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AI時代の開発組織デザイン

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October 23, 2025

 AI時代の開発組織デザイン

日本マイクロソフト株式会社、リンクドイン・ジャパン株式会社の共催のイベント「カルチャーが決めるAI開発組織の未来 ─ Microsoft × LinkedInと考える成長戦略」でフリー株式会社 VPoE竹田が登壇した際の資料です。

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October 23, 2025
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Transcript

  1. 2 ⽵⽥ 祥 / Yoshi Takeda web Engineer 2005~ 執⾏役員

    VPoE 2021~ freee株式会社 常務執⾏役員 VPoE Product Manager Engineering Manager freee 2018 ~ Now
  2. 3 VPoEとしての主な責務 
 
 ◦ freeeの開発組織作り全般の戦略立案、実行 
 ◦ Dev Branding含むエンジニア採用の総合的な責任

    
 ◦ 各地方拠点、グローバル拠点の立ち上げや運用 
 ◦ ※これら全てに対する AI前提のデザイン 

  3. 6 前提情報
 1. freeeの事業、プロダクトのご紹介 (さらっと)
 2. プロダクトリリースと組織拡大の歴史 
 本題 3.

    AI時代の開発組織デザイン - 変えるべきこと、変えないこと - 仕組みや体制など幅広く事例を共有
  4. 12

  5. 17 プロダクトリリースと開発組織拡⼤の歴史 プロダクト リリース (⼀部) freee 会計 freee ⼈事労務 freee

    会社設⽴ freee 開業 freee 申告 freee finance lab freee アプリ ストア freee プロジェ クト管理 freee カード freee販売 freee業務 委託管理 freee 福利厚生 エンジニアは 右肩上がりで増加 毎年複数の プロダクトをリリース
  6. 18 freeeの開発組織の特性 ‧新プロダクトを毎年リリース ‧ 開発組織の⼈数はスケールし続けている   - エンジニアの数は1⼈からスタートし、現在は500⼈over   (特に2021年からは年に100⼈overの増加)

      - AI時代においてもHC拡⼤を継続している ‧地⽅やグローバルの拠点、新規プロダクト⽴ち上げなど  新しい組織の⽴ち上げも頻繁に⾏っている   - 特定の局⾯においてはスタートアップ的な状態も多く存在   - ベンチャーマインドが⾮常に強い会社
  7. 22 変えるべきこと • これはもう⼭ほどある 🌋 • freeeにおいても 「社内のあらゆる創造活動‧組織活動の動⼒源を         AIファーストな形で再設計‧再実装している」 •

    2023年から本当にあらゆる業務や環境を再設計してきたので その取り組みのコアを紹介します。参考になれば幸いです。 (粒度様々なので、組織フェーズや状態に応じて参考にしてください)
  8. 27 具体的な効果の一例 
 コーディングエージェント利用率 
 100% / 2025/09末時点
 (※4月頃は45%くらいだった )


    
 社内AI基盤上に構築されたアプリ数 
 1913個 / 2025/09末時点
 (※非エンジニア職が非常に多く利用 )

  9. 28 1. まずは「量」を増やすことから始める ひたすらに全員がAIを使い試し、⼿に馴染ませ     「常に⾝近にAIがいる状態」を当たり前にする。 • 社内AI基盤の構築 ◦ 安全性の担保、利⽤状況の可視化 •

    AI推進チームの新設 ◦ AI利⽤を推進する専⾨チームの組成、エンジニア経営メンバーと協業 • CTO直下のAI予算確保 ◦ ダイナミックな予算執⾏、⼗分なボリューム freeeでの具体的な施策例 

  10. 29 社内AI基盤の構築(※AIモデル呼び出しのプロキシ) freeeでの具体的な施策例 
 Raw Output
 Raw Input
 Safe Input


    Safe Output
 Proxy
 PC
 Model
 Provider
 • 安全性の担保 
 ◦ 社内LLM基盤を通して、モデルプロバイダ と接続するプロキシサーバを構築
 ◦ プロキシでは入力のマスキングと出力の ガードレールを構築
 ◦ 実行コマンドを解析し、危険なパターンを チェック。さらにLLMでリスクレベルを判定。 MCPも同様にチェック
 
