2026/10/10に開催されたDesignship2026に登壇した際のスライドです。以下は登壇原稿の全文となります。
https://design-ship.jp/2026/
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どうもこんにちは。株式会社メドレーの小山です。医療福祉で働きたい人と働いてほしい人をつなぐジョブメドレーをはじめとした医療福祉の人材領域のデザインを担当しています。デザインを通じて採用や学びを支えることで医療の負を解決しようとしています。
そんなメドレーに私が入社して10年目を迎えました。短くはない期間を在籍したんですが、今日はその理由をお伝えします。デザインシップの問いの「あなたはなぜ、いま、デザインをするのですか?」をみなさんが考える参考になれば幸いです。
さて、医療と聞くと人手が足りない、怖い、不安、めんどくさい!という声が上がります。そういう課題にどう貢献するか?と考えるデザイナーがこの業界には多いです。私もその内の一人です。最近は、こういう動機にもう一つ新たに加わりました。
それは、医療介護従事者に『本気の人がいる』ということ。エッセンシャルで利用者の生活や人生に深く関わる医療の仕事には、本気の人がいる、だからデザインが面白い、だから続けられると思っています。
ここで少し本気を定義させてください。それは、あらゆる手を尽くしてよくできないかと模索する姿をさしています。今日はその姿を示し続けている三人の医療福祉で働く従事者を紹介します。それを通じて、私がデザイナーとして惹かれるポイントと続けられる理由について深掘りたいと思います。短い時間ですがお付き合いくださいませ。
まず1人目、原口英之さん。保育園で働く心理カウンセラーです。保育園の園児の発話やコミュニケーションを観察し、園児と接する保育士に適切なアドバイスします。その細さはすごくて、園児と保育士がどう接しているかはもちろんのこと、連絡帳から親が抱える疲れや悩み、園児を取り巻く家庭環境を保育園に限定せずに想像できる範囲を押し広げて働きかけるところまで踏み込み園児と接する保育士たちの関わり方を考えています。
自分に置き換えたときにここまでできるか?ユーザーにインタビューしただけでユーザーを理解したと思っていないか?そう問いかけられた気持ちです。この問いかけや姿に私が惹かれるポイントがあります。それは、『その人の背景まで見通す』ユーザーはその人だけで成立するのではなく、周囲の環境や関係性まで見て初めて分かることがあります。原口さんの仕事のスタイルから、自分がユーザーを見る範囲を、もう一度考えたくなりました。
次に2人目國永直樹さん徳島県最南端にある町立海南病院の医師です。國永さんが着任したときこの病院は救急の受け入れを見送ることが続き、地域の信頼が損なわれてました。そこで、特定の診療科に限らず幅広い症状を診察する総合診療科を立ち上げて受け入れられる体制をつくります。体制を整えるだけじゃなく採用企画にも携わります。自治体と病院見学の旅費を補助したり、食やレジャーなど地域で暮らす魅力も伝えたりする医療版ワーケーションも企画し県外の医療従事者が働く機会を作りました。また大学と共同で子どもたちに勉強を教えるスタディスクールを始めて医療への進学や就職に関心を持ってもらう取り組みを通して裾野を広げる活動もしています。医療を維持するために診療だけじゃなく採用、その先の未来の人材まで考えています。
私が惹かれたのは『役割に閉じずに考える』ということ。自分に課せられた枠で考えるのではなく、価値提供を実現するためにどうすべきんなのかをバックキャスティングで考えていく、そんな姿に強く惹かれました。
最後に坂本すがさん、看護系の大学の副学長をされていますが、この方が看護師長をされていた時に、患者さんに何をしてほしいか聞いたそうです。最も多かったのが、おいしい食事を食べたい、という声でした。当時の入院食は1日700円で決しておいしいとは言えなかったそうです。事務方や栄養士と粘り強く交渉して1日3,000円にしてレストラン並みの食事を提供しました。相当難しかったと思います。ただそのおかげで患者さんが喜び、自分たちの取り組みで病院が変わる手応えを感じたそうです。この方はちょっと他とは違うのが、それら手応えそのものを楽しみなさい、患者が喜ぶことを目標に繰り返し取り組み、その過程をも楽しむことに一生懸命になりなさい、と説いているそうです。
大事だからこそ、重く受け止めつつも『自分が楽しくなれる』ように考えることがこの業界には必要だし、私は、坂本さんの記事を読んで、自分がこの10年医療福祉で惹かれてたものの正体が少しわかった気がしました。
振り返るとお三方を通してデザインの一端に触れた気がしています。もちろんこれだけではないですが、なぜそうなのかは明らかで、デザイナーのあり方と同じで、お三方は課題を解決しようとしているからだと思います。
医療福祉という業界は課題が重くて複雑です。その分やりがいがあります、社会貢献性もあります。ただ、それだけじゃなく、自分自身が楽しめる余地も残されています。それはこういう方々に触れることで『自分のデザイン観がアップデートされる』ことにあります。ユーザーに価値提供しつつ、仕事人として感化される、そういうものづくりもあっていいんじゃないかなと思います。そういう緩い双方向性が医療にはあるし、私がデザインを続ける理由なのかもしれません。
AIなど技術革新でデザインの概念は様変わりする。その過程でいろんな関わり方が消えていくと思います。ただ、こうしたエッセンシャルな業界だからこその現場経験に血を通わせたエッセンスが生まれ続けると思うので、ここにデザイナーとしての関わりしろは残るんじゃないかなと考えます。とはいえ答えがあるわけじゃないので、みなさんと議論できれば幸いです。
もし弊社や業界にご興味のある方がいれば、ブース出展しているので、ぜひお話ししましょう。インタビュー記事もあるのでQRコードからご覧いただけると幸いです。ご清聴ありがとうございました。