23.01.25 / チャイルドケア2023セミナー登壇内容 https://www.tvoe.co.jp/cc/seminar/
ユ ニ フ ァ 株 式 会 社保育中心設計でつくる保育ICTの裏側ユニファ株式会社山口 隆広23.01.25 / チャイルドケア2023セミナー
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2山口 隆広(Takahiro Yamaguchi)1981年生まれ、福島県出身。一児(3歳)の父。HCD-net認定 人間中心設計専門家 / 認定センター委員。2020年7月ユニファ入社。2022年夏から保育ICT ルクミーのプロダクト部門で責任者をしています。
3今日お話ししようと思っていること● 自己紹介(既に終了)● ユニファについて● ルクミーのご紹介● ルクミーの作り方● 園との対話により生まれた機能の具体例● どうしてこういうプロセスを取っているか● 今日のまとめ
4ユニファについて
5ユニファとは保育・育児関連の社会課題をDXを通じて、解決することを目指す“Childcare-Tech”領域のスタートアップ
6サービスの変遷2013/フォト領域2017/ヘルスケア領域2019/ICT領域(買収)2021/ICT領域(内製)
7弊社代表のご紹介土岐 泰之 (とき やすゆき)ユニファ株式会社 代表取締役CEO1980年生まれ。2003年住友商事に入社し、リテール・ネット領域におけるスタートアップへの投資および事業開発支援に従事。二児の父として自身の共働きの中での育児の大変さ、子育て環境を支えるサービスの必要性を痛感した経験をもとに、2013年5月にユニファ株式会社を設立。全世界から1万社以上が参加した第1回スタートアップ・ワールドカップ(2017年)にて優勝。■略歴2003年3月 九州大学経済学部卒業2003年4月 住友商事株式会社入社2008年2月 ローランド・ベルガー入社2009年3月 デロイトトーマツコンサルティング入社 2013年5月 ユニファ株式会社設立、代表取締役CEO就任
8有識者の方々との取り組み有識者の方々のご協力を得て書籍、セミナー、研修等を実施してきました。有識者の方々のご協力を得て書籍「保育施設の未来地図」を2022年2月14日に発売保育・育児について考えるオンラインセミナーを定期的に開催「やりたい保育」をICTツール活用を通じてどのように実現するか伴走するオンライン研修を実施
9価値観のひとつをご紹介
10ルクミーのご紹介
12午睡の見守りにタブレットひとつに集約!保育中の記録業務に日々の「育ち」の気づき・共有に管理・事務業務に 朝の受け入れ時間に バスでの通園に ルクミーとは園支援のためのALL IN ONEパッケージ12
13全国に広がる「スマート保育園・幼稚園・こども園」
14ルクミーの作り方
15本題
16何を作るかも、どう作るかもゼロから始まるのがサービス開発なんとなく「作るんだろうな」という話だけはあります。しかし、それが何者なのかはこの時点ではまったくわからないのです。
17サービス開発のイメージについてのギャップみなさんの思うサービス開発作る人予想できる調理工程うどんわれわれの思うサービス開発作ろうと思った人メニュー検討メニューの反応確認レシピ作り作る人予想できない調理工程完成されたレシピうどんが良さそうだ
18そもそも本当に「うどん」なの?かは前提により異なる● お昼に時間をかけず食べられるものが欲しい<隠れた前提>● 残業が多いので腹持ちがいいものを食べたいうどんじゃだめうどんでよい
19プロダクト開発の最初は、前提となる課題の特定から実際は課題の発見とその解決策の話が最初にあります。課題に対して仮説を持って複数の園や営業担当者と「そもそもこの課題はあるのか」「あるとしてどのくらい困っているか」の会話がはじまります。「連絡帳修正したい」との要望急な欠席があるからそれに対応したいらしい先生側で修正できるようにするのが良さそう
20課題と解決策の検証課題に対する解決策候補が果たして合っているかを検証しますが、このタイミングで「利害の不一致」がよく発生します。システムとしてできるかではなく、それがルクミーとして提供する価値として果たして良いのか?を冷静に判断します。「連絡帳修正したい」との要望急な欠席があるからそれに対応したいらしい先生側で修正できるようにするのが良さそう「保護者側」の修正を可能にすると一見保護者は便利だけど先生は毎朝「どれが最終?」で悩んでしまう
