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PMF に到るまでのステージ別指針集 🧭

PMF に到るまでのステージ別指針集 🧭

スタートアップが PMF (Product/Market Fit) に到るまでの段階を細分化し、それぞれの段階で何をするべきなのかの指針をまとめています。チームでの認識合わせなどにお使いください。

著者について: https://takaumada.com/
東京大学 FoundX: https://foundx.jp/

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  1. 多くのスタートアップの通る道 Y Combinator には “The Process” と呼ばれる、どのスタート アップも経験するフェーズの図がある。 After the

    Techcrunch bump: Life in the “Trough of Sorrow” 2 新規性が 徐々に消える 悲しみの谷 改善の リリース 愚かさが クラッシュする 偽の希望が小 刻みに現れる 約束の地に! 流動性の 獲得 買い手の 登場 TechCrunch による イニシエーション
  2. PMF 前後の状況の違い PMF に至るまでは岩を押し上げ、至ってからは転がっていく岩 を追いかける、そんな感じが PMF の前後 https://openmoji.org/ (CC BY-SA

    4.0) 22 PMF PMF 後の状況 • 顧客の機能リクエス トや問い合わせに圧 倒される • 人を雇わなければ追 いつけないけれど人 を雇うスピードも追 いついていない • 週次 10% 成長達成 PMF 前の状況 • 必死に頑張るが手 ごたえがない • 偽の希望で右往左 往する • 週次 1% 成長
  3. 悲しみの谷を乗り越えて PMF に到るまでの道筋と段階 After the Techcrunch bump: Life in the

    “Trough of Sorrow” 26 この期間でどんな段階があるのか?
  4. 5. Product/Market Fit スケールできる製品を持って、本当にスケールするほどの市場 があるのかどうかを見つける。 34 Customer Customer Problem Fit

    Problem Solution Fit Solution Product Fit Product Market Fit 製品は 十分大きな市場に 受け入れられるのか?
  5. フィットの段階と資金調達 おおよそ SPF の中盤(製品が少しでき始めたころ)にシード資 金を調達し、PMF 前後にシリーズ A を調達する。 42 Customer

    Customer Problem Fit Problem Solution Fit Solution Product Fit Product Market Fit このあたりで シード資金調達 このあたりの どこかで シリーズ A 資金調達
  6. Customer/Problem Fit に到るまでにやること 49 達成目標 • 顧客ニーズの発見と検証 • 創業チームの組成準備 推奨される活動

    • 顧客インタビュー 50 件以上、顧客の 行動の写真撮影 500 枚以上 • 共同創業者候補との壁打ち、巻き込み • 受託やコンサルで課題探索など • 現場に 100 回行って顧客を知る、現 場で働く Customer/Problem Fit まで ステージ 自己資金 売上達成目安 0 従業員数目安 共同創業者のみ ビジネス上の 達成目標 • 顧客ニーズの発見と 検証 • 創業チームの組成 メトリクス (アウトカム) なし 製品開発 なし or MVP (LP 等) 推奨される 活動例 • 顧客インタビュー 50 件以上 • 共同創業者候補との 壁打ち&巻き込み • 受託開発で課題探索
  7. 58

  8. Problem/Solution Fit に到るまでにやること 66 達成目標 • 課題を解決できる解決策の検証 • 課題解決価値(お金を払ってくれる か)の検証

    推奨される活動 • MVP の作成 • インタビューとセールスの繰り返し Problem/Solution Fit まで ステージ 自己資金 (or エンジェ ル、プレシード) 売上達成目安 0 従業員数目安 共同創業者のみ ビジネス上の 達成目標 • 課題を解決できるか の検証(製品以外の 手段でも検証可) • 課題解決価値の検証 メトリクス (アウトカム) • 熱狂的な顧客を複数 人 製品開発 MVP (コンシェルジュ 型MVP 等) 推奨される 活動例 • MVP の継続的なリ リース • 顧客インタビューと セールスの繰り返し • 現場100回
  9. ロジックモデルの詳細 ロジックモデルのそれぞれの段階では以下のようなものが当て はまる。 73 インプット/ リソース インパクト アクティビ ティ アウトプッ

