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待機電力を削減したネットワーク更新型電子ペーパーサイネージの開発と評価 / IOT64
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yumulab
March 12, 2024
Research
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待機電力を削減したネットワーク更新型電子ペーパーサイネージの開発と評価 / IOT64
2024年3月12日(火)〜14日(木)に開催された第64回情報処理学会インターネットと運用技術(IOT)研究会の発表資料
yumulab
March 12, 2024
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Transcript
待機電力を削減したネットワーク更新型 電子ペーパーサイネージの開発と評価 北海道情報大学 秋葉貴文 湯村翼 1
概要 • インターネット経由で画面更新を行う電子ペーパーサイネージでは通信待 機時に制御コンピュータが電力を消費してしまいもったいない • EPSのノーマリーオフ化を実現することにより解決する • 提案手法では、既存手法と比べ消費電力を約33%削減することができる 2
背景 デジタルサイネージ • デジタル技術を活用した看板 • 広告や情報をデジタル形式で表示する • 画像、動画など多様な形式に対応している 3 デジタルサイネージとは(デジタルサイネージの種類・活用シーン):デジタルサイネージ
| NEC https://jpn.nec.com/d_signage/industry/index.html DNP電子ペーパー Powered by E Ink https://www.dnp.co.jp/biz/solution /products/detail/1189608_1567.h tml 電子ペーパーサイネージ(EPS) • 電子ペーパー技術を使用したデジタルサイネージ の一種 • 低消費電力で静止画の表示が得意 • 電子ペーパーは画面更新時のみ電力を消費する Amazon | Kindle Paperwhite - 大きくなった6.8インチディスプレイ 防水 機能搭載 wifi 8GB 電子書籍リーダー https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08N41Y4Q2/ref=s9_b w_cg_compErea_md1_w?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=m erchandised-search- 3&pf_rd_r=ZRXHHV88VK5HR60923RF&pf_rd_t=101&pf_rd_p= 286eeb6f-5238-4d3a-8a0c- e886e9bae933&pf_rd_i=3933932051 電子ペーパー • 電子ペーパーは画面の更新時以外で電力不要
課題・目的 4 【ネットワーク更新型EPSの更新方式】 • インターネット経由でコンテンツの更新を行う • 電子ペーパーは画面の更新時以外で電力不要 • 電子ペーパー制御PCの常時通信待機が必要 【課題】
電子ペーパー制御PCが電力を消費してしまうのはもったいない! 【目的】 EPSの待機電力を最小限にするシステム構成を提案し、電力の消費を抑える コンテンツ更新 ネットワーク更新型EPS 電⼦ペーパー ディスプレイ ON ON 電⼦ペーパー 制御PC ON
関連研究 • IoTバスロケーションシステムにおける電子ペーパー型スマートバス停[6] • 電子ペーパーに最適にコンテンツ表示ができるスマートバス停の試作を行った • バスロケーションシステムと連携し到着予想時刻を表示 5 • ノーマリーオフ知的バス停実運用を想定した消費電力実装評価[7]
• 知的バス停:利用者がバスを呼ぶための通信機能を持っているバス停 • 知的バス停の省電力化はバス停を動作不要なときは電源をオフにする(ノーマリーオフ化)することで行う [6]鈴木 秀和, 保下 拓也, 松本 幸正「IoT バスロケーションシステムにおける電子ペーパー型スマートバス停の試作」『マルチメディア,分散協調とモバイルシンポ ジウム2019論文集』, 2019, 1465-1471, 2019-06-26 [7] 新田健人,長崎健,戸田真志,平田圭二,松原仁「ノーマリーオフ知的バス停実運用を想定した 消費電力実装評価」『情報処理学会研究報告』, EMB, 組込み システム 2015 (22), 1-5, 2015-02-27
提案手法(NNEPS) EPSをノーマリーオフ化することで消費電力を削減する 6 ノーマリーオフ・ネットワーク更新型電子ペーパーサイネージ (Normally-off Network Electronic Paper Signage :
NNEPS ) OFF ON 電子ペーパー 制御PC 電子ペーパー ディスプレイ コンテンツ更新 コンテンツ更新 電子ペーパー ディスプレイ ON ON ON OFF 提案手法(NNEPS) 既存の手法(ネットワーク更新型EPS) ノーマリーオフ 必要な時以外は電源をオフにするという考え方
設計 • 起動、コンテンツ更新についてサーバから制御を行う • コンテンツ更新時のみEPSを起動し、更新後はシャットダウンする 7 EPSのノーマリーオフ化 電子ペーパー制御PCの電源のon/offを制御する NNEPS コンテンツ
管理サーバ 更新コンテンツ NNEPS起動を指示 更新コンテンツの送信 起動完了を通知 コンテンツ 更新端末
