本発表は、研究者が使用可能である統計的検定技法が、R.Q. (リサーチクエスション)を規定してしまう本末転倒の事態があることを指摘します。その原因に伝統的統計学の検定論(NHST:帰無仮説有意性検定)がありますが、この問題を解決する手掛かりに、ベイジアン推定を用いることができること、ただし、それは、必要条件でしかないこと、また、rstan のような MCMC を用いてベイジアン推定を行う際に、生成量を活用することで、帰無仮説の棄却による対立仮説の採択をもって研究仮説が証明されたとする短絡を回避することが可能になることを述べます。
こうしたことを、歴史的データ(Student の睡眠データ)を用いて、t- 検定と MCMC を用いたベイジアン推定を比較し例示しました。
この比較を踏まえると、立てられる R.Q の内容が調査仮説の検討の精緻さ
に関係していることが明らかとなり、ひいては、調査仮説の上位に位置する研究仮説の精緻さを支えるものであるということが明確になります。
こうした点を踏まえて、ベイズアプローチを使うポイントを考えていきたい。