 • 利用状況の可視化 
 ◦ 開発者ごと、ツールごとのtoken数やリクエ スト数を計測し、詳細な利用状況やコスト内 訳を独自に集計

  11. 30 社内AI基盤の構築(※全社員向け、ノーコードで使えるLLMアプリ構築基盤) • 安全性の担保、利用状況の可視化 
 ◦ こちらも前述のプロキシを通して 実行されるため同様
 
 •

    利用ハードルの低減 
 ◦ 社内アカウントを持っている人な ら誰でもRAGやワークフローを 使った LLMアプリを作成・活用で きる
 ◦ R&D関連ファンクションメンバー 以外も積極的に活用
 freeeでの具体的な施策例 

  12. 31 AI推進チームの新設、ボトムアップ/トップダウン両輪での推進の軸に。 • ボトムアップでの推進 
 ◦ 入社時の環境設定手順に組み込み 
 ◦ 社内Slack,

    社内ブログによるプラクティスの 共有。AI活用社内勉強会の実施
 ◦ 熟練者とのモブプロやライブコーディング
 
 • トップダウンでの推進 
 ◦ エンジニア経営メンバーと協業
 ◦ AI合宿、強制AIデーなど、開発組織全体を巻 き込んだムーブメントを起こす
 freeeでの具体的な施策例 

  13. 32 CTO直下のAI予算確保 • ダイナミックな予算執行 
 ◦ CTO決済で面倒な承認フローをショートカットで きる(※ガバナンスは担保)
 ◦ お金が必要な場面に最速で対応


    
 • 十分なボリューム 
 ◦ 意思決定時点では投資的な意味合いも強かっ たが、強い意志でしっかりとしたボリュームを確 保
 freeeでの具体的な施策例 

  14. 33 具体的な効果の一例 
 コーディングエージェント利用率 
 100% / 2025/09末時点
 (※4月頃は45%くらいだった )


    
 社内AI基盤上に構築されたアプリ数 
 1913個 / 2025/09末時点
 (※非エンジニア職が非常に多く利用 )

  15. 36 AI特区、AI駆動開発チームの新設 変化の早い AIツール特有の課題へのソリューション 
 • AIの急速な技術進歩に対応しながら、前例の少ないセキュリティリスクの適切な管理が必要
 • 企業、プロダクトとしての安全性確保と技術革新の両立が必須
 AI特区


    
 • 特区認定されたチーム/メンバーに限定し て、最新のAIツールの使用を許可
 • 各種意思決定フローにおいて優先的な対 応
 • 早いサイクルでの検証と評価を実施
 AI駆動開発チーム 
 
 • AIツールに関わるリスクや課題に対処する専門 チーム
 • 社内向けのガイドラインや開発者向けのLLM基盤 機能の開発
 • 迅速な組織への導入とインパクトの最大化
 freeeでの具体的な施策例 

  16. 37 AI特区、AI駆動
 チームでの 
 AIツールの評価 
 ガイドライン 
 策定と基盤構築 


    専門チームによる 
 全社展開&運用
 安全な環境、限られたメン バーによるスピーディーな 検証サイクル 
 特区で得られた知見を形式 知&基盤化。全社展開のた めのセキュリティ対策 
 AI推進チームによるスピー ディーな展開と 
 継続的な評価 
 freeeでのAIツール検証フロー 
 
 freeeでの具体的な施策例 

  17. 38 AI Agent基盤の構築(※こちらはまだ公開情報少なめ) • プロダクションレベルの AI Agentを最速で構築 するためのフレームワーク 
 


    ◦ セキュリティ 
 ◦ 適切なロギング 
 ◦ 可用性
 ◦ コストコントロール 
 ◦ 認証、認可 
 ◦ デザインシステム 
 ◦ etc…
 AIエージェント 
 「 freee AI(β) 」
 freeeでの具体的な施策例 

