Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

スクリーニング評価の注意点

funain
December 28, 2022

 スクリーニング評価の注意点

スクリーニングを評価する際に考慮しないといけないバイアスについて紹介します。

funain

December 28, 2022
Tweet

More Decks by funain

Other Decks in Education

Transcript

  1. 正常 前臨床期 臨床期 1次予防 疾患の原因の 除去あるいは 予防接種 2次予防 スクリーニング, 検出および

    早期治療 3次予防 死亡や合併症予防 のための治療 疾患なし 生物学的な 疾患の始まり 最初の 症状の出現 診断 治療 6
  2. 正常 前臨床期 臨床期 疾患なし 生物学的な 疾患の始まり 最初の 症状の出現 診断 治療

    スクリーニング検査で疾患 の検出が可能となる時点 検出可能な前臨床期 : DPCP(Detectable PreClinical Phase) 7
  3. 正常 前臨床期 臨床期 疾患なし 生物学的な 疾患の始まり 最初の 症状の出現 診断 治療

    スクリーニング検査の実際の早期診断 リードタイム(lead time) 8
  4. スクリーニング評価関連のバイアス ① 選択バイアス (selection bias) ② レングスバイアス (length bias) ③

    新規/既存バイアス (incidence-prevalence bias) ④ リードタイムバイアス (lead time bias) ⑤ 過剰診断バイアス (overdiagnosis bias) 10
  5. ③ 新規/既存バイアス • スクリーニングを 2 回実施したとする • 最初に発見された患者(既存患者)と, その回では異常が なかったが

    2 回目で発見された患者(新規患者)の比較 ⇒ 新規患者より既存患者の方が平均生存期間が長くなる (既存患者に長期生存者の割合が高くなるため) ⇒ スクリーニングの導入で予後が悪化したように見える ⇒ 新規患者と既存患者で比較してはいけない 14
  6. ④ リードタイムバイアス スクリーニングによる診断と治療 診断と治療 死亡 死亡 生物学的な 疾患の始まり 生物学的な 疾患の始まり

    リードタイムバイアス : 3 年 スクリー ニング群 2010 2010 2012 2022 2022 2015 コントロ ール群 16
  7. • 過剰診断は, 治療しなくても症状を起こしたり, 死亡の原因に なったりしない病気を診断すること (過剰診断の定義が異なることもあって, 検査関係者の意気込み等で誤診断(偽陽性)が 増えることという意味の場合もあるが, これは古い定義か分野の違いか?⇒最後に補足) Ex.

    • 70歳以上の男性の65~100%に前立腺がんが存在する • ただし, その多くは非浸潤性のもので死因にならない ⇒症状が出てから診断された患者の方が, スクリーニングで 診断された前立腺がんの患者の方より, 悪性の割合が高くなり, そのまま比較するとバイアスが生じる ⑤ 過剰診断バイアス 18
  8. [再掲]スクリーニング評価関連のバイアス ① 選択バイアス (selection bias) ② レングスバイアス (length bias) ③

    新規/既存バイアス (incidence-prevalence bias) ④ リードタイムバイアス (lead time bias) ⑤ 過剰診断バイアス (overdiagnosis bias) 20
  9. • Gordis(著), 木原ら(翻訳),『疫学 -医学的研究と実践のサイエンス』第18章 • Szklo and Nieto(著),『アドバンスト分析疫学 369の図表で読み解く疫学的推論の論理と数理 』の第4章

    • 名取宏, NATROMのブログ『「過剰診断」の定義の違いを認識しよう』 • https://natrom.hatenablog.com/entry/2022/03/30/110000 • 坂本,『過剰診断(overdiagnosis)の定義と過剰手術(oversurgery)/過剰治療(overtreatment)の用 法:病理医と疫学者の見解の差異』 • https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/38/4/38_265/_pdf/-char/ja • 祖父江友孝,『検診の効果とバイアス』 • http://www.haigan.gr.jp/journal/full/043071013.pdf 参考文献 21
  10. • Gordisの方のテキストでは誤診断の方の定義になっていて, Szklo and Nietoでは死因になら ない方の定義になっている. • 名取宏, NATROMのブログ『「過剰診断」の定義の違いを認識しよう』では,坂本『過剰 診断(overdiagnosis)の定義と過剰手術(oversurgery)/過剰治療(overtreatment)の用

    法:病理医と疫学者の見解の差異』を引用して, 疫学と病理の違いとしている. • 祖父江友孝『検診の効果とバイアス』では定義が変わってきているとしている. [補足] 過剰診断の定義の違い 22