21開発者と園の接点をまとめると…課題ヒアリング何が問題か社内の元保育士にもヒアリング
22開発者と園の接点をまとめると…課題ヒアリング 解決方針レビュー何が問題か 考えてきた案で解決できそうか社内の元保育士にもヒアリング
23開発者と園の接点をまとめると…課題ヒアリング 解決方針レビュープロダクトレビュー※ユーザビリティテストも含む何が問題か 考えてきた案で解決できそうか使いこなせるシステムになっているか単一ではなく規模や方針の異なる複数の園にお話しを伺いつつ、プロダクトを生み出します。(特に方針の議論は多め)社内の元保育士にもヒアリング
24教育のプロとシステムのプロプロなんだからその位全部分かるでしょ?というと、各園の課題に対してプロではないので「調べに行く」ようにしています。※うどんで言えば「うどん店経営のプロ」と「うどん製造機開発のプロ」は全然別ですよね先生は保育や教育のプロ 我々はサービス開発のプロ
25人間中心設計サイクルとサービス開発引用元:UXデザインの資格って?人間中心設計スペシャリスト受験者とHCD-Netがぶっちゃけトーク (ポップインサイト)※このサイクルを何周も回す 利用者のいまを調査・分析どういう状況がベストかを検討解決案を検討解決案が妥当かを利用者へ確認
26つまりは、人間中心設計的なつくりかた→保育中心設計と(勝手に)呼んでいます。
27園との対話により生まれた機能の具体例
28プロダクト開発慣れしていることによる間違いを防ぐ● こういう機能は大体こういうもの、という型は世に多くある● 型に合わせて作ると大体外さないが、園の利用場面と合わせたときに問題になる場合がある● 園の業務を理解してない人だとそれに気づけなかったり、身近な声の大きい人などから「型も知らないのか!(有名アプリの)コレを参考にしろ」と横やりを入られてしまったりするのでちゃんと背景説明する自分は間違ってるんじゃないか?を前提に考えて事実確認を元に進めることで、致命的に誤った選択をする可能性を下げられます。
29例1:個別連絡の保護者画面● 電話の代わりにアプリで連絡できる機能○ 「朝の時間に電話が繋がらない!」などの課題を解決保護者 保育園・幼稚園など
30例1:個別連絡の保護者画面保護者 園
31例1:個別連絡の保護者画面保護者 園日で区切り
32例1:個別連絡の保護者画面世の中のメッセージアプリと比べると制約がある。
33例1:個別連絡の保護者画面開発する上で見えてきたことほとんどが園から保護者への早退お迎え依頼ずっと園に連絡・相談し続けてしまう保護者の存在連絡が来るかも…とずっとスマホをみなければならない先生
34例1:個別連絡の保護者画面開発する上で見えてきたことほとんどが園から保護者への早退お迎え依頼ずっと園に連絡・相談し続けてしまう保護者の存在連絡が来るかも…とずっとスマホをみなければならない先生メッセージ送信画面を日単位で仕切り直し、あくまでその日に何か連絡するための手段と見せる保護者から発信を許可するかは園が選べる世間のメッセージアプリほどの自由度がない方が先生にとっても良いですし保護者にとってもそこまで支障がありません。
35例2:ドキュメンテーション保護者共有● 撮影した写真に対し先生の気づきをコメントして子どもの育ちを振り返ったり、保護者に共有できる機能○ イベント当日の華やかさだけでなくその準備段階での子どもたちの努力であったり、それに対して先生達がどう感じたのかをお互いに見せ合うことでの学びにも繋がるおともだちと図鑑に夢中● 家では図鑑なんて読まないのにびっくり● 今は動物に興味があるのかな?…など、写真からの気づきがたまっていきます。
36例2:ドキュメンテーション保護者共有保護者 園
37例2:ドキュメンテーション保護者共有保護者なぜこのレイアウト(写真→テキスト)なのか
38例2:ドキュメンテーション保護者共有検証時に、この2つでは提供できる価値が大きく異なることが分かった案A 案B(採用)
39例2:ドキュメンテーション保護者共有先生の記録の仕方写真を見て感じたことをコメントする。保護者に提供したい価値テキストから始まると先生の感じ方を先に読むことになり、それが正解に思われてしまう先生としては写真を見て感じたことを言葉にする体験がとてもよかったと思っている。そのため、保護者にも同じ体験をして欲しい。情報としての写真+コメントを共有するだけでなく、見せ方次第で子どもの育ちについて考える機会も合わせて共有できます。
40例3:帳票の文例設定● 指導計画・日誌のデジタル化ができる機能。監査に対応した書類も作成できる。