  18. 45 3. AI活⽤を組織カルチャー組織設計に根付かせる 「AIを活⽤している⼈が称賛される」という価値観を作る 既存社員、これから⼊ってくる⽅、全てのメンバーに適⽤する • AIマニア認定制度 ◦ AIをより使いこなしている⼈を可視化。称賛し、事例化する •

    AI情報の積極的な発信、採⽤基準への組み込み ◦ 今回のように内部情報を積極的に公開 ◦ この中⾝を⾒て「⼊りたい」と思う⼈を引き寄せる freeeでの具体的な施策例 

  19. 46 AIマニア認定制度 freeeでの具体的な施策例 
 • bynameでAI利用量とそこからのアクティビ ティを計測。一定の期間、一定の水準を超える と「AIマニア」と認定 
 ◦

    AIマニアになると、一部AIツールの利用選択 肢が広がるなどいくつかの特典あり
 ◦ slackのバッチなどももらえる
 ◦ 全員がいつでも状況を見れる
 
 • みんなでAIマニア目指そうぜという世界観 
 ◦ 全社OKRに載せるレベルで、AIマニアになる ことを全社的に促進
 ◦ チーム内でのノウハウ共有などが加速度的に ブーストされていっている

  20. 47 AI情報の積極的な発信、採⽤基準への組み込み • AI Dev Branding責任者をアサイン 
 ◦ freeeの利用実態を含め、どういった形で誰に 向けて発信するか、そのメッセージング戦略を

    常にアップデートしながら発信
 
 • これから入ってくる方に関しても妥協なし 
 ◦ 採用EVにおいて、AIの活用度を評価項目の 一つに追加
 ◦ AI活用度を確認するための質問やディスカッ ションテーマをエンジニア組織内で日々共有
 https://speakerdeck.com/freee/12geng-xin-freeenoainiguan-suruqu-rizu-mi freeeでの具体的な施策例 

  21. 51 変えないこと • freeeにおいては「スモールビジネスを、世界の主役に。」すること ◦ これは⾔い換えると「顧客価値の追求」ですね ➢ そのためにAIをフル活⽤していく • 「AIをなんのために使うのか」

    ◦ この⼿段に溺れ、呑まれないようにすることが⾮常に重要 ◦ その先にあるものがブレると組織はついてこない ◦ 元々⽬指していたものをブーストしたり、さらなる⾼みを⽬指すため にAIを使いこなすべきという考え⽅の柱が⾮常に重要
  22. 54 • (⾝も蓋もないが) 変化の過渡期にある現状では、AIを使いこなせる達⼈のようなエン ジニアを⾒極めることはまだ難しい&再現性⾼く採⽤するのはかなり難しい ◦ 既に実績がある⼈がいたら最⾼だが、正直かなり少ない ▪ 現時点ではそこまで差が⾒いだせないことも多い ◦

    もちろんAIを普段どう使っているかなどの質問はガンガン投げるが、総合して再現 性の⾼い⾒極めはまだ難しいというリアル ◦ この事実を受け⼊れた設計をすることは⾮常に⼤事 その上での採⽤⽅針やプラクティス (freeeがAI時代に年間で何百⼈と採⽤⾯接を⾏ってきた結果)
  23. 55 • プリミティブな能⼒、スタンスを⾒極めたほうが上⼿くいく場⾯が⾮常に増えている。 ▪ freeeだと「ユーザへの興味関⼼の⾼さ」「変化への適応⼒」などを必須とする ▪ その組織が⽬指す価値創出のために何でもやれる⼈ ▪ 技術的に超優れている⼈が来ても、その素養がないと絶対に採⽤しない •

    そのためには、ひたすら採⽤リードを増やしまくることが超重要 ▪ これまでよりも採⽤難易度は上がっているので会う数が⾮常に⼤事 ▪ LinkedIn等の採⽤媒体は本当にめちゃくちゃに活⽤している • マッチする⼈材をしっかりとダイレクトに⾒極めていくことは⼤事 • エンジニア⾃⾝が採⽤したいと思える⼈をピックアップしていく その上での採⽤⽅針やプラクティス (freeeが年間でAI時代に何百⼈と採⽤⾯接を⾏ってきた結果)