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初参加のハノーバーメッセで感じた世界最大級イベントの熱気とAI活用の未来

 初参加のハノーバーメッセで感じた世界最大級イベントの熱気とAI活用の未来

ハノーバーメッセ2025で感じた製造業のAI活用最前線について、UNS(統合名前空間)、MCP、A2Aといった新技術により、自己修復型生産ラインや動的需要応答型サプライチェーンなどの未来が見えるユースケースを報告。

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濱田孝治

May 23, 2025
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  1. 2 濱田孝治(ハマコー) 製造ビジネステクノロジー部 マネージャー • 独立系SIerを経て2017年9月 クラスメソッド入社 ブログ, SNS •

    「クラスメソッド 濱田」で検索 • はてなブックマーク累計 約15,000個 • Xアカウント:@hamako9999 コミュニティ運営 • JAWS-UG コンテナ支部運営 • Grafana Meetup Co-organizer AWS認定関連 • 取得済みAWS認定:SAP, DOP, DBS, SOA, SAA, DVA, SCS, CLF, AIF, MLA, MLS • AWS APN Ambassador 2020 執筆書籍 • みんなのAWS • SoftwareDesign 2022年11月号 コンテナ特集
  2. 35 例:動的需要応答型サプライチェーン 従来の課題: 需要変動への対応は遅く、在庫過多や 欠品リスクが高い 新たな可能性: •UNS: ERPデータ、市場データ、生産能力データを 統合 •MCP:

    AI需要予測エージェントが外部データ(天 候、イベント、SNS)にアクセスして需要の急変を 予測 •A2A: 需要予測エージェントが生産計画エージェン ト、サプライヤーエージェント、物流エージェント と連携 具体例: 食品メーカーでは、大型スポーツイベント 前のSNS分析から特定商品の需要急増を予測。AIが 自動的に原材料発注を調整し、サプライヤーAIと納 期交渉、生産ラインのスケジュール再構成、物流ル ートの最適化を実施。これにより売上機会損失を防 ぎつつ、過剰在庫リスクを軽減。
  3. 41 製造業におけるよくある困り事 https://dev.classmethod.jp/articles/workshop-deigital-thread/ • 設計エンジニア: 「コンセプトから詳細設計段階に移行するために、主 要な材料供給の課題を知る必要があります」 • サプライチェーン: 「パーツ#XYZが遅延しています。調達の問題はあ

    りますか?同様の品質スコアを持つ代替サプライヤーを検討できます か?」 • 事業開発: 「新しいRFQ(見積依頼書)が来ています。類似点を特定す るために、過去のRFQ回答や仕様書にアクセスできますか?」 • 計画/購買: 「部品のリリース状況と変更記録を入手して、調達計画を 立てられますか?」
  4. 44 UNS(Unified Name Space)とは? 製造環境における「単一の信頼できる情報源」として機能するイ ベント駆動型のデータアーキテクチャ 主要コンポーネント • MQTTブローカー:発行/購読型メッセージングの中心ハブ •

    Sparkplug:MQTTプロトコル上で動作し、メタデータを追加 し自動検出や例外報告を実現 • データモデリング:ISA-95標準に基づく階層的なデータ構造 • エッジオペレーション:エッジに配置されたソフトウェアが機 器に接続し、生データを変換・標準化
  5. 47 UNSの特徴とAIモデルやエージェントと相性が良い理由 ②リアルタイム性の確保 • 従来の課題: 多くのデータは定期的なバッチ処理やエクスポー ト/インポートプロセスを通じて移動し、データのリアルタイ ム性が無い • UNSの解決策:

    MQTT/Sparkplugベースのイベント駆動型アー キテクチャにより、データの変更がほぼリアルタイムで伝播 • AIへの影響: AIエージェントは常に最新の情報に基づいて判断 できるため、現実の状況とAIの認識のずれが最小限
  6. 48 UNSの特徴とAIモデルやエージェントと相性が良い理由 ③コンテキストの保持とメタデータの充実 • 従来の課題: データは文脈から切り離されることが多く、その 価値や関連性が失われていた • UNSの解決策: Sparkplugによるメタデータの追加や、ISA-

    95に基づく階層構造により、データに豊富なコンテキストを 付与 • AIへの影響: AIモデルはデータポイントだけでなく、その意味 や関係性も理解できるため、より高度な推論が可能
  7. 65 The Industrial AI Podcast Colin Masson https://open.spotify.com/episode/1akdmbHfJHOMPu2ohktiRq MCPとA2Aは、現場での活用に最適 か?

