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ICH Q5A 生物学的製剤のウイルスに対する安全性の評価 1
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August 19, 2020
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ICH Q5A 生物学的製剤のウイルスに対する安全性の評価 1
ICH Q5Aは生物学的製剤のウイルス安全性の評価に関するガイドラインです。ヒト、もしくは動物細胞で製造するものを対象としています。
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August 19, 2020
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Transcript
ICH Q5A ヒトもしくは動物細胞系統 から得られる生物学的製剤のウイル スに対する安全性の評価 1 2020/8/6 Ver. 1.0
ICH Q5 生物学的製剤の品質に関するガイドライン • Q5A-Q5Eの5つからなる • Q5Aはウイルス混入可能性の評価法
Q5A • 未承認新規有効成分の承認申請のガイドライン • BSEやスクレイピー*への対応は除く • 培養細胞から生成した製剤が対象 ウイルス混入可能性の評価法について BSE: Bovine
Spongiform Encephalopathy。プリオン病の一つ。 スクレイピーはBSEと同様の病症。対策は現地の規制当局と相談するよう記載されている
対象となる製剤 細胞由来のもののうち、ワクチンとベクター*1を除いたもの • インターフェロン*2、モノクローナル抗体*3 • 組み換えDNA由来の抗体 • 腹水液*4中で培養したハイブリドーマ*5から得られるもの *1 ベクター:
DNA小片を輸送するためのDNAのこと。普通は環状DNA *2 インターフェロン: 異物に応答して細胞が分泌するタンパク。抗ウイルス反応などを誘導する *3 モノクローナル抗体: 抗原結合部位の構造にバラツキがない、抗原の同じ位置に結合する抗体のこと *4 Ascitesの訳。よくわかりません *5 ハイブリドーマ: 細胞同士が結合した複合細胞のこと
ウイルス混入のリスク • 細胞系統へのウイルス混入例はない • 混入試験を行い、評価の必要はある 細胞系統(Cell line)、製造中に混入する恐れがある
ウイルス混入のコントロール • 細胞系統・原材料に混入がないことを確認する • ウイルス除去工程の能力を検証する • 製造工程で混入がないことを確認する アプローチは3種類ある 単一の方法では確実に検証できない 試験と除去・不活性化を組み合わせる
起こりうるウイルス混入源 • Master Cell Bankへの混入 大きく2つの経路が考えられる 起源細胞に存在したウイルスの発現が起こる可能性がある • 外部からのウイルスの混入 原料・遺伝子誘導のためのウイルス使用・器具・作業により
混入が起こりうる
細胞系統の評価(MCB) 3種の細胞種により異なる対応が必要 Master Cell Bank(MCB) • 内生・非内生のウイルスを調べる必要がある • ヒト/非ヒト融合細胞では感染する可能性のあるものを すべて調べる
• 非内生ウイルスはin vitro/vivoの接種試験、マウス抗体 産生(MAP*)などで検査する *Mouse Antibody Productionの略 in vitro/in vivo: “試験管内の”と“生体内の”を示す生物学用語。ともにラテン語由来
細胞系統の評価(Working Cell Bank) • 非内生・生産終了前*のウイルスを調べる必要がある • MCB、生産終了前に正当な確認が可能であればWCBの 調査は必要ない • MCBの代わりにWCBですべての試験を行ってもよい
製造時の有効成分の供給源となる細胞の評価 *Cells at the limit of in vitro cell ageなので、正確には「in vitro培養期間の期限にある細胞」との訳になる
細胞系統の評価(生産終了前の細胞*) • 培養期間の期限はパイロット/商業生産で確認されたもの • 生産終了前の細胞で内生ウイルスの試験を行う • 非内生のウイルスに関するin vivo/vitroの試験が必要 製造終了前の細胞に対しても評価が必要 *Cells
at the limit of in vitro cell age used for productionなので、正確には「in vitro培養期間の期限にある生産に使用した細胞」との訳になる • 非内生のウイルス検出時には混入原因を特定する
細胞系統とウイルステスト(Table 1) ウイルス種と試験法 MCB WCB Cells at the limit レトロウイルス・内生ウイルスの