    ト/実装 アウトカム 開発された 製品や機能 製品によっ て顧客が得 る成果 (例: 時間削 減、省力化、 楽しみ) 社会的なイ ンパクト 製品開発の 作業 時間やお金、 人など
  10. 製品と同じアウトカムを手作業で提供する例 少し頭をひねれば、同じアウトカムを手作業で提供できる。 77 機械学習での推薦 自分たちで推薦してみる。 実践例) Magic レビューサイト レビューを集めてきて提供 する。

    実践例) Product Hunt マッチング 自分たちでマッチングして みる。あるいは自分たちが マッチングを受けた体で働 く。 実践例)Doordash、 HomeJoy、Lagg ロボット ロボットの代わりに人間が やってみる。 機械翻訳 コンピュータの代わりに人 間が翻訳する。 実践例)IBM
  11. Photo by Dave Thomas, released under the Attribution Creative Commons

    license. http://www.paulgraham.com/bio.html 80 「今すぐこれを欲しがるのは 誰だ?」 「誰も聞いたことのない二人 だけのスタートアップが作っ たクソみたいなバージョン 1 でさえ使うほどに、これを欲 しているのは誰だ?」 もし答えられないのなら、そ れはおそらく悪いアイデアだ。 Paul Graham “How to Get Startup Ideas” 参考 Masa Kakinoki さん訳『スタートアップのアイデア を得る方法』
  12. Solution/Product Fit に到るまでにやること 86 達成目標 • 製品開発可能性検証 • 製品体験全体の検証 •

    セールス方法の検証 推奨される活動 • コア機能を素早くローンチ • 顧客と話す(セールスする、サポート する) Solution/Product Fit まで ステージ シード資金調達前後 売上達成目安 0 ~ 2,000 万円(年) 従業員数目安 共同創業者のみ ビジネス上の 達成目標 • 製品開発可能性検証 • 製品体験全体の検証 • セールス方法の検証 メトリクス (アウトカム) • 売上 (LOI) や DAU • その他の先行指標 製品開発 少人数の顧客に愛され る Working Prototype 推奨される 活動例 • 素早くローンチ • 顧客と話す(セール ス、サポート)
  13. Product/Market Fit に到るまでにやること 94 達成目標 • 価格の検証 • 市場の規模の検証 •

    成長チャネルの検証 • ビジネスモデル検証 推奨される活動 • ローンチ(何度も) • チャーンの削減 • チャネルの実験と最適化 Product/Market Fit まで ステージ シリーズ A 前 売上達成目安 1 ~ 1.5 億円(年) 従業員数目安 できる限り少なく ビジネス上の 達成目標 • 価格の検証 • 市場の規模の検証 • 成長チャネルの検証 • ビジネスモデル検証 メトリクス (アウトカム) • LTV と CAC • 製品独自の KPI 製品開発 顧客に愛されて口コミ が起こる製品 推奨される 活動例 • ローンチ(何度も) • チャーンの削減 • チャネルの実験と最 適化
  14. こっち側 PMF 後は違うつらさが待っている PMF 後は山から転がる岩を必死に追いかける。 https://openmoji.org/ (CC BY-SA 4.0) 105

    PMF PMF 後の状況 • 顧客の機能リクエス トや問い合わせに圧 倒される • 人を雇わなければ追 いつけないけれど人 を雇うスピードも追 いついていない • 週次 10% 成長達成 PMF 前の状況 • 必死に頑張るが手 ごたえがない • 偽の希望で右往左 往する • 週次 1% 成長
  15. PMF 後の苦しさ 凄い勢いで成長していく事業と組織の成長痛を感じるフェーズ に。 Photo credit: seliaymiwell via Visualhunt /

    CC BY-NC 106 プロジェクト (ブートストラップ) プレシード (エンジェル) シード シリーズ A シリーズ B シリーズ C 後 US での資金調 達額の相場 $200k – 500k (数千万円) $500k-$2.5M $3M – 12M $10M – 25M $20M+ US での企業価 値の相場 $1M-3M $2M-6M $10M-40M $30M-100M $80M+ 投資家 エンジェル投 資家 エンジェルや シード投資家 VC VC VC や PE ファ ンド VC の想定リ ターン倍率 1,000 ~ 100 倍 100 ~ 10 倍 10 ~ 100 倍 数倍 数倍 ジャングル どこに行くべきか 分からない 獣道 方向はあっているか 分からない 高速道路 競合よりも早く走りながら コントロールを失わない 坂道 道はあるけれど 油断すると転げ落ちる PMF 後はこのあたり
  16. まとめ:スタートアップが通る道 111 Customer/Problem Fit まで Problem/Solution Fit まで Solution/Product Fit

