Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
F*でプログラムの正しさを証明する
Search
Ushitora Anqou
August 08, 2021
Technology
1
1.1k
F*でプログラムの正しさを証明する
セキュリティ・キャンプ全国大会2021 オンラインで行われたLT用のスライド資料です
Ushitora Anqou
August 08, 2021
Tweet
Share
More Decks by Ushitora Anqou
See All by Ushitora Anqou
Oblivious Online Monitoring for Safety LTL Specification via Fully Homomorphic Encryption
anqou
1
900
「自作CPUでサイゼリヤ問題」を支える技術
anqou
2
340
ぼくのかんがえたさいきょうのマリオAI
anqou
1
560
10ステップで作るお手軽インタプリタ開発
anqou
3
1k
seccamp2018でセルフホストCコンパイラをつくった
anqou
8
5.5k
Other Decks in Technology
See All in Technology
Java で学ぶ 代数的データ型
ysknsid25
1
360
ソフトウェアは捨てやすく作ろう/Let's make software easy to discard
sanogemaru
10
5.8k
AIコードエディタは開発を変えるか?Cursorをチームに導入して1ヶ月経った本音
ota1022
1
700
S3 Tables を図解でやさしくおさらい~基本から QuickSight 連携まで/s3-tables-illustrated-basics-quicksight
emiki
1
330
Babylon.jsでゲームを作ってみよう
limes2018
0
100
データプレーンプログラミングとは? DPU&スイッチASICの開発経験から語る
ebiken
PRO
1
260
大規模PaaSにおける監視基盤の構築と効率化の道のり
lycorptech_jp
PRO
0
180
iOS/Androidで無限循環Carousel表現を考えてみる
fumiyasac0921
0
130
オープンソースのハードウェアのコンテストに参加している話
iotengineer22
0
610
GoogleのAI Agent
shukob
0
130
FastMCPでSQLをチェックしてくれるMCPサーバーを自作してCursorから動かしてみた
nayuts
1
210
AIエージェントデザインパターンの選び方
almondo_event
0
150
Featured
See All Featured
Git: the NoSQL Database
bkeepers
PRO
430
65k
Visualization
eitanlees
146
16k
Producing Creativity
orderedlist
PRO
346
40k
Helping Users Find Their Own Way: Creating Modern Search Experiences
danielanewman
29
2.6k
YesSQL, Process and Tooling at Scale
rocio
172
14k
Speed Design
sergeychernyshev
30
970
Measuring & Analyzing Core Web Vitals
bluesmoon
7
460
Learning to Love Humans: Emotional Interface Design
aarron
273
40k
We Have a Design System, Now What?
morganepeng
52
7.6k
Faster Mobile Websites
deanohume
307
31k
Building a Scalable Design System with Sketch
lauravandoore
462
33k
KATA
mclloyd
29
14k
Transcript
F⋆ でプログラムの正しさを証明する 艮 鮟鱇(@ushitora_anqou) 2021 年 8 月 9 日
1
あなたが書いたそのプログラム、正しいですか? テストはプログラムの正しさを保証しない • テストした値では正しいと言える(かも) • テストしていない値では? • 入力値は加算無限個ある プログラムが「数学的に」正しいことを示したい •
プログラムの正しさを「証明」する • どんな入力に対しても正しく動作することを保証する プログラムの証明を人力でチェックする⋯⋯? 2
形式証明 証明の正しさを機械的に検証する • 証明を特殊なプログラムとして記述し、コンパイラに入力 • (コンパイラが間違っていなければ)コンパイルが通ると証 明が正しいことが分かる • こういうコンパイラを「証明支援系」と呼ぶ 背後には
Curry-Howard 同型対応などの理論がある⋯⋯ • ⋯⋯が今回は省略 • 気になる人は「計算と論理」で検索して五十嵐先生のスライ ドとかをチェック 3
F⋆ 最近出てきた証明支援系 • Microsoft Research や INRIA が作っている(2016 年~) •
依存型・篩型・エフェクトなどの格好いい機能がある • 証明をある程度省略して書いてもいい感じに推論して検証 してくれる • プログラミング言語 OCaml に酷似した文法 今日の主役 4
F⋆ 使われています HACL*:F⋆ で検証された暗号ライブラリ • TLS の実装を F⋆ で検証することを目標にしている(Project Everest)
• Firefox(ブラウザ)や Wireguard(VPN)や Tezos(暗号通 貨)に組み込まれている Plebeia:暗号通貨 Tezos 用のストレージシステム • F⋆ で実装が正しいことを保証 • 現在絶賛開発中 5
本日のお題:フィボナッチ数列 前項と前々項の和でできる数列 an =
1 (n = 0, 1) an−1 + an−2 (n ≥ 2) an = 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, . . . (n = 0, 1, 2, . . . ) 定理 n = 2, 3, 4, . . . について an ≥ n 6
日本語での証明 n に関する数学的帰納法により証明する。すなわち 1. a2 ≥ 2 かつ a3 ≥
3 を示す。 • 定義より a2 = 2 ≥ 2 かつ a3 = 3 ≥ 3 なのでこれは成り立つ。 2. 任意に n = 4, 5, 6, . . . をとり、an−2 ≥ n − 2 かつ an−1 ≥ n − 1 を仮定して an ≥ n を示す。 an = an−1 + an−2 (定義より) ≥ (n − 1) + (n − 2) (帰納法の仮定より) = (n + 1) + (n − 4) ≥ n + 1 (n ≥ 4 より) 7
F⋆ で証明する:fibの定義 まずフィボナッチ数列を計算する関数 fib を定義 8
F⋆ で証明する:定理の宣言 続いて示したい定理を宣言 定理 n = 2, 3, 4, .
. . について an ≥ n 9
F⋆ で証明する:証明をプログラムとして定義 何を書けばよいか • F⋆ は証明のかなりの部分を自動化してくれる • しかし帰納法をどう行えばよいかはまるっきり分からない • より具体的には「帰納法の仮定をどう使うか」
• 人間がヒントとして帰納法の仮定の使い方を教える必要 • プログラム上では再帰関数呼び出しとして表現される 10
F⋆ で証明する:証明をプログラムとして定義 11
F⋆ で証明する:検証結果 fstar.exe に食わせると証明が正しいことを検証できる F⋆ コードを OCaml コードに変換(コード抽出)することで、検 証された fib
関数を実行することができる • 今回は省略 12
Let’s write F⋆! 13