試験法 感染力(Infectivity) 必要 不要 必要 電子顕微鏡観察 必要 不要 必要 逆転写酵素 必要 不要 必要 その他のウイルス特異的な試験 必要なら実施 不要 必要なら実施 非内生・混入ウイルスの試験法 in vitro Assays 必要 *初めに必要 必要 in vivo Assays 必要 *初めに必要 必要 抗体産生試験 必要 不要 不要 その他のウイルス特異的な試験 必要 不要 不要 *first WCBでは必要と書かれている
レトロウイルス検出の試験 • レトロウイルスの感染性を調べる • 電子顕微鏡(EM)での観察を行う • 逆転写酵素の検出などの方法を実施する MCBと生産終了前の細胞に対して行う レトロウイルス: RNAとタンパク質の殻からなるウイルスのこと
逆転写酵素、Reverse transcriptase: RNAをテンプレートにしてDNAを生成する酵素のこと
In vitro assays • ヒト・動物感染性の広範なウイルスに反応するものを用いる • ヒト・非ヒトの培養細胞を用いる • 細胞変性・吸着性を示すウイルスを見つけるのに用いる 培養細胞に検体を与えて影響を調べる試験のこと
In vivo assays • マウス・胚に与えて、ウイルスが増えないことを確認する • 使用した細胞によっては他の動物を利用する • 病症を示さないことを確認する 動物に検体を与えて影響を調べる試験のこと
抗体産生試験(Antibody Production Tests) 動物に検体を与えて抗体産生レベルを調べる試験 • げっ歯類に与えて、血清中の抗体の増加を調べる • マウス、ラット、ハムスターを用いる
ウイルス検出と同定の方法 Table2の表記を基本とするが、技術発展と共に変化しうる 試験項目 試験の対象 検出対象 検出できないもの 抗体産生試験 細胞溶解物と培地 特定のウイルス抗原 動物で抗体が産生されないもの
in vivo screen 細胞溶解物と培地 ヒトに病害性のあるウイルス 病症を示さないウイルス in vitro screen 1. Cell Bank 細胞溶解物と培地 ヒトに病害性のあるウイルス 病症を示さないウイルス 2. 生産 加工前の細胞溶解物と培地 ヒトに病害性のあるウイルス 病症を示さないウイルス 透過型電子顕微鏡(TEM) 1. 細胞基質 生細胞 ウイルス・ウイルス類似粒子 同定による定性的解析 2. 細胞培養液上清 細胞を含まない培養液の上清 ウイルス・ウイルス類似粒子 同定による定性的解析 Table2(上半分) *TEM: Transmission electron microscopy
Table2(続き) 試験項目 試験の対象 検出対象 検出できないもの 逆転写酵素(RT) 細胞を含まない培養液の上清 レトロウイルスなど* はっきりした活性検出が困難 レトロウイルス感染性
細胞を含まない培養液の上清 感染性のあるレトロウイルス 試験系で検出できないレトロウイルス 共培養 1. 感染性エンドポイント 生細胞 感染性のあるレトロウイルス 試験系で検出できないレトロウイルス 2. TEMエンドポイント 生細胞 感染性のあるレトロウイルス 同定による定性的解析 3. RTエンドポイント 生細胞 感染性のあるレトロウイルス はっきりした活性検出が困難 PCR 細胞と培地その他 ウイルス特異的DNA配列 プライマーが必要、感染性評価不可 RT: Reverse transcriptase PCR: Polymerase chain reaction。DNAの一部をプライマーと呼ばれるDNA小断片を用いて増幅させる方法のこと エンドポイントの意味は不明。培養終点での状態のこと? Table2(下半分): RTは活性測定を指すのか、Western blottingを指すのかよくわからない
細胞系統のAcceptability 細胞がウイルスのDNA sequenceを持っている場合*がある • 対応策はSection Vに記載 • 基本的には規制当局との議論で対処を決定する • リスク/効能を比較して試験・除去法を決定する
未加工のバルク品のウイルス試験 細胞周辺の液を集めたものをunprocessed bulkと呼ぶ • 細胞は含まないが、除去処理も行っていない • ウイルス検査を行うには最適 • 細胞や培養液上清も使用して試験を行う •
3ロットのパイロット/商用スケール製造品で試験を行う
精製品のウイルスクリアランス/試験 ウイルスクリアランスを評価し、特徴を明らかにする • ウイルスが取り除けていることをモデルウイルスで示す • ウイルス不活性化の時間依存性を調べておく • モデルウイルス以外のウイルスについても留意する *ウイルスクリアランス: ウイルスを除去・不活性化すること
Table 4 精製品の工程検証で実施すること ケースA ケースB ケースC ケースD ケースE 状況 ウイルスが存在する
なし なし あり あり あり ウイルス様微粒子が存在する なし なし なし なし あり レトロウイルス様微粒子が存在する なし あり なし なし あり ウイルスが特定されている - あり あり あり なし ウイルスが病原性である - なし なし あり 未知 実施すべきこと モデルウイルスでのクリアランス検証 必要 必要 必要 必要 必要 関連するウイルスでのクリアランス検証 不必要 必要 必要 必要 必要 精製品でのウイルステスト - 必要 必要 必要 必要 細胞株とバルク品の状況により、実施する検証が異なる