    まで Product/Market Fit まで Product/ Market Fit 達成 ステージ 自己資金 自己資金 (or エンジェ ル、プレシード) シード資金調達前後 シリーズ A 前 PMF 達成時の現象 • 顧客からの要望で 手に負えない • サーバーが落ちる (Twitter のクジラ) • 採用しないと顧客 の要望に対応でき ないが、採用が追 い付かない • PMF後は山から転 がり落ちる岩を追 いかける感覚 • PMF してるかどう かは明らかに分か る(PMF をしてる か?という疑問を 持った時点で PMF してない) PMFの後にシリーズ A が理想 (PMF 後に事業 計画書を初めて作成) 売上達成目安 0 0 0 ~ 2,000 万円(年) 1 ~ 1.5 億円(年) 従業員数目安 共同創業者のみ 共同創業者のみ 共同創業者のみ できる限り少なく ビジネス上の 達成目標 • バーニングニーズの 発見と検証 • 創業チームの組成 • 課題を解決できるか の検証(製品以外の 手段でも検証可) • 課題解決価値の検証 • 製品開発可能性検証 • 製品体験全体の検証 • セールス方法の検証 • 価格の検証 • 市場の規模の検証 • 成長チャネルの検証 • ビジネスモデル検証 メトリクス (アウトカム) なし • 熱狂的な顧客を複数 人 • 売上 (LOI) や DAU • その他の先行指標 • LTV と CAC • 製品独自の KPI 製品開発 なし or MVP (LP 等) MVP (コンシェルジュ 型MVP 等) 少人数の顧客に愛され る Working Prototype 顧客に愛されて口コミ が起こる製品 推奨される 活動例 • 顧客インタビュー 50 件以上 • 共同創業者候補との 壁打ち&巻き込み • 受託開発で課題探索 • MVP の継続的なリ リース • 顧客インタビューと セールスの繰り返し • 現場100回 • 素早くローンチ • 顧客と話す(セール ス、サポート) • ローンチ(何度も) • チャーンの削減 • チャネルの実験と最 適化 つまり スケールしないことをしよう(可能な限り続けよう) 一部の最適化
  17. 顧客開発のジャーニー (Steve Blank) リーンスタートアップの前身となった顧客開発のプロセスは PMF 後ぐらいまでをカバーするモデル。 アントレプレナーの教科書[新装版] 113 顧客実証 Customer

    Validation (有償販売と拡張性の確認) 顧客発見 Customer Discovery (ニーズの確認) 組織構築 Company Building (本格販売) 顧客開拓 Customer Creation (市場参入、需要開拓) ピボット 自分という仮説が顧客の 課題を解決するかどうか を検証するフェーズ • 仮説の記述 • 仮説の検証と洗練 • 製品コンセプトの検 証と洗練 • 確認 顧客発見で検証されたア イデアで成長できるかを 検証するステージ • 販売の準備 • エバンジェリスト ユーザーへの販売 • 企業と製品のポジ ショニング 実証したビジネスモデル を実行して需要を開拓、 顧客を獲得する • 市場投入の準備 • 企業と製品のポジ ショニング • 製品の市場参入 • 需要開拓 ビジネスモデルを本格的 に展開していくために組 織化するステージ • メインストリーム顧 客基盤の構築 • 文化の課題 • 機能別部門への移行 • 即応性の向上 1 2 3 4
  18. MIT の Disciplined Entrepreneurship MVP ぐらいまでのビジネス寄りの考え方をステップで紹介して いる。ただし直線的なプロセスではないので注意。 ビジネス・クリエーション 115 1.

