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共創のための地域基盤としての非公式組織の形成 / Informal community as ...
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Fumiya Akasaka
March 07, 2024
Design
2
500
共創のための地域基盤としての非公式組織の形成 / Informal community as an infrastructure for co-creation
サービス学会第12回国内大会にて発表(2024年3月6日)
Fumiya Akasaka
March 07, 2024
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Transcript
ソーシャルイノベーションのためのリビングラボ: 共創のための地域基盤としての非公式組織の形成 赤坂 文弥1, 坂倉 杏介2, 三木 裕子2, 藤井 靖史3
1 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 2 東京都市大学 都市生活学部 3 西会津町 CDO (Chief Digital Officer)
はじめに:ソーシャルイノベーションのためのLiving Lab • リビングラボ(LL) • ソーシャルイノベーションや社会課題解決を目的とした、産官学民の共創の場・プロセス (Kåreborn & Stahlbrost 2009)
• イノベーションアプローチとしての最も特徴的な点は、市民が「イノベーションの中心」にいること (ENoLL n.d.) © 2024 AIST 1 Steen, K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33.
プロジェクト型LLとプラットフォーム型LL • LLには、プロジェクト型とプラットフォーム型がある • 特定の社会課題を解決することをめざす「プロジェクト」としての市民共創=プロジェクトとしてのLL(PJ-LL) • 様々な社会課題解決の取り組みが連続的に行われる市民共創の場=プラットフォームとしてのLL(PF-LL) © 2024 AIST
2
市民とデザインの関係性に関する既存研究 共創の表舞台(フロントステージ)における市民参加 共創における市民の役割 (Nyström et al. 2014)、参加型ワークショップなどの参加手法 (Brandt & Messeter
2004) © 2024 AIST 3 共創の裏舞台(バックステージ)における市民との関係性構築 コミュニティとの関係性構築 (Le Dantec & Fox 2015)、市民のリクルーティング(Ogonowski 2013)やモチベーション維持 (Habibipour et al. 2018) 地域 外部 研究者/ デザイナ 市民 コミュニティ A B C 多様性 柔軟性 主体性 ある特定のテーマのプロジェクトにおける 既存コミュニティとの関係性を議論 多様なテーマの探索的&長期的な プロジェクトの基盤としてコミュニティ形成 既存研究 = PJ-LLの文脈 本研究 = PF-LLの文脈
本研究の目的 • Research Question • プラットフォーム型のLLにおける共創の基盤(インフラ)としての市民コミュニティは、どういったものであるべきか? • また、共創の基盤としての市民コミュニティは、どのように形成したらいいか? • Case
Study • 国内の2つのPF-LLの事例を調査 • 事例選定:多様なプロジェクトが連続的に起こっている2事例 • 調査方法:半構造化インタビュー、資料分析 • インフラとしての市民コミュニティの実態やその形成アプローチを分析 • 市民コミュニティ形成のためのインプリケーションを考察 © 2024 AIST 4
プラットフォーム型のLL(国内事例) © 2024 AIST 5 おやまちLL 会津の暮らし研究室 みんなのまちづくりスタジオ 東京都世田谷区 ウェルビーイングな地域をつくることを目的
としたリビングラボ。社会的包摂性向上、 商店街活性化、ウェルビーイング教育な ど、様々なテーマのプロジェクトが行われ ている。 福島県会津若松市 会津若松市を中心とした会津地域にお いて、地域企業や大手企業を巻き込み ながら、よりよい地域社会を実現するた めのテクノロジーやサービスを共創する活 動を行っている。 千葉県柏市 柏の葉スマートシティにおいて、生活者目 線で、新しいサービスやプロジェクトを生 み出すためのプラットフォーム。コミュニティ 活性化、子育て支援、高齢者支援、 環境など様々なプロジェクトを実施。 ※上記3つ以外にも、みんなの使いやすさラボ(茨城県つくば市)、鎌倉リビングラボ(神奈川県鎌倉市)などもある。 https://sakakuralab.com/191030oyamachi/ https://note.com/aizunokurashi/n/n8455f586afd9 https://www.udck.jp/projects/minsta
市民共創のあり方:ノットワーキングと非公式コミュニティ © 2024 AIST 6 ノットワーキング(Engeström et al. 1999) 状況や目的に応じて、自然発生的に生まれたり消えたりす
るような、人や組織の間の「一時的な」つながり(協働や 連携の関係)。 特定の目的をもった静的な連携関係を意味するネットワー ク(Network)とは対照的な概念。 非公式組織(Barnard 1968) 個人的な接触や相互作用の総体のことであり、共通の目 的や構造・制度を持たない組織。社員間の個人的なつな がり、非公式のカジュアルな勉強会など。 地域の文脈で言えば、「多様な人や組織が主体的に参加 し弱く結びつく、非公式なコミュニティ」が相当する。 継続的で長期的な市民共創のためには、その基盤(インフラ)としての非公式コミュニティが必要!
