Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
バージョン管理とは / GitHub VCS
Search
kaityo256
PRO
October 01, 2021
Education
4
5k
バージョン管理とは / GitHub VCS
物理情報工学ソフトウェア開発演習
kaityo256
PRO
October 01, 2021
Tweet
Share
More Decks by kaityo256
See All by kaityo256
デバッグの話 / Debugging for Beginners
kaityo256
PRO
9
930
ビット演算の話 / Let's play with bit operations
kaityo256
PRO
4
240
GNU Makeの使い方 / How to use GNU Make
kaityo256
PRO
15
4.9k
制限ボルツマンマシンの話 / Introduction of RBM
kaityo256
PRO
3
830
論文の読み方 / How to survey
kaityo256
PRO
220
160k
リンゴゲームと貧富の差 / Origin of the disparity of wealth
kaityo256
PRO
14
14k
渡辺研Slackの使い方 / Slack Local Rule
kaityo256
PRO
9
8.5k
時間の矢について / Time's arrow
kaityo256
PRO
12
17k
t-SNEをざっくりと理解 / Overview of t-SNE
kaityo256
PRO
2
1.3k
Other Decks in Education
See All in Education
AWS All Certが伝える 新AWS認定試験取得のコツ (Machine Learning Engineer - Associate)
nnydtmg
1
590
Epithelium Flashcards
ndevaul
0
1k
Qualtricsで相互作用実験する「SMARTRIQS」入門編
kscscr
0
320
学習指導要領から職場の学びを考えてみる / Thinking about workplace learning from learning guidelines
aki_moon
1
710
construindo uma carreira com opensource
caarlos0
0
240
Library Prefects 2024-2025
cbtlibrary
0
110
Comment aborder et contribuer sereinement à un projet open source ? (Masterclass Université Toulouse III)
pylapp
0
3.2k
開発終了後こそ成長のチャンス!プロダクト運用を見送った先のアクションプラン
ohmori_yusuke
2
170
HP用_松尾研紹介資料.pdf
matsuolab
0
180
謙虚なアジャイルコーチ__アダプティブ_ムーブ_による伴走支援.pdf
antmiyabin
0
270
Adobe Analytics入門講座【株式会社ニジボックス】
nbkouhou
0
20k
Zoom-ohjeet
matleenalaakso
7
7.2k
Featured
See All Featured
Practical Orchestrator
shlominoach
186
10k
A better future with KSS
kneath
238
17k
Principles of Awesome APIs and How to Build Them.
keavy
126
17k
Writing Fast Ruby
sferik
627
61k
Embracing the Ebb and Flow
colly
84
4.5k
How STYLIGHT went responsive
nonsquared
95
5.2k
Six Lessons from altMBA
skipperchong
27
3.5k
Sharpening the Axe: The Primacy of Toolmaking
bcantrill
38
1.8k
GitHub's CSS Performance
jonrohan
1030
460k
Why Our Code Smells
bkeepers
PRO
334
57k
4 Signs Your Business is Dying
shpigford
180
21k
Rails Girls Zürich Keynote
gr2m
94
13k
Transcript
1 22 バージョン管理とは 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 渡辺 物理情報工学ソフトウェア開発演習
2 22 実行 開発 デバッグ 多くの知的生産活動は、修正を繰り返す 執筆 添削 プログラム開発 論文執筆
3 22 ありがちな事例1: 先生から添削済みの論文受け取ったとき、家で 修正した最新版ではなく、大学のPCに入ってい た古い版を渡していたことに気づく ありがちな事例2: 開発したコードをスパコンで実行しようとしたら動かず、 苦労して動くように修正。その後、スパコンで実行中に 新機能を開発、それをスパコンにアップロードした時に
動くように修正したコードを上書きしてしまう。
4 22 仕様書_佐藤修正_吉本追記.docx 仕様書_最終版_田中修正v2.docx どっちが最新? バージョン管理システム (Version Control System, VCS)
5 22 • ファイルの編集履歴を管理するためのシステム • 編集履歴をすべて保存する「リポジトリ」というデータベースを持つ • ユーザはリポジトリにアクセスしながら開発を行う バージョン管理システムとは? 何ができるようになるの?