    市場を細分化する 2. 足がかり市場を決 める 3. エンドユーザーと は? 4. 足がかり市場の規 模は? 5. 潜在顧客をイメー ジする 6. 製品のフルライフ サイクルを知る 7. 製品仕様を視覚化 する 8. 製品価値を数量化 する 9. 見込み客10人を見 つけよう 10. 事業のコアを定義 する 11. 戦略的ポジショニ ングとは? 12. 意思決定者の調査 13. 顧客の獲得プロセ スは? 14. 次の市場規模を算 出する 15. ビジネスモデルを 設計する 16. 価格体系を決める 17. 足がかり市場の収 益をよむ 18. 顧客への販売プロ セスを見直す 19. 顧客獲得コストを 算出する 20. 新ビジネスの仮説 とは? 21. 主要な仮説を検証 する 22. 製品・サービスは 実用最小限に 23. 顧客が代金を払っ てくれるか再検証 24. 製品の成長戦略を 練る
  19. ユーザー数別のジャーニー それぞれのユーザー数でのおおよその指針。 116 ユーザー数/企業数 やるべきこと 0 -> 1 (超超難しい) とにかく最初のお金を払ってもらえる顧客を捕まえる。製品のコン

    セプトを決める段階。 1 -> 10 (超難しい) 最初期はスケールしないことをし続け、継続的なフィードバックを 与えてくれる Earlyvangelist を得る。初期段階からお金を払っても らい、Paid user からフィードバックをもらう。 10 -> 100 (難しい) スケールしないことをし続ける。まだ最適化は後回しのフェーズ。 製品を改良しつつ、紹介や継続率を上げるためにできることを行う。 100 -> 1,000 極力スケールしないことを続けつつ、自分たちのワークフローのボ トルネックになっている部分を自動化・最適化していく。 1,000 -> 10,000 マーケティングが必要になってくる時期。時間やお金のリソースが 限られているスタートアップならではのやり方が必要
  20. 更なる文献 • スタートアッププレイブック • スケールしないことをしよう • スケールしないことをしよう、PRの方法 • 東京工業大学 EDP

    Toolkit • PMF(プロダクトマーケットフィット)の大切さと実例、はか り方、見つけ方: 基礎編 • FoundX Review の PMF タグ 118
  21. FoundX とは 120 東京大学 FoundX は東京大学 産学協創推進本部の下部組 織です。東京大学 本郷キャンパスの近くに 3

    つの施設を構 え、起業志望者向けのプログラムを複数提供しています。 投資は行いませんが、無償での個室貸与やプログラムの提 供、起業家コミュニティへの参加を支援します。 興味 情熱 Fellows (6 か月) Pre-Founders (6 か月) Founders (9 か月) ‍‍ ‍ 共同創業者 の説得 有利な 資金調達 フル コミット ビジネス 実績 初契約 初売上 製品開発 と改善 助成金や コンテス ト 賞金の獲 得 Review, Resource, School ➰ 試行 錯誤 アイデア の種 検証された アイデア 起業家の 基礎知識 &スキル プロト タイプ 顧客イン タビュー
  22. FoundX の提供する起業家支援プログラム & リソース 主に東京大学の卒業生向けに、無償のスタートアップ支援プロ グラムや学習リソースを提供。 121 ‍‍ ‍ チーム向け

    Founders Program 事業と起業家の成長を、コ ミュニティを通して達成す るプログラム。個室を無償 で最大 9 か月間貸与。 Pre-Founders Program Founders Program に入る までの準備を行うプログラ ム。 個人向け Fellows Program スタートアップ的手法の実 践を通してアイデアを見つ け、育てるためのプログラ ム。 学習リソース FoundX Review 平日ほぼ毎日更新し、ス タートアップのノウハウ情 報を提供。カテゴリ別のま とめは FoundX Resource。 FoundX Online School 動画形式でスタートアップ の基礎を学べる。
  23. スライド著者 & FoundX 運営 馬田隆明 (東京大学 FoundX ディレクター) University of

    Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリス トとしてスタートアップ支援を行う。スタートアップ向けのスライド、 ブログなどの情報提供を行う。 サイト: https://takaumada.com/ 122 スタートアップの 方法論の基礎 Amazon (2017年3月) 起業環境の重要性と アクセラレーター の設計方法 Amazon (2019年4月) スタートアップの 公共や規制との 付き合い方 Amazon (2021年1月) スタートアップに ついてのスライド Slideshare SpeakerDeck