非公式コミュニティの形成とプロジェクトの実施(事例①:おやまちLL) © 2024 AIST 7 非公式 コミュニティ の形成 アプローチ 共創
プロジェクト の実施 子供向けウェルビーイング・ リテラシー教育プログラム開発 暮らしに関する悩 みを相談できる場 地域全体での 子育て支援環境の構築 市民主導プロジェクト ラボと地域が共存し、偶発的な出 会いやコミュニケーションが日常的に 生まれる「セミオープン」なスペース (場)の運営と活用 ホコ天での子供たちが遊べるイベン ト(けん玉、習字等)や、ワイン店 での立ち飲みイベントなど、地域の 様々な人たちの気軽な会話や交 流が生まれる機会の創出 商店街のメイン通りや図書館のエ ントランスなどの「パブリックスペー ス」で、研究室のゼミや大学の授 業を実施 はたらくウェルビーイング ゲームの開発 民間企業共同研究 大型国プロ 大型国プロ
非公式コミュニティがあることで起きる「漂流」プロセス(事例①:おやまちLL) © 2024 AIST 8 非公式コミュニティ プロジェクト (ウェルビーイング・ リテラシー教育) 地域の中学
生との協働 地域デザイナとの コミュニティづくりPJ 中学校の先生 との連携関係 子ども向け プログラムへの 軌道変更 カードゲーム 方式の提案 道徳の授業 としての展開 地域の多様な人や組織が弱くつながる非公式コミュニティがあることで、地域の人や組織との偶発的な出会い やコラボレーション(即興的な協働関係)が生まれ、想定以上のプロセスや成果が生まれる https://sakakuralab.com/230525shb/
非公式コミュニティの形成とプロジェクトの実施(事例②:会津の暮らし) © 2024 AIST 9 非公式 コミュニティ の形成 アプローチ 共創
プロジェクト の実施 古民家をリノベーションした共創ス ペースを拠点に、地域内外の企業 や住民が参加する各種イベントを 実施 様々なテーマで住民同士がカジュア ルな対話を行う「オープンカフェ」を 定期的に開催。各回には、地域の 実践者や有識者がゲストスピーカー として参加する。 地域の市民や大学生、地域企業、 地域外の企業、行政職員など、 多様な人が“対話する場”をつくる。 デジタル地域通貨 の社会実装 電気自動車を利用した 町民参加型の暮らしづくり 新しい調理器具 をつくる マーケティングできる 地域づくりと活性化 民間企業共同研究 民間企業共同研究 自治体連携 大学連携 https://www.town.bandai.fukushima.jp/soshiki/seis aku/opencafebandai_2.html
「構造」は後から生まれる(事例②:会津の暮らし) © 2024 AIST 10 構造(技術や仕組み)から考えるのではなく、プロジェクトに関わる人の“温度差”や“対流” の結果 として、新たな“構造” が生まれる =
お味噌汁理論(藤井 2022)
考察:非公式コミュニティの価値とコスト • 非公式コミュニティ = 地域での共創プロジェクト実践の基盤(インフラ) • 特定の共通目的やルールを持たない ⇒ 柔軟な連携が可能 •
自身の内発的な興味関心にもとづく参加者が多い ⇒ 主体的な参加が期待できる • 地域内の多様な人や組織の弱いつながり ⇒ 多様な参加や偶発的なコラボレーションが生まれやすくなる • 曖昧で見過ごされやすい存在 ⇒ どのような非公式コミュニティがあるかを注意深く観察する必要がある • 非公式コミュニティ形成のコスト • 様々な共創の基盤として、日常的な活動を通じて構築することが重要 ⇒ 多くの時間と人的コストがかかる • コミュニティ形成の費用対効果を算出することは難しい ⇒ 営利企業の事業の一環としての実施には限界がある • 地域コミュニティ形成自体を主目的とした活動ができる地域組織(非営利組織、中立的な研究機関、中間支援組織 など)との連携が効果的 • 非公式コミュニティ自体が、共創のための魅力的な地域資源となる ⇒ どのように定量化をするか?はひとつの課題 © 2024 AIST 11
考察:非公式コミュニティ形成のアプローチ • 地域とのつながりの中で新たな関係性をつくる • 地域の「インストールドベース(Karasti 2014)」としての既存コミュニティとの関係性は必要 • 既存コミュニティとの“部分的な”接合と新たな市民の参加を誘発する取り組みを同時に進める • 多様な動きを継続的に起こす
• 多様なイベント(子供向け、テーマ別、飲食など)を継続的に行い、市民にとっての多様な入り口を用意する • パブリックスペースを活用することで、非公式コミュニティへの認知や関与のきっかけを広く提供する • ただし、開催側が過度な負担を感じない範囲でやることも、持続性のためには重要 • 目的意識をつくらない • 明確なビジョン(Irwin 2015)やパーパス(名和 2021)は、参加する市民や組織の多様性を限定することにつながる • 特に、利他的(向社会的)なビジョンは,地域貢献意識の高い一部の市民しか参加しない状況を誘発する • 市民が直感的に「楽しそう」と感じるような入り口を提供することが、新たなつながりの形成に有効 © 2024 AIST 12
まとめ • 本研究では、PF-LLにおける共創の基盤(インフラ)としての市民コ ミュニティのあり方とその形成のアプローチを分析した • 2つの国内事例(おやまちLL/会津の暮らし研究室)を調査 • 継続的で長期的な市民共創のためには、その基盤としての「非公式 コミュニティ」と、そこから生まれる一時的で強固な連携関係である 「ノットワーキング」が重要であることを明らかにした
• また、非公式コミュニティ形成のためのインプリケーションを示した • 今後の課題は以下の通り • 非公式コミュニティの構造の見える化(定量化) • 非公式コミュニティの形成事例の更なる分析と理論化 • トップダウンアプローチとの接続 © 2024 AIST 13
Thank you !! fumiya.akasaka [at] aist.go.jp https://www.fumiyaakasaka.com/ https://www.facebook.com/fumiya.akasaka Do not
hesitate to contact me at: 14 © 2024 AIST 本研究は、公益財団法人トヨタ財団の研究助成のもと、実施しました。