41例3:帳票の文例設定事前設定した文例を書類作成時に挿入できる。
42例3:帳票の文例設定キャリアの浅い先生 キャリアを積んだ先生● 何をどう書くのか?をゼロから考えること自体が先生としての知識基盤や経験になる● 「なぜその文例になるか」を理解しないまま文例流用してしまうと、本来若手のうちに学ぶべきことが学べない● 自分がこれまで書いてきた内容と専門家監修のある文例とのギャップから学ぶチャンスが生まれる● 仮に文例がマッチしていない場合でも、自分の判断で書き分けられる文例があるとプラス文例があるとマイナス先生(受け持ちクラス)により文例の利用可否を選べるようにし、園での先生育成の機会を奪ってしまうことを防ぎました。※文例の設定はテンプレートごとに行います。作成したテンプレートはクラスごとに設定できます。
43例3:帳票の文例設定 - もちろん逆の意見もあるキャリアの浅い先生 キャリアを積んだ先生● ひとりでは何を書いたらいいかわからない● 文例があることでキャリアの長い先生に聞かなくてもまずは自分で書いてみることができる● 文例があってもなくても自分で書けるのであまり関係ない園の方針によって意見は分かれます。すべてをカスタマイズできるようにすると複雑になり使いづらいですが、ここは分岐が必要と判断しました。
44部外者から見ると不便だけど、当事者にとってはむしろよいこと。● 日頃時間がないなかで、ICTを導入したら気にすることが増えてしまっては意味がない○ 解決したい課題にピンポイントで対処できればいい● 自由度を狭めることが結果プラスになることもある○ 世の中の他のサービスの適用は「余計なお世話」なことがある○ 利害上どうしようもない場合「ルクミーのせい」にして説明いただいてもよいと思っている気軽に追加した「あった方が良い機能」が意図せずマイナスをうみだす可能性があるというのが、保育ICTをつくっていく中で気をつける部分です。
45どうしてこういうプロセスを取っているか
46最初はキッズリーをなぞって作るしかなかったルクミーICT● 2016年からあるサービスであり、既に色々考えられているものでした。● その機能がなぜ存在するのか、実際それは機能していたのか、それともまだ検証途中だったのか…???● 誰かの仕事を引き継ぐのが難しいように、プロダクトでも設計思想が分からないと何をどうしていくべきかを適切に判断することができません。キッズリーへのご意見、ルクミーをリリースしてみてからの反響、園との対話を重ねる上で、その機能がどうあるべきかを自走して考えられるように。
47作り手の設計思想が好きかどうかが、使う人にとっても大事園と保護者がアプリでメッセージ交換できるようにしよう必要な課題を解決できるように機能を縛ろうメッセージ交換なら世のアプリに倣おう日単位で区切るメッセージ機能コミュニケーションを時間軸を意識せず使えるメッセージ機能一見似た機能でも作り手が何を大事にしているかによって解決策の方向性は異なるし、今後の改修方針も当然変わっていきます。
48ルクミーの自慢したいところ幅広く内製してるので課題共有がしやすい、安易な解決策ではなく「それって本当に園や先生、保護者のためになるの?」を考える文化があるなどお伝えしたいことは数あります。が、一番は自分たちの考えだけを押しつけず、伴走しながら考える所だと思っています。「別に全部ICT化しなくてもいい。紙の方がうまくいくものまで無理にICT化することが良いことではないよ」という話が社内で普通になされます。
49ルクミーリリース後1年半経過してまだまだ分からないこと、探り探りなことは多いと思っています。「どこも同じだ」のように考えず、いま2023年の課題に対峙していきます。
50今日のまとめ● 「保育中心設計」自体はぱっと出の造語でした。しかし、いま何が課題でそれが合っているのか?を確かめ続け、それが実際の現場で役に立つことをいつも願っています。● 園によってニーズが分かれるのは当然です。なんとなくの便利さに流されず、解決すべき課題に向かうこと、ともすれば不便さですら必要なところがこの仕事の難しさであり楽しさだと思っています。● 教育・保育のプロの視点だと「まだまだ分かってないな」という部分が多いと思いますが、現場がより使いたいことに時間を使えるよう、引き続きお話を聞かせてください。お時間頂きありがとうございました!「ルクミー知らなかったよ」という方はぜひ黄色いポロシャツのブースをのぞいてみてくださいね。
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