• 任意の時点に状態を戻すことができる • 任意の時点間の差分を確認できる • 誰が、いつ、どこを修正したか確認できる 超優秀な秘書のようなもの
6 22 ローカル型 クライアント・サーバ型 分散型 SCCS, RCS等 CVS, Subversion等 Mercurial,
Git等 歴史的に大きく分けると、以下の三種類
7 22 第一期:ローカル型 • (おそらく)世界初のVCS • IBM System/370向けに開発、後にPDP-11へ移植 • 複数のバージョンを一つのファイルに保存
1992年 Source Code Control System (SCCS) 1982年 Revision Control System (RCS) • バージョン管理はファイル単位 • ファイルを修正する時に「チェックアウト」する ファイル修正時にロックをかける(排他制御) → 複数の人が同時に編集できない 管理がファイル単位 →プロジェクトとして管理できない
8 22 第二期:クライアント・サーバ型 • RCSのフロントエンド • リモートリポジトリを導入 • 複数の人が同時に修正可能 •
「マージ」の導入 1986年 Concurrent Version System (CVS) 2000年 Subversion • ファイル名変更やディレクトリの管理をサポート • プロジェクト全体にバージョン番号(リビジョン)を付与 中央集権的なリモートリポジトリ → 全ての歴史がリモート側にある → 単一障害点になってしまう
9 22 第三期:分散型 2000年 BitKeeper • ローカルに全ての情報がある(分散型) • Linuxカーネル開発に使われた商用ソフトウェア 2005年
Git • 一部のLinux開発者がBitKeeperをリバースエンジニアリング • BitKeeperを使えなくなったLinusがGitを開発 • 高速なブランチ切り替えやマージ 全てのリポジトリが完全な履歴を持つ リモートとローカルの歴史の整合性を取る
10 22 Eclipse Community Survey SubversionとGitのシェア 利用率(%) 2018年のStackoverflow Surveyでは、Git 87.2%、Subversion
16.1% 現在、VCSとしてはGitが大きなシェアを持っている
11 22 バージョン管理システム導入の二大メリット 渡辺が 考える バックアップ 履歴保存
12 22 1. 結果の新規性 2. 適切な引用 3. 体裁 4. ストーリー
Q: 卒論で一番大事なのは?
13 22 1. 結果の新規性 2. 適切な引用 3. 体裁 4. ストーリー
5. バックアップ もちろん 大事ですが 期日までに提出することが最も大事 Q: 卒論で一番大事なのは?
14 22 バージョン管理システムとして Git/GitHubを使うと上記要件を 自動的に満たす バックアップは定期的にとる バックアップ頻度=データが飛んだ時の手戻りの時間 最低でも毎日バックアップすること バックアップはリモートにとる 自分のPCの別フォルダにコピーするのはダメ
USBへのコピーも信用できない
15 22 バージョン管理システムを使っていると... • 任意の時点に状態を戻すことができる • 任意の時点間の差分を確認できる デバッグ時間の短縮
16 22 数値計算コードを開発中、 • メインカーネルを修正し • 別のインプットを与えたら 計算に失敗した 計算ルーチン (修正前)
インプット A OK 計算ルーチン (修正版) インプットB NG その機能を追加したことによるバグ? もともとあったバグがインプットにより顕在化?
17 22 バージョン管理システムを使っていないと... ソースとにらめっこして 気合でデバッグ 徹夜でなんとか バグ発見 自分で入れたバグを自分でとっただけで、仕事はなんら進んでいない
18 22 バージョン管理システムを使っていれば... 修正前のメインカーネルを取得し、Input Bを食わせる OK NG 今回の修正でバグが入った 計算ルーチン (修正前)
インプット B もともとあったバグが顕在化 問題の切り分けが容易
19 22 昔入れたバグほど、デバッグが困難に (修正内容を忘れているから) 開発時間軸 Ver. 1 Ver. 2 Ver.
3 Ver. 4 Ver. 5 (1)ここでバグ発覚 (3)ここでバグ混入 (2)ここまでは動作することを確認 デバッグ時間軸 Ver. 2とVer. 3の差分を取れば、バグの原因がすぐにわかる
20 22 開発 デバッグ 開発 デバッグ 作業時間 進捗 作業時間 プログラミングが早い人は「デバッグ時間」が短い
左の人の方が「がんばっている」ように見えるが、 右の人の方が作業は進んでいる
21 22 バージョン管理システムを使えばデバッグ時間が短く なるわけではない 「できる人」はGitが使えるから「できる」のではない GitやGitHubはあくまでも「開発スタイル」を支援するツール • Gitが「何を」実現するツールなのか • 自分がGitで「何を」しようとしているのか
を理解することなしに開発効率は向上しない
22 22 • バージョン管理システムとは、ドキュメントやソフ トウェアのバージョンを管理するためのシステム • 複数人開発で有用なツールだが、個人開発でも有用 →三日前の自分は他人 • バージョン管理システムを使えば開発効率が上がる
わけではない →開発スタイルを変えなくてはならない Git/GitHubの使い方を学ぶことが目的ではない ツールに流れる哲学を学ぶ