ◦ ThreejsとGLSLでobject-fit的なことをしてCanvasに描画している 2024年のやつは 私が作りました
  11. マルチメディアのサイズが⼤きい:2022年 • 画像はSquooshなどで、動画はFFmpegなどで圧縮する ◦ VRTが落ちない程度にサイズを減らす ◦ オンデマンドで圧縮はさける。事前に圧縮(WSHでよくある罠) • ファイルの形式を変える ◦

    画像はWebPやAVIFのようなサイズの⼩さい形式に変換 • アイコン系ライブラリの使い⽅を⾒直す、置き換える ◦ アイコンを全て読み込むような使い⽅になっているケースも ◦ 少なければ画像に1つずつ書き出してCDNなどに配置
  12. フォントを無駄に読み込んでいる:2020, 2022年 • フォントのサブセット化 ◦ フォントファイルは subset-font などでサブセット化 ◦ Google

    Fontsの場合は &text= で使⽤⽂字を指定してサブセット化 • その他サブセット化の参考 ◦ https://blog.jxck.io/entries/2016-03-14/web-font-noto-sans.html ◦ https://blog.jxck.io/entries/2019-10-13/font-feature-settings.html ◦ https://blog.jxck.io/entries/2020-09-07/font-subsetting-with-puppeteer.html
  13. おわりに • あくまで計測が優先 ◦ 計測が思うようにできないときにはじめて推測する • 計測がままならない場合、UI以外から着⼿ ◦ UI以外で⼿を加えれば確実に改善できる箇所を探す •

    UI関連に着⼿する前にテストを整備 ◦ 特にE2EとVRT • ここで取り上げた問題以外にも、WSHでは様々な出題が⾏われています ◦ みなさんも是⾮参加してみてください!