NNEPSの構成 8 • 電子ペーパー • EPSのディスプレイ部分 • 10.3インチ電子ペーパーディスプレイを使用 • 電子ペーパー制御PC
• 電子ペーパーの書き換え処理を行う • Raspberry Pi 4 Model Bを使用 • 電源制御プラグ • メッセージに応じて給電のon/offを切り替える Raspberry Pi 4 Model B / 8GB ̶ スイッチサイエンス https://www.switch- science.com/products/6370 1872×1404, 10.3inch flexible E-Ink display HAT for Raspberry Pi, IT8951 controller, USB/SPI/I80 interface https://www.waveshare.com/10.3in ch-e-paper-hat-d.htm 電⼦ぺーパー制御PC 電⼦ペーパー 電源制御プラグ NNEPS SPI接続 電源ケーブル
実装 EPSのノーマリーオフ化 電源制御プラグにSwitchBotスマート プラグミニを使用 9 • 電源制御プラグについて2つパターンで実装を行った 複数台のEPSを制御する 電源制御プラグにリレーモジュールを用いる。 複数台のEPSを接続し管理する
Ver.A Ver.B
Ver.A:EPSのノーマリーオフ化 EPSの構成 10 EPSのノーマリーオフ化とは... 電子ペーパー制御PCの電源のON/OFFを制御すること NNEPS NNEPS起動を指⽰ 更新コンテンツの送信 起動完了を通知 コンテンツ更新端末
電⼦ペーパーディスプレイ • 画⾯の更新時のみ電⼒を消費する 電⼦ペーパー制御PC • 電⼦ペーパーの画⾯更新 処理を⾏う
Ver.A :使用機材 11 NNEPSの構築のため、以下の機材を用いた • 電子ペーパー • 10.3インチ電子ペーパーディスプレイ • Raspberry
PiとSPI接続 • 電子ペーパー制御PC • Raspberry Pi 4 Model B • 電子ペーパーに画像を表示する • 電源制御プラグ • SwitchBotスマートプラグミニ • 電子ペーパー制御PCの電源を制御する • Wi-Fi経由で電源のON/OFFを切り替えられる SwitchBot スマートプラグミニ(JP) https://www.switchbot.jp/products/switchbot-plug-mini Raspberry Pi 4 Model B / 8GB ̶ スイッチサイエンス https://www.switch-science.com/products/6370 1872×1404, 10.3inch flexible E-Ink display HAT for Raspberry Pi, IT8951 controller, USB/SPI/I80 interface https://www.waveshare.com/10.3inch-e-paper-hat-d.htm
Ver.A :ソフトウェア・プロトコル ソフトウェア、通信プロトコルは以下を用いた • MQTT • HTTPと比べヘッダーサイズが小さいため処理にかかる電力を削減できる • Pub/Sub方式であるため、コンテンツの配信に適している •
mosquitto • オープンソースとして公開されているMQTTブローカー • Pythonスクリプト • 電子ペーパー制御PC • 起動完了・更新完了通知の送信、コンテンツの受信、電子ペーパーの更新を行う • 電源管理PC • SwitchBotを操作し、電子ペーパー制御PCへの給電を管理する • コンテンツ更新端末 • コンテンツの送信を行う • SwitchBot API • プログラム上からSwitchBotスマートプラグミニを操作する • 無線LANで通信を行う 12
Ver.A :システム構成図 13 コンテンツ 更新端末 電⼦ぺーパー制御PC NNEPS電源管理PC 電⼦ペーパー 電源制御プラグ NNEPS
SPI接続 電源ケーブル 2. 電源制御プラグ操作 HTTP 1. 起動指⽰ 4. コンテンツ送信 3. 起動完了通知 5. 更新完了通知 5. 更新完了通知 HTTP 6. 電源制御プラグ操作
14
Ver.A:課題 • EPS1台に対して電源制御プラグ1台が必要になる • 電源制御プラグは、電子ペーパー制御PCより待機電力は低いも のの多少の電力消費がある 15 SwitchBotスマートプラグミニ 電⼦ペーパー制御PC
• EPS1台に対して電源制御プラグ1台が必要 • 待機電力の削減はできるが効果が薄い • 1台の電源制御PCで複数台のEPSを制御する • 電源制御プラグの代わりにリレーモジュールを操作する Ver.B:複数のEPSを制御する 16
電源制 御PC リレー モジュール 電⼦ペーパー 制御PC リレーモジュール 電気信号を受けて電気回路のオン/オフを切り替える部品 電⼦ペーパー ディスプレイ
Ver.B:使用機材 • M5Stack • リレーモジュールを操作する • Groveケーブルで接続 • M5Stack用リレーモジュール •
電気回路のオン/オフを切り替える 17 M5Stack Core2 ESP32 IoT Development Kit for AWS IoT Kit | m5stack-store https://shop.m5stack.com/products/m5stack-core2- esp32-iot-development-kit-for-aws-iot- edukit?_pos=1&_sid=2eeba0251&_ss=r 2-Channel SPST Relay Unit | m5stack-store https://shop.m5stack.com/products/2- channel-spst-relay-unit リレーモジュールを操作する • M5Stackが受信メッセージに応じてオンオフを切り替える • リレーモジュールがオンの状態ではLEDが点灯 • 無線LANで通信を行う