    要約:MCPとA2Aプロトコルが工場デー タの活用に革新をもたらす可能性につい て議論。Anthropicがオープンソースとし てリリースしたMCPは、産業機器データ のコンテキスト化を可能にし、それをAIと 接続。GoogleのA2A拡張機能は複数の AIエージェント間の連携を実現します。
  8. 66 MCPとA2Aについて MCP(Model Context Protocol) • AIモデルやエージェントが外部データソース・ツールと接続するための オープンスタンダード • 「AIのUSBポート」とも呼ばれる標準化されたインターフェース

    • AIとツール・データ間の接続を単純化し、M×N統合問題を解決 A2A(Agent2Agent Protocol) • 異なるAIエージェント間の通信・協調を可能にするオープンスタンダー ド • Googleが提唱した、ベンダーに依存しない相互運用可能なプロトコル • エージェント間の自律的な協調をサポート
  9. 67 OPC UA, UNS, MCP, A2Aの関係 •UNS(Unified Namespace):OPC UAの上に構築され、 個々の機械と直接通信する必要なく、工場内の機械とその能力

    (温度、圧力、流量など)を整理するレイヤー •MCP:AIエージェントがUNSに簡単に接続できるようにする プロトコル(OPC UAとも直接通信可能) •A2A:複数のAIエージェントが互いに通信し、MCPを通じて アクセスしたデータやツールを使ってタスクを調整するための 拡張機能
  10. 72 ユースケース①:自己修復型生産ライン 従来の課題: 設備故障は事後対応が基本で、早期発見で きても人間の判断と介入が必要 新たな可能性: •UNS: 全ての機器からのセンサーデータを統合し、リア ルタイムで異常パターンを検出 •MCP:

    AIエージェントが過去の故障履歴と現在のデー タを分析し、問題を診断 •A2A: 保守エージェントが部品調達エージェントと連携、 自動的に部品発注・ロボット修理指示 具体例:自動車組立ラインの溶接ロボットが振動異常を 示した場合、AIが原因を特定(ベアリング劣化)し、部 品在庫を確認、最適なメンテナンス時間を計算、必要に 応じて代替生産ルートを確保しながら、次のシフト変更 時に自動修理ロボットが対応する一連の流れが人間の介 入なく実行される。
  11. 73 ユースケース②:動的需要応答型サプライチェーン 従来の課題: 需要変動への対応は遅く、在庫過多や 欠品リスクが高い 新たな可能性: •UNS: ERPデータ、市場データ、生産能力データを 統合 •MCP:

    AI需要予測エージェントが外部データ(天 候、イベント、SNS)にアクセスして需要の急変を 予測 •A2A: 需要予測エージェントが生産計画エージェン ト、サプライヤーエージェント、物流エージェント と連携 具体例: 食品メーカーでは、大型スポーツイベント 前のSNS分析から特定商品の需要急増を予測。AIが 自動的に原材料発注を調整し、サプライヤーAIと納 期交渉、生産ラインのスケジュール再構成、物流ル ートの最適化を実施。これにより売上機会損失を防 ぎつつ、過剰在庫リスクを軽減。
  12. 74 ユースケース③:知識継承型スマートファクトリー 従来の課題: 熟練作業者の退職によるノウハウ喪失、 新人教育の長期化 新たな可能性: •UNS: 作業手順、センサーデータ、品質結果の関連 付けと蓄積 •MCP:

    AIが熟練者の作業パターンを学習し、データ から暗黙知を形式化 •A2A: 知識エージェント、トレーニングエージェン ト、支援ロボットエージェントが連携 具体例: 精密機械メーカーでは、熟練技術者の動作を 複数のセンサーで捉え、その判断と手技をAIが学習。 新人作業者がARグラスを装着すると、AIが作業をリ アルタイムで分析し、熟練者レベルの指導を提供。 さらに協働ロボットが自動的に最適な補助を行い、 作業効率と品質を向上。蓄積された知識は継続的に 更新され、組織全体で共有される。