電⼦ぺーパー制御PC コンテンツ送信 18 電源制御 PC 電源ケーブル コンテンツ 管理サーバ リレーモジュール 電⼦ぺーパー制御PC
電⼦ペーパー SPI接続 起動指⽰ コンテンツ送信 起動完了通知 更新完了通知 起動完了通知 更新完了通知 更新完了通知 4. 更新完了通知 4. 更新完了通知 4. 更新完了通知 3. コンテンツ送信 3. コンテンツ送信 1. 起動指⽰ 2. 起動完了通知 2. 起動完了通知 Ver.B:システム構成 NNEPS 電⼦ペーパー SPI接続
コンテンツ管理ページ • Webアプリケーションから画面の更新操作を行う • 画面更新用の画像を管理する • 画像の追加・削除・閲覧、NNEPSコンテンツ更新ができる 19 使用技術 •
Flask • PythonのWebフレームワーク • シンプルな機能を実装するため採用した 画面の更新・コンテンツ管理を行うWebアプリケーションを実装した
20
評価実験1:既存手法と提案手法の比較 21 提案手法(NNEPS) • 電子ペーパー制御PCと電源制御 PCの消費電力を合計 • 画面の更新時のみ起動する 既存手法(ネットワーク更新型EPS) •
電子ペーパー制御PCが常時起動状態 • コンテンツを受信し画像を更新する OFF ON 電子ペーパー 制御PC 電子ペーパー ディスプレイ コンテンツ更新 コンテンツ更新 電子ペーパー ディスプレイ ON ON ON 電子ペーパー 制御PC OFF 既存手法(ネットワーク更新型EPS)と提案手法(NNEPS)の消費電力を計測する
評価実験1の環境 22 実験条件 • 動作時間:1時間 • 更新頻度:5分に1回 電力計測方法 • ワットチェッカーを使用
Bluetoothワットチェッカー RS- BTWATTCH2|ラトックシステム公式サイト https://www.ratocsystems.com/products/se nsor/watt/rsbtwattch2/ 比較した既存手法と提案手法 • 既存手法 • 1台 • 提案手法 • NNEPS Ver.2を使用 • リレーモジュールにEPSを1台接続した場合と2台接 続した場合の2パターン • 1台接続:NNEPS-1 • 2台接続:NNEPS-2 • NNEPSの消費電力は、電子ペーパー制御PCと 電源制御PCが消費する電力を合計した
評価実験1の結果 23 NNEPS-1は既存手法と比較して約33%の電力量を削減した
評価実験1の結果 24 実装の都合による課題 • NNEPS-2では、NNEPS-1の2倍以上の値となった • NNEPSで複数のEPSの制御を行う場合、画面更新を1台ずつ行うため画面更新処 理にかかる時間は接続台数に応じて延びる • NNEPS-1では平均85秒で更新が終わるがNNEPS-2では平均108秒かかる
• NNEPS-2は、両方の電子ペーパー制御PCの更新処理が完了した際に電源遮断が 行われるため2台の電子ペーパー制御PC起動時間が延びた分の消費電力が増加 画面更新時の消費電力
評価実験2:更新間隔の影響 実験条件 • 既存手法とNNEPSにおける更新間隔の変化に応じた消費電力量を算出する • 評価実験1での計測結果をもとに4パターンの更新間隔で消費電力量を算出 • 更新間隔:1時間、3時間、12時間、24時間 • NNEPSに接続したEPSの台数は1台
• システムの稼働時間は24時間 25 既存手法 提案手法 更新処理時消費電力 2.3(W) 2.85(W) 更新完了時間 17(秒) 85(秒) 通信待機時消費電力 1.75(W) 0.7(W)
評価実験2の結果 27 • NNEPSでは、既存手法と比べて消費電力を大きく削減することができた • EPSを複数台稼働する場合にはNNEPSが大きな電力削減効果を上げ ることが期待できる 画面更新間隔を変化させ た際の 48
時間あたりの消費電力量
実証実験 • 情報大図書館入り口に2週間設置し、アンケートを実施 • おすすめ図書を15分に1回切り替えて表示を行った 28 アンケート結果 図書館に来場した6名が回答 表示する情報は見やすいですか? 反射がなく認識しやすい
白黒で遠くからはあまり見えない 本の表紙が判断しにくい 液晶じゃないので反射しないところ。 NNEPS提供する情報は有用であると思うか? 自動切り替えができるため文庫の宣伝として効果がある 液晶ディスプレイよりも場所を取らず設置がしやすい ディスプレイで表示するよりも場所をとらない ディスプレイで表示するよりも場所をとらない
成果・今後の課題 • 本研究で達成できたこと • 既存手法と比べ提案手法は消費電力の削減が確認できた • 今後の課題 • リレーモジュールに接続できるEPSの台数を増やす •
管理できる台数を増やすことでさらに省電力なシステムとなる • 更新までにかかる時間の削減 29
まとめ • インターネット経由で画面更新を行う電子ペーパーサイネージでは通信待 機時に制御コンピュータが電力を消費してしまいもったいない • EPSのノーマリーオフ化を実現することにより解決する • 提案手法では、既存手法と比べ消費電力を約33%削減することができる 30 謝辞
• 一般社団法人 新雪の「北海道ITクリエータ発掘・育成事業(新雪プログラム)」に 支援をいただき開発を行いました。心より感